「ちっ、濡れねーな」
朝川が小さく舌打ちする。
紫穂の股間、特にクリトリスを執拗にいじっているが、紫穂は涼しい顔だ。
ツン、とした表情を崩さない。
「E−ECMが効いてりゃ、エスパー女はイチコロなんだがな。やっぱガキだからか?」
ちがう。それは紫穂が完璧な自制をして、ESP波を外に漏らさないようにしているからだ。そして、紫穂は性器を刺激されてもそれを快感として認識しない。単なる皮膚からの情報ノイズとして処理してしまう。だから、快楽中枢へ共鳴することもない。
「小学生っすからね、乳も全然ないし」
伊藤がめんどくさそうに言う。こちらの方は先ほどから紫穂の乳首を指でこねて刺激してくるが、責め自体はおざなりというか淡泊だった。紫穂は、この男が巨乳フェチであることをすでに読み取っていた。
(乳がなくて悪かったわね。でも、薫ちゃんや葵ちゃんよりは大きいのよ)
朝川の方はといえば、もっと徹底していた。女をモノとしてしかとらえていない。あくまでも任務の対象としてしか見ていないのだ。仕事としてレイプをしている、ということなのだろう。
彼にとっての関心事は各班ごとに変化していくグラフの方らしい。掲示板とストリーミングのアクセス数。それが携帯電話に頻繁に送られてくるらしく、それを目にしては表情を曇らせる。
「ツバとかつけて、突っ込んじゃいます?」
と伊藤。
「そういうわけにもいかねーよ。A班B班のアクセスが伸びてるんだ。ただヤルだけじゃあドンケツだっつーの」
「お嬢様系だし、美少女だからいけると思ったんですけどねえ」
その評価は悪くないわね、と紫穂は思う。
(でも、薫ちゃんも葵ちゃんも同じようなことされて、アクセス稼いでいるのか……負けるのはやっぱり悔しいわね)
という、つまらない対抗意識も感じてしまう。
(でも……はやく何とかして薫ちゃんたちを助けなきゃ)
そのためにもこの拘束具をなんとかしなければならない。紫穂はカメラを操作している鹿狩を見やる。こちらは明らかに紫穂の身体を見て興奮している。紫穂の性器や胸をよだれをたらさんばかりにして凝視している。焦れている。
そろそろステップを進める段階らしい。
「――はああ、たいくつ」
紫穂はわざとらしくため息をついてみせる。
ぎょっとしたように朝川と伊藤が紫穂を見る。
「ねえ、いい加減にしてくれない? さっきからちっとも気持ちよくならないわ。おじさんたち、ヘタなんじゃない?」
「なんだと!?」
伊藤の顔色が変わる。
「お嬢ちゃん、その減らず口にむりやりぶち込んでやろうか!?」
朝川が軽く凄む。
だが、紫穂は動じない。
「あら、あなたたちの主張では、わたしたちエスパー女はみんな淫乱なんでしょ? むりやりレイプするだけだったら、都合悪くならない?」
「――ちっ」
オトしていない状態でむりやり犯すだけでは任務は果たせない、と、朝川は判断したのだろう。忌々しげに舌打ちする。
「あの……」
カメラの三脚の後ろにひざまいていた鹿狩がおずおずと手をあげる。
「なんだ、てめえはよっ! おとなしくカメラいじってろ!」
ストレスがたまっているためか、伊藤が吠える。びくっとなる鹿狩。
「――言いたいことがあるのか?」
朝川が少し冷静に視線を鹿狩に向ける。鹿狩はその視線を避けつつぼそぼそと言う。
「おれにやらせてもらえませんか? おれ、そういう子を感じさせるコツを知っているのでね」
せりふの前半は卑屈だったが、後半に行くにつれ、歪んだ自尊心が覗いた。
「ペド野郎が、何自慢たらしく言ってるんだ?」
鹿狩は伊藤とは視線を合わさず、手にした携帯に目を落とす。
「掲示板だと……男役がヘタクソってなってますがね」
軽く笑いを含んだ声でぼそっと言う。
「んだとぉ!?」
伊藤が激高しかける。
「さすがは小学生専門のレイプ犯だけあるなあ? あ、元警官だからって偉そうによ」
「よせ。ガキが聞いてる」
朝川がたしなめる。いちおう鹿狩の個人情報が漏れるのを警戒しているのだ。もちろん、紫穂の前ではたがいの名前を呼び合うこともしない。こいつらの名前を知っていることがバレないようにしなければ。
「待て」
朝川が伊藤を制する。それから鹿狩に目をやる。
「こいつにやらせてみよう」
朝川が言った。一瞬不満そうな表情を見せた伊藤だが、「ま、あんたが言うんなら」と引き下がる。
「へへ……真打ち登場すなあ」
ゆらり、鹿狩が立ち上がる。自信たっぷりの様子だ。伊藤が顔を歪める。紫穂もイラッとしたくらいだから、伊藤がムカついたのも理解できる。
「へっへへ、紫穂ちゃん、おじさんといいことしようなあ」
下半身を露出させた鹿狩が紫穂の前に立つ。すでに勃起している。
紫穂の股を開かせると、いきなり亀頭をあてがい、貫こうとする。
さすがに紫穂も慌てる。
(ちょっ! いきなりそんなのやめてよ!)
朝川と伊藤には聞こえないように、それでも強めの声で鹿狩に囁く。
「ああ? おまえ、おれにならヤらせるんじゃないのかよ」
(ばかっ! シッ!)
鹿狩の脳天気さにあきれる。本当にこの男は子供とセックスすることしか考えていないのだ。
(お芝居してることがバレたらどうすんのよ。あんたは、わたしのいろいろなところを触っててよ。最初はいやがるふりして、徐々に感じているように見せるから――)
「そうか……前戯してほしいのか、そうかそうか」
鹿狩はうなずくと、紫穂の細い胴を抱き、持ち上げた。
胸の部分に顔をうずめる。
「紫穂ちゃん、ふくらみかけのオッパイ、可愛がってあげるよ」
制服はすでにはだけさせられていて、左右にかきわけるだけで裸の胸があらわになる。
薫や葵に比べたら少しはふくらみがあるが、だが、しょせんは10歳の少女のそれにすぎない。
薄いピンクの乳首は、やや乳輪が大きめで、欧米人の少女のそれを思わせた。肌も抜けるように白い。
「紫穂ちゃんのオッパイ、おいしそうだよ。オジサンに食べてほしいんだな?」
「ちょっ、いや、やめてよ! 気持ち悪い、この変態!」
「ツン」の演技なのだが、九割九分リアルな感想だ。
「へっへへ」
鹿狩が紫穂の乳首を舐めはじめる。ナメクジが這うとはこんな感じなのかもしれない。紫穂としては、まだナメクジの方がマシなくらいだった。乳首を口の中で転がされ、くさい唾液まみれにされる。
もちろん快感はゼロ。不快感はMAX。だが、紫穂はその感覚さえシャットアウトしていく。E−ECMの影響か、ちりちりと頭の中から浸食されているような感覚がある。不快感であっても、E−ECMの影響下では性感になるかもしれない。肉体の感覚に身をゆだねるのは危険だ。
「乳首が立ってきた立ってきた。もう感じちゃったのかな?」
鹿狩が指で左右の乳首を交互につまみあげる。ムクムクと大きくなっていく乳首。
「……全然、気持ちよくなんかないわよ」
顔をそむける紫穂。だが、朝川と伊藤の時とは反応を変えている。頬を軽く染め、意地を張っているかのような――という演技だ。朝川が「おや」という顔になるのを紫穂は確認する。
「いや……っ、この人……いや! さっきの人たちにかわって……ぇっ」
鹿狩が乳首を指で弾くのにあわせて声を弾ませる。
「乳首感じてるんだね、紫穂ちゃん」
「そんなことない……っ! やだ、指で……ピンピンしないでっ!」
もちろん、何も感じていないのだが、紫穂は反応しているような声をたてた。
「――さっき乳首いじっても全然だったけどな」
ぼつりと伊藤がつぶやく。表情からすると、鹿狩にテクニックで負けたことにショックを受けているようだ。
たしかに淡泊な伊藤にくらべて鹿狩は執拗だった。乳首を、小さなふくらみごとしゃぶって、飽きることがない。
「ああ……小四のちっぱい、おいしい、マシュマロみたいだ」
ちゅばちゅば、音をたてて吸い上げる。
紫穂は演技で声をあげ続けるうちに、ほんとうに上気してきた。ピンクに染まる紫穂の肌。
「へへ……気分出てきたな?」
(んなわけないでしょ……お芝居よ)
「じゃあ、まんこの方をいじらせてもらうぜ」
「きゃっ」
鹿狩は紫穂の両脚をがばっと開く。
カメラの前にさらされる紫穂の性器。 どうして男たちはこうも女の股間をアップで撮りたがるのだろう。
紫穂が知る限り、女性器はそう美的に優れたものではない。まあ、紫穂のそれは色といい形といいきれいな方だろうが、それでも、紫穂自身、アップでは見たくない。
(肉の穴よ、こんなの。バカじゃないの)
脚を広げさせられ、性器が露出するようポーズを取らされながら、紫穂は醒めていた。もちろん、見た目は身も世もなく恥ずかしがっている態を装っているが。
(あーあ、パパがこの映像見たら、発狂するわね、きっと)
紫穂の父親は警視庁長官の重責にあるエリート警察官僚だ。娘を溺愛してもいる。
(心臓発作とかおこさないでよ、パパ……)
それなりに父親思いの紫穂はそう祈っておく。
「紫穂ちゃんのおまんこ、とてもきれいだよ。さすが10歳だねえ。一桁ならもっとよかったんだけど、うひひ」
鹿狩は紫穂の股間を指で閉じたり開いたりして、その内部の肉の色合いや感触を楽しんでいた。
「ああ、美少女のツルまんこ、たまんね!」
鹿狩は紫穂の股間に顔を埋め、舌をはわせる。
クリトリスの包皮を剥き、突起をしゃぶり、尿道口を吸い、膣口に舌を挿し込む。それを上下往復。すごい速度で繰り返す。
「うはっ! うめえ! このまんこ肉、ぷりぷりしててっ! たまらねえ!」
鹿狩から舌から流れ込んでくる下卑た歓喜に紫穂は心底うんざりする。
技巧もへったくれもなく、ただ、性器をなめしゃぶりたいという欲求だけをぶつけてくる。一方的な陵辱だ。それでも、紫穂は感じて見せなければならない。拷問である。
「んっ……やっ……やだぁっ……そんなとこ……っ!」
かわいく鳴いてみせる紫穂。
「はあはあ、これ、処女膜だね。紫穂ちゃん、処女なんだ。ぼくのために守ってくれてたんだね」
(そんなわけあるはずないでしょうが)
殺意をおぼえる紫穂。だが、その部分にまで鹿狩の舌が届くと、
「やぁん、やんやんやんっ……だめぇっ」
と可愛く悶えて見せなければならない。
もちろん、ちっとも濡れてはいないのだが、鹿狩の大量の唾液で、そこはすでに濡れそぼっているように見える。白濁した汁が紫穂の膣からにじみ出ているのが本気汁っぽい。
「おいしいよ、紫穂ちゃんのおまんこ、クリもちっちゃい……ああ、かわいいよ、食べちゃいたい」
鹿狩はほんとうに紫穂のその肉芽を噛んだ。
「いぎっ!」
思わず地の声が出てしまう。
「クリちゃん、強くされるのがいいのか? そうなんだろ? ああ?」
(痛いにきまってるでしょ、バカ!)
紫穂は小声でなじるが、鹿狩はもはや自分の世界に入り込んでしまっていた。
「もっともっとしてやるぞっ! うらうらっ!
さらにきゅっとクリトリスをひねる。
(いっ!)
紫穂はぎりっと奥歯を噛みしめ悲鳴をこらえる。
勝ち誇ったような表情で鹿狩が紫穂を見下ろす。
「おまえ……おれの指と舌でメロメロじゃねえか?」
(これはお芝居でしょ……なに自信つけてんのよ)
だが、紫穂の演技を自分のテクニックによるものだと信じ込んでいる鹿狩にはそのささやきは通じない。
「おまえ強くされるのが好きなんだろ? マゾだな? マゾなんだよ、おまえは」
むしろ正反対なのだが、そこまで紫穂も自分の性癖をつまびらかにする趣味はない。
それより何とか拘束具を外させなければ――
また、鹿狩を増長させることで、他の二人との亀裂を大きくしなければ――
「おらっ、紫穂ちゃん、手マンでイかせてやんぜ、おらっおらっ!」
濡れてもいない膣に強引に指を入れてくる。唾液だけはたっぷりと注ぎ込まれているから、潤滑剤がないわけではないが、乱暴な鹿狩の愛撫は痛みしかもたらさない。
(いっ、いたいっ! もうちょっと優しくできないの?)
「るせえな。中がいいんだろ? おまんこの中ぁ、強くこすられるとたまんねえんだろ?」
(よくなんかないわよ、痛いだけ……もぉっ!)
「うっ、あっ! いっ……いいっ! オジサン、いいよぉっ!」
痛みをこらえて、感じているふりを続ける紫穂。
「ほらっ、やっぱりいいんじゃねえか、この変態マゾガキ! もっとしてやるっ!」
鹿狩は段取りさえ忘れて、紫穂を「感じさせる」ことに夢中になっている。
「ああっ! あんっ! 中……っ! なかっ! こすられて……っ! お指が、いいのッ!」
紫穂は腰をひくつかせ、膣を締めあげる。指を動かさせないように牽制しての動きだが、鹿狩は紫穂がアクメに達していると勘違いして、さらに強く指を抜き差ししようとする。
(痛っ! ほんっとにいたぁ……っ! もうやだコイツっ!)
紫穂はこの行為をやめさせるためには「イク」しかないと判断。
「ああっ! あんっ! ぃくっ! いくぅっ! いっちゃうううっ!」
ガクガクと身体を震わせ、達したかのように虚空を見つめる。身体から力を抜いて、ぐったりとする。
「……っはは」
鹿狩が紫穂の中から指を抜き、自慢たらしくカメラにつきつけた。指についているのは鹿狩の唾液と、紫穂の血液だ。どうやら膜の一部が裂けたらしい。
「紫穂ちゃん、初めてイッちゃいました……ってか?」
「やるじゃねえか」
朝川がアクセス数をチェックしながら感心したように言う。伊藤は不満そうに、
「……けっ」
と吐き捨てる。