天使たち
第2話 美耶子編

「いちぢくパニック!」の巻

 おれ、小鳥遊一。ちなみに、ことり・ゆういち、という。たかなし・はじめ、じゃないよ。念のため。

 宇多方家は都内にけっこうな邸宅を構える旧家だが、とうに没落しまくっている。当主はすでに亡く、広い屋敷には、十五歳を頭にした五姉妹が寄り添って暮している。その女の子の園に大学一年、ヤリたいさかりのおれが下宿することになったのだから、さあ大変!

 てなわけで、宇多方家に下宿することになったおれだが、家族の面々の反応は様々だった。

 次女の気恵はあからさまに不快感を示した。おれを紹介する一子ちゃんに対して、「本気で赤の他人を住まわせる気かよ?」とキレさえもした。ショートカットでボーイッシュな感じのする女の子だが、性格も男っぽいらしい。以来、おれには口ひとつきかない日々が続いている。中三になりたての十四歳。

 三女の苑子は恥ずかしがり屋らしく、一子ちゃんの影に隠れて、なかなか出てこなかった。だが、おれをちらちら見ては顔を赤らめた。苑子とは赤ん坊のとき以来だから、向こうは覚えていないだろうが、それでも一子ちゃんから聞くなどして、おれのことは知っていたらしい。ちょっとふっくらした小学六年生。

 四女と五女は双子だ。便宜上、四女を美耶子、五女は珠子、としよう。姉妹だから似ているところもあるが、そっくりというわけではない。二卵性なのだろう。

 珠子はお人形のように整った容貌を持つ美少女だ。だが、いるかいないかわからないほど目立たず、めったにしゃべることもない。さらにいえば、霊感が強いらしく、よく不思議な言動をとる。謎多き小学四年生。

 それに対照的に美耶子はガチャガチャした性格で、やたらと元気だ。おれにもすぐになじんだ。おとな顔負けの皮肉屋で、いつもおれをからかって楽しんでいる。だいたい、十近く歳がちがうのに、おれのことを「遊一」と呼び捨てにしやがるもんな。ネコのような大きなツリ目が特徴で、珠子と同じく小学四年生。

 そんな生意気な美耶子が真っ青な顔をして、おれの部屋にやってきたところから、お話は始まる。

 

「いったい、どうしたんだ?」

「……おなか痛い」

 日曜の昼下がり、おれは部屋で惰眠をむさぼっていた。そこにやってきた美耶子が腹痛を訴えてきたわけだ。

「どうした? なんか悪いモンでも食ったのか?」

「し……しらないよ……」

 お腹を押さえながら、美耶子が涙目で言う。まあ、そんなわけはないよな。おれも同じものを食ってるんだし。

「い、一子おねーちゃん、は……?」

 母親がわりの一子ちゃんを探しているようだ。だが、あいにく一子ちゃんは買い物中。まだしばらくは帰ってこないだろう。

 気恵くんも部活の休日練習に参加していて留守。苑子は友達の家に遊びに行っている。珠子はいても役に立たないがまたヘンな霊について、どっかへふらふら外出してしまっている。

 つまり、この家にはいまおれと美耶子しかいないわけだ。

「いたいよぉ……しんじゃうよぉ……」

 美耶子がべそをかく。ふだんは生意気なだけに、こうしおらしくなると痛快でもあるが、かわいそうにもなってくる。

 しょうがないな。

「ちょっと、ここに横になってろ」

 さっきまでおれが寝ていた布団に、美耶子を寝かせた。

 膝をまげて、美耶子は仰向けになる。脚を伸ばすと痛さが増すらしい。

「スカート脱がすぞ」

「え……やだ」

「でないと調べられないだろ?」

「……うん」

 美耶子は脂汗を浮かべながらうなずいた。痛みのあまり、抗がう気力もないのだろう。

 おれは美耶子のスカートを脱がせると、白いおなかを鑑賞する。ちょっとぽっこりしてるかも。

 とうぜん、パンツはお子様用のコットン100%だ。

 おれはロリコンじゃないので、パンツくらい見ても平気だ! へ……へ、平気だもんね。

 美耶子のすべすべのお腹に手をあてて、おれは聞く。

「痛いのは、どこだ? このへんか?」

 盲腸炎だったら、右下腹が痛むはずだ。だが、違うようだ。それに、盲腸炎だったら、高熱を出すから、そうとわかるはずだ。

「じゃあ、ここか?」

 ちょっと上をさわる。そこも違うようだ。

「うーん、じゃ、もっと下かな」

 パンツの上から下腹を撫でる。

「う……っ」

 お、このへんか?

 さらに下を調べてみる。

 柔らかいな、やっぱり――女の子だ。

 おれは美耶子のおまたに指を這わせた。

 小学生のおまたをパンツごしに触るなんて、さすがのおれとしても初めての経験だから、ちょっぴりだけど興奮する。

 ちょっと趣旨がかわっているような気もするが、これはこれで治療行為だ。

「そこ……ちが……ぅよぉ……」

「だが、ここ、割れてるぞ? だから痛いんじゃないか?」

 ワレメのあたりを指でぐりぐり……

「い……いたいのは、そこじゃないよぉ……ゆういちのバカァ」

 美耶子が痛みに顔をゆがめながら抗議する。ごめんごめん。

 ちょっと反省して、まじめに調べることにする。

 どうやら痛いのは、左の下腹あたりらしい。盲腸炎ではないな。と、なると……だ。

「美耶子、おまえ、朝、ちゃんとトイレ行ったか?」

「え……行った……よ」

「大きいの、したか?」

「え……」

「ウンチ出たのか?」

 美耶子は顔をしかめた。

「……してない」

「昨日は?」

「でなかった……」

 なるほど、わかった。

「フンづまりだ」

「う、うそだぁ!」

 美耶子が痛みも忘れて否定の声をあげる。

「子供のころはけっこうあるんだよな。便秘で腹痛を起こすっての」

 おれも覚えがあるし。子供ってのは、たかだかフンづまりで、えらいパニックになりやがるもんだ。

「浣腸すれば、イッパツだ」

「えっ、ええ!?」

 美耶子の大きな目が丸くなる。

 おれは居間から常備薬の箱を持ってきた。中には、子供のいる家庭には必需の「イチヂク」も備わっている。

「さ、これで浣腸しろ」

 イチヂクを渡されて、美耶子は呆然とする。

「で……できないよ、こわいよ」

 本気で怖がっている。まあ、自分で自分に浣腸するってのは、子供にはムリかもな。でも、一子ちゃんはまだ帰ってきそうにないし、美耶子をこのまま放っておくわけにもいかない。

 ここは、一肌ぬぐか。

「しょうがねえな……おれがやってやるよ」

 ニヤニヤ。

 

**

「もっとおしりを高くして、ほら」

 おれは美耶子を布団の上でよつんばいにさせた。その姿勢だと、よけいにお腹が痛いらしく、美耶子はうんうんうなっている。

「パンツずらして……自分でできるか?」

「いちこおねえちゃあん……」

 一子の名を呼ぶが、彼女は買い物に出かけているのだ、留守なのだ。

「しょうがないなあ」

 おれは美耶子のパンツに手をかけた。さすがにどきどきするが、でも、そんなことは言ってられない。

 ずりずりと下げてやると、つるんとしたヒップがあらわれた。

 かわいいおしりの穴が見える。苦痛のためか、きゅっとすぼめられている。

 パンツをそれ以上さげたら、美耶子のアソコも全部見えてしまう。

 なんというか、これってチャンスなんだろうか――?

 脱がしちゃおうか?

   かわいそうなのでやめておく。

   脱がします。