最初の儀式は11歳のときだった。
初潮がきた、その翌週。
ヴィクトリカは父親に初めて呼び出された。愛情も何もない父親だったが、何か声をかけてもらえるのかもしれないと思った。冷笑して返すつもりだった。だが、もしもそれが優しい言葉だったら、と思うと心が疼いた。変な気分だった。恥ずかしく、面はゆく、そして――わずかな期待。
部屋に通されると、そこに父がいた。ブロア侯爵。まともに会ったことはほとんどなかったが、使用人たちや兄を名乗る気弱な少年から断片的な情報は得ており――彼女にはそれで十分だった。
オカルト派の重鎮にしてソヴュール王国の権力のおよそ半分を掌握する大貴族。あとの半分は科学アカデミーが握っている。
灰色狼と呼ばれる異常な知力を持つ種族に興味を持ち、おのが駒にするために灰色狼の娘を拉致、ヴィクトリカを産ませた――そこまでは理解している。
問題はその先だ。ヴィクトリカをどう使うつもりなのか。娘として扱うのか――道具として使うのか――いずれにせよその命令に服するつもりはないが、それでも――心がふるえる。
「これがそうか」
侯爵の第一声はそれだった。
「使えるのか? まあ、これの母親も子供のようであったな――ならば問題あるまい」
そして侯爵は言った。
「儀式を始めよ」
その儀式で、ヴィクトリカは強姦された。
何人もの男たち――オカルト省の役人たち――によってたかって挿入され、射精された。
痛みのあまりヴィクトリカは泣きわめき、それでもまったくゆるされず、中出しされつづけた。
侯爵は酒杯を片手にそれを見物していた。
以来、「排卵日」をねらっての「儀式」が続いている。
目的は新たな「灰色狼」を手に入れるため。むろんヴィクトリカの能力も今後必要になるが、実験材料は多いにこしたことがない――という理由で、早期の妊娠出産が望まれていた。
だが、ヴィクトリカは妊娠しなかった。排卵は正常に行なわれていることが確認されたのにだ。
そこで、灰色狼の卵子は選択的受精をおこなうのではないかという仮説がたてられた。
ヴィクトリカの母親・コルデリアはブロア侯爵に強姦され、すぐに受胎した。相性があるとしか思えない。
さまざまな人種、体質の男が集められ、ヴィクトリカの膣内に射精した。
だが、それでも今のところ受精したことがない。
いろいろな条件を設定し、今でも儀式は続けられている。
毎月のおつとめだ。これさえこなせば――そして妊娠しなければ――次の儀式までは放置してもらえる。
ヴィクトリカは寝台の上で歯を食いしばった。今日は二人――たったの二人ではないか。目を閉じて楽しいことを考えるのだ。以前はそんな記憶がなく、ただ空虚なだけだったが、今は――久城のことを思えば耐えられる。明日からまた久城と過ごせるのだ。
と、ヴィクトリカの顔を男の一人が――仮面のままで――のぞき込んだ。
「これまでは、精子の質ばかりにこだわっていたがね」
にったりと笑う。
「別の仮説をたててみた。つまり、卵子の側だ。受精する条件が卵子側にあるのではないか? それで、侯爵閣下にお伺いをたててみたところ、いわく、『コルデリアはよがり狂っていた』『強姦されているというのにすさまじいアクメっぷりだった』と。すなわち」
舌なめずりする。
「これからは、ヴィクトリカお嬢様にも気持ちよくなっていただくことにしました」
そして、地獄のような愛撫が開始された。
乳首が優しくこすられている。今まではそんなところを触られることさえまれだった。みな、効率よくヴィクトリカに射精することしか考えていなかった。
指で、舌で愛撫された。
おぞましい。
最初そう思った。
気持ちいいことなどあるはずない。
だが、刺激が蓄積すると、奇妙なことが起こり始めた。
呼吸が速くなり、幾度か鋭い感覚がおそった。
「ようやく乳首が立ってきましたな」
そう言われて気づいた。ヴィクトリカの左右の乳首がいつしかピンと立っていた。そして敏感にもなっていた。
「おっぱいも少しふくらんできましたな――最初の頃からくらべると」
まだ固い膨らみ――乳腺が詰まり、脂肪量の少ない――をもみほぐすようにマッサージしながら、男が言う。その口調からすると、11歳のヴィクトリカを犯した男たちの一人なのかもしれない。今まで、ヴィクトリカは自分を犯した相手について一切興味を持ったことがなかったから、そうなのかどうかわからないが。
それにしても、胸を揉まれる――乱暴にではなく、血のめぐりがよくなるように優しく――のは心地よいことだということに気づかされてしまった。嫌悪感はもちろんある。だが、もともと嫌悪には馴れてしまっていた。恥辱にも。それをやり過ごすためにヴィクトリカの心は摩耗していた。
だから、気持ちいいと感じることを封じることもできなかった。
「あ……や、やめろ……そんなトコ、す、吸うな……ぃやあ……」
乳首を左右同時に吸い上げられ、ヴィクトリカは切ない声を上げてしまった。
「そんな声をあげられたら、張り切ってしまいますな」
「そう、灰色狼とはいえ、考えてみればブロワ侯爵家のご令嬢――その乳房をこう!」
乳首をひときわ強く吸い上げる。
「ひぁっ! いきぃいいいい!」
ぞくぞくする。乳首を吸われると、気持ちいい。ちょっと乱暴なくらいが、よく、なってきた。
「いい顔ですぞ、ヴィクトリカ――侯爵令嬢」
ヴィクトリカを令嬢に格上げすることで、それを自由にできる喜びを強くしているようだ。
「ちっちゃなおっぱいをわれわれが大きくしてあげましょう」
小さなふくらみをまるごと口に含み、唇でバイブレーションを送る。そして、乳房全体をべろべろ舐めながら、乳首に愛撫を収斂させていく。
それをしつこいくらい繰り返すと、ヴィクトリカの乳房が全体的に充血して、すこし大きくなった。
「ほんとだ――大きくなった」
ヴィクトリカは自分の胸を見て、まったくもって不本意なことに、少し嬉しかった。小さいのはやはり悩みだったのだ。
「ね? ここもきもちよくなったでしょう?」
乳首を指で弾かれる。
徹底的に責め抜かれたそこはもう神経の塊のようで――
「あひぃっ!」
ビリリッ!と電気が走り、身体が収縮する。だが、手足を結わえられているので、弱いところをかばうこともできずに、いいように刺激される。
左右から、乳首を転がされ、引っ張られ――
「やっ! やめっ! そこはぁ……あああああん! うあっ! くぅううううううっ!」
ヴィクトリカは天井を仰ぎ、快感と戦った。だが、だめだ。
「おっぱい! だめ! おっぱい、だめえええ!」
小さな爆発が起こる。それがオルガスムスであることに、いかな天才であろうと性的には無知な少女が理解できるはずもなかった。