「じゃあね」
「うん、また明日、学校でね」
放課後の夕方。まだ日没には早いが、西に傾いた太陽は厚ぼったい雲に隠されて、あたりは薄暗い。
イサミは、トシとソウシと別れて、帰宅の道をたどっていた。
「今日は……いろいろあったなあ……」
イサミはつぶやいた。思わず内股になり、顔があからむ。
「あんなエッチなこと……信じられない」
スパッツを穿いたヒップをつるんとなでる。ショーツのラインはむろんない。
「おかあさんがみんな洗濯しちゃったから……いつもだったら、絶対にあんなコトしないのに」
ノーパンでいることがああも刺激的だとは思わなかった。信じられないほどドキドキして、高まるほどに大胆になってしまった。イサミは自分で自分が信じられない。
「でも、もう全部かわいてるだろうし、明日からは大丈夫」
角をまがると、花丘家の塀が見えてきた。角度によっては、洗濯物がひるがえっているのが見える。
「まだ取りこんでないんだ。お母さん、お仕事だもんね。おじいちゃんが、そんなに気を回すはずないし」
いずれにせよ、洗濯物の取りこみはイサミの分担だ。
その時だ。
鉛色の雲から、ぽつり、ぽつりと滴が落ちてきた。
「や、やば!」
イサミは慌てた。
思う間もなく、桶をひっくり返したような豪雨になった。
イサミは走るが、門をくぐった頃には時すでに遅し。
洗濯物は全滅状態だった。
むろん、イサミの下着類も――
「明日からも……ノーパン……」
イサミは雨に濡れながら顔を上気させていく。いろんな妄想が頭に広がっていく。
庭に立ちつくしながら、イサミの指は知らずスパッツの股間に伸びていた。