GOSICK

-囚われの雛鳥は名も識らぬ卵を抱えて眠る-

7.ぎしき 4

 ヴィクトリカは地獄のただ中にいた。

 快楽という苦しみ、喜悦という悲しみ、男たちにいいように弄ばれているというのに、ヴィクトリカの肉体はそれに応えてしまっていた。

 これまでの、ただ一方的な、暴力的な性交ではない。ヴィクトリカの反応を逐次確認しながら、より官能を高める方へと追い立てていく。

 今までは苦痛に耐えればよかった。それはそれで苦しいことだったが、罪の意識はなかった。おのれの心を遮断し、ただただ時間が過ぎるのを待てばよかった。

 だが、今は――

 秘肉を押し広げられ、敏感で無防備な箇所を弄ばれ続けている。

 陰核の包皮を剥かれたあげく、露出した過敏な肉芽を指で、舌でねっちりと刺激される。徐々に充血してきたところを、つままれ、こねくられる。ヴィクトリカがたまらず懇願しても、それが止められることはなかった。

「うぁっ! 厭だっ! やめろぉ……っ! 後生だ……やめてくれ……」

「だめだめ、ヴィクトリカちゃんがクリでイケるようになるまで、やめないよ?」

 男は笑いながら、ヴィクトリカのクリトリスを擦りたて、口に含んでは、舌で転がした。

「あっ! あっ! それ、だめっ! やめて……お願い、やめぇっ! あっ! ああんん……!」

 ヴィクトリカの吐息は弾み、声が甘くなっていく。

 男の舌が蠢き、ヴィクトリカのクリトリスをとろかしていく。鋭敏になっていく一方のヴィクトリカの性感は膣にも変化をもたらしていた。

「へへ、まんこもずいぶん濡れてきたな? 愛液でぐしょぐしょだぜ?」

 男たちが左右からヴィクトリカの性器を広げる。

 くぱあ、と音をたてて広がったヴィクトリカの膣口は今までになく濡れ、赤く充血していた。

「子供みたいなまんこだな……すでに何十本ものチンポをくわえ込んできたとは思えん」

「だが、今日はローションなしでも入りそうだ」

 男の一人がズボンの前をはだける。すでに勃起したペニスが姿をあらわす。

「じゃあ、お先に」

「ああ、さっさと頼むぜ。おれも早くやりたいからな」

 男たちは勝手に順番を決め、ヴィクトリカの意志にはまったく頓着することなく、その部分にペニスをあてがった。

 朦朧としているヴィクトリカだが、侵入された瞬間、思わず声を放っていた。

「おお……今日の具合はいいな。ヌルヌルで奥まですんなり入る」

「ガバガバなのか?」

「いや、狭いんだが半分以上入れたところで吸い込んでくる感覚がある。意外に名器かもな」

 腰を動かしながら男が言う。

「おれたちが仕込んだからだろう」

「かもな。おお……いいぞ……これは」

(また……犯されて……しまった……)

 自分の中に入ってきた違和感にヴィクトリカはぼんやりと思う。嫌悪や恐怖より、諦観が支配していた。

(久城が知れば……きっと軽蔑されるだろうな……日本という国は貞操観念に厳しいらしいし……)

 書物で得た知識だが、日本では婦女子の処女性が重要視され、結婚前に処女を失っているとあばずれと称されるらしい。

(帝国軍人の息子であることに誇りを持つ久城は、よもやわたしを伴侶には選びはしないだろう……)

 わかっていたことだ。最初から。久城と出会った時にすでに汚されていたのだから。

 むろん、最初のうちはそんな感覚はなかった。単なる退屈しのぎ、いいからかいの相手げできたと思っただけだ。

 だが、久城のおかげで様々な事件に巻き込まれ――中にはヴィクトリカの出生に関わることもあったが――危地をともにし、お互いを救い合ううちに――ヴィクトリカは久城に対し「絆」を感じるようになっていた。久城と一緒ならば、自分は凍てついた人形ではなく、あたたかい心を持った「ひと」になれる――そんな気がした。

 久城がヴィクトリカについてどう思っているのか――それは知恵の泉を持つヴィクトリカにもわからない。そのことだけはどんなに思索をめぐらせても答えが出ないのだ。

 あたりまえだ。そんなこと、考える資格さえ自分にはない――ヴィクトリカは、男のペニスに胎内奥までえぐられながら思う。くやしいことに、いつもなら痛いだけ、苦しいだけの行為が、妙に切ない。

(そこを突かれると、おかしく、なってくる……)

 音もいつもと違う。湿った、いやらしい音。ヴィクトリカの性器も興奮し、じゅんじゅんと愛液をしたたらせている。

(いやだ……感じたくない……久城以外の男に犯されて……気持ちよくなるなんて……いやだ……)

 それでも、ヴィクトリカの身体は反応をはじめていた。徹底的に前戯をほどこされ、しかもいつもの一方的なピストン運動ではなく、ヴィクトリカの表情や仕草を観察しながら、複雑に腰使いを変えてくる今日の責めは、女の官能をいやおうなく高めていく。

 全身、汗みずくとなり、白い肌をピンクに火照らせたヴィクトリカは男に奥まで突かれるたびに、甘い声をあげるようになっていた。

「あんっ! あああっ! ひぅっ! あ、あたる……奥に……っ!」

「ずいぶん可愛くなっちまって、まあ……」

 そんなヴィクトリカを見下ろすもう一人の男――ヴィクトリカに挿入している男の相方――は、ヴィクトリカのあごをつかんで、くいと横に向けさせる。

「そのかわいらしい顔を見てたらむらむらしてきたぜ。順番を待ってる間、お口でしてもらおうかな」

 目の前に突きつけられたのは、赤黒い亀頭と反り返った竿だ。

 あわせて、おもに陰嚢から香ってくる牡の体臭。

 えずきそうになるヴィクトリカ。

「な、なにを……させるつもり……なのかね」

「ああ、と。今まではまんこに突っ込むだけだったから、フェラを教えていなかったな。まあ、いい機会だから覚えるといいぜ」

 言いつつ男はヴィクトリカのかわいい鼻をつまむ。

「んっ……んむむむむ……っ!」

 たまらず口をあけたところに男のペニスが迫ってくる。

(ま、まさか、コレを口に含ませるつもりなのか……!?)

 ただでさえおぞましい形と色、そして匂いだ。それに、もともとそこは排泄のための器官ではないのか。

(犯すだけでは飽き足らないというのか……)

 屈辱と絶望にヴィクトリカの心がへし折られる。

(いっそ噛みちぎってやれば――)

 ヴィクトリカは殺されるだろう。だが、それこそ灰色狼の娘にふさわしい最期なのではないか。

「おい、へんなことは考えるなよ。俺のチンポに歯を立ててみろ。あの東洋人の小僧がどうなるか――」

 男は逸物でヴィクトリカの頬を叩きながら言う。その場限りの脅しではないのは、口調の落ち着きぶりからもわかる。

(久城を――)

 傷つけられるのはいやだ。絶対に――

 ヴィクトリカは目をぎゅっと閉じ、そのおぞましき器官を口にくわえた。

「うぶっ……むぅうう」

 涙がにじむ。初めて口にした他人の身体の一部は、生臭く、生理的嫌悪感をもたらす感触だった。

「舌を遣うんだ。好物のキャンディをなめてるつもりでな」

(こんなまずいキャンディがあるものか……)

 それでも、ヴィクトリカは舌を動かし、それを舐める。

「おほぅ! ちっこい舌でチロチロ鈴口を舐められるのは、たまらねえな。おっかなびっくりなところも初々しいしな」

(くっ……)

 ヴィクトリカは手足をいましめられた状態で首を懸命に動かし、男の肉棒を吸った。

 勝手にぽろぽろ涙がこぼれてきた。ただ犯されるだけではなく、自分から必死に相手に奉仕しているのが悔しく、情けなかったのだ。

「おおお、うまくなってきたな、もっと吸い込め。口の中でくちゅくちゅしろ」

「ほう、フェラも気持ちよさそうだな。あとでおれもやってもらうか」

 ヴィクトリカに挿入している男が腰の動きを早めていきながら、楽しげに言う。

「まあ、まずは一発目、出しておくかな」

(あっ……ああ……動きがはやく……っ)

 ピストンが早くなっていくのにともない、ヴィクトリカの意識が白く塗り込められていく。

(だ、だめだ……気持ちよくなっては……はあああああ)

 ずんずんと子宮を突きあげられ、泣きたいような切ない気持ちになってくる。

 背筋にビリビリと電流が流れるような感覚――さらにこみあげてくる快感――

 犯されて、かつてこんな気分になったことはなかった。また、そうなることを恐れてもいた。

(わたしは……わたしはこんな……やつらに……されて……)

 感じてしまっている――

「おい、舌が止まったぞ――まあしょうがないか、こんなアクメ顔じゃ、それどころじゃないんだろ」

 しょうがねえなと呟きながら、男はヴィクトリカの頭をおさえ、強引に喉奥までペニスを突っ込んだ。

「むぶぅ……!?」

「イラマチオだ。ちょっとくるしいかもだが、まんこは気持ちいいだろ? ちょうどあいこだ」

 男はヴィクトリカの口をオナホールのように扱い、ガンガン突きはじめる。

「んふっ! んひぃ……っ!」

 目が裏返る。鼻奥が熱くなり、自らの呼吸音が頭のなかに響く。

 喉は苦しいのだが、下半身の甘い感覚がそれと混ざり合い、名状しがたい震えがおそってくる。

(死ぬ……死んでしまうっ! 久城、助けてくれ……久城、久城、くじょおおおおお……!)

 愛しい少年の面影を思い浮かべる。

「おおおおっ! 締めつけてくる! ヴィクトリカのまんこ! 凄え!」

「喉まんこもたまんねえぜ? 人形みたいなべっぴんがまるで阿呆のようなツラになってやがる!」

 ヴィクトリカは、びくん、びくん、寝台の上ではねる。手足は結わえられているから、腹筋背筋の力によるものだが、大の男ふたりで押さえつけなくてはならないほどの激しさだった。

「子宮が亀頭に吸い付くみたいだ! すげえ!」

「イッてるぜ! こりゃーすげーアクメっぷりだ!」

 ヴィクトリカは真っ白な世界でただはねていた。何も考えられない。ただ、死と快楽のないまぜになった領域にいた。

「出る! まんこに、出すぞ!」

「おれは口の中だ! おあっ!」

 男たちがヴィクトリカの肉体に精子をたたき込む。ヴィクトリカの性器の一番奥で――そして、その内臓を灼きつくさんばかりに――大量の遺伝物質を注ぎ込む。

「うっ!!!!!」

 ヴィクトリカの胎内に広がっていく。熱い、どろどろした、見知らぬ男の精液。

 そしてそれは口中にも大量に放出され、抜かれた直後の勢い余った射精がヴィクトリカの顔を汚した。

「は……あ……はあ……あ」

 ヴィクトリカはなおもイキ続けていた。寝台の上でぴくんぴくんと腰が跳ねるのは無自覚な動きだ。涙とよだれと精液にまみれた顔を天井に向けたまま、子宮に収まりきらなかった精液を膣口から垂れ流しながら、ヴィクトリカは失禁した。