超世紀莫迦1,000,000アクセス達成記念作品
MA−YU 外伝
待ちなが 或いは まゆのドキドキ面接パニック!

***

 まゆは荒い息をしたまま、白衣の匂いを感じていた。消毒薬のような――良明とはまったく異質な匂いだ。お医者さんみたいだと漠然と思う。

 ふいに恥ずかしさがよみがえってくる。まゆは白衣から顔を離して座りなおす。でも、おしりがべとべとで気持ち悪い。

 と、試験官は立ちあがった。まゆをじっと見下ろしている。

「七瀬さん、うそをつきましたね?」

「え……」

「たしか、あなたは処女だと申告したはずです」

 ファイルを開いて、該当箇所を指で示すようにする。

「ですが、先程のあなたの自慰行為は処女がするには不適切なものでした。指をあんなに出し入れしたら処女膜が傷ついてしまう。ということは、すでにあなたは処女膜を失っているのではないですか?」

 まゆは答えられない。椅子の上で固まっていた。

 試験官は、困ったものだ、という表情を浮かべつつ、口調を少し穏やかにした。

「まあ、もっとも、運動を活発にしていた場合などに処女膜が破れてしまうというケースはままありますし、処女膜がもともとない人もいるようですから、あなたがうそをついたとは限らないかもしれません」

 まゆは試験官を見あげた。そこに救いはあるのだろうか。合格するチャンスは……

 試験官は嘆息する。

「しょうがありませんね。こうなったら、実際に調べてみるしかありません」

「し、らべる?」

 まゆは問い返す。それって、まさか……

「そうですね、その机の上に横になってもらいましょうか」

 試験官は自分が使っていた大型の机を目で示す。

「試験を続ける気があるのなら、早くしてくださいよ」

 まゆはのろのろと立ちあがった。テーブルに片足をかけて、よじのぼる。恥ずかしさはあるが、いまさらという気もする。

 それに――

 まゆの心臓は早鐘を打っている。

 一度は達してしまった身体だが、自分の指による刺激だけでは満腹にはなれない。むしろ、空腹感がつのってしまう。

 まゆは自分の心がわからない。こんなことはすぐにやめるべきだとは思っているのだが、試験に落ちたくないという気持ちと、その気持ちの裏に隠れたもうひとつの『期待』のようなものが胸をふるわせる。

 まゆは横たわった。

 試験官が近づいて、まゆの身体の位置を調整する。

 机の端のほうに腰を移動させられた。脚は投げ出して、膝から下が曲がって床に向かっている。その両脚の間に試験官が入ってきた。まゆは脚を閉じたいと思ったが、試験官はあっさりとその抵抗を封じてしまう。

「勘違いしないように。これは確認ですよ」

 試験官が半ば苦笑じみたものを浮かべて注意する。まゆは赤面する。

「じゃあ、力をぬいてください」

 まゆはそうした。ほんとうにお医者さんみたいだ。サンフジンカ? ぼうっとした頭では適切に漢字に変換されない。産婦人科……だな、よし。漢字の書き取りテストを頭のなかでおこなって、まゆがマルつけをした時に、調査が始まった。

「ふうむ……発毛はまだですか。平均よりも遅いですね」

 試験官はまゆのヴィーナスの丘を至近距離からながめた。

 こんもりとしたふくらみは、さっきの激しい自慰行為の名残か、うっすらと色づいている。

「大陰唇も未発達で、平常時はぴったりと閉じているようですね……」

 指を伸ばし、その入口を左右に開く。

「くっ……」

 まゆが小さく声をあげる。

 試験官の目前に、まゆの秘部が完全に露出させられている。

「たしかに、成熟度からいえば処女のようですね……。むしろ、未熟なくらいです……」

 充血して色が血の色に近づいている花弁を試験官は指でなぞる。それだけで、分泌したものが指にからみつく。

「この濡れかたは、ちょっとわが校の生徒にはふさわしくありませんね……まあ、個人差のあることだからしょうがありませんが」

 試験官はコメントしながら、さらに探索を続けていく。

「ちょっと痛いかもしれませんが、がまんしてください。内部を視認しますから」

 言うなり、まゆの入口のまわりのひだを左右に開いて、膣口を覗きこむ。

「う……」

 まゆは声をこらえている。名前も知らない男に性器を見られているのだから、恥ずかしくないはずがないのだが、じっとしたままだ。

「うーん……暗いな……よく見えない」

 試験官は首をひねった。

「電灯の光だけではだめか。角度がちがうからな」

 ひとりごとのようにつぶやいて、天井を見上げ、それから窓の方に目をやる。

「そうだ。自然光を採用しましょう」

 試験官はつかつかと窓際まで歩き、閉ざされていたカーテンをさっと開いた。まぶしい光が射しこんでくる。

 そのまま、窓も開け放つ。

 まだ春には早い冷たさをはらんだ空気が流れこんでくる。

 入学試験日だというのにボールを打つ音や部員の声が聞こえてくるのは、部活動のさかんな祥英学園らしい。

 その気配はかなり生々しい。というのは、その教室は一階にあって、窓のすぐ外がグラウンドに面しているからだ。

 白いテニスウェア姿の部員たちがボールを追いかけているのがほんの目と鼻の先に見える。

 試験官は満足そうにうなずくと、まゆのところに戻ってきた。そして、脚を持って、ぐりんと回転させる。つまり、窓の方に爪先が向くようにだ。

 陽射しがおなかに当たっている。むろん、脚の間にも、だ。

「せ、先生、外から、見えちゃう……っ」

 相手をどう呼んでいいか一瞬迷ったが、『先生』でまちがいはないだろう。まゆは試験官に訴えかける。

「だいじょうぶですよ。これは単なる検査なんですから。それともきみは、この面接試験が、他人に見られてはいけないようなことだと思っているのですか?」

 淡々と試験官は答え、まゆの抗議を封殺してしまう。そして、自然光をたっぷりと採りいれた教室で、まゆの下半身の検分を再開する。

 大きく開け放たれた窓を外からひょいと覗いたら、すぐそこに女の子が脚を拡げて寝かされているところが見えるだろう。

 しかも、白衣の男に指でいじくられている。

 入口を大きく露出させられ、穴のなかを観察されている。

 まゆは天井を見つめていた。

「うん。これなら見えますね。やっぱり自然光のほうが粘膜の色が正確に判別できてよろしい」

 試験官は満足そうに言い、まゆの身体の内部を細かくチェックしていく。

「ふうむ……やはり、処女膜はありませんね……。だが、それだけで結論は出せないのはさっき言った通りです。実際の反応で男性体験があるかどうかを判断するしかありません」

 おもむろに試験官はまゆの中に指を入れた。

 激しいオナニーの直後だから、内部は充分に潤っている。それでも、大人の指のサイズはまゆをいっぱいにしてしまう。

「ひっ……う……」

 タイツがずりおちかけた脚がぴくぴく動いた。

「ほう……指を締めつけてきますね。これはいけない。処女だったら、こんなふうに筒をコントロールできないはずですよ」

(そんなこと……言われたって……)

 まゆは苦しい呼吸を続けつつ、局部にあたえられる刺激の強さに反応する自分をどうしようもできない。

 指で深いところがいじられている。壁に指が当たって、動いて――気持ちよすぎる。

 どうしても、腰がうねり、括約筋を収縮させてしまう。

「ふむ。触診ではどうもクロなのですが……。七瀬くんがうそつきだとなると、ただちに不合格にしなくてはなりませんね」

「ふ、不合格は、いや……です」

 まゆは腹筋が引きつりそうになるのを意識しながら、なんとか声を出す。

「しかたないな。処女の場合、愛液の味が多少ちがうといいます。味を確認してみましょうか」

「お願い……します……」

「わかりました。あなたも分泌量を増やすよう、努力するんですよ」

 試験官はそう言うと、まゆの縦割れの唇に舌をつけた。

 ピンク色の舌が上下に動いて、湿潤な部分から湧き出るものをすくいとっていく。

 窓の外からは中学生の声とボールが弾む音が聞こえている。日常的なノイズのなかに非日常の――少女の性器がしゃぶられる物音が――違和感なく溶けこんでいる。

「う……あ……」

 まゆはくぐもった声をもらす。舌の動きに、その質感に、意識が収束する。その部分のことしか考えられない。

 たぶん入口に舌が当たっている――うにうにと動いて――少しもぐって――あっ、外れた――どこに――

「ひうっ! くううんっ!」

 まゆは今まで以上に強い刺激を感じて身をよじらせた。手は、トレーナーの上から自分の胸を握りしめている。

 舌が届いたのは、まゆの一番敏感で、かつ、貪欲な場所だった。

「クリトリスが感じるのですか? たしかにここは処女でもエクスタシーを得られる場所ではありますが……。もっと舐めてみましょう」

 包皮を指でうにうにと動かしながら、舌を芽の先端に当てる。わずかに顔をのぞかせた小さな小さな陰核に舌を触れさせ、てろてろと動かす。

「ああっ! あっ! だめっ!」

 思わずまゆは大きな声を出してしまう。教室の外までまゆの声はたぶん漏れている。そのせいか、窓の外の声が一瞬やんだ。

「おやおや、そんな大声を出して。やっぱり処女とは思えませんね」

 試験官は苦笑を浮かべながら、まゆのクリトリスをきゅっとひねる。

 明らかに許容量を超えた刺激の電撃をくらって、まゆは机の上でおしりを激しく上下させた。出る。

「いやあああっ!」

 尿道口が開いて、しぶきが飛んだ。

 それは試験官の白衣にもかかった。

「おやおや、おもらしまでするとは」

 教官は心底あきれたというように肩をすくめた。

「あなたの下半身には慎みというものがないようですね? 七瀬まゆさん」

「そ……そんな……」

 まゆは涙にうるんだ視界で教官をみあげる。

 ここまできて、不合格なのだろうか。

 まゆ自身の受験勉強の日々はむろん、深夜まで働きづめだった良明のがんばりさえ無駄になってしまうのだろうか。

「なんでも……なんでもしますから……落とさないで……くださ……い」

「なんでもする、と言われても、試験は厳正なものですよ。処女でない生徒を祥英の新入生として受け入れることはできません」

 試験官はきっぱりと言い切った。

 まゆの心がうちのめされる。

「ただし」

 試験官が人差し指を立てた。

「面接中に処女を喪失したということであれば、規定はクリアできます。七瀬さんが処女であるかどうかを確認するために性行為をした、ということにすれば。なぜならば、究極的には男性の陰茎を挿入しなければ、処女であるかどうかは確認できないのですからね」

 なんだかよくわからない理屈だ。

「でも……それって……先生と……する……んですよね。それはいいんですか?」

 まゆの質問に、白衣の試験官は自信たっぷりにうなずく。

「むやみな性行為はもちろん風紀を乱す行為ですが、教師が生徒を正しく導く意図をもっておこなうのであれば立派な教育です。正しい性知識をあたえるのはむしろ教師に課せられた義務ですから」

 そんなものなのか――まゆは納得する。そうでもなければ、こんな面接試験がおこなわれるわけがない。

 それよりもなによりも、試験に失敗したくないという気持ちと――身体のもやもやをなんとかしたいという渇望が全身からあふれ出しそうなほどたぎっている。

「最終検査を受けますか? ほんとうにあなたが処女だった場合にはそれを喪失することになりますが」

 まゆはもうあまり何も考えない。ここでやめられない以上、進むしかないではないか。

「検査を……受けます」

 良明のことは心から追い出す――これは良明のためでもあるのだ――