うたかたの天使たち 第四話(4b)
人間は好奇心の強い動物である。
それゆえに、文明を作り出し、地上の支配者となったのだ。
また、人間は適応力に優れた動物でもある。
温帯はむろんのこと、熱帯のジャングルから、水の乏しい砂漠、氷に閉ざされた極冠近くでさえ、人間は棲みかとすることができるのだ。それほど、適応力が強いのである。
おれが何を言いたいか、おわかりいただけるだろうか?
つまり、いま、おれが置かれている状況下においても、適応し、かつ、好奇心に衝き動かされるのが人間らしい人間である、ということだ。
なので、おれの指がいろいろと動いてしまうこともまた、人間の優れた資質の発露と言わねばならないのだ。
というわけで。
人類の崇高なる歴史に想いを馳せつつ――というのはウソだが――おれは、苑子のパジャマの前の合わせ目に指をかけた。
手探りでボタンを外す。
ふたつまで外したところで苑子のチェックが入った。
小さな手でおれの指の動きを封じようとする。
ちょっとした小競り合いになる。
おたがい声は出せない。無言の争いだ。
むろん、おれが勝って、手をパジャマの中にすべりこませる。
すべすべのふわふわ。
この年頃の女の子だけが持っている、特別な柔らかさだ。
子供のぺったんこの胸ではない。おとなの発育した乳房でもない。成長途上の、おわんのようなふくらみ。
たっぷり揉みあげるほどのボリュームはない。だが、掌ですっぽり覆うと、確かな量感がある。
苑子が身をよじった。背中を丸めて、顔を布団の中に入れてきた。
表情はわからない。吐息が当たった。
(だめだよ……なにしてるの、おにいちゃん)
怒っている口調ではない。困っている。
おれは苑子の胸をまさぐりながら、囁きかえした。
(さっき、テレビ見てたとき、おまえ、自分から胸をおしつけてきただろ)
(そ、そんなこと、してないよ)
(ウソだね。おまえ、おれに触ってほしかったんだろ? こんなふうに)
乳首をつまんで、ひねってやる。
苑子がおれの袖口をつかんだ。
(や……あっ)
声をこらえている。おれは指に少し力をこめた。
(いっ、痛いよ……おにいちゃん)
(ほんとのことを言わないからだ。触ってほしかったって、認めろ)
くりくりと、乳首をいじめる。
(み、認めるよ……だから)
苑子が懇願するように囁く。
おれは乳首から指を離した。苑子はほっとしたように力を抜く。
その隙に、おれは苑子のパジャマを肩から脱がした。袖に腕を通したままだから、完全に脱がしたわけではないが、胸元は露出している。
おれは、そのふくらみに、直接顔を押し当てた。
(おにいちゃん、だめ……)
(おまえが欲しがったんだぞ)
(だって、お姉ちゃん、起きちゃう)
(じゃあ、しゃべるな)
おれは苑子の肌に舌を這わせた。
少し汗ばんでいる。
舌が乳首を探りあてる。
舐めあげた。
(あ……ひ……)
苑子が身体をまるめてくる。声をこらえているのだ。
唇で乳首をはさんで、強めに吸った。
(やぁっ……は……)
今度は、ふくらみ全体に吸いついてみる。
掃除機の吸いこみ口がふさがった時のような音がした。
(だっ、だめ……)
苑子が慌てる。音を漏らすまいと、かけ布団のずれを直す。
その反応がおもしろくて、おれはわざと乱暴に乳首を舐めた。
舌が肌と触れるたびに、ぴちゃぴちゃ鳴る。
(き、聞こえちゃうよう)
苑子は半べそだ。
息づかいも荒くなっている。
心臓の音が直接聞こえてくる。どきどきどきどき、早鐘を打っている。
指で確かめると、苑子の乳首は左右とも大きく腫れていた。ふくらみ自体が熱を帯びているようだ。思春期の女の子の胸は敏感でデリケートなのだ。ちょっと激しく責めすぎたかもしれない。
潮時かな。今なら、一子ちゃんも目を覚まさないようだし……。