薔薇色の涙
従業員のものらしいロッカーと、椅子とテーブルがあるだけのせまい控え室だ。テーブルの上にはすいがらを突っ込んだ空き缶がいくつか並んでいる。ろくに掃除をしていない感じだ。
「ほら、おとなしくしろよ。おまえだって、入れてほしいんだろ? そんなに濡らしてよお」
タクローがまゆの喉もとに指を入れながらすごむ。
その瞳に狂気のいろを感じて、まゆはだまった。
ヒムロがせわしなくスボンのベルトを外し、ファスナーをおろしている。
トランクスも脱ぐ。もう屹立した若いペニスが天を衝く。まだ細いが、先端は半ば以上むけている。
「おいおい、ヒムロ、気がはやいぜ。まずはまゆちゃんを裸にしてやらないと」
ジェフリーが笑う。
「お、そうだな。おっぱいも見たいしな」
ヒムロが答え、タクローがうなずく。
「さ、服を脱げよ、まゆちゃん」
中学生三人にかこまれて、部屋の外はゲームセンターの喧騒だ。声をだしてもどうにもならない。
まゆの脚が震える。こんな遊びをするんじゃなかった。後悔するが、もう後の祭りだ。
「はやくしろよ」
ヒムロが短気そうな甲高い声でせっつく。
まゆは痙攣的にふるえ、それからのろのろと自分から服を脱ぎだす。下半身はもとより裸だから、スタジアムジャンパーとトレーナー、シャツと脱いでいく。最後の肌着も脱いでしまうと、まゆは丸裸になっていた――靴下と靴はそのままだが。
さむい。まゆは自分の腕で自分を抱きしめた。鳥肌がたつ。ほのかなふくらみの中央にある乳首も萎縮してしまっている。
「ははは、いかにも、小学生だよなあ」
「ほんとだ、この前の女子高生のほうが全然いいよなあ」
「でも、あいつ、まんこ黒かったぜ」
ぎゃははは、と少年たちは笑う。彼らにとって、こんなことは日常のお遊びなのだ。
「さあ、まゆちゃんにはどうしてもらおうかな」
「まず、フェラしてもらおうぜ」
「いきなりか」
ヒムロの提案にジェフリーは愉快そうに言う。
「こいつ、けっこう遊んでそうだし、いいんじゃねえか」
タクローも賛成する。
「じゃ、おれからね」
言いだしっぺの特権とばかりに、ヒムロがまゆの前に立つ。すでに下半身裸だから、ほかの二人よりも有利だ。
「ひざまずいて、おれのチンポをしゃぶりな。やりかたはわかってんだろ」
まゆはためらった。良明のものを口で愛したことはある。が、それはこんな強制ではなかった。快楽のなかで、自然な流れに乗っておこなった行為だった。いま、こうしてみると、男の性器はいかにもグロテスクでみにくかった。こんなものを口にふくむなんて……。
だが。
「とっととやれよ、おらっ!」
ヒムロに髪をつかまれ、むりやりに口許に押しつけられる。
恐怖の水位が口から鼻のあたりまで一気にたかまる。
溺れるのを恐れるかのように、まゆは口腔にそれを受け入れる。
少年の性器はわずかに恥垢の匂いがした。えずきそうになるのをこらえ、まゆは、それに舌をはわせた。
「おっ、おっ、うまいぜ、こいつ……やりなれてるって感じ」
ヒムロがバネのように腰を振りながら、感想を口にした。
「へええ、やっぱ、こいつ、こなれてんだ」
「そりゃそうだ。さっきもおまんこに指二本、すっぽり入ったもんな」
タクローとジェフリーも、ズボンのジッパーをさげて、準備をはじめている。
「んうーっ」
ヒムロのペニスが喉奥まで突きいれられる。吐き気と戦いながら、まゆは舌を動かした。いかせれば、解放される。だとすれば、早く出させたい。
まゆは唇でヒムロのペニスの根元から中ほどまでをしぼりあげるようにしながら、舌で亀頭を刺激した。良明から教わった、彼の好きなやり方だった。それを無意識に使っていた。
「うわー、あっ」
ヒムロが声をあげた。まゆの髪をつかみながら、腰を突き出している。
「気持ちいいぜぇっ、おおーっ」
少年のペニスは良明のそれよりもはるかに敏感なようだった。良明ならば、まゆにしゃぶらせながらも、優しい言葉や愛撫を欠かさなかった。まゆの心と身体のコンディションに気をつかいながら、一緒に気持ちよくなろうとしてくれた。
――かつては、だ。もう、良明はまゆの身体に興味がなくなってしまったのだろうか。ヒムロのペニスの感触から良明のことを思い浮かべ、まゆは胸が切なくなる。
ヒムロには、まゆを気づかう心はまるでなかった。一方的に腰を突きいれ、奥に奥に押しこむようにしてくる。まゆは苦痛と嫌悪のなかで、ただ侵略に耐えていた。
絶頂はいきなりだった。ヒムロはのペニスは予告なく射精していた。口のなかにおさめていながら、ビュッビュッという音が聞こえてきそうなほどの勢いだった。粘膜をただれさせるような苦みがまゆの口腔にひろがる。
「出ちったぜ、すげ〜」
ヒムロが目を白黒させながらつぶやき、それからまゆの髪を掴みなおす。
「おっと、吐き出すなよ。ぜんぶ飲め」
クラスのいじめっ子がする目と同じだ、とまゆは思った。視線をそらすことができない。
舌の上に乗っているこの忌まわしい粘液を吐き出したい。だが、そうしたら、どんな目にあわされるかわからない。
まゆはまぶたを固くとじ、生き物のような――実際に生きているのだ――粘液を喉に送った。苦みがさらにひろがり、内臓が拒絶反応をしめす。だが、それをなんとか押さえつけて――
こく、とまゆの喉仏が上下する。
「へへへ、飲んだぜ、こいつ。すげーぜ」
まゆは命じられるままに精液を飲みほした。身体の内部もすべて犯されたような気がした。もう、引き返せない、そんな気がした。
「よーし、次はおれだ」
巨体をゆするようにして、ジェフリーが言った。