うたかたの天使たち 第七話
まふゆのファンタジスタ
真冬の幻奏者

 

 座敷に臨時に照明が設置された。セッティングはサングラス男が黙々とおこなった。まったくもって監督にしたがう助監督の仕事に徹している。

 いまは、レフ板を持って、美弥子の肌に適度に光が当たるように調節している。慣れた手つきだ。

 美弥子は全裸に浴衣を羽織ったまま、布団の上に座らされていた。

「膝を立てて、股を開くのよ」

 恥ずかしいM字開脚のポーズを強要される。

 ビデオカメラを抱えて、桃山園が美弥子の股間をのぞきこむ。

 浴衣ははだけて、太股までむき出しだ。むろん、その奥も、あらわになっている。

 スジ状にふさがった性器がモニターに映し出される。肌色がわずかに濃くなっているだけの少女の聖域である。

「ふふん、生意気いってたわりに、ぜんぜんお子様じゃない――前のオーディションのときから成長してないんじゃない?」

 カメラを上に向ける。美弥子の顔をアップでねらっている。それから、やや下げる。

「ぺったんこのオッパイ――」

 ふたつの乳首が映像として切り取られている。即物的、というしかないカメラワークだ。さすがにフレームが揺れないのはプロのはしくれ、というところか。

「どうして窪塚のやつがこんなガキに入れ込んでるのか、謎よね。もともと、あのドラマって、早熟な妹が兄を誘惑するってのがウリじゃないの。ほんとうは中学生くらいの子が選ばれるはずだったのに」

 言いつつ、また、下半身を撮る。美弥子の膝が震えている。

「あんた、窪塚と寝たんじゃないの? ちがう?」

「そんなこと……するわけない……」

 いつもなら逆上間違いなしの暴言にも、美弥子は耐えている。

「あやしいわね。自分でアソコ、広げてみなさいよ」

「アソコ……?」

「なにとぼけてんのよ、おまんこよ、お、ま、ん、こ」

「えっ」

 股間を撮られるだけでも死ぬほどの恥辱にさらされているのだ。さらに自らの指で、いちばん恥ずかしい場所を広げるなんて……

「できないならいいわ。マスコミに持っていくネタが増えただけですもの、おほほ」

「や、やります。だから……ビデオは撮らないで」

「だめ。これはカメラテストなんだから。あんたのおまんこの色味を、ちゃあんと確認しなきゃ」

 美弥子は歯を食いしばり、嗚咽をこらえながら、両手の人差し指と中指で左右から陰唇をつまむと、ゆっくりと広げてゆく。

 ピンク色の粘膜が、つややかに光りながら、花弁をひらいていく。

 クリトリスが勝手に包皮から飛び出し、尿道口が盛り上がる。小陰唇がぷるんと震えてその奥の膣への入口をのぞかせる。

「まあ、きれいじゃない。さすが小学生ね。ババアだとこの色は出ないわ」

 カメラが接近する。美弥子が呼吸するたびに、花弁の奥が開いたり閉じたりしているところさえ、撮られてしまっている。

「う……く……」

 嗚咽がもれる。美弥子の大きな瞳から涙の玉が転がり落ちる。

「おほほほ。いいわ、次は四つん這いになるのよ」

 桃山園は次のポーズを要求した。

 

「いいわ、いいわよ、丸見えよ、宇多方美弥子ちゃん」

 浴衣をはぎとられ、全裸にされた美弥子は、イヌのように四つん這いになって、尻をかかげるように命じられた。

 美弥子のすべすべのヒップが、男たちの無遠慮な視線にさらされている。

 隠しようのないままに、性器も、肛門も、あらわになっている。

「顔が映らないじゃない。こっちを向いて――そう、笑って見せなさい」

 細かな注文が入る。美弥子は泣き顔をむりに笑顔にかえると、カメラに目線を送った。

「へえ、いい顔できるじゃない。あんた、ヌードモデルの方が向いてるんじゃないの?」

 どんな侮辱的な言葉を投げつけられても美弥子には抗うすべがない。大人の男二人に囲まれ逃げ出しようがない上、すでにのっぴきならない映像も撮られているのだ。エスカレートしていく要求にも応えなくてはならない。

「じゃあ、顔はそのままで、今度はお尻の穴を広げて、ようく見えるようにするのよ」

 美弥子は笑顔を作ったまま、手でおしりの肉をつかむと左右に割った。

 粘膜が引っ張られて形をかえる。

 性器よりはやや濃いめの中身がさらけ出される。

 よく広がる、柔軟性に富んだアヌスである。

「ほほほ、お尻の穴、そんなにおっぴっろげちゃって。こんな大型新人、みたことないわ!」

 カメラのレンズを寄せてゆく。

「もっと、もっと、広げなさいな」

「ああ……はい……」

 美耶子の粘膜がさらに広がる。艶めいた肛門がひくひくする。性器もそれにあわせてうごめく。

「触りたそうね」

「え……」

「おまんこよ。ムズムズするんでしょ?」

 桃山園が美耶子のワレメをアップで映す。

「わかるのよ。あんた、おしりのアナ撮られて、興奮してんでしょ? まんこの奥からおツユが出てきてるわよ?」

「う……うそ」

「うそだと思ったら、触って確かめてみなさいよ」

 美耶子は肛門を広げていた指を下にずらして、おずおずとその部分に触れる。

 ちゅく……

「そ、そんな……」

「おほほっ! あんた、小学校でいったいなんの勉強してるの? 信じられない子ね!」

 美耶子のその部分は赤く充血し、愛液がとろけ出している。

「いいわよ……好きなように触ってみなさいよ――いつもやってんでしょ?」

 昂ぶりを笑みににじませて、桃山園が命じる。

 美耶子の指が動きはじめる。最初は探るように――それから徐々に、大胆に。

 クリトリスの包皮を指の腹でこする。そこを起点にしつつ、小陰唇の内側にも指を往復させる。

 くちゅくちゅと、粘る音が――

「う……うあ……」

 美耶子はくぐもった声で喉を鳴らしながら、自慰行為に突入する。たぶん同級生の誰も知らない快感にのめりこんでいく。

「あ、あっああああっ!」

 懸命な声を放ちながら、おしりを上下に揺すぶる。いやらしい動きだ。

「な……なんて子なの? 調教済みってことかしら……でも、小学生のオナニービデオなら、バカ売れまちがいなしよ」

 桃山園は美耶子の指の動きをカメラで追う。美耶子は自らの痴態を接写されていることに改めて気づく。

「や、あああっ!」

「クリトリスはビンビン、中はぐちょぐちょで、いやぁ、も、ないもんだわ」

 美耶子をレンズと言葉で辱めながら、桃山園は笑う。

「さあ、オナってヌレヌレになったおまんこを、ガバッて開くのよ! お客はあんたのココを見たがってるんだからね! ほら!」

「う……うう……」

 泣きながら、美耶子は性器を広げてゆく。

 粘膜という粘膜があらわになる。湯気が出そうなほどに熱くなった少女の性器が内部の複雑な構造さえカメラに晒されてゆく。

「ほほほっ、そのカメラ度胸だけはほめてあげるわ。ねえ、助監もそう思うでしょ?」

 桃山園は笑いつつ、レフ板をホールドしているサングラス男に同意を求めた。

 サングラスの男は無言だったが、浴衣の股間のあたりがあきらかに突っ張っている。

「へえ、あんた、こんなガキにも勃っちゃうの? あんた、ペド?」

 おとなしいままの自分の股間を一瞬悔しげに見下ろしてから、桃山園は言った。

「めずらしく手際がよかったから、特別にご褒美をあげようかしら」

 美弥子の尻と、男の股間を交互に見る。邪悪な笑みがたちのぼる。

「そうね、やっぱり、ヌードやオナニーだけじゃ弱いわね。話題性からいったらホンバンの方がインパクトあるし……いろんなルートでさばいたら……もうかるじゃない」

 小声でつぶやく――

「決めた。これから、AV撮影よ」

 桃山園は言った。

つづく