うたかたの天使たち 第七話
まふゆのファンタジスタ
真冬の幻奏者

苑子編

 晴れた。

 朝の駅のホーム。休日の早朝だから、人影はすくない。

 空気の冷たさと静けさが心地よい。

「よかったね、おにいちゃん、いい天気で」

 くじを引き当てたときの余韻そのままに、苑子が幸せいっぱいの表情で言う。

 今日の苑子もモコモコだ。ベージュのダウンジャケットにピンクのマフラー。デニムの巻スカートの裾からは「元気な」としか表現できない太ももが伸び出ている。ニーソックスをはいているので、いわゆる絶対領域を装備しているわけだ。

 そんな苑子は、学校指定のナップザックに着替えやお菓子を詰め込んで、両手でおれの手を握って引っ張る。家ではおとなしい苑子がめずらしくハイになっているなあ。

「だって、おにいちゃんとふたりで旅行だもん!」

 まるいほっぺが赤いのは外気温が低いからではないらしい。

「もう信じられない! だって、ぜったい無理だって思ってたもん!」

 たしかに、苑子はくじ運悪いからな。ジャンケンもババ抜きも弱い。なにしろ思ったことがすぐ顔に出ちまう。

 当たりを引いたときの苑子、失神寸前だったし。

「あー、幸せだぁー」

 メガネをキラキラさせて苑子が言う。おれのいつものからかい癖が首をもたげる。

「おい、あんまり暴れるとホームに落ちるぞ、ゴムまりちゃん」

「ん、ひどいなあ……でも、今日はいいよ、許してあげる」

 よほど機嫌がいいらしい。ニコニコがとまらない。

「あ、電車きた! 指定席だよね!」

 温泉地行きの特急列車がホームに入ってくるのを見て、苑子がはしゃいだ声をあげた。

 

「えーと、六号車九番のB……おにいちゃんはC? 三人がけかあ」

 切符を片手に苑子が車内をきょろきょろ見回す。

 この時間帯だけに、さすがにガラガラだ。車内にはおれたちのほかにはほとんど客もいない。

 三人掛けと二人掛けのシートの二列のうち、おれと苑子は三人掛けの方だった。この空き具合だったら、三つのシートを独占できそうだ。

 荷物を網棚に乗せて、コートを脱ぐと、おれはさっそく缶ビールのふたを開ける。

「もう飲むの? まだ朝だよ……」

 あきれたように苑子が言う。うるさい、これが旅の醍醐味だ。寒くても、列車に乗ったらビールだ。

 車窓が動き出す。苑子は真ん中の座席から窓の外の景色を眺めている。

「いいから、窓際に座れよ」

 そうしたら、おれが真ん中と通路側の二席ぶんをいただく。

「え、でも、お客さんがくるかもしれないし」

「こねーよ、こんなにガラガラなんだぜ」

「でも……」

 苑子が口ごもる。あー、まじめなやつだなー。

 そうこうするうちに次の駅に着く。ぱらぱらと乗ってくるが、たいした数ではない。この駅を出れば、しばらく停車駅はない。

「じゃ、ここ出たら、窓際に移動な」

「うん……」

 とか言ってたら、

「そこよろしいですかな」

 おっさんが苑子の隣の窓際の席を指さした。うげ、いたよ、客。ついてねーな。

「はい、どうぞ」

 むしろほっとした表情で、苑子は膝を引っ込める。それから、あれ?という表情になる。

 おっさんは四十代の平凡な中年おやじで、独り旅なのかおおきなザックを抱えていた。無言でおれに目礼すると、奥の座席に腰を落ち着ける。

 ザックから本とミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、読書を開始する。うわ、なんか横文字だぞ、インテリか? 見た目はしょぼくれた、どっかで見たよーな――どこにでもいそうな――おっさんなんだけどな。

 おれはとりあえずビールを飲み飲み、売店で買ったスポーツ新聞のエッチなページを開いた。風俗店の体験レポートとかが載ってるところだ。いいよなあ、こういう仕事。おれも記者になりたい。

 そのページにはその他のエロコンテンツが満載だ。アダルトビデオのレビューにエロ小説――

 苑子はおれの手元をのぞきこみ、あきれたように唇をとがらせる。

 おれは紙面を苑子によく見えるようにした。

「もお、そんなの見たくないよお」

「ほら、ここ読んでみろ」

 おれはエロ小説のコーナーを指で示した。冒険的な美人OLがつぎつぎと濃い体験をするとゆー、よくある一人称小説だ。『あたし、感じちゃったんです、あ、すごい、奥に当たって……』とかあーゆーやつだ。

「やだよ、おにいちゃん」

「おまえだって、この前書いたじゃないか、こーゆーの」

「あれはおにいちゃんが書けって」

 眉根をきゅっと絞って、苑子がおれを見上げる。

「おまえもノリノリだったろ、初めて最後までお話が書けたって」

「それは……そうだけど」

 物語を書くのが好きな苑子だが、これまでは構想がふくらみすぎて、途中で挫折ばかりしていた。それをおれが指導して、自分で体験したことを書くようにさせたところ、短いながらも小説を完成させることができるようになったのだ。

 エロ小説だが。

 だが、その訓練がきいたのか、童話でもそこそこのものが書けるようになったのだから、やっぱりおれの指導は正しい。

「今回のテーマは、そうだな、紀行文だな」

「きこうぶん?」

「旅行記だよ。こんどの旅行を題材に一本書け」

「それなら……」

 苑子がやる気になったようだ。

「じゃあ、さっそく」

「え」

 おれは苑子の肩を抱き寄せた。そのまま手を下に滑らせて、苑子の胸をもむ。

「やん」

 スポーツ新聞のエロ記事に催すなんて、おれって若いなあ。

「となり、ひといるよ」

 苑子が必死でささやく。ばれなきゃいーんだろ?

 おれは脱いだコートを苑子にかけてやる。いかにも寒がりの女の子に気をつかってやってるふうに。

 むろん、それはほかのやつの視線を遮断するためだ。

 コートの下で、おれは手を動かした。

 ふわふわであったかい苑子のおっぱいをモミモミする。

「ふぁう、く、くすぐったいよ」

 小学高学年の女の子の胸は、大人のとはちがう。どんなに柔らかくても、芯がある感じだ。

 この年頃だけに与えられた甘酸っぱい未成熟ボディ。

 それをおれの手は存分に味わっている。

 セーターの上から味わった感触が消えないうちに、さらなる感動をもとめておれは手を動かす。

 セーターのなかに手をもぐりこませ、じかにさわさわする。

 ぺと。

 ちょっと汗をかいた苑子の肌に掌が吸いつく。

 たまんねえ。最高の手触りだ。子供の肌って、どうしてこんな――

「こんなの旅行記に、か、書けないよう」

「そんなことねーよ」

 おれは苑子の乳首をクリクリしながら言った。ブラジャー、そろそろしたほうがいいんだけどな。でも、すぐ生乳が触れるというのも捨て難い。

 苑子が身体を堅くする。乳首も固くなってきたけど。つまんで、ひっぱってみる。

「あっ、あっ……だめ、おにいちゃん、声、でる……」

 なんだよ、胸をもんだだけで、そんなに乱れるわけ? もっとしちゃおう、うり、うりうり。

「んぅう〜」

 苑子がおでこをおれの胸に押し当ててくる。熱いな。汗もかいてる。

 う〜、おでこにチュウしてえ……。

 外見からもはっきりわかるくらい、苑子のセーターの胸の部分が動いている。おれの手の動きなわけだが。ひとに見られたらさすがにまずい感じだが、幸い、窓際のおっさんは洋書を読みふけっている。

 くそ、いっそ、寝入ってくれたら、もっといろいろできるんだが。

 ま、いまでもいろいろしちゃうけどね。

 おれは、右手を苑子のセーターから出して、下に移動させた。

 太ももをさわる。絶対領域ばんざい。

 するっと、内股に手をしのばせる。

 あったけえー。むちむちー。小学生ならではの高めの体温。

「だめ……だよぉ」

 赤い顔して苑子のやつ、おれの手をぴったりはさむ。

 それ以上、奥へ侵入させないつもりか。

 ふふん、あまいぜ。

 おれは苑子の腿の肉をつまんで、マッサージを開始。

「ひぅ……やっ」

 腿の力がゆるまる。その隙にスカートの中に手をもぐりこませる。

 指先がパンツに到達。木綿の手触り。ふにふにの苑子のおまんまんの感触だ。

「おにいちゃん……いけないよ……ここじゃ」

 スカートを手で押さえながら、苑子がささやきかける。隣のおやじのことを気にしてるみたいだが――大丈夫。イヤホンで音楽を聞きながら読書中だ。

「おれにもたれて、寝たふりしてろ」

 パンツごしに苑子のお股をくりくりしながら、おれは言った。

 苑子はうなずいて、おれに身体をあずける。

 あきらめたらしく、脚をゆるやかに開いている。よしよし、これで存分にいじくれるってもんだ。

 おれは苑子のスカートに手を突っ込んで、大胆に指を動かした。そうするとスカートがめくり上がってしまうので、すそは苑子が押さえている。うーん。他人に見とがめられたら、即刻タイホされかねないな、時節柄。

 でも、これは愛の行為だからいいのだ。

 パンツの生地がしっとりしてきた。苑子のやつ、ぴくんぴくん、腿を震わせてやがるし。声を我慢してるのか、呼吸があらい。

 よしよし、じかに触ってあげよう。

 パンツの股布を引っ張って、空間をつくる。苑子もわずかにおしりをあげて協力。ナイスなパートナーシップだ。

 ゆるんだ下着のすきまに指をしのばせる。

「ん……っ」

 さすがに声をもらす苑子。ぴくん、と隣のおっさんの肩がうごく。横目でこちらを伺う気配。おれも薄目を閉じて、寝たふり。スカートに突っ込んだ手はコートで隠している。いや、けっこう不自然な姿勢だから、気をつけて見られるとばれちまうが、ラッキー、すぐにおっさんは読書に戻ったようだ。

 指の動き再開。苑子の大事な部分をこちょこちょ。

「……んぅ」

 苑子の鼻がちいさく鳴る。小鼻がひらいて、興奮してる。苑子も、隣のおっさんに気づかれたらどうしよう、などと思ってるのだろう。スリル、スリル。

 濡れてきたし。

 無毛のツルツルまんこに中指を入れる。ぬるぬるの隘路がすごく熱い。ざらざらの襞を指の腹で擦りつつ、親指でクリトリスを刺激してやる。

「んふぅー、んふっ」

 苑子め、鼻息が睦声ギリギリだ。さすがにやべーな。

 指への締めつけも心地よく、クリも固くとがってきたのがわかる。

 苑子のやつ、できあがっちまった。

 おれの股間もそうとうやばい。

 こりゃあ、トイレにでも連れこんで、一発やるか――

 いや、この車両にはトイレがねえ。何両も歩くわけにもいかねえし。

 おれは、苑子の耳元にささやきかけた。

「しゃぶれ」

「え……ここで?」

 さすがにおどろいたようで、メガネの奥で目を大きくする。

「急げ――上からコートかぶせりゃわかんねえって」

「めちゃくちゃだよ、おにいちゃん」

 まったく、おれも同感だが、男の生理はそれを我慢できないのだ。

 おれの股間にかぶさるように苑子の姿勢をかえさせ、コートをかぶせる。いかにもひざ枕で本格的に寝入ったかのように。

 おれの命令に従い、苑子はおれのジーンズのジッパーをおろし、ペニスを引っ張り出す。

「……すごいね、おにいちゃん」

 呆れたような声。だが、すぐに、あたたかくて湿った感触が襲ってくる。苑子のお口の感触だ。軟体動物のような舌の動き、唇ではさむ圧迫感。亀頭にあたる口蓋のでこぼこ。

 おれが仕込んだとはいえ、巧みなもんだ。ランドセルしょって学校に通ってるとは思えない。

 外からは、コートの下でなにが起こっているか、想像もできないだろう。ちゅばちゅば音がするのが怪しいといえばあやしいけど。

 コートでおれの股間を隠しているせいで、苑子の腰から下がガードできない。スカートがめくれあがって、白パンと大きめのおしりが見えている。それもパンツずらしたせいで半ケツ状態だ。ちょっとやばいなと思ったけど、苑子のフェラが気持ちよすぎて、スカートを直してやる余裕がない。

 おあ、甘噛みが始まった。苑子もノってきたな。もう電車の中って忘れてるぞ。

 ちょ……お……すげ……

「毎度ご乗車ありがとうございます。乗車券を拝見いたします」

 まずっ! 車掌だ。

 さすがにこれはやりすごせねえぞ。

 おれは苑子に急を伝えようとしたが、スイッチの入った苑子はフェラをやめない。それどころか、指も使って責め立ててくる。

 おいおい、どうしたってんだ。そこまでやれとはいってねえぞ――でち、まう――でるっ!

 車掌がそばまでやってくる。

 苑子、苑子、お……あっ

「乗車券を」

「おぅ……っ! うあ……」

「お客様?」

 射精中に、作り笑いをしつつ、乗車券を取り出した経験が貴殿らにあるか? おれはある。いまがそれだ。

「お連れさまは? ご気分でも?」

 おれの股間に突っ伏したまま動かない苑子を見て、車掌がいぶかしげに訊いてくる。つか、吸い上げてるんで。尿道に残った精液をずずっと。

「いや……ねちまったみたいで。こいつのぶんの切符はこれです」

 ぴくんぴくんしながら、おれは子供料金の切符を車掌に見せる。不思議そうな顔をしつつ、車掌はおれのぶんと合わせて切符にはさみを入れた。

 視線が苑子のめくりあがったスカートに移動する。ひゃあ、半ケツどころか、ほぼ、ケツ丸出しだぞ? 自分で脱いだのか、苑子のやつ?

「こいつ、寝相が悪くて……はは、ガキなもんで、恥ずかしいって感覚がまだないんですよ」

 ごまかしつつ、スカートを直してやる。車掌は苦笑をうかべると、仕事にもどって、隣のおっさんから乗車券をうけとる。ほっ。なんとかごまかせたようだ。

「――おい、やりすぎだろ」

 車掌が行ったのを見計らい、おれは苑子に注意した。苑子は上気した顔をおれに向けて、不思議そうな表情を浮かべた。メガネが蒸れて曇ってる。むろん、おれが出したものはぜんぶごっくん済みだ。でも、口をあけたら、きっと、ねちゃねちゃがまだ残ってるだろうな。

「だって、おにいちゃんがやれって」

「まあ、そりゃ、そうだが、限度というものが」

「おにいちゃんがエッチなことをやめないから、しかえしだよ」

 んーと、そうだっけか。苑子の舌が気持ちよすぎて、おれ自身よく覚えてない。じゃあ、苑子のケツを丸出しにしたのは、おれか。

「でも、うれしかった。おにいちゃんと一緒にいけたから」

 なんと、苑子もイッてたのか。どうりで夢中になってたわけだ。

 まあ、いいか。苑子も満足したみたいだし、ちょっと、疲れた。目的地に着くまで眠ろう。

 苑子の柔らかくてあったかい身体をクッションにして――

 楽しい旅になりそうだぜ……ぐひ。

 ぐー。

 夢をみた。

 夢のなかでも苑子のやつ、あえぎっぱなしだった。

つづく

苑子の手記(1)