「せやからっ! 薫と紫穂のとこに連れてけってゆうてんの!」
柳眉を逆立てる野上葵。だが、その姿勢はその表情や語勢ほど勇ましくはない。
手首と足首を結わえられ、身動きもできない状態だ。冷たい倉庫の床に転がされてどれくらい経つだろう。
超級7(レベルセブン)のテレポーターたる葵にしてみれば、何のことはない縛めだが、今は違う。E−ECMのためにその能力を封じられ、いや、違う方向にねじ曲げられていた。
最初、脱出するためにテレポートを行なったとき、何が起こったか――スカートが消えたのだ。
能力の誤動作――だが、次のテレポートで制服のジャケットが消え、ワイシャツが消えたときに理解した。
葵のテレポート能力は、移動先の座標に自分やその周囲の物体を送り出すことができる。その計算は無意識のうちにおこなっている。その計算結果を歪められているのだ。それも外部から操作される形で。
葵としては自分自身を、もちろん服ごと移動させようとしたのだが、その計算結果が狂わされ、葵の肉体はテレポート対象外にされている――そんな感じなのだ。
しかも、能力を使うたび、それが快感に変換されてしまう。
つまり、葵は自らの能力で気持ちよくなりながらストリップを演じる――そんな状況になっていた。
すでに身につけているのは下着のみ――より正確に言えばメガネと帽子も残っているが、それも転送禁止項目に入っていたらしい。
「メガネと帽子は絶対外させるな、というリクエストでねー」
ゴーグル型のサングラスをかけた男が鼻にかかった声で言う。確か警備員のまとめ役だったはずだ。手には携帯電話。そのブラウザに表示された掲示板に書き込まれたリクエストが葵の運命を決めていく。
「あと縞パン、ポイント高し! ほかの二人にちょっと差をつけたかな? でも、薫と紫穂への書き込みも増えてるし、侮れないよー? がんばらないとね、葵ちゃん」
「なっ、なにゆうてんねんっ! あほっ! 変態!」
葵は罵倒する。京女とはいえ、大阪出身の父親の影響で、言葉はきれいな方ではない。
「こんなん、うまくいくと思うたらあかんで! ウチ、絶対負けへんからな!」
「いやー、たしかにレベル7はすごいよー。でも、きみ、テレポーターでしょ? 戦闘能力ないじゃん」
「テレポーター、なめるなっ!」
戦い方はいくらでもある。倉庫に積まれているコンテナやスクラップなどを飛ばして押しつぶしてもいいし、相手を壁にとじこめることだってできる。
だが、それをしようとすると――
「ぃやっ、あんっ!」
「あーあー、最後の一枚まで、飛んでっちゃったね。おしり丸出しー」
警備隊長が嬉しげに笑う。
「こりゃー楽だわ。全部自分で脱いでくれちゃって。掲示板的には、簡単すぎてツマランという苦情も多いけど。さてー、葵ちゃんのおまんこ――いや関西ふうにいえばオメコかな。みんなに見て貰おうか」
「いやっ! いややっ! あかん! 撮らんといて、撮らんといて!」
おしりをふりたくり、なんとかカメラの視界からのがれようとする。だが、警備隊長は白いヒップをとらえて、固定してしまう。
「ははは、スレンダーなのに、意外にここはムッチリしてるなあ。葵ちゃん、意外とおしり美人になるかもな?」
「いややーっ!」
くわぱ。
「ひーっ!」
広げられたのがわかる。そこにカメラが近づく。
カメラは即時、動画をネットに上げるタイプだ。この瞬間、世界に向けて葵の「おめこ」が発信されたことになる。
(あかん、もぉ、ウチ、よぉお嫁いけへん……)
涙がにじむ。
その恥辱にまみれた表情さえ画面に写しとられてしまっている。
「いやー、きれいなオメコだね−。おしりの穴も全然色素が濃くなってないしー、ちょっと感動してしまうさー」
そんなところまで見られてしまっているのか。
葵は屈辱のあまり嗚咽を漏らしそうになる。
だが、皆本とした約束を思い出す。
『ウチ、初音やナオミちゃんを助け出すまで、絶対くじけへん、泣けへんから!』
『ああ、葵は賢い子だ。信頼してるよ』
『でも……でもな……もしもウチが捕まってもうて……てもうたら……そしたら皆本はん、どないする?』
『もちろん――ほくがすべての責任を持つよ』
その言葉に力づけられて、葵は涙をこらえきる。
だが、男はさらに過酷な行為を葵に対して為そうとしていた。
「みんな、葵ちゃんのケツの穴に興味津々だとよ。まずはアナルをほじってみてほしいとさ」
「えええっ!? ウソ!? なんでなん! 他のトコ、まだなんもしてへんやん! む、胸とか」
「葵ちゃんの胸は将来にわたって発育の兆しがないからスルー、というのが掲示板の大勢のようだな」
「な、なんやてぇ!?」
ついエキサイトしてしまう葵。
「ウチかて、いつかはなあ……いつかは」
言いつつむなしさがつのる。
「さて、おしりを虐めさせてもらうとするか」
葵のアナル調教の開始である。