ビデオ屋本舗(1)

妖精たちのシエスタ(仮題)

 

 ジャグジーから上がったふたりは、素肌にバスローブをまとい、髪にバスタオルを巻いて、寝室に移動した。寝室といっても、並の一軒家のリビング以上の広さだ。ベッドはツインだが、ひとつのベッドの大きさがキングサイズと来ている。おそらく、金持ち外人向けの部屋なのだろう。

 飲み物はキッチンから知世が運んで来た。長期滞在を想定しているのか、このスイートにはキッチンもあるのだ。汗をかいたグラスに冷たいレモネード。驚いたことに、おれの分まであった。それも、撮影しながらでも飲みやすいようにスクイーズボトルに入れて――これは、さくらがおれに気を遣うことのないように、という知世の布石だろう。

 ほんのわずかしか接していないが、さくらという少女は「自分たちだけ楽しむ」ことに耐えられないタイプらしい。お弁当を忘れてきた友達には自分のおかずを分けてあげずにいられない、そんな性格なのだ。

 だから、知世は、さくらが安心できるよう、おれの分も用意したのだ。それが、おれに対する厚意ではないこともわかっている。知世はおれを道具として使い切る気だ。

 それはそれで望むところだ。おれは使われるのは嫌いではない。使い手が十分有能であれば、の話だが。

 知世とさくらは、ベッドサイドのチェアにならんで座りながら、おしゃべりに興じていた。話題は学校の友達のことや家族についてのようだ。こうしていると、ただの仲のいい小学生の女の子たちにしか見えない。バスルームでの濃厚なラブシーンが夢のように思える。

「ゆきとさんが」

 とか

「りーくんが」

 とか

「おにーちゃんとおとーさんが」

 とか、話題を提供するのはほとんどさくらのほうだ。知世はあいづちをうったり、微笑んだりして、徹底して聞き役にまわっている。さくらの話を聞くのが楽しくてしょうがない様子だ。

 たしかに、さくらがしゃべっているところをみるのは心がなごむ。屈託のない笑顔、素直な喜怒哀楽、といって、けっして他人を不愉快にすることはない真摯な物腰。この子の性格には歪んだところがすこしもない。理想的な「いい子」だ。

 知世がさくらを愛しているのは間違いない。それはカメラのレンズを通してもはっきりとわかる。身も世もないほどに焦がれている。

 だが、さくらの方はどうだろう。むろん、知世に好意をもっている。それは確実だろう。だが、それは友情の濃密なもの、ではないのか。だれからも好かれ、だれとでも仲良くなれる。そんなさくらにとっても、知世はたぶん一番の友達だろう。それが高じて性的な関係にまで踏み込んでしまったのかもしれない。

 しかし、知世にとってのさくらは「唯一」なのだ。

 比較対象のない存在。

 きっとそうだ。

 知世は幸福そうだ。唯一無二の存在と愛を交わす存在になって。

 だが、不安も感じているのだろう。知世は自分がさくらにとっての唯一ではないことを知っている。一番は、なにかのきっかけで二番に、三番になることもあるのだ。

 ――そのためにおれを雇ったのか?

 ふと疑念が首をもたげる。この映像をネタに、知世はさくらを脅そうとしているのではないか――? 関係を維持するための武器とするのではないか?

 撮ったものがどう使われようが知ったことではない。金さえもらえば、べつにかまわない。だが、今回は、そうであってほしくないと思う。

 おれとしたことが、今回は入れ込みぎみだ。

 無理もないだろう。何年に一度、巡り会えるかどうかという最高の被写体がふたり同時に現れ、そのからみが撮れるというのだ。

 特別な仕事にしたい、という欲求が首をもたげるのはどうしようもないことだ。

 おれは祈りに似た想いを抱きつつ、カメラを回し続ける。

 

 ふたりはひとつのチェアに並んですわり、手を握りあっていた。

 驚いたことに、ちっとも窮屈そうにみえない。それだけ、二人の身体は、細く、小さいのだ。

 ゆっくりと知世が唇を寄せてゆく。

 さくらは眼を閉じた。

 一瞬訪れた日常は溶けさり、非日常の時間が再開する。

 触れあう唇と唇。からまる指と指。そして、なかば自然にはだけたバスローブの下から現れた二組の乳首が接触する。

 合間に睦言をつぶやきつつ、たがいに唇を押しつけ、舌をからめている。

 くちゅくちゅ、音をたてながら、唾液を交換しあっている。

「さくらちゃんの乳首……きれい」

 乳房の前駆たる未発達な萌芽に、知世は指をはわせた。

 ピンク色の楕円を指先でなぞる。その中心の突起には触れぬようにしつつ、さくらの反応をうかがう。

「あ……あ……知世ちゃん……そこ」

 たえがたいもどかしさが少女の性感を加速させる。

「そこ……吸って……知世ちゃん、おねがい」

 ぷっくりとふくらんださくらの乳首を、知世は尊いもののようにうやうやしく口にふくむ。

 すぐかたわらのベッドに、ふたりは重なり合って倒れこむ。

 知世はさくらにおおいかぶさるようにして、乳首をなめ、吸っている。

 長い黒髪がさくらの肌の上で広がり、緞帳のように上がり下がりする。

「知世ちゃんの髪――きもちいいよ」

 うっとりとした表情でさくらが言う。手をのばし、知世の髪に触れる。

「知世ちゃんの髪、すごくきれいで、大好き」

「ありがとうございます、さくらちゃん。でも、わたくしは――」

 さくらちゃんのすべてが大好きですわ。

 そう、声が聞こえたように思えた。実際には知世は声を発してはいない。さくらの平らな胸に舌を這わせているだけだ。

「あっ、あっ……知世ちゃん……」

「こおんなに乳首が大きくなって、さくらちゃん、すてきですわ」

 さくらんぼを指で弾く。

「ほえっ、知世ちゃん、それ、だめ」

「ここが?」

 つまむ。

「それとも――ほほは?」

 軽くくわえて引っ張る。

 左右の乳首を責められて、さくらは美しい肋骨のかたちをみせつつあえぐ。

 人間の身体はこれほどまでに奇麗なのか。あらためて少女たちのかたちに魅せられる。

「さくらちゃんの一番きれいなところは、でも、ほかにあるんですのよ」

 おれの心を読んでいるのか、知世は小悪魔のように笑う。そうだ。おれは自分の意志でカメラを回しているわけではない。これは、知世のシャシンなのだ。

 おれは知世の操縦で、彼女の演出プランに沿って、ただ撮っているだけだ。だから、知世がおれの心を読めるのは不思議でもなんでもない。

「さあ、さくらちゃんのココ、監督さんに撮ってもらいましょうね」

 知世がさくらの脚を開かせていく。同時におれを見た。優しくほほ笑む。おれはベッドに近づいて、カメラのレンズでさくらの股間を狙う。

「つるつるのさくらちゃんのワレメ……いつ見てもかわいいですわ」

 ほんとうだ。さくらという少女の股間はまったく色素の沈着のないままの聖なる色彩を保っていた。

 白い太ももの合間に咲いたピンク色の花びら。

 ワレメを知世の指が開いて、その奥の粘膜の襞さえはっきり見て取れる。

 なんという色合いだろう。この年齢の少女にしか許されない清浄さ。

 ルビーのような小さなクリトリスがつやつやと光り、ふたつに分かれた小陰唇が顔をのぞかせている。その奥には、あるのだ。まだだれも侵したことのないさくらの聖域が。

「さくらちゃんの処女膜――映るかしら?」

 広げる。

 残酷なまでに広げる。

「と、知世ちゃん、広げすぎだよぅ」

 うろたえたようなさくらの声。だが、脚を閉じることはしない。膝小僧が震えながらも知世の望みをかなえるかのように、あられもない姿勢を維持している。

「でも、さくらちゃんのココ、小さすぎて、こうしないと奥まで見えないんですもの」

 おれはカメラでさくらを犯した。レンズでその部分を貫くように、すべてを記録する。ぬらぬらと濡れた粘膜のひくつき、その色合い、おさない貝肉の奥の奥まで――

「見えまして? さくらちゃんの――」

 知世がおれに訊いてくる。さらりと自然に。

「そのカメラの解像度ならちゃんと映っているはずですわ。さくらちゃんの処女膜」

 みえる。

 みえている。

 さくらの少女の証し。

 世界でこれほど貴重な膜があるだろうか。

 世にもまれな美少女の純潔のしるし。

 男ならば誰しもがあこがれるだろう。

 やや白っぽいあやかな膜。まんなかに小さな穴。生理が始まれば――さくらはもうそれを迎えているのだろうか?――そこから経血を排出するはずだ。

「興奮されてますわね、監督さん」

 見透かしたように知世が言った。

「さくらちゃんも興奮してますわ」

 その部分をマッサージするように広げたり閉じたりする。

「あ……や……」

 さくらが吐息をもらす。粘膜がよじれ、奥からわきだした滴がとろり、とこぼれ落ちる。

「こんなに潤って」

 ひくつく赤いつぼみに唇を寄せる。広げた部分に舌を這わせる。

 ちゅくる。吸いあげる。

 ちゅぽん。唇をはなす。

 れろん。舌をあてて動かす。

 指をつかって、穴の周辺を刺激する。

「あっ、ああっ! 知世ちゃん、それ、だめぇ」

「どうしてですの? さくらちゃんの此処、こんなに喜んでますのに」

 意地悪く、クリトリスの包皮をむく。さくらのクリトリスは、すでに勃起している。小学生であるとしても、小さな小さな突起だ。

 弾く。

「ほええっ!」

 びくんびくんと腰を跳ね上げる。

「すてきですわ、さくらちゃん」

 知世が唇をなめる。知世だって興奮しているはずなのに、見た目はふだんと変わらない。

 さくらのクリトリスを口に含み、吸い、舌でねぶる。さくらのその部分は知世の唾液とさくら自身の愛液で濡れて光っている。

 さくらが身もだえし、あえぎ続ける。

 匂いさえ。

 さくらの匂いだ。たまらなく蠱惑的な少女の性臭。

 勃つ。抵抗できない。激痛を感じるほど大きくなっている。

 鼓動とともにびくんびくんと揺れている。

 知世が目をあげておれを――おれの股間を見た。

 笑った。

「ねえ、さくらちゃん、そろそろアレ、見たくはありませんか?」

 裸の胸を上下させるさくらに、知世がささやきかける。

「え……」

 さくらが目をあげて、おれを見る。すぐに視線をそらし、顔を赤らめて、ひざを閉じる。

「そんな……だめだよ……」

「だって、さくらちゃんのご希望でしたのよ――本物を見てみたい――さわってみたい――って」

「それは……言ってみただけだもん」

 顔が真っ赤だ。

「いい機会ですわ。男の人のふつうの時のはお父様や桃矢さまのでご存じなのでしょう? 興奮した時の男の人のを観察してみましょうよ」

 知世がさくらの顔を手ではさみ、言い聞かせるように言う。

 さくらは困ったように知世の視線を避け、あろうことかおれに助けを求めるような目を向ける。

 だが、おれは監督の演出にしたがうカメラマンにすぎない。キャストも、やれ、と言われればやる。知世には従うだけの価値がある。

 おれは片手でジッパーを下ろした。本意ではないが、映像としての時系列を守るため、レンズを下に向けておれ自身を撮り、それからさくらに縦パンした。

 あっけにとられたような表情でさくらがおれの股間を見ていた。

 屹立したおとなのペニスだ。たとえ男の家族がいても、「こっち側」を見ることはめったにないはずだ。そりかえるほどに勃起したおれのペニスは亀頭の裏側を誇示しつつ、ぶらついている。

 さくらはおれのモノから目を離せないようだ。不意をつかれたこともあるのだろうが、もともと好奇心旺盛でもあるのだろう。

 ややあってから、きゃっ、叫んで顔を覆った。だが、もう遅い。

「まあ。実物は一段と大きいのですね」

 知世がさくらを抱きかかえながら、感心したように言う。

「じゃあ、さくらちゃんに触らせてあげてくださいね?」

つづく