「花丘さん、これがなにか、わかりますか?」
教頭は朱色の細長い物体を取り上げた。
半透明の小さなボールが紐でつながっている。先端はパチンコ玉大、根元に近づくにつれ直径を増してピンポン玉のサイズにまで達している。
まるでゼリーでできたお菓子のように、きれいな色をしている。
「わかりません」
イサミは正直に答えた。今までの十年かそこらの経験では、見たことも聞いたこともないものだ。
教頭は満足そうにうなずいた。
「生徒の知識の領域を拡げてあげることこそが教育者のつとめです。わたしは今、使命感に燃えているのです」
つぶやきながら、うんうんとうなずく。
と、表情をあらためた。
「これはアナルビーズという道具で、人間の肉体を効果的に鍛えるものです」
「きたえる……?」
「花丘さんはきちんとお通じがある方ですか?」
教頭は急に話題をかえた。
イサミはとまどう。
「え……あの……お通じって?」
「ウンチは毎日出ますか?」
「え……ええっ!?」
そんなこと、答えられるはずがない。
「ちゃんと、答えなさい」
ぴしり、と一言。さすがはイサミが生まれるはるか以前から教鞭をとっていただけのことはある。
「で……でます」
明朗快活スポーツ少女であるイサミにとって、便秘の悩みは他人事だ。便秘というものが女性ホルモンの影響で――生理との関係で起きるのだということもまだ知る由もない。
「今朝は?」
教頭がじろりとイサミを見る。
顔から火が出そうなほどに恥ずかしいが、返事を拒むことはできない。学校では、教師の指示は絶対――それが小学生の常識だ。それが意外にそうでもないことがわかってくるのは中学くらいからで、高校レベルでは生徒と教師の立場が下手をすれば逆転する。
だが、いまのイサミにとって、教頭は絶対者だった。
「今朝は……しま、した」
耳まで熱くなる。
「ほう、そうですか。それなら浣腸の手間がはぶけます」
教頭は満足げにうなずくと、ソファの上のイサミの体をついと押して、寝転がせた。
「な……なにを」
「脚を閉じてはだめですよ、花丘さん」
イサミの両脚を持って、教頭が姿勢を制御する。
まるでおしめを替えられる赤ちゃんのようなポーズだ。
「ああ、ここですね。透けて見えています」
「はうっ!」
教頭の指が的確にイサミの肛門を探りあてる。
伸び切ったナイロン生地は、その下の地肌の色合いの変化が判別できるほどに薄手になってしまっていたのだ。
むにむに、教頭の指が動いて、イサミの尻穴をほじくる。むろん、ナイロンの表皮が直接的な侵入は拒んでいるものの、すでに第一関節までがイサミの体内に入り込んでいる。
ざらっとした感触を入口付近の粘膜に受けて、イサミは悲鳴をあげた。
「ひは……っ! ひゃめ……っ!」
身体に力が入らず、声さえまともに出ない。
肛門は急所なのだ、そのことをイサミは実感する。
「花丘さんのここは柔らかいですね。もしかすると、この部分で毎日遊んでいるのではないですか?」
指を動かしながら教頭が訊く。そんなことはない。そこを意識するのはウンチをする時ぐらいだ。だが、イサミはかぶりを振るだけで、否定の言葉を口にすることもできない。
「おやおや、猿股ごしだというのに、ずぶずぶ指が入っていきますよ? これは驚きました。小学生のおしりがこんなにゆるくてよいのでしょうか」
教頭があきれたように大声をあげる。
イサミにはその状況がわからない。ただ、体内に侵入する圧力の存在は、少女の心におびえとともに甘美な無力感をもたらした。
肛門という幼児的な肉欲の凝集点ともいうべき箇所を自儘にもてあそばれる屈従の極み。そのただなかにあって、イサミの幼い性感は、沸点近くまで高められつつあった。
不意に圧迫感が去り、イサミは解放された。ほっとするとともに、物足りない気分にもなる。もっと、そこを苛めてほしかった。
「まったくだらしない穴ですね。大人の指をかんたんに受け入れるなんて。それに、この匂いときたら!」
教頭は抜いた指先を鼻に近づけ、顔をしかめる。
(ああ、だって、だって)
イサミは泣きそうになる。だれだって、そこは臭いはずだ。どんなに拭いたって、洗ったって、限界はある。それに、今日、こんなことになるなんて思ってもみなかった。
(こうなることがわかっていたら、もっときれいにしたのに)
混乱した頭でそんなことも考えている。
「やっぱり、罰が必要ですね」
教頭が判事さながらにイサミへの処遇を決定し、アナルビーズを取り上げる。
「さて、これをどうすると思いますか?」
イサミには、依然、その物体がなんなのかわからない。だが、その使い方には、かすかに見当がついた。それはそれは恐ろしい想像だった。
「これはね、花丘さんの肛門を鍛える道具ですよ。これを使って穴を柔軟にしたり、引き締めたりして、いろんな用途におしりを使えるようになりましょうね」
いろんな用途、ってなんだろう。ウンチをする以外にここを使うことがあるのだろうか?
そんな素朴な疑問とともに、道具の使用方法のイメージがさらに明瞭になり、イサミは恐怖を強くする。
「先生、それ、入れちゃうんですか」
「はい、入れます」
あっさり肯定。
「そ、そんな、入りません!」
「入りますよ。ほら、先端はこんなに小さい玉です」
先端のボールを示して、教頭が説明する。
「ローションもつけますしね」
「む、無理です」
「やってみなければわからないでしょう? 花丘さん、あなたには向上心というものがないのですか?」
教頭の表情が少し険しくなる。イサミはうろたえた。教頭が言ってることはどこかおかしい。だが、それをうまく説明できない。生徒であるイサミはこう言わざるをえない。
「はい、先生、やってみます」
と。
スパッツを脱ごうとするイサミを教頭は止めた。
「いいんですよ、そのままで」
「え、でも」
「学校内で女子生徒の下半身を裸にしたなどと知られたら、あらぬ疑いをかけられてしまいます。これはあくまでも指導なのですから」
教頭はまじめくさって言った。
「それとも、花丘さんは、わたしが学校を去るはめになっったらうれしいですか?」
イサミは強い否定の意志をこめて、首を横に振る。たしかに教頭は怖いし口うるさいけど、生徒のことを第一に考えてくれている。いまだって、イサミのことを鍛えようとして、汚い場所も厭わずに指導してくれているのだ。
「では、脱がずにすむようにしますよ」
言うなり教頭はイサミのスパッツの股の部分をつまんだ。鋭くとがった小指の爪をつかって縫製の糸を絶つと、一気に裂いた。
ビリッ! ピリピリピリピリ……
「あ……あ……」
イサミはその部分に空気が当たるのを感じる。蒸れた粘膜が直接空気に触れて、多すぎる水分の一部を揮発させてゆく。
「これであれば、脚を閉じていればそこが破れているとはわかりません。トイレに行っても、脱がずにすんで便利ですよ」
「そ、そんなあ……」
「では、早速入れましょうか」
教頭はアナルビーズにローションをかけて滑りをよくすると、先端をイサミのピンクの襞の合わせ目に押し当てる。
「あ、先生、そこは……ちが……」
「おっと、失礼。ここには、また、別なものを入れないといけませんからねえ」
どうやら、これも「お約束」らしい。イサミは引きつった笑みをうかべた。小学生の鉄則、教師のギャグはおもしろくなくても笑え、だ。
「こっちが正解ですね。おお、きれいなアヌスです。真っ白なおしりに、ほんのり藤色がかった肌色の入口……」
イサミの肛門を指で開き、内側の粘膜を鑑賞する。
「直腸粘膜もきれいですね。せっかくですからアップで撮っておきましょう」
デジタルビデオカメラを三脚から外して、イサミのおしりにズームアップする。
「花丘さん、自分でおしりの穴を拡げてみせなさい」
「こ……こう、ですか……?」
赤ちゃんがおしめを替えられるポーズで、スパッツの股の部分だけを切り裂かれて恥部を丸出しにし、さらには自らの指で肛門を拡げて見せる――それがどんなに扇情的な光景であるか無自覚のまま、小学五年生の美少女は言われたとおりのことをした。
サーモンピンクの粘膜が露出し、イサミの無意識の筋収縮にともなって、尻穴がぱくぱくする。
「よいですよ、よい眺めです。それでは、そのままで……」
教頭はビデオ撮影を続けながら、アナルビーズの先端をイサミの排泄口に――
ぬうっ……!
「あ……?」
イサミは思わず声をあげた。
痛くはない。だが、不思議な感覚だ。本来は「出す」ところに、異物を「入れられる」というのは。
「ひとつめ……ほら、楽々でしょう? どんどんいきますよ」
ぬう……ぬぬぬ……
粘膜を押し広げながら、冷たいものが入ってくる。イサミの現在の姿勢だと、穴そのものは見えないまでも、入っていく様子は見てとれる。すこしずつ、ボールが大きくなるのが、視覚と触覚の両方で知覚できる。
「あう……うぅ……先生……もうやめて……」
「まだまだ、大丈夫ですよ。余裕たっぷりです」
教頭はイサミの訴えを意にも介さない。子供のおしりの穴に大人のおもちゃを押し込んでいく。
パチンコ玉サイズがビー玉サイズになる。そして、三つめ、四つめ、五つめとなるに従い、ボールの直径が増していく。当然、イサミの肛門は押しひろげられ、腸への圧迫も激しくなっていく。
「うあ……ああ……おなかが、くるし……」
「もう少しのがまんです。三番目に大きいボールが入ったらやめにします。ほんとうは全部入れないといけないのですよ?」
「ああ……ああ……先生、ごめんなさい……」
目尻に涙を浮かべつつイサミは謝った。
ゴルフボール大にまで達したビーズが、イサミの肛門に嵌まっている。さすがにそれが限界とみたのか、教頭はそこでビーズのインストールを中止した。
しかし、すぐ抜いてくれるわけではないようだ。
「さて、花丘さん、二時間目の授業をないがしろにした罰をこれから与えますよ」
なんと、ビーズ挿入は罰の一部でしかなかったのだ。
「それを入れたまま、スクワットをしなさい。三十回ですよ」
「ええっ!?」
「花丘さんは運動神経も抜群だと高木先生からは聞いていますよ。三十回のスクワットくらいかんたんでしょう?」
「それは……」
いつもならどうということはない回数だ。だが、いま、この状態では……
「む、無理です……っ」
イサミは泣き声をあげた。
「しょうがありませんね、それでは、アナルビーズを根元まで入れなくてはなりません。おしりの穴が裂けるかもしれませんね」
教頭の眉根が寄せられて、ビーズを保持する手が動く。イサミは肛門に痛みを感じて顔を歪めた。ほんとうに、裂けてしまうかもしれない。
「や、やります、スクワット……」
震え声でイサミは答えていた。
「それでは始めてください」
教頭が笛をくわえた。正座とならぶ指導室名物、スクワットだ。むろん、ふだんこの罰をくらう悪ガキども(トシもその常連だ)と、イサミとでは状況がまるで違っていることは言うまでもない。
なにしろ、スパッツのお尻から、赤く毒々しい大人のオモチャが飛び出しているのだ。イサミの少年のようなスレンダーなヒップに、それはあまりにも不釣りあいで、それゆえに淫靡であった。
「いち……っ!」
教頭の吹くホイッスルに合わせて、イサミは屈伸する。身体を折り曲げた瞬間、腹部のなかで異物が動くのを感じた。
「にぃ……!」
イサミの腸のなかで、ボールがこすれている。
「さ……ん」
たった三回で膝が笑った。
五回目で前のめりになり、七回目で手を床につく。
その拍子に腸がうねって、異物をひり出そうと反応する。
「だめですよ、落としては。もっと、きついおしおきをしますよ」
教頭に叱咤されて、イサミは必死で括約筋を締めあげる。
「そうそう。ちょっと出てしまいましたね。もとに戻しましょう」
教頭はイサミのおしりに手を掛けて、アナルビーズをさらに体内深くにねじりこむ。
二番目に大きいボールまでがイサミのなかに飲み込まれた。
「先生……いたい……」
「大丈夫です。さあ、あと二十回以上も残っていますよ、スクワット」
イサミは泣きながらスクワットを再開する。
身体をおりたたむたびに鈍い痛みと違和感が激しくなる。
と、同時に、ビーズが少しずつ排泄されていく感覚。ものすごく硬質の大便がゆっくりと腸壁をおりていくようだ。
「じゅういち……じゅうに……くはっ! お、おかしくなるよぅ」
「もう少しですよ、花丘さん。がんばれ!」
戦後民主主義教育の決まり文句を教頭は吐いた。
イサミの頭の中はすでに真っ白だ。なぜ、こんなことをやらされているのか、その経緯すら判然としない。わかっているのは、三十回のスクワットをしなければならないことと、おしりに入れられたアナルビーズを落としてはならないこと――ただそれだけだった。
おなかの中がじんじんと熱い。シリコン球が腸壁をこすりたて、強烈な便意を催させる。出してしまいたい。ぜんぶ、ひり出してしまいたい。
だが、そんなことはできない。
言いつけを果たさないうちは――
イサミは屈伸して、しゃがみこむたびに、自分の股間をのぞき込んだ。
そこがベトベトになっていることがわかる。スパッツの裂け目の奥で大洪水がおきていて、太ももまでたれて、かがむたびにニュルニュルする。
(うそぉ……うそ……苦しいのに、痛いのに、こんな……っ!)
だが、その部分が火照って、疼いているのは事実だ。
アナルビーズが圧迫しているのは直腸ばかりでない。そこに隣接している膣に、そして子宮に、その影響は及んでいた。
(し、しびれて……きた……)
もう痛みはそれほどではなかった。だが、単調な屈伸運動に筋肉が悲鳴をあげていた。心臓も苦しい。
それでも、イサミはスクワットを続けていた。
「にじゅうご、にじゅうろく……にじゅう、ななっ!」
「あと三回ですよ」
教頭がはげます。
「にじゅうはち、にじゅう、きゅ……」
おしりの穴が熱い。抜けそうになるたびに押し込まれたアナルビーズは、すでに一番大きいボールを体内に収めるまでに至っていた。それが蓋がわりになって、抜けなくなってさえいる。
おなかの中も熱い。異物が体内をさまざまに刺激して、痛みとプレッシャーを与えてくる。
「……うっ! さん……じ……ゅうぅっ!」
ようやくノルマを果たしたイサミは仰向けにソファに倒れ込んだ。
息がなかなか静まらない。
教頭が近づいてくる。
「よくがんばりました、花丘さん、立派ですよ」
イサミの頭を撫でながら、優しい声でねぎらった。イサミは、つい、涙腺が緩んでしまう。ほんとうにくるしかったから……褒められてうれしい。
「じゃあ。ごほうびに、おしりに入っているものをぬいてあげましょうね……」
教頭はイサミの脚を開かせる。
イサミはおとなしく、教頭に身を任せた。
その股間に広がっている染みに教頭は目をとめた。
「おやおや、花丘さん、おまんこがビッショリじゃないですか。おしりにビーズを入れられて、感じていたんですか?」
「そんな……」
言いつつも、イサミには否定する論拠がない。スパッツから漏れ出た愛液が腿はおろか膝まで濡らしているからだ。
「じゃあ、抜きますよ」
教頭がしかめらしくそう言い、アナルビーズの末端に指をかけた。
ゆっくりと引っ張る。
「ああっ!」
イサミは、はらわたの奥を引っ張られる感覚に声をあげた。
「あ、熱い……っ!」
それだけではない。
「で、でちゃうぅ……」
ものすごい排便の感覚だ。ためにためたものが一気に噴出する――解放感。
「ビーズが出てきましたよ、ほら――花丘さんの中に入っていたモノです。ああ……ちょっと黄色く曇っていますねえ」
「あああ……やめてぇ」
イサミは懸命にかぶりを降り続けていた。
「おしりの穴がこんなに広がって……大きなビーズを飲み込んでいたのですよ?」
「あ……う……っ!」
教頭がビーズを出し入れする。イサミはたまらず身体を痙攣させた。
自分の体内に球体が出たい入ったりしている。異物は直腸ばかりでなく、隣接する膣を刺激して、さらに奥の子宮にまでその律動を伝えている。
「うあ……あ……は……ぁん」
イサミはとろんとした表情になっている自分をどうすることもできない。唇からよだれが垂れていることも自覚していない。
「気持ちいいんですね、花丘さん? アナルを責められて、どうしようもなく 感じてしまっているのでしょう?」
「んく……う……」
イサミの頬が熱い。肛門が熱を帯びているのがわかる。お腹の中がぐちゃぐちゃになっているのを感じる。
「おしりが、いいんでしょう?」
教頭がビーズをまた押し込みながら訊く。
イサミはソファの上でのけぞりながら、叫んでいた。
「はい……っ! 気持ちいいですっ! おしりが……とけちゃうっ!」
「よろしい、では、おしりでイキなさい」
言うなり、アナルビーズを一気に引き抜いた。
「ひっ! あついひぃいいい!」
イサミはつま先までをピィンと伸ばしたまま、絶叫した。
「いくぅっ! いっちゃ……ううう、おしりで、おしりでいっちゃうーっ!」
前の穴から愛液を噴出させながら、イサミは腰を激しく上下させている。
花丘イサミの人生初のアクメはアナルに訪れたのだった。
「まったく、物覚えがよいにもほどがあります。小学生がおしりでイッてしまうなんて言語道断です」
教頭は、絶頂の余韻に浸ってひくひくと身体を震わせ続けているイサミを見下ろして、口元を歪めた。
「それに、この匂い……まったく嘆かわしい」
イサミの体内から引きずり出したシリコン製の淫具に鼻を寄せた。
「まさに発情した雌のフェロモンそのものですよ」
匂いに満足すると、今度はぺろぺろと舌をうごめかせて、イサミを味わう。
「んん……これは芳醇だ」
教頭は目を細めた。
その細まった目で、イサミの小さな身体を見下ろした。
だらしなく開いた股間――裂けたスパッツのあいだに息づく少女の無毛の性器と肛門。とくに肛門はまだぽっかりと穴を広げたままだ。
「せっかくできあがった穴を、閉じさせるのももったいないですね……」
教頭はズボンの股間から、充血し、ゴツゴツとふしくれだったものを取り出した。
「これを使って、もう一度天国に送ってあげますよ、花丘さん」