うたかたの天使たち 外伝

美耶子のお仕事シリーズ Part5

 「びっちな美耶子の一週間!」

 

 

[木曜日]歌番組(ミュージックターミナル)

 今日は歌番組の収録だった。美耶子はすでにCDデビューしている。小学生子役ユニット「WONDER12」のセンターとしてだ。

「WONDER12」は12歳以下の子役アイドルによるユニットで、人気急上昇中だ。

 メンバーは五人。

 宇多方美耶子(十歳)

 恩田望結(九歳)

 八合華音(九歳)

 阿知多愛那(八歳)

 松林月蘭(八歳)

 いずれも映画、ドラマ、CMに引っ張りだこの人気子役たちだ。いちばん年上の美耶子がリーダーである。

 デビュー曲は「はいてる? はいてない!?」で、いきなりのミリオンセラーだった。

 なにしろ、衣装がきわどいミニスカートで、毎回、ランダムで「はいてない」子がいるというワレチラ必至の凶悪仕様だ。

 彼女たちが出演する時間帯だけ、視聴率が跳ね上がるのも理解できる。「今日はどの子のワレメが見られるのか」が気にならない者はいまい。

 それにしても、だ。本番前の「WONDER12」の楽屋はちょっとすごい雰囲気だ。

 広々と楽屋だが、それぞれの子役が四隅と真ん中に散って、交流がない。

 美耶子以外は全員、幼児の頃から子役を始めており、すでにベテランといっていい。プライドも高く、子供らしく一緒に遊ぶ、なんて光景はまず見られない。

 柔軟剤のCMで大ブレイク中の恩田望結はヘッドホンで曲を聴きながら自分のパートの練習をしている。

 美人さんな顔だちの八合華音はメイクの真っ最中だ。子供なんだから、すっぴんでいいのにな。

 ハリウッドデビューを果たした阿知多愛那は、おそらくは次回作とおぼしい英語の台本を悠然とチェックしている。

 一番幼い感じがする少林寺月蘭は、スマホで自分のブログとツイッターを高速更新しているようだ。

 美耶子といえば、楽屋の畳スペースに腹ばいになって宿題と格闘中だ。ある意味、一番小学生らしい。

 子役たち同様、マネージャー同士もピリピリしている。自分のところの子役アイドルがいかに目立つか、しか考えていない。

 その対抗意識は強烈だ。

 その日、番組のディレクターから、「今日のはいてない子」の指名があったときもそうだった。

 楽屋にやってきたディレクターがおれに声をかけてきた。

「今日は美耶子ちゃんでお願いしますよ。はいてない子」

「え、またですか」

 はいてない当番は美耶子に回ってくることが多い。三回に一回くらいのペースだ。

「やー、やっぱり美耶子ちゃんが当番の時が数字が取れるんで」

 そう言われると悪い気はしない。そうそうたる人気子役のなかでも、おれの美耶子が一番人気だと実感する瞬間だからだ。

 だが。

「ちょ、ちょっと、今日はウチの月蘭の番じゃないですか?」

 松林月蘭のマネージャーが異をとなえる。

「はいてない子」は一種の人気バロメーターだから、あまり選ばれないのは困るのだ。ウチのタレントは人気がないです、と言っているようなものだからだ。

 それに「はいてない子」に選ばれると、新規ファンが増えやすい。ネットの掲示板でも「今日のはいてない子」というスレが乱立し、IyahooやDoogleでもトレンドワードに選ばれる。

「いやいや、星蘭ちゃんはこの前はいてなかったでしょ? それより、ウチの望結を」

「待った、華音はこの前の、はいてない、で、ほとんどカメラで抜かれなかったんですよ。今日はお願いしますよ」

「愛那だって、ハリウッドじこみのダンステクで視聴率取りますよ! ぜひ、愛那で!」

 たちまち営業合戦だ。

 ディレクターは困り果ててしまう。いずれも人気子役だから、機嫌を損ねたくはない。現在のテレビ業界は子役ぬきでは成立しないのだ。

 おれはその様子をすこし距離をとって見守っていた。正直、美耶子が他の子を押しのけてまで「はいてない子」をしなくてもいいかな、という醒めた感覚だった。

 だが、大人たちのやりとりはいっかな収束しない。

「じゃーさー」

 ぽつり、美耶子が言う。宿題をしつつ、大人達のやりとりを聞いていたらしい。

「今日は全員『はかない子』でいーんじゃない?」

「えっ」

「えっ」

「えっ」

「えっ」

「……その手があったか」

 とはディレクターだ。

 大丈夫か、こいつら。

 

 

 その日の「WONDER12」のステージ収録が始まった。

 ステージ衣装のミニスカートがひらひらする。見えそうで見えない絶妙のカメラワーク。

 そして、いよいよ盛り上がるソロダンスパートが到来。

『はいてる? はいてない!?』

 というかけ声に続いて、それぞれのスカートをめくって視聴者にアピールするのだ。

 ふだんなら、「はいてない子」以外は、『はいてるよ』という歌詞とともにパンツを見せてくれるのだが、今回は全員はいていないので――

『はいてなあい!』

 恩田望結の9歳まんこが、くぱっ。もちろん無毛の綺麗なワレメで、中は濃いピンク。

『はいてないよぅ』

 八合華音の9歳アナルが、ぬち……っ。男優との本番もこなすお姉さんアナルだ。

『はいてないもん!』

 松林月蘭の8歳クリトリスを、むきっ。小粒だが、しっかり勃起しているのが可愛い。

『はいてません!』

 阿知多愛那にいたっては、8歳M字開脚で、膣奥まで晒して見せた。ハリウッドで黒人男優とのからみも体験した世界レベルのロリまんだ。

 最後はセンターの美耶子だ。するすると立ち位置に移動するとスカートをたくしあげ――

『ごめーん、今日は、はいてます』

 なんと、美耶子はワレメをギリギリ隠す極小サイズのパンティをはいていたのだ。

 だが、それだけではない。

 パンティの布地を押し上げるプラスチックの異物が画面に大写しになったのだ。

 異物からはコードが延び出しており、小刻みに震えていた。バイブだ。

『じつは、はいってまーす!』

 てへぺろしつつ、腰をくねらせる。愛液がパンティの布地にしみこみ、バイブとそれに押し広げられる秘肉をくっきりと浮かび上がらせる。

 そのものズバリより何倍もエロい――それだけではなく、これまでのダンスパフォーマンスをバイブを入れた状態でこなしていたことに驚かされる。

 この日の「WONDER12」の出演シーンは、メンバーの大盤振る舞いおかげで、視聴率は全般的に高かったようだが、瞬間視聴率トップだったのは、美耶子ソロダンスのシーンだった。

 出演後に美耶子は、

「てゆーか、みんな見せてたら、ありがたみないでしょ。一人くらい隠してた方がよくない?」

 とのたまった。

 それにしても、バイブはやりすぎだったかもしれない。ディレクターは始末書を書かされたそうだが、同時に高視聴率のおかげで社長賞も出たらしい。

 ともあれ、この日の放送が大反響となり、「WONDER12」の全国ツアーが決定したのはまた別の話だ。

 

金曜日につづく