ぼうえいにっき ○月×日はれ (その2であります)
「えっ、おじさん……?」
自分がおどろいて声をあげると、おじさんは、「しぃっ」といいました。
「さわいだら、エイリアンがにげてしまうよ」
「でも……」
「ほら、これがエイリアンだよ」
おじさんがパンツをおろしてへんなものをとりだしました。
「ぞ、ぞうさん?」
それはぞうさんのお鼻みたいなものでした。
「へ、へびちゃうん?」
シルヴィーちゃんはいいました。たしかに、へびにも似ています。
かわいいエイリアンさんというより、きもちわるいエイリアンさんです。
自分たちはこわさのあまり、たがいに手をにぎりあって後ずさりました。
「おじさんのからだにエイリアンがとりついてしまったんだよ。ああ、困ったなあ。これのせいで、仕事にもつけず、ホームレスになってしまったんだ」
おじさんが悲しげにいいました。
自分は、はっ、としました。これこそぼうえい隊のしごとです。
「みそらちゃん、シルヴィーちゃん、ぼうえいしよう! おじさんのからだからエイリアンさんをおいだしてあげようよ」
「あの……まおちゃん、あれって……ごにょごにょ……であります……」
みそらちゃんが顔を赤くしてもごもごいいます。
「えっ、なに、みそらちゃん?」
「あれは……その……お……」
いいかけて、みそらちゃんは顔をふせてしまいました。
どうしたんだろう、みそらちゃん。
「ねえ、おじさん、どうすれば、そのエイリアンさんをおいだせるの?」
「うん。このエイリアンはやさしくなでたり、なめてあげると、くるしくなって白い液をはくんだ。そうしたらおとなしくなるんだよ」
「わかった。シルヴィーちゃん、いくよ」
「はいな」
自分とシルヴィーちゃんとで、おじさんのおまたからはえているエイリアンへのこうげきをかいししました。
かたいような、やわらかいような、ふしぎなかんしょくでした。
先のほうは赤黒い色をしていて、キノコみたいに笠がひらいていました。その頂上にはたてに割れたような穴があいています。これがお口なのでしょうか?
その口のあたりを指でなでると、全体が、びくんっ、と動きました。
「わっ」
「ひっ」
自分とシルヴィーちゃんはおどろいて手をひっこめました。
やっぱりこれは生きもののようです。でも、みたことのないタイプのエイリアンさんです。どうしてこんなものがおじさんのおまたにくっついたのでしょう。
へびのような、ゾウさんの鼻のようなそれは、むくむくと大きさをましていきました。
「おじょうちゃんたちの指の感触が気に入ったようだ。もっと触っておくれ」
おじさんがなぜかきもちよさそうな顔をしています。エイリアンさんにこうげきすると、おじさんがくるしむのではないかとおもったので、すこし安心しました。
自分とシルヴィーちゃんはぼうえいを再かいしました。
ふたりがかりで、おじさんのおまたからはえたエイリアンをにぎったり、こすったり、なでたりしました。
そうすると、おどろいたことに、エイリアンさんはますます大きくかたくなって、ぐんっ、と立ち上がったのです。
「うわ、すごいな」
「立っちゃった」
シルヴィーちゃんと自分は手をうちならしました。エイリアンさん、すごい変身ぶりです。
でも、みそらちゃんは泣きそうな顔をしています。
「みそらちゃん、どうしたの?」
「まおちゃん……それ……ちがうであります」
「ちがうって、なにが?」
「だから、それはおちん……」
みそらちゃんが耳まで赤くして言いかけたときです。
シルヴィーちゃんのすっとんきょうな声がきこえてきました。
「はむっ……む……本官の口には入らへん」
大きくなったエイリアンさんをシルヴィーちゃんがくわえようとしているところでした。
「だ、だいじょうぶ、シルヴィーちゃん?」
「うん……なんや、これ、なめたらんと、やっつけられへんらしいで」
「そうなんだよ。いくら大きくなっても、おくちでくちゅくちゅしてあげないと、エイリアンは参ったをしないんだ」
おじさんが困ったように言います。でも、このエイリアンをやっつけないと、おじさんの再しゅうしょくをぼうえいすることができません。
「まおやんもたのむわ」
「うん、わかったよ、シルヴィーちゃん」
そのエイリアンさんはよごれていて、へんなにおいもしましたが、ぼうえいのためです。
自分は、んーっとベロをのばして、エイリアンさんにちかづけていきました。