らんま1/2

「右京の憂鬱」

 右京はいつものように屋台を引っ張っていた。

 これも修行だ。店は順調そのものだが、屋台の心を忘れてはならない。

 日曜日の公園だ。

 家族連れが香ばしい香りにつられて屋台に群がった。

 あっという間に売れ切れた。

 「今日も商売繁盛や」

 右京はいい気分で後片付けをしていた。

 ―――と。

 一人の浮浪者が、じっと右京を見詰めている。

 中年の男だ。もうずっと風呂に入っていないのだろう、数メートル離れているのに、異臭が漂った。

 「なんや、おっちゃん、お腹すいてんの」

 右京は材料を仕込んだバケツを調べた。商品にするには足りないが、まったく空というわけではない。

 「しゃあない、特別にサービスしたるわ」

 右京はまだ熱の残っている鉄板に材料の残りを空けて、手早くお好み焼きを作った。

竹の皮で作った船にお好みを持って、割り箸と一緒に男に手渡した。

 男はひったくるようにお好み焼きを取ると、箸も使わずにむしゃぶりついた。

 「よっぽどお腹が空いてたんやなあ……」

 右京は男の顔を覗きこんだ。

 不意に、意識の一部に閃光が走った。

 男の顔―――だらしなく弛み、眼もどんよりと濁っている。だが、確かにあの時の男だ。

「おっちゃん……」

 男は不審そうに右京の顔を見詰めた。右京を思い出した様子はない。おどおどしながら、顔を歪ませた。愛想笑いをしているらしい。

 間違いない。右京の記憶が鮮明に蘇った。

 突然、右京の下腹部に異変が起こった。

 じんじんと、熱く。

 濡れ始めている。

 右京は内股を擦り合わせた。

 (うち、やっぱり……)

 ぞくぞくするような期待感が込み上げる中で右京は確信した。

 (いやらしい子なんや……)

男はあっという間にお好み焼きを食べ終えた。

 指まで舐めている。

 「おっちゃん、おいしかったか?」

 右京は訊いた。

 男はうなずいた。もっとくれるのか、という期待が眼に現れている。

 右京は男を打ち据えたい欲望に駆られた。

 「かね払い」

 男の顔が引きつった。

 右京はさらに言い募った。

 「代金を払い、ゆうたんや」

 男は首を横に振った。泣きそうな顔だった。

 「かねがないんやったら、うちの言うことをきくか?」

 男はうなずいた。まるで犬のような従順な仕草。

 「こっちにきいや」

 右京は男を木立の中に誘った。

 木立の中で、右京は男を見据えた。

 「おっちゃん、覚えてへんか?」

 右京はゆっくりと服を脱ぎ始めた。

 男は茫然として突っ立っている。

 口をあんぐりと開いたままだ。

 さらしを解いて胸を開いた。白いふくらみが揺れる。

 「あの時よりも大きくなったやろ」

 男の瞳孔が開いている。喉がぐびり、と鳴る。

 右京はパンティも脱いだ。

 幹に身体を預け、大胆に脚を広げて見せる。

 男は跪き、下から覗きあげた。

 股間を凝視していた。

 発毛は濃いというほどではないが、充分に生え揃っている。

 ふさふさと若草が萌えている。

 右京は股の間に指を入れ、陰唇を開いた。

 その奥に覗く桜色のぬめり。

 「どや、触ってみたいやろ」

 意地悪く右京は言った。

 男はうなずいた。

 「触ってもええで」

 右京の言葉に、男は弾かれたように伸び上がった。

 「ふん」

 右京は股を閉じた。

 男は呻いた。

 腕を挟み込まれていた。肘関節がたわめられている。

 「そんな汚い指で触られてたまるかいな」

 右京は意地悪く言った。

 「裸になり、おっちゃん」

 男は全裸になった。股間はすでに屹立している。記憶にあるペニスはもっと巨大だった。今、目の当たりにするペニスは、笑ってしまいたくなるほどお粗末なものだった。

 右京は立木に身をもたせかけ、再び脚を開いた。

 「舐めてや、おっちゃん。指は使ったらあかんで」

 男は鼻息も荒く、顔を右京の股間に擦りつけた。

 むしゃぶりつくような激しさだ。

 「うんっ! あっ!」

 右京はのけぞった。この舌づかい、感触、あの時の感じと一緒だ。

 「気持ちええで、おっちゃん。もっと、して……」

 男は、右京の性器に舌の奉仕を続けた。

 亀裂を舌先でなぞり、鼻でクリトリスを刺激する。

 「ああっ! ええ気持ちや」

 右京は自分の掌で胸をこねた。

 男は歯を使って器用に右京のクリの包皮を剥いた。

 「ひあっ! やあっ!」

 右京は声を放った。鋭すぎる感覚だった。

 腰が砕ける。

 男は左手で右京の身体を支え、右手を乳房に伸ばした。右京は拒まなかった。男の大きな掌が自分の左の乳房を掴み、揉みしだくのに任せていた。

 (あの時は自分が垢にまみれていた。今度は逆や)

 そう思うと、なんということはない気がした。それよりも、男が与えてくれる快感の方が重要だった。

 男は立ち上がり、右京を抱きしめた。

 主導権を奪い返した自信が態度に現れていた。

 右京の唇を奪おうとした。

 「あかん」

 右京は顔をそむけた。語調は鋭かった。男は唇はあきらめた。首筋に舌を這わせた。

 「あん……それやったら、ええ」

 右京の許しを得て、男は張り切った。

 丹念に首筋を舌でなぞり、耳の穴にも舌を差し入れた。

 「ん……ああ……」

 甘い声を右京はたてた。

 男の掌は柔らかく胸を揉んでいる。時折乳首を指でつまみ、ひねる。

 不意に男は顔を下にずらし、乳首を口に含んだ。

 乳首は充分に勃起している。それを男は存分に吸った。

 「どうや、うちのおっぱいは? おいしいか?」

 「おいしい」

 男は呻きながら言い、ふくらみそのものを頬張るように吸い上げた。

 ちゅぽ。ぢゅっ。

 左右の乳房を交互に。右京の乳房から男の唾液の匂いが立ち上る。

 右京は男の前に跪いた。

 目の前にペニスがあった。さっきよりははるかに膨張している。だが、記憶の中にある悪魔じみた逸物からすれば、まだまだ小ぶりだった。

 「おっちゃん、もっと大きくせな、させたらへんで」

 右京は悪戯っぽく笑うと、自分の掌に唾を垂らした。

 「きれいにしたるわ」

 唾で湿した両の掌で、男のペニスを包み込んだ。

 「うおっ!」

 男が腰を引いた。

 「じっとしとき」

 右京は命じると、掌をこねるように動かした。

 唾を何度か垂らした。

 そうしながら、擦る。垢がじんわりと浮き出す。

 ティッシュペーパーで汚れを吸い取る。

 それを丹念に続けた。

 垢まみれの男の身体の中で、ペニスだけがピンク色に輝いた。大きさも増した。

 「出したらあかんで」

 釘を差すと、充分にきれいになったペニスを右京は口に含んだ。

 「うっ!」

 男は顔を歪めた。指で丹念にしごかれただけでもかなり来ているのに、右京の舌がさらに亀頭に刺激を与える。

 「だめだっ!」

 男は声を放った。

 右京の指が男のペニスの根元を握り締める。

 「まだ出したらあかんてゆうたやろ」

 「ひ、ひい」

 射精寸前で止められた男の額には油汗すら浮いている。

 れろる。

 右京の舌先が、男の反り返った根の裏筋を刺激する。

 「うあ、ああ……」

 男の目が血走っている。もう、これ以上の忍耐は不可能のようだ。

 「頼む、お嬢ちゃん、入れさせてくれ。中に、あんたの中に……」

 切羽詰まった声だった。右京は微笑した。

10

 右京は四つんばいになっていた。あの時と同じ姿勢だ。おしりに男の顔が入っているのも同じだ。

 だが、今度は自ら取った姿勢だった。

 男は指を右京の膣に埋めていた。右京がそうするように命じたのだ。

 中指と人差し指の二本が入っている。

 「指でうちをいかせるんや。それができたら、入れてもええで」

 股間を屹立させたまま、男は指を動かした。

 「んっ、あっ! そうや。その調子や。おしりとかも舐めてや」

 男は命じられた通り、指を動かし、舌を右京のおしりに這わせた。

 「……もしかしたら……」

 男は呟いた。

 指を捻りながら、激しく抽送させる。

 右京はおしりを高々と掲げ、振りたくっている。間断なく声をあげ、無我夢中だ。

 「あの時の……少女?」

 「思い出した?」

 右京は頬を芝生に擦りつけながら、男を下から見詰めた。

 「ああ……」

 男はうなずいた。面影が重なったようだ。

 「あの頃はおれも定職があった。だが、幼女を襲っていたことがばれて、職を失ったんだ。家族からも相手にされなくなった。それで、こんなになっちまった」

 「おっちゃん、どうや。うち、大人になったやろ? 昔と比べて、どうや?」

 右京は少し誇らしげに、男に向かってウィンクした。

 「ああ……いい身体だ。おっぱいも、あそこも」

 男は指の動きを再開した。

 「んっ! はうっ!」

 右京は眼を閉じた。男の指の動きが速度を上げた。

 右京の身体を知り尽くした自信に満ちた動きになっていた。少女の頃の右京を思い出した男が、完璧に自信を持ったのだろう。

 「ここを責めてあげる」

 男は舌先を貪欲に右京の後ろの穴に突き立てる。肛門の入り口を開き、その内部に舌をもぐらせる。

 右京の全身に筆舌尽くしがたい快感が疾走した。

 「ああうっ! いくぅっ! おっちゃんっ! いくうーっ!」

 右京は絶叫した。身体から力という力が抜け落ちる。

 この快感だ。あの時の快感と同じ。右京は堪能した。

 男は指を抜いた。右京が分泌した液体がからみついている。それを口に入れて、吸い上げる。

 「約束だ。入れさせてもらうよ」

 右京は荒い息をして、答えない。

 男は自分のペニス一度、二度しごいた。先端から透明なしずくが盛り上がる。もう限界だ。精液がそこまで衝き上げている。

 「今度こそ、中に出してやるからな」

 右京のおしりの山を左右に開いた。

 ぐっしょりとそぼった右京の襞に男はペニスの先端をあてがった。

 「おっちゃん、あの時、うちの中に入れたんか?」

 ふと、右京は訊いた。

 男は荒い息をしながら、先端部を右京の襞に押し当て、入り口を探る。

 ぐうっ、とその部分を押し込みながら男は答えた。

 (A)入れてない 

 (B)入れた