姫ちゃんのリボン(2)


 「これでおしまい。さ、疲れたろう」

 主人は言い、撮影をやめた。

 終わったのか、と姫子はほっとする。あれから、かなりきわどい映像を撮られた。だが、最後の一枚はなんとか身に着けていられた。

 姫子は服を着替えた。その姫子に主人は笑顔を向け、椅子に座らせた。

 「驚いたろう。だが、編集後の作品を観たらきっと印象が変わると思うよ」

 紫色のジュースが入ったグラスを姫子に渡し、主人はにっこりと笑った。

 「あれは素材でね、いろいろなエフェクトをかけてまったく違う映像にするのさ」

 「そうなんですか」

 素直な姫子はすっかり納得してしまっている。

 グラスの中のジュースをこくこくと飲む。コピーであっても喉は乾くのだ。

 そんな姫子をじっと主人は見詰めていた。

「そうだ、わたしが撮った映像作品を観てみるかね」

 「はい」

 姫子は、こくん、とうなずいた。

 主人はモニターのスイッチを入れ、ビデオデッキにテープを入れて再生した。

 BOSEのスピーカーが鳴り、アコースティックなサウンドを響かせる。

 白黒の映像だ。少女が映っている。半裸だ。だが、いやらしい感じはしない。

 映像の粒子は粗く、たまに意識的なノイズが入る。

 かと思うと、突然原色の海と空が割り込む。

 白黒の都市。

 黄色い砂漠。

 白黒の人間たち。

 車。

 そして、少女の横顔。

 難解なビデオメッセージだ。

 割り込む原色の映像がインパクトを与え、白黒のナイーブな映像が神経を安らがせる。

 編集といい、エフェクトの技術といい、かなりのレベルの高さだ。

 などということは、姫子にはわからない。ただ、ぼけっと観ていた。

 と、身体がなぜだか火照ってきた。

 心拍数が高まる。

 身体の芯が熱くなる。

 なぜ。

 ――と、姫子の視覚が一瞬の映像を捉えた。

 白黒の画面に原色の映像がカットインする瞬間。

 まったく別の映像が映し出されている。

 それは―――

 裸に剥かれた少女の肢体。

 男に貪られる乳房。

 指に蹂躙される股間。

 それらの映像だった。

 サブミリナル映像だ。

 だが、姫子はその意味が理解できず、自分の肉体の変化にただうろたえている。

 濡れているのだ。

 あそこが。

 無意識に腰が動いている。

 股間を擦り合わせている。

 むずがゆさが身体を動かすのだ。椅子におしりをおしつけて、左右に動かす。

 主人は目を細めて、そんな姫子を見詰めている。

 ジュースに混ぜた催淫薬の効き目には知悉していた。すでに何人もの少女をこれで虜にしているのだ。

 姫子はモニターから目を離せない。

 リズミカルに切り替わる画面の中に秘められたポルノグラフィ。姫子はそれを無意識に見詰めていた。

 少女が挿入された。

 苦痛に歪む表情。

 姫子も表情を歪ませた。

 快感が衝き上げて来る。

 どうしたらいいのか、わからない。

 ただ、息が苦しくて、どうにもならない。

 「どうしたんだい?」

 主人は意地悪く訊く。

 「撮影を続けたくなったのかい?」

 「え……はい……」

 姫子はうなずいた。

 裸になった。

 着替えのコーナー、ではない。

 主人の目の前だ。

 どうしてそんなことができるのか、自分でもわからない。

 恥ずかしいどころか、主人の目に触れていること自体が快感だった。

 キュロットを脱いだ。

 パンティはぐっしょりと濡れていた。

 それから、シャツを脱ぎ、ブラジャーを取った。

 パンティひとつを除いては全裸だ。

 「さて、これからが本当の撮影だよ」

 主人は複数のカメラのリモートスイッチをオンにして、にたりと笑った。

 「あっ……あ」

 姫子は目を閉じていた。

 パンティの下に主人の指が入っていた。

 濡れている部分に指が入っている。

 指はゆっくりと動いていた。

 敏感な部分を指先でなでる。

 「あっ!」

 姫子は股を締めた。

 構わず主人は指を動かす。

 「力を抜いて」

 「ああ……」

 姫子は脱力した。

 主人は姫子のパンティを横にずらした。

 姫子の白い丘がその奥に覗く。

 淡い発毛と、その下の割れ目が露になる。

 主人はその部分にゆっくりと顔を近付ける。

 舌を伸ばした。

 パンティの中の姫子の部分を舐め始めた。

 「あんっ! はあっ!」

 のけぞった。

 濡れる。どうしようもなくあふれる。

 

 主人の手が姫子の胸を触っていた。

 ふくらみはほのかだ。

 ピンク色の乳首が尖っている。

 その乳首を主人の指がつまんだ。揉みながら、引っ張る。

 「ひゃん」

 姫子は悲鳴をあげた。

「かわいいおっぱいだ」

 主人は言い、乳首を吸い始めた。

 舌を絡め、尖った部分を愛しげに舐める。舌先を使って弾くようにする。

 姫子の胸のふくらみは、主人の口にすっぽりと吸い込まれてしまうほどに小さい。

 「あっ、ああ……」

 姫子の意識は混濁した。快感が凄まじい。

 「さあ、ここをカメラに映そうね」

 主人は言いながら、姫子の腰をかかえ、持ち上げた。

 大きく脚を開かせる。

 天井のカメラがズームする。リモコンを主人は操作している。

 主人の指が姫子の合わせ目をいじっている。

 その指を抜き、パンティそのものをずらす。

 取り去った。

 姫子の部分が露出する。

 赤く充血している。

 主人はその部分を指で開いた。

 透明な粘液に包まれた姫子の部分に、主人は舌を乗せた。

 舐め始める。

 「あんっ!」

 姫子の声が跳ねる。

 ぺちゃぺちゃと淫猥な音がするたびに姫子の背筋に戦慄が走る。

 「あっ、ああ、ああー」

 声が大きくなる。腰が浮かぶ。

 主人の舌は姫子のおしりにも及ぶ。アヌスのまわりを音をたてて舐める。

舌先を尖らせて、アヌスを抉る。

 「あっ、そこは、そこは」

 泣きそうな姫子の声。

 「かわいいね、姫ちゃん。あそこをべちょべちょに濡らして」

 主人が顔半分を姫子の分泌したもので光らせながら、笑った。

 姫子は荒い息をしている。

 主人は姫子の割れ目に指を滑り込ませた。

 「はうっ!」

 「ここにね、おじさんのオチンチンを入れると気持ちいいんだよ」

 指をゆっくりと動かしながら主人は言う。左手は自分の股間から屹立したものを握って擦っている。

 黒い男根だ。さほど大きくはない。だが、姫子にはとてつもなく巨大なものに見える。

 「さわるんだ、ほら」

 姫子の手を取って、男根に導く。

 朦朧としている姫子はされるがままだ。

 男根を握った。

 姫子の細い指が、亀頭にからむ。熱い。それに、柔らかいような硬いような、不思議な手触りだ。こんな手触りのものが人間の身体についているなんて、と姫子は思った。

 「口に入れて、しゃぶってごらん。できるね」

 主人は命じ、姫子を四つんばいにさせた。自分は脚を投げ出して座り、姫子の顔が自分の股間の上に来るようにした。

 「さあ」

「はい……」

 姫子は従った。

 「はぷっ」

 口の中がいっぱいになる。

 「舌を動かしてごらん」

 姫子は言われた通りにした。

 「手で、タマの部分を触るんだ。やさしくだぞ」

 主人は興奮で声を震わせていた。

 姫子は顔を上下させた。手はおずおずと主人の睾丸に触れている。

 「軽く歯をたてろ、ああ、そうだ。いいぞ」

 主人は軽く呻いた。

 姫子は夢中で舌を使った。

 ぴちゃ、ぷちゃ、と音がする。

 主人は手を伸ばし、姫子の胸を触っている。

 乳首をつまんでは引っ張る。

 姫子は首を横に振った。鼻で息をするのが苦しくなっている。

 「うっ」

 主人はうめき、姫子の顔に触れた。姫子は主人のものから口を離した。

 主人は二度三度自分で男根を擦った。

 射精した。

 姫子の顔に精液がかかる。

 「あんっ」

 「舐めてみるんだ。おいしいぞ」

 「はい……」

 姫子は指で精液をすくい、口に入れた。

 陶酔が精神を焼いていた。

 舌も狂っているのか。男の分泌した液体が甘美に思えた。

 「いいぞ」

 主人の双眸が喜悦に震えていた。

 また、男根が屹立しつつある。

 主人から見て、姫子は最高の獲物だった。充分にかわいい顔立ちに未成熟な肉体。たまらない魅力がある。

 それに、催淫剤の効き目もあるにせよ、姫子の淫乱さは主人の期待を上回るものだった。

 「姫子……脚を開くんだ」

 熱っぽい声で主人は言った。

 姫子は顔を赤らめ、寝台に横たわると、ゆっくりと脚を開いていく。

 細い脚の間に姫子の扉はあった。かわいく充血したその部分は濡れきって光っていた。

 「おじさんのこれを、入れるよ」

 主人は自分のものを握り締め、姫子の股間を指で開いた。

 「ああ……」

 姫子はまぶたを閉じた。全身が燃え上がりそうなほどに熱い。どうにかなってしまいそうな飢えがある。その飢えをいやしてくれるのは、この目の前の中年男以外にはありえないことを姫子は本能的に悟っていた。

 姫子はすべてを忘れていた。

 もう一人の自分のことも、大地のことも、すべて。

 「あっ……!」

 股間に炎が走った。

 巨大なものが姫子を引き裂く。

 「ああっ!」

 叫んだ。無我夢中で男にしがみついた。

 男の顔は快感に歪んでいる。

 男根は姫子の内部に侵入を果たしていた。

 男は姫子の細い身体を抱きしめて覆いかぶさると、熱くて臭い息を顔に吐きかけた。

 姫子は男の汗ばんだ肩に歯を当てた。

 声が出ない。身体の下半分が壊れて溶けてしまっているようだ。痛み、というよりも炸裂したような熱さがある。

 「いいぞ、姫子の中は……熱いし、とても締まる」

 締まる、というよりも狭いのだが、男にとっては同じことなのだろう。

 男は呻きながら、腰を動かし始めた。

 「ひっ!」

 姫子は声を漏らし、男の肩を噛んだ。

 「てっ!」

 男は顔をしかめたが、怒りはしなかった。むしろ性感を刺激された様子で、愛しげに姫子の髪を愛撫した。耳元に舌を這わせる。

 耳の穴の中に舌先を入れ、息を掛けながら舐める。

 「くんっ」

 姫子の喉が鳴った。顔がのけぞる。

 男は、その姫子の唇を吸い取った。

 姫子の口の中に舌を差し入れ、かき混ぜる。

 「んぐっ、んふっ! はあっ!」

 苦しくて姫子は夢中で顔を振った。口の中は男の唾液で一杯になっている。

 姫子はそれを無意識に呑んだ。

 男はべろべろと姫子の顔を舐めている。

 「おいしいよ、おいしいよ」

 姫子のほっぺたを軽く噛み、吸い上げる。

 ややあって、男は満足したのか、姫子から顔を離し、股間はつながったままでハンディカメラを手に取った。

 結合部分と姫子の顔を交互に撮る。

 指で結合部分を触る。

 クリトリスを擦った。

 「ああっ! はああんっ!」

 姫子が夢中で大きな声をあげる。

 撮影は再開されたのだ。

 体位をかえた。

 男は姫子を四つんばいにさせて、おしりの山を左右に開いた。

 その中心に、肉棒を突きいれる。

 それをカメラで接写する。

 「ああん、いたっ」

 姫子が呻く。男は荒い息をしながら腰を叩きつけている。

 「キモチいいだろ? ああ? 気持ちいいんだろ?」

 男は姫子のおしりの穴に指をねじ入れながら言った。

 「ここだって、もっとさわってほしいんだろ? んん?」

 「ん、あっあ」

 姫子は首を激しく振った。さらさらの髪が芳香を漂わせる。

 男は、中指を姫子のおしりの穴深く埋めこんで、ゆっくりと動かした。

 むろん、姫子のあそこには男のものが深々と刺さっている。

 男は指と腰を同時につかった。

 「ひあっ! だめっ! きちゃう!」

 姫子は絶叫した。

 「なに!? わかんないよ、こわい!」

 絶頂が押し寄せてくる。全身を光が包み込む。

 「おおおおお」

 男も興奮のきわみだ。姫子の細い身体を抱きしめ、リズミカルに腰を叩きつける。

 男根が姫子の膣壁を擦り、子宮まで突き上げる。

 「ああっ! ああんっ! あああーっ!」

 姫子は無我夢中で髪を振り乱した。

 「うううっ!」

 男は呻くと、大量の精液を放出した。

 どくどくどくと吐き出された精液は姫子の股間を濡らした。

 「あ……」

 姫子は身体を震わせた。力が入らない。

股をひらいたままだ。閉じられない。

 男はカメラを薄く陰毛で飾られただけの股間に合わせた。

 未成熟な陰唇から男の精液が溢れ出ていた。

 男はそれを指ですくい、少女の唇に入れた。

 「舐めるんだ」

 男は命じた。

 姫子は朦朧としながら、男の指についたぬめりを舐めた。

 「この身体はもう、おじさんのものだよ」

 男は言いながら、姫子の膣口をひらき、自分が放った白濁液をたらたらと垂れさせた。

 「ね、姫子ちゃん」

 朦朧とした姫子はその言葉に疑いもなくうなずいたのだった。

 「はい……」

 ――その瞬間、姫子の分身は消えうせ――名前を呼ばれて返事をすると、分身は消えてしまうのだ――本物の姫子があらわれた。

 本物の姫子も裸だ。ぼうっとしているところも同じだ。

 一瞬、腕のなかから消えうせたように思えたことに男は目をぱちくりさせたが、なにほどのこともない。

 しかし、姫子の股間から、大量の精液がこぼれ落ちてきたことには驚いた。

「……こんなに出したかな――おれもまだまだ捨てたもんじゃないな」

 男は破顔したが――むろん、その精液は中年男のものではなかったのである。

 分身姫子が快楽にあえいでいるあいだ、オリジナルの姫子の身体に何が起こっていたのか――

 それはまた別のお話である。

エピローグ?

「ピっピンクちゃあああんっ!」

「ポっ、ポコ太さまああああっ!」

 オモチャ屋さんから無事回収されたピンクちゃんとポコ太くんが抱きあったあと、おもむろに交尾を始めたことは言うまでもない。

(分身姫ちゃんの冒険! おわり)