イサミのスパッツ大作戦

 

〜3時間め 保健室(続続)〜

禁断のユ???

 

「は……入っちゃった」

 トシはうろたえた。これは……これって……セックスってやつじゃあ……

「ごっ、ごめんっ!」

 あわてて身体を離そうとする。そのトシの腰にイサミの脚がからみついた。

「わわっ!」

 密着度が高まり、あわてるトシ。なんなんだ、この感触――柔らかくて、熱くて、ぬるぬるしてて――

「トシ、どう? 気持ちいい?」

 イサミが下からトシに笑いかけてくる。脚でトシの身体を離さないように固定している。そして――

 ぎゅむ……ぎゅむ……

「うわっ!? 動いた?」

 トシは股間を包む感触が変化することに驚愕の声をあげた。

「ん……んっ……」

 イサミが眉根を寄せながら、呼吸をはずませている。

「締めてるの……わかる? わたしはわかるよ。トシのオチンチン、さっきより大きくなってきた……」

「イサミ……こんなの……ヘンだって」

 惑乱しながらトシはうめく。ペニスが勝手に熱くなっていく。イサミの中で、はち切れそうなほどに大きく張り詰めていく。

「ヘンじゃないよ、トシ。こんなのアメリカだったら普通だよ? 好きな者どうし、身体で気持ちを確かめあうのは」

 イサミの悪戯っぽい声に、トシはさらにショックを受ける。

「じゃ、じゃあ……イサミ……おまえ、アメリカで……他の誰かと……」

「気になる?」

 イサミはまだ笑っている。トシは、目の前にある裸の少女の肉体に、外人の少年がのしかかっているイメージを思い浮かべた。

 白人の――あるいは黒人の――さまざまな肌の色の少年たちと身体を重ねるイサミ――あえいで――いやらしく笑って――

「うそだ!」

 トシはイメージをかき消すかのように頭を振った。

「そんなこと、イサミがするはずがない!」

 乱暴にのしかかる。

「イサミぃっ!」

 白い少女の薄い胸に顔をうずめた。頭に浮かんだ映像を打ち消すにはそれしかない。

「ああっ、トシ……いいよ……もっと激しく……して……」

 訳がわからなかった。イサミを壊してしまいたかった。凶暴な思いが胸をかきむしり、下半身に力をみなぎらせた。

 イサミの膣の奥深くまで突き入れる。

「う……あ……」

 イサミが抱きついてくる。トシの首に腕を巻きつけ、うるんだ瞳でトシをみあげる。いつもの生意気なイサミでも、さっきまでの妖艶なイサミでもない。見たことのない、しおらしい表情のイサミだ。

「トシの……凄くなってる……壊れちゃいそう……」

「壊してやるさ! このぉっ!」

 トシはめちゃくちゃに腰を動かした。相手を感じさせようだとか、自分が気持ちよくなろうだとか、そんな考えはなかった。ただ、イサミを突いて、突いて、突きまくる。

「はあっ! いた……ぃ……くはっ!」

 苦痛か、快感か、イサミが身をよじり、吐息をもらす。だが、トシとの密着度をさらに求めるかのように、腕も脚もトシにからみつかせて、離さない。

「アメリカで……何人とヤッたんだ!?」

 そんなことを訊いてもしょうがない。答えを知っても傷つくだけだ。だが、訊かずにはいられない。自分は何番めなのか、知らずにはいられない。

「言えよ、イサミ! おれの前に、何人とこんなことをした!?」

「あ……あ……トシ……ひどいよ……」

 質問のさなかにも突かれまくって、イサミの声は震えていた。

「言えよ! でないとやめるぞ!」

「やぁ……やめないで……」

 イサミが半べそでトシに抱きつく。

「よ……四人……だけ……」

「四人もかよ!? 何年の時だ!?」

「最初は……三年生……のとき」

「誰と!?」

「ベ、ベビーシッターの大学生……」

「それから!」

「四年のときに……クラスメートと……あんっ!」

「三人とつきあったのか!?」

「だって……みんな、してるんだもん……」

 イサミから告白を引きずり出しながら、トシの脳は真っ赤に灼熱していた。

 このヴァギナには、外人のペニスが出入りしているのだ。黒人のベビーシッター、そして、白人やメキシカンやコリアンの同級生――

「だから、おれも誘ったのか!? 今度は日本人を試してみようってか?」

 トシはイサミの内部を掻き回しながら声を荒げた。

 イサミは身体から力が抜けたのか、脚はだらしなく開き、腕もトシの背中にゆるく回されているだけだ。トシに突かれるままになっている。

「日本人を舐めるなあッ!」

 ぐんぐんぐんっ!

 槍のように尖ったペニスでイサミを責めたてる。

「あっ……ああ……トシの……トシのが一番すごいよぉ……」

 イサミは朦朧としている。粘膜という粘膜に血が集まっているのか、乳首が赤く充血している。生クリームたっぷりのケーキに愛らしいイチゴが盛られているかのような眺めだ。

「トシの……好き……いちばん……好き」

 甘いつぶやき。

 トシは泣きたくなる。

「おれだって好きだよ! でも、なんで、おれが最初じゃないんだ!」

 柔らかい身体を抱きしめ、髪の匂いをかぐ。よく知ってるイサミの匂いと、初めて知る、発情した女の匂いが混ざりあった、えもいわれぬ芳香。

 衝きあげてくるものに身をまかせ、トシは自分の突端をイサミの一番深い場所にこすりつける。

「あっ!」

 未知の快感に頭がしびれ、背筋が硬直する。

 すべてが解き放たれる。イサミの中で、トシの最初の精のかたまりが放出される。

「トシ……トシのが……おなかの中に……とくとく……とくとくって……」

 イサミの感極まったような声を出した。目尻に涙が光っている。

 トシは我にかえった。嫉妬におかしくなったとはいえ、なんてことをしてしまったのだろう。

「ご、ごめん、イサミ……あっ」

 イサミとの結合部を見て、トシは絶句した。

 シーツが赤く汚れている。それは紛れもなく、血のいろだ。

「これって……もしかしたら……」

 そういう方面にうといトシでも、その手のシーンのあるマンガや小説などを目にしたことがないわけではない。混乱した。

「だって、ああでも言わなかったら、トシ、尻込みしてたでしょ」

 イサミが姿勢をかえて、トシの目から裸身を隠すようにする。恥じらいが戻ったかのように、うつむき加減になる。

「恥ずかしかったんだから……エッチな女の子を演じるのって……。トシのバカ」

「なっ、なんで……そんな……」

 トシは完全にパニック状態だ。と、同時に、物凄い歓喜がたちのぼってくる。

「トシが一番なんだからね」

 イサミが涙を指でぬぐいながら、ニコッと笑った。

「最初で、一番、なんだから」

 その愛しい笑顔を間近で確かめたくて、トシは少女を抱きしめるための腕をひろげ――

 

***

 

「イ、イサミぃっ!」

 ガバッと起きなおったトシは、ベッドの側にいた人物にしゃにむに抱きついた。

 相手の驚きと困惑の声が聞こえ、同時に激しい抵抗がはじまる。

 その人物はトシをはねのけて、声を荒げた。

「なにするんだよ、トシ! 寝ぼけてるのか!?」

「え……?」

 ぼんやりしていたトシの視界がハッキリする。

 そこにいるのは、迷惑そうな顔をしたソウシだ。

「まったく、体育の時間に鼻血を吹いて倒れたと思ったら、すっかり元気みたいじゃないか。心配して損しちゃったな」

 トシに抱きつかれた時に乱れたヘアスタイルを手で直しながら、ソウシが唇をとがらせる。

「ソウシ……? イサミは……?」

 トシはあたりを見回した。衝立の向こうでは保健医が机について仕事をしている。グラウンドからは、生徒の歓声が聞こえてくる。体育の授業がおこなわれているのだろう。いつもの保健室のたたずまいだ。

「イサミちゃん? イサミちゃんなら、教頭先生に呼ばれて指導室に行ったよ。ほら、今日のイサミちゃん、ちょっと変だったろ? だから説教をくらう羽目になっちゃったみたいだね。そのかわり、幼なじみのぼくがトシの様子を見にきたあげたってわけ」

 トシは呆然とする。

「じ、じゃあ、さっきまでここにいたイサミは……?」

「イサミちゃんがここに来てたって? それはないと思うけど。夢でもみたんじゃないの?」

 ソウシが肩をすくめる。

 トシの頭のなかにイサミの痴態の数々が駆けめぐる。

 あまりにリアルな女性器の感触――あれが夢であるはずがない。

 だが、いま、それがどんな形や色だったのかというと――思い出せない。

「そんな……」

 トシは打ちのめされてうつろな目になる。

(夢だったのか……ぜんぶ)

「どうしたっていうのさ。そんなにイサミちゃんに会いたいのなら、指導室へ行ってみたら?」

 ソウシがからかい口調で言ったのをトシはまともに受けた。考えるより行動だ。

「そうだ! イサミに聞いて確かめなくちゃ……!」

 トシはベッドから飛び降り、上履きをつっかけながら廊下に飛び出した。

「おい、トシ! どこ行くんだよ!? いちおう、まだ授業中だぞ!」

 ソウシの声を背後に振り切って、トシは廊下を駆けだした。

「やれやれ……青春だねえ……」

 後に残されたソウシは肩をすくめて苦笑した。

 

夢オチ……?


夢オチはイクナイ!(・A・)