朝早く、おれとまゆは家を出た。

　怖かったからだ。天野夫妻が迎えの車をよこすかもしれない。

　じゃまされたくなかった。おれは、まゆをだれにも渡すつもりはなかった。

　まゆも、おれの言うことに素直にしたがった。遊園地たのしみだね、とくすぐったそうに笑った。

　ホームでも、周囲の目が気になった。例の弁護士や、天野夫妻が現れるのではないかとびくびくした。電車に乗って、やっと少し安心した。

　遊園地には開場前に着いてしまった。開場まで近くの喫茶店で朝食を取りながら時間をつぶした。おれはひどい二日酔いで食欲はまるでなかったが、まゆは大きなトーストにジャムをつけてむしゃむしゃ食べていた。

　開場と同時になかへ入った。休みのせいか、遊園地への人出はものすごかった。おれたちはたちまち人波にのまれてしまった。

「ジェットコースター！」

　まゆが叫ぶように言う。

「まさか、乗りたいのか？」

「当然！　おにいちゃん、乗ろうよお、ねえ！」

　まゆが手を引っ張る。おれは自分の胃袋に相談した。

　だめ。

　胃袋は即答した。

「まゆ、ひとりで乗ってきなさい」

「えー、ひとりじゃやだ」

　けっきょく、つきあわされた。ゆうべ、もうわがままは言わない、と言ったのはうそだったのかと､ちらっと思う。

　まゆは絶叫をあげて楽しんでいた。おれはといえば、口をおさえ、目を白黒させるしかなかった。

「次はねえ、あれにのりたいな」

「はいはい」

「次はこれ！」

「は……はあ」

「こんどはこいつに挑戦だあ！」

「ふあーい」

　まゆの体力はすごかった。おれの体調が万全でも、対抗できなかったろう。

　お昼前にはおれはへばってベンチに横たわっていた。

「だいじょうぶ？　ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな」

　子供はそういうことを反省するもんじゃないよ、と言ってやりたかったが、正直体力の限界を感じていた。

「ねえ、写真とろうよ、おにいちゃん。それなら平気でしょ」

　まゆは、ストリートに屋台を出しているピエロを指差した。どうやら客の写真を撮っては売っているらしい。

「思い出に、ね、写真とろ」

　思い出か。おれはまゆの細い肩を見た。まゆも悟っているのかもしれない。遺しておかなければ消え去ってしまうものがあることを。たとえば、だれかを好きになった強い気持ちさえ、時間とともに薄れてしまうことを。

　まゆがおれの手をとる。おもわず強く握りかえす。

　まゆが振りかえって微笑む。

「だいじょうぶだよ、おにいちゃん。だいじょうぶだから」

　そう繰り返す。なにがだいじょうぶなのだろう。それを聞き返すことにおびえさえ感じている自分に気づき、はずかしくなる。そうだ。まゆと一緒にもっと楽しもう。いまはだれに気兼ねすることはないのだ。

　ふたりで写真を撮った。腕を組んで、まるで恋人同士のように。ポラロイド写真を手にまゆは笑った。

「たからものができたよ。これ、まゆのたからもの」

　おれも笑った。たからものはおまえだよ、まゆ。

　時間の流れかたがどうかしているのだろう。あっと言うまに日が西に傾いてしまった。

　遊びつかれたのか、まゆの眼はとろんとしている。

　駅にむかう人の流れのなかで、おれは思った。

　このまま部屋に戻り、明日を待つのか。天野夫妻のもとにまゆを渡すのか。

　それに耐えられるのか。

　――むりだ。

　そんなことはできない。

　まゆを、どうして手放せようか。

　おれは、遊園地に隣接している高層ホテルの建物を見上げた。かなりの出費にはなるが、あの部屋に帰らないためにはそれは必要な費用だった。

　飛び込みだが、ツインの部屋がとれた。予算からいって、そのへんが精一杯のところだった。スイートだと、へたをすると住んでいる部屋のひと月の家賃なみだ。

　宿泊カードには兄妹であるように記入した。

　部屋は三十七階にあった。まだ新しいホテルだから、内装もきれいだ。

　お泊まりだ、とまゆは喜んでいた。ベッドのスプリングの感触を確かめ、それから窓際へすっとんでいく。

「すごいながめ！」

　窓ガラスに顔をつけ、宵闇に包まれていく街を飽きずに見ている。港が夜とともにライトアップされ、幻想的な景観だった。

「でも、こんなぜいたくして、いいの？」

「子供がそんなこと気にしないの｣

　おれは虚勢を張って言った。

「さあ、メシだ。今晩は張り込むぞ」

　レストランは最上階にあった。窓際に席を用意してもらい、イタリア料理のコースを取った。さすがにもう二日酔いの影響も消えており、おれはワインを口にした。

「飲みすぎちゃだめだよ」

　と、まゆに釘をさされてしまったが。

「あのね、これはこうやって食べるんだよ」

　慣れないテーブルマナーについては、まゆに教えを乞う始末で、面目まるつぶれではあったが、料理は美味く、眺めも最高だった。

「なんかね、ドラマみたいだね」

「そうか？」

「うん。なんかうれしい。ドキドキする」

　まゆは軽く頬を染めて笑った。

　食事がおわり、部屋にもどるためにエレベータに乗った。

　箱のなかはふたりきりで、なぜだか会話がとだえた。

　おれも、話の接ぎ穂がみつけられなかった。まゆも、さっきまでのはしゃぎぶりが嘘のようにだまりこくっている。

　けっきょく、部屋まで無言だった。

　部屋にもどっても、うまく会話はまわらなかった。

　空気がぎくしゃくしている。というか、たがいを意識しているのだ。

　いままでとはちがう。

　アパートの部屋でふたりきりになるのとは質的にちがっている。

　窓の外は夜景。しゃれた調度に、やわらかな間接照明。

　しずまりかえった部屋には、茶の間のテレビのざわめきもない。

　おたがいの鼓動さえ聞こえそうだ。

「あのね、おにいちゃん、先にお風呂はいって」

「……ああ」

　おれは動揺を隠しながら、バスルームに向かった。

　からだを洗いながら、自問する。

　このまま、おれはまゆを抱いてしまうのだろうか。

　許されるのか。

　――わかりきっている。許されるはずがない。

　偽ることはできる。おとならしくふるまい、まゆを子供としてあつかうことは。

　だが、それでいいのか。おれは、それでまゆを愛していると言えるのか。

　なぜ、惚れた女が成人していないからといって、愛の質をかえなければならないのか。

　嘘をつきつづけなければならないのか。

　まゆが拒むならばしかたがない。だが、まゆがもしもそれを受け入れるなら……

　答えがみつからないままおれはバスルームから出た。まゆはベッドに腰掛けていた。

　バスローブ姿のおれを見ると、顔をふせた。

「あいたよ」

「うん」

　まゆはそそくさと立ちあがり、バスルームに消えた。

　衣擦れの、音がする。

　まゆが裸になっている。

　おれはどうしようもなく血がざわめくのを感じていた。

　まゆが浴室で身体を洗っている姿を想像した。

　なにもない胸を指でこすり、そして、股間に指をのばす。

　もしかしたら、という予感に胸をふるわせ、そこを何度も念入りに洗う。

　おもわず、自分のものをしごきたててしまっていた。なにを愚かな、と思いつつも、先走りの粘液が先端を濡らしている。

　間がもたず、冷蔵庫をあけて、ビールを取り出した。不経済だとはわかっているが、どうしようもなかった。飲みながら、夜景を見ていた。

　いま、ほかの部屋でも、こうして相手を待っている男がいるのだろうな、と思うとおかしくなった。

　なんの憂いもなく恋人を抱ける男がうらやましかった。おれは、これから罪を犯すのだ。たぶん、償いようのない罪を。

　背後でドアが開く音がして、窓にバスルームから漏れる光が反射した。

　ふりかえるとまゆがいた。生まれたままの姿だった。

　おれはまゆを抱いてベッドに入った。まゆは抵抗しなかった。こうなることを彼女なりに予測していたのだろう。

「おにいちゃん……」

　濡れた髪を枕にのせて、まゆがおれをみあげている。

「エッチ、するの？」

「ああ。まゆがいいと言うなら」

　おれはまゆの額にはりついた髪を指先でかき分けた。

「いいよ。でも……」

「でも？」

「まゆにできるかなあ？　ね、エッチっておとなにならないとできないんでしょ？」

「わからない。まゆ次第だ。まゆが気持ちよくならなかったら意味がないから」

「気持ちよくなれるのかな？　でも、おにいちゃんが気持ちよかったら、いいや」

　まゆが、にっと笑う。

「しよ、おにいちゃん。ケッコンまではおあずけと思ってたけど、でも……とくべつ」

　とくべつ、の「つ」のかたちにまるまったまゆの唇を、おれはうばった。

　舌を差し入れる。まゆの口のなかをまさぐる。ちっちゃな舌を感じると、それを自分の舌でからめとる。

「んむう……んん」

　まゆが苦しげに鼻をならす。

　おれは唇をいったんはずした。

「これがおとなのキスだよ」

　言うなり、唇をちゅっちゅっと音をたてて吸ってやる。そして、また、唇をあわせて、舌を入れる。今度は予測がついたのか、まゆの舌も迎えうってくる。たがいの舌をあわせ、唾液を交換する。

　あまい。まゆのつばはとても甘かった。夢中でそれを味わう。

「ん、はあ……」

　まゆが大きくため息をつく。

「大人のキスって、疲れるね｣

「まだまだ、こんなもんじゃない」

　おれは、まゆのすべすべの肌を掌で味わった。

　わずかに脂肪が蓄積されているだけの胸元に掌をのせる。

　中指の腹に、突起を感じた。まゆの乳首だ。

　それをゆっくりと指先でこねるようにする。

「んあ、あっ」

　敏感な部分を刺激されて、まゆの声のトーンがあがった。

「まゆはおっぱいが感じるんだ。こんなにちっちゃいのに」

「いまに、大きく、なるもん」

　まゆが抗議口調で言う。

　そうだろう。いつかまゆもおとなになるのだ。

　でも、いまのまゆはおれのものだ。おれだけのものなのだ。

　乳首をいじっているうちに、それがむくむくと大きくなるのを感じた。

「まゆの乳首が立ったぞ。ほら、わかるかい？」

「んん……わかんない」

「まゆのおっぱいが気持ちいい証拠だよ。ほら」

　指で弾いてやる。

「あんっ」

　まゆがのけぞった。

　おれは、まゆの胸に顔をのせ、乳首を口にふくんだ。

　それはたよりない小さな芽のようだった。口のなかでも、実体がよくわからないほどのささやかな尖り。おれは、それを強く吸った。まるでそこからあまい乳が出てくるかのように。

「ああ……ああん」

　まゆがおれの頭を抱きしめた。もっと、とでもいうように、おれの後頭部をかきむしる。

　舌先で乳首をつつきそして舐めあげる。唇でかるくはさんで、左右に振る。

　ぺったんこの胸に、乳首だけがふくらんでいる。

「はあ、はあ、はあ」

　まゆの荒い息とともに、胸が上下する。動悸の音が間近で聞こえる。それはまゆのいのちの音だ。いとおしい、音だ。

　おれは左右の乳首を交互に吸いながら、右手をまゆの腰に伸ばした。

　ぴくん、とまゆの身体が震える。

　おれはかまわず、まゆの腿をなであげ、そして、内側に指をもぐらせた。

「んんっ」

　まゆの股間に指がとどく。

　つるつるの谷間は熱くなっている。亀裂にそって指を動かすと、内部から染みだしているものを感じる。

　指先でこすると、ぬるぬるしている。

「まゆのアソコ、濡れてる」

「ほんと？」

「ああ、まゆはおとなと一緒だ」

「わかんない、そんなの」

　恥ずかしさに耐えかねたのか、まゆがおれを抱きしめてくる。でも、腕が背中までまわらない。まるでサルの赤ちゃんのようにしがみついている。それがかわいくて、さらにまゆのあそこをいじってやる。

「ふあ……あっ！」

　異質な感覚があるのか、まゆは眉をしかめ、そして熱い途切れ途切れの息をもらす。

　いちばん敏感なはずの突起を指でさがす。

　それは確かにあった。まるで、「わたしを触って」と自己主張しているかのように、小さいながらも立派に勃起していた。

「まゆ、クリトリスを触るよ。ここが気持ちいいんだ」

　指先で押しつけるようにすると、曖昧な感覚が閾値を突破したのか、まゆが身体をよじりはじめる。

「んんん……んうう」

　鼻が鳴る。甘い息がもれる。

「ほら、こうすると……」

　指先で芽を掘り起こようにする。包皮が動いて内部をこする。

「うわっ、あっ」

　びっくりしたような声。まゆはたしかに今まで知らなかった快感をおぼえている。

「おにいちゃん、なにしたの？」

「まゆのクリちゃんを触ったんだよ。気持ちいいだろ？」

「うん……でも、なんか、こわいよ」

　まゆが不安そうに言う。その唇をだめおしとばかりに吸いあげる。

「ん……ふうん……」

　まゆの視線がとろんと溶けて、宙に舞う。

「これでも不安か？　おれがいるのに？」

「……こわくないよ。うん、こわくない。おにいちゃんのこと、好きだから……」

「おれも、まゆのこと好きだよ。愛してる。この言葉の意味、わかる？」

「わかるよ。まゆも、愛してるもん、おにいちゃんのこと」

　その言葉は、どこか実体がなく、うわすべりしていた。無理もない。まゆに「人を愛する意味」がわかっているはずがないのだ。それは、失うことを知ってはじめて理解できることなのだから。

　おれはやはり、まゆを騙しているのかもしれなかった。おとなの愛とはこういうものだと言いくるめて、幼い肉体をただむさぼっているだけなのかも。

　そうでないと信じたい。このことは、まゆにとっても価値ある体験なのだと。

　おれは迷いながらも、まゆの股間に顔を移動させた。

　その部分を舐めたい、という欲求に勝てなかったのだ。

　まゆのその部分は、ほんとうに幼かった。発毛はまだその兆しさえない。肌色がほんのり赤みががっただけの亀裂は、脚をかるく広げてさえ、ぴったりと閉ざされている。わずかに飛び出している肉の突起が、そこが性の器であることを示しているだけだ。

　そこをいつかしたように、指でひらいていく。

　ぬちゃり、という湿った音がして、肉の扉がひらいていく。

　あまずっぱい、まゆの秘部のにおいがたちのぼってくる。石鹸のにおいもまざっている。ああ、まゆも予感していたのだ。この部分を、ひらかれて、舐められるであろうことを。だから、いっしょうけんめい、場所もよくわからぬままに石鹸でこすったのだろう。

　いとおしさが胸のうちにかけのぼってくる。

　おれは、まゆのピンク色の粘膜に舌をのばした。

　ふれる。

　粘膜と粘膜が触れると、そこには不思議な電流がながれるにちがいない。キスでも同じような電流が走るが、もっと強い感覚だ。

　おれは舌を通じて、まゆを感じていた。まゆも、股間におれを感じているはずだ。

「あっ、あっ、おにいちゃん……ああー」

　まゆの声が高くなる。おれは舌を動かした。ささやかな膣口をまもるラビアの根元に舌先を入れ、不慣れな洗いかたではとても落としきれなかった恥垢をなめとる。きたないだなんて思わない。その部分がおれによってはじめて清められることに深い満足をおぼえる。

　そして、膣口にかるく舌を差し入れて周辺部をなぞってから、尿道口をさがす。

　ほんとうに肉のくぼみでしかないそこをみつけだし、舌でノックする。

「んくっ、やだ……」

　ここは性感帯ということではないのだろうが、まゆの身体はすべていとおしいのだ。おしっこが出るところでさえ。

　そして、ようやくおれの舌はまゆのクリトリスへとたどりつく。その部分はほんとうにちいさくて、指の刺激によって勃起したといっても、ほんのちょっぴり頭部が顔をのぞかせているにすぎない。

　おれは包皮に指をあてて、クリトリスを露出させると、その先端に舌をつけた。

「うっ、あ！」

　ひきつれたような声をまゆがたてる。

　おれはおいしいまゆのクリをしゃぶりはじめた。

「うう、はあ、はああ、はああん」

　声が高くなっていく。

　子供の声で本格的にあえがれると、股間に大量の血液が流れこんでくるのを自覚した。

　自分の嗜好にふっと疑念が差すが、考えまい。いまはまゆに快感を刻みこむことに集中したい。それがいちばん大切なことだ。

　クリを吸い、かるく歯をたて、痛くしないように気をつかいながら、震動を送ってやる。

　指で確認すると、まゆがすごく濡れてきているのがわかる。入り口の周辺部はもうベトベトだ。中も、びっしょりと汗をかいているような感じだ。

「ああん、ああ、おにいちゃん、こわ……こわいよ……ああ」

　まゆは宙を抱きしめている。眼はうるんでいる。かわいい小鼻がふくらんで、身体がたくさんの酸素を必要としていることを示している。

　入れたい。

　まゆとひとつになりたい。

　おれのペニスが叫んでいた。

　もう充分がまんしてきた。お願いだから、思いを遂げさせてくれ、と。

　まゆの身体も充分に受け入れ態勢をととのえている。

　だが。

　おれは身体の位置をもどし、不安げに自分を抱きしめているまゆを抱き寄せた。

　飢えた仔猫のようにまゆはおれにしがみつく。

　キスをする。すごく自然だ。

　長い時間抱きあってキスをした。心地よかった。ある意味では射精するよりもずっと。

「まゆ、好きだ｣

「わたしも、おにいちゃん。好き。すごく好き｣

　おれは、まゆのあそこに指を当てた。入り口にあわせた中指を少しずつしずめていく。

「ん……あ……はあ」

　まぶたをふせて、まゆがあえぐ。

「まゆのなかに入れていい？　この指よりずっとふといものを」

「オチンチン？」

　ストレートにまゆが訊く。おれは苦笑して、うなずく。

「いいよ。入れて、おにいちゃんの、オチンチン」

「きっと、痛いよ。血が出ちゃうかも｣

「……がまんするもん」

　まゆが唇をとがらせる。

「おにいちゃんに入れてほしいんだもん。そうしないと……」

「そうしないと？」

　まゆは顔をくしゃっとゆがませて、笑った。

「おにいちゃんがまゆのモノにならないもん」

　おれも笑った。おれはまゆを追っかけているつもりで、まゆを手に入れようとしているつもりで、実はそうではなかったのかもしれない。迷っていたのはいつもおれだった。ぐずぐすしていたのもおれだ。そのおれを励まし、なぐさめてくれたのは、まゆだった。

　おれはまゆのモノになりたいのかもしれない。

「まゆ、膝をたてて、脚をひらいて。力をぬいて……そう……」

「はなさないでね。おにいちゃん、まゆをはなさないで」

　さすがに声が震えている。おびえた目でおれをみあげている。その表情を網膜に焼き付けながら、おれはまゆのひらべったいおなかの上に自分を乗せていった。

　入り口に先端をあわせる。

　亀頭の先端から出た粘液と、まゆの愛液とが接触する。

　まだ固さののこるラビアをかきわけて、膣口に狙いをさだめる。

　ああ、こんなにちいさな場所を、おれは犯そうとしている。

　まゆが、ぎゅっと目をつぶって、待っている。

「肩に力が入っているよ、まゆ。ほら」

　手で、薄い胸を撫でてやる。乳首を親指でこねてやると、やん、と笑って身体をねじった。

　その動きにあわせて、おれは前に進んだ。

「あ！」

　まゆが一瞬ずりあがる。

　その身体を抱いて、引き寄せるようにしながら、強引にもぐっていく。まゆの痛みを感じたいと思った。この挿入で、まゆと同じ苦痛を味わいたいと思った。

　なにがが裂けていく。

「かはあっ……あ……あっ」

　咳き込みかけ、口をおおきくひらいたまゆがおれを見あげている。

　その顔は痛みのためかゆがんでいるが、しかし、それでも唇が動いて笑みをかたちづくる。

「入っちゃったね｣

「わかる？」

「うん、わかるよ。おにいちゃんがいっぱいって感じ……」

　まゆの中は、せまくて、熱くて、そして、いとおしかった。

　ペニスを半分以上飲みこんだまゆのあそこは、痛々しいほどに広がっている。

「おにいちゃん……まゆ、だいじょうぶだから、最後までして」

「ああ。まゆの中で出すよ」

　おれは、肉が与える快楽と、その裏側で少女が感じている激痛の両方を自分のものとするために、あえて腰を使いはじめた。

「うっ、うっ、うくっ」

　動くたびにまゆは身体全体をゆるがせ、痙攣的にのけぞる。

　だが、まゆは膣はせまいながらも湿潤で、おれの動きを受容していた。ひだを亀頭に感じる。こすれるような、しめつけられる感じ。まゆの性の器は、その心と同じように優しく豊かだ。

　おれはまゆの身体にのめりこんだ。こんな快感は初めてだった。

「まゆ、まゆ、最高だよ、まゆ……」

「お、おにいちゃん……まゆも……まゆも……うれしいよ……」

　おれとまゆは、いま与えあっている。

　苦痛と快感を交換しあっている。たがいにかけがえのないものを送りあっている。

　おれは、まゆの細い腰を抱きかかえながら、ピストン運動を速めていった。

「うあっ……！」

　おれは叫んでいた。猛烈な速度で精液が尿道をかけあがっていく。それは、こらえることもできずに出口を求め――

「ああっ！　あーっ」

　まゆがえびぞった。その幼い子宮にはじめての射精を受けたショックで、全身の筋肉が緊張し、美しい彫像と変化する。

「は……はあ……」

　まゆが息をはく。

　おれは崩折れるようにその上に身体をあずけた。まゆの顔はおれの胸の下だ。無言でまゆはおれを抱きしめる。

　つながったまま、たがいの鼓動を耳と、性器で確かめながら、おれたちはずっと抱きあっていた。