晴れた。
朝の駅のホーム。休日の早朝だから、人影はすくない。
空気の冷たさと静けさが心地よい。
「よかったね、おにいちゃん、いい天気で」
くじを引き当てたときの余韻そのままに、苑子が幸せいっぱいの表情で言う。
今日の苑子もモコモコだ。ベージュのダウンジャケットにピンクのマフラー。デニムの巻スカートの裾からは「元気な」としか表現できない太ももが伸び出ている。ニーソックスをはいているので、いわゆる絶対領域を装備しているわけだ。
そんな苑子は、学校指定のナップザックに着替えやお菓子を詰め込んで、両手でおれの手を握って引っ張る。家ではおとなしい苑子がめずらしくハイになっているなあ。
「だって、おにいちゃんとふたりで旅行だもん!」
まるいほっぺが赤いのは外気温が低いからではないらしい。
「もう信じられない! だって、ぜったい無理だって思ってたもん!」
たしかに、苑子はくじ運悪いからな。ジャンケンもババ抜きも弱い。なにしろ思ったことがすぐ顔に出ちまう。
当たりを引いたときの苑子、失神寸前だったし。
「あー、幸せだぁー」
メガネをキラキラさせて苑子が言う。おれのいつものからかい癖が首をもたげる。
「おい、あんまり暴れるとホームに落ちるぞ、ゴムまりちゃん」
「ん、ひどいなあ……でも、今日はいいよ、許してあげる」
よほど機嫌がいいらしい。ニコニコがとまらない。
「あ、電車きた! 指定席だよね!」
温泉地行きの特急列車がホームに入ってくるのを見て、苑子がはしゃいだ声をあげた。
「えーと、六号車九番のB……おにいちゃんはC? 三人がけかあ」
切符を片手に苑子が車内をきょろきょろ見回す。
この時間帯だけに、さすがにガラガラだ。車内にはおれたちのほかにはほとんど客もいない。
三人掛けと二人掛けのシートの二列のうち、おれと苑子は三人掛けの方だった。この空き具合だったら、三つのシートを独占できそうだ。
荷物を網棚に乗せて、コートを脱ぐと、おれはさっそく缶ビールのふたを開ける。
「もう飲むの? まだ朝だよ……」
あきれたように苑子が言う。うるさい、これが旅の醍醐味だ。寒くても、列車に乗ったらビールだ。
車窓が動き出す。苑子は真ん中の座席から窓の外の景色を眺めている。
「いいから、窓際に座れよ」
そうしたら、おれが真ん中と通路側の二席ぶんをいただく。
「え、でも、お客さんがくるかもしれないし」
「こねーよ、こんなにガラガラなんだぜ」
「でも……」
苑子が口ごもる。あー、まじめなやつだなー。
そうこうするうちに次の駅に着く。ぱらぱらと乗ってくるが、たいした数ではない。この駅を出れば、しばらく停車駅はない。
「じゃ、ここ出たら、窓際に移動な」
「うん……」
とか言ってたら、
「そこよろしいですかな」
おっさんが苑子の隣の窓際の席を指さした。うげ、いたよ、客。ついてねーな。
「はい、どうぞ」
むしろほっとした表情で、苑子は膝を引っ込める。それから、あれ?という表情になる。
おっさんは四十代の平凡な中年おやじで、独り旅なのかおおきなザックを抱えていた。無言でおれに目礼すると、奥の座席に腰を落ち着ける。
ザックから本とミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、読書を開始する。うわ、なんか横文字だぞ、インテリか? 見た目はしょぼくれた、どっかで見たよーな――どこにでもいそうな――おっさんなんだけどな。
おれはとりあえずビールを飲み飲み、売店で買ったスポーツ新聞のエッチなページを開いた。風俗店の体験レポートとかが載ってるところだ。いいよなあ、こういう仕事。おれも記者になりたい。
そのページにはその他のエロコンテンツが満載だ。アダルトビデオのレビューにエロ小説――
苑子はおれの手元をのぞきこみ、あきれたように唇をとがらせる。
おれは紙面を苑子によく見えるようにした。
「もお、そんなの見たくないよお」
「ほら、ここ読んでみろ」
おれはエロ小説のコーナーを指で示した。冒険的な美人OLがつぎつぎと濃い体験をするとゆー、よくある一人称小説だ。『あたし、感じちゃったんです、あ、すごい、奥に当たって……』とかあーゆーやつだ。
「やだよ、おにいちゃん」
「おまえだって、この前書いたじゃないか、こーゆーの」
「あれはおにいちゃんが書けって」
眉根をきゅっと絞って、苑子がおれを見上げる。
「おまえもノリノリだったろ、初めて最後までお話が書けたって」
「それは……そうだけど」
物語を書くのが好きな苑子だが、これまでは構想がふくらみすぎて、途中で挫折ばかりしていた。それをおれが指導して、自分で体験したことを書くようにさせたところ、短いながらも小説を完成させることができるようになったのだ。
エロ小説だが。
だが、その訓練がきいたのか、童話でもそこそこのものが書けるようになったのだから、やっぱりおれの指導は正しい。
「今回のテーマは、そうだな、紀行文だな」
「きこうぶん?」
「旅行記だよ。こんどの旅行を題材に一本書け」
「それなら……」
苑子がやる気になったようだ。
「じゃあ、さっそく」
「え」
おれは苑子の肩を抱き寄せた。そのまま手を下に滑らせて、苑子の胸をもむ。
「やん」
スポーツ新聞のエロ記事に催すなんて、おれって若いなあ。
「となり、ひといるよ」
苑子が必死でささやく。ばれなきゃいーんだろ?
おれは脱いだコートを苑子にかけてやる。いかにも寒がりの女の子に気をつかってやってるふうに。
むろん、それはほかのやつの視線を遮断するためだ。
コートの下で、おれは手を動かした。
ふわふわであったかい苑子のおっぱいをモミモミする。
「ふぁう、く、くすぐったいよ」
小学高学年の女の子の胸は、大人のとはちがう。どんなに柔らかくても、芯がある感じだ。
この年頃だけに与えられた甘酸っぱい未成熟ボディ。
それをおれの手は存分に味わっている。
セーターの上から味わった感触が消えないうちに、さらなる感動をもとめておれは手を動かす。
セーターのなかに手をもぐりこませ、じかにさわさわする。
ぺと。
ちょっと汗をかいた苑子の肌に掌が吸いつく。
たまんねえ。最高の手触りだ。子供の肌って、どうしてこんな――
「こんなの旅行記に、か、書けないよう」
「そんなことねーよ」
おれは苑子の乳首をクリクリしながら言った。ブラジャー、そろそろしたほうがいいんだけどな。でも、すぐ生乳が触れるというのも捨て難い。
苑子が身体を堅くする。乳首も固くなってきたけど。つまんで、ひっぱってみる。
「あっ、あっ……だめ、おにいちゃん、声、でる……」
なんだよ、胸をもんだだけで、そんなに乱れるわけ? もっとしちゃおう、うり、うりうり。
「んぅう〜」
苑子がおでこをおれの胸に押し当ててくる。熱いな。汗もかいてる。
う〜、おでこにチュウしてえ……。
外見からもはっきりわかるくらい、苑子のセーターの胸の部分が動いている。おれの手の動きなわけだが。ひとに見られたらさすがにまずい感じだが、幸い、窓際のおっさんは洋書を読みふけっている。
くそ、いっそ、寝入ってくれたら、もっといろいろできるんだが。
ま、いまでもいろいろしちゃうけどね。
おれは、右手を苑子のセーターから出して、下に移動させた。
太ももをさわる。絶対領域ばんざい。
するっと、内股に手をしのばせる。
あったけえー。むちむちー。小学生ならではの高めの体温。
「だめ……だよぉ」
赤い顔して苑子のやつ、おれの手をぴったりはさむ。
それ以上、奥へ侵入させないつもりか。
ふふん、あまいぜ。
おれは苑子の腿の肉をつまんで、マッサージを開始。
「ひぅ……やっ」
腿の力がゆるまる。その隙にスカートの中に手をもぐりこませる。
指先がパンツに到達。木綿の手触り。ふにふにの苑子のおまんまんの感触だ。
「おにいちゃん……いけないよ……ここじゃ」
スカートを手で押さえながら、苑子がささやきかける。隣のおやじのことを気にしてるみたいだが――大丈夫。イヤホンで音楽を聞きながら読書中だ。
「おれにもたれて、寝たふりしてろ」
パンツごしに苑子のお股をくりくりしながら、おれは言った。
苑子はうなずいて、おれに身体をあずける。
あきらめたらしく、脚をゆるやかに開いている。よしよし、これで存分にいじくれるってもんだ。
おれは苑子のスカートに手を突っ込んで、大胆に指を動かした。そうするとスカートがめくり上がってしまうので、すそは苑子が押さえている。うーん。他人に見とがめられたら、即刻タイホされかねないな、時節柄。
でも、これは愛の行為だからいいのだ。
パンツの生地がしっとりしてきた。苑子のやつ、ぴくんぴくん、腿を震わせてやがるし。声を我慢してるのか、呼吸があらい。
よしよし、じかに触ってあげよう。
パンツの股布を引っ張って、空間をつくる。苑子もわずかにおしりをあげて協力。ナイスなパートナーシップだ。
ゆるんだ下着のすきまに指をしのばせる。
「ん……っ」
さすがに声をもらす苑子。ぴくん、と隣のおっさんの肩がうごく。横目でこちらを伺う気配。おれも薄目を閉じて、寝たふり。スカートに突っ込んだ手はコートで隠している。いや、けっこう不自然な姿勢だから、気をつけて見られるとばれちまうが、ラッキー、すぐにおっさんは読書に戻ったようだ。
指の動き再開。苑子の大事な部分をこちょこちょ。
「……んぅ」
苑子の鼻がちいさく鳴る。小鼻がひらいて、興奮してる。苑子も、隣のおっさんに気づかれたらどうしよう、などと思ってるのだろう。スリル、スリル。
濡れてきたし。
無毛のツルツルまんこに中指を入れる。ぬるぬるの隘路がすごく熱い。ざらざらの襞を指の腹で擦りつつ、親指でクリトリスを刺激してやる。
「んふぅー、んふっ」
苑子め、鼻息が睦声ギリギリだ。さすがにやべーな。
指への締めつけも心地よく、クリも固くとがってきたのがわかる。
苑子のやつ、できあがっちまった。
おれの股間もそうとうやばい。
こりゃあ、トイレにでも連れこんで、一発やるか――
いや、この車両にはトイレがねえ。何両も歩くわけにもいかねえし。
おれは、苑子の耳元にささやきかけた。
「しゃぶれ」
「え……ここで?」
さすがにおどろいたようで、メガネの奥で目を大きくする。
「急げ――上からコートかぶせりゃわかんねえって」
「めちゃくちゃだよ、おにいちゃん」
まったく、おれも同感だが、男の生理はそれを我慢できないのだ。
おれの股間にかぶさるように苑子の姿勢をかえさせ、コートをかぶせる。いかにもひざ枕で本格的に寝入ったかのように。
おれの命令に従い、苑子はおれのジーンズのジッパーをおろし、ペニスを引っ張り出す。
「……すごいね、おにいちゃん」
呆れたような声。だが、すぐに、あたたかくて湿った感触が襲ってくる。苑子のお口の感触だ。軟体動物のような舌の動き、唇ではさむ圧迫感。亀頭にあたる口蓋のでこぼこ。
おれが仕込んだとはいえ、巧みなもんだ。ランドセルしょって学校に通ってるとは思えない。
外からは、コートの下でなにが起こっているか、想像もできないだろう。ちゅばちゅば音がするのが怪しいといえばあやしいけど。
コートでおれの股間を隠しているせいで、苑子の腰から下がガードできない。スカートがめくれあがって、白パンと大きめのおしりが見えている。それもパンツずらしたせいで半ケツ状態だ。ちょっとやばいなと思ったけど、苑子のフェラが気持ちよすぎて、スカートを直してやる余裕がない。
おあ、甘噛みが始まった。苑子もノってきたな。もう電車の中って忘れてるぞ。
ちょ……お……すげ……
「毎度ご乗車ありがとうございます。乗車券を拝見いたします」
まずっ! 車掌だ。
さすがにこれはやりすごせねえぞ。
おれは苑子に急を伝えようとしたが、スイッチの入った苑子はフェラをやめない。それどころか、指も使って責め立ててくる。
おいおい、どうしたってんだ。そこまでやれとはいってねえぞ――でち、まう――でるっ!
車掌がそばまでやってくる。
苑子、苑子、お……あっ
「乗車券を」
「おぅ……っ! うあ……」
「お客様?」
射精中に、作り笑いをしつつ、乗車券を取り出した経験が貴殿らにあるか? おれはある。いまがそれだ。
「お連れさまは? ご気分でも?」
おれの股間に突っ伏したまま動かない苑子を見て、車掌がいぶかしげに訊いてくる。つか、吸い上げてるんで。尿道に残った精液をずずっと。
「いや……ねちまったみたいで。こいつのぶんの切符はこれです」
ぴくんぴくんしながら、おれは子供料金の切符を車掌に見せる。不思議そうな顔をしつつ、車掌はおれのぶんと合わせて切符にはさみを入れた。
視線が苑子のめくりあがったスカートに移動する。ひゃあ、半ケツどころか、ほぼ、ケツ丸出しだぞ? 自分で脱いだのか、苑子のやつ?
「こいつ、寝相が悪くて……はは、ガキなもんで、恥ずかしいって感覚がまだないんですよ」
ごまかしつつ、スカートを直してやる。車掌は苦笑をうかべると、仕事にもどって、隣のおっさんから乗車券をうけとる。ほっ。なんとかごまかせたようだ。
「――おい、やりすぎだろ」
車掌が行ったのを見計らい、おれは苑子に注意した。苑子は上気した顔をおれに向けて、不思議そうな表情を浮かべた。メガネが蒸れて曇ってる。むろん、おれが出したものはぜんぶごっくん済みだ。でも、口をあけたら、きっと、ねちゃねちゃがまだ残ってるだろうな。
「だって、おにいちゃんがやれって」
「まあ、そりゃ、そうだが、限度というものが」
「おにいちゃんがエッチなことをやめないから、しかえしだよ」
んーと、そうだっけか。苑子の舌が気持ちよすぎて、おれ自身よく覚えてない。じゃあ、苑子のケツを丸出しにしたのは、おれか。
「でも、うれしかった。おにいちゃんと一緒にいけたから」
なんと、苑子もイッてたのか。どうりで夢中になってたわけだ。
まあ、いいか。苑子も満足したみたいだし、ちょっと、疲れた。目的地に着くまで眠ろう。
苑子の柔らかくてあったかい身体をクッションにして――
楽しい旅になりそうだぜ……ぐひ。
ぐー。
夢をみた。
夢のなかでも苑子のやつ、あえぎっぱなしだった。