ジャリン戦記 ドリーマー編

最終話

ラ プ ン ツ ェ ル

12

「えっとぉ――ジャリンさぁん……おひさですぅ」

 おれの腕のなかで姿勢を変えないままで――おしりを突き出して壁に手をついたままで――そいつは言った。

「よお。元気だったか?」

 おれは女の髪とうなじをなでてやる。前戯だけじゃねえ後戯も大切だ。

「はいぃ。ジャリンさんも……あいかわらず元気ですねえ」

 子宮にどばどば出したところだしな。まだハマってるし。

「おまえこそ、あいかわらずだな。おまえの妹には世話になったぞ、いろいろと」

「ええと、その……ディーは一途な性格なもので……あっ、でも、いい子なんですよ! あたしとちがって頭いいし、魔法の能力も――」

「おまえ、わかってたろ」

「え、あ? なにがですかぁ?」

 とぼける気か。まったく、こいつは――

「ザシューバのために、おれたちをこの場所まで導いたのは、おまえの考えなんだろう? ディーの人格は、おまえが積極的に作り出したもの だ」

「ディーはいますよぅ。わたしの身体はディーと二人のものですからぁ」

「ザシューバを愛していたディーの遺志を守るため、おまえはディーの人格をつくりだし、ザシューバに仕えた。やつの野望を成就させられる冒 険者が餌につられてやってくるのを張っていたんだ」

「――否定はしませんです」

 メガネをしていないので、まじめな表情になると、ディーと見分けがつかなくなるな――もともと同じ顔だから当然だが。

「あたしも先生を崇拝してましたから。あこがれてたし――好きでした――先生とディーがあたしの人生のすべてだったんです――だから」

「アムリアにかかった呪いを解ける冒険者を探した――」

「ドリーマーについて調べるのなら、必ずベルカーンツの大図書館に来ますからあ……」

「そして、シータの媚薬生成の能力に目をつけて、おれたちと一緒に行動するようになった――」

「でも、図書館のお仕事をくびになったのはほんとですよぉ……」

 ジト目でおれを見る。う。久しぶりだぞ、ジト目。

「そうだったっけかなあ〜」

 ごまかすために腰を前後に動かす。むろん、とっくに回復している。

「ひゃあああ! つっつかないでくださぁい……イッたばかりで、じんじんしてるんですからぁ……!」

 ほう。それはいいことを聞いた。

「それに、あたしは、シータさんじゃなくて――」

「それ以上は言うな」

 ふいにべつの声が割って入った。

「この、ばか姉――封じていたのに、のこのこ出てきやがって」

 女の表情が変わっている。理知的だが冷たい印象。そして激怒している。ディー、か。

「ば、ばかだけど――ばかじゃないもん! ディー、おねえちゃんはねえ、ばかみたいけどばかじゃないんだよぉ」

 ふっと顔つきを変えてエメロンが反論――になってねえな。

「ふん、ひとり生き残っておいて、姉貴づらしないでよ。のうのうだらだら、自堕落に人生を楽しんでたくせに」

「はうはう、そんなことないよぉ、おねえちゃんはバイトばっかりで、ぜんぜん遊びに行ったことないし、服もほとんど持ってないし――」

「挙句のはてには、こんな男にひっかかって、いいようにされてるし――エミィ、あんた失格! あんたの身体はわたしが有意義に使うわ!」

「ひょええ……たまには返して、ね? まだ読みたい本がたくさん残ってるし――ローンも残ってるんだよぉ」

「うるさい! うるさい!」

 うーん。再現フィルムの姉妹の会話とはちょっとイメージが違うな。あれは、ゾーシュライの脚色が入っていたのかも。

「とにかく、ケンカはやめろ」

 言いつつ、腰をいれる。長い距離を使って、出し入れする。入口から奥までを一気にこすり立てる。

「はぅあ!」

「ひぃ!」

 柔硬とりまぜた声がひとつの唇からもれる。

「ジャリンさぁん……すごいですぅ……」

「いい気になるな! この、ケダモノ!」

 おお、反応も反対傾向。

 こりゃ、おもしろい。

 おれはずんずん突いてやる。柔らかいおっぱいも握り締める。

「やぁ……はあ……んぅう」

「この! いいかげんに……うあ!」

 交互にあらわれる、甘いあえぎと抵う気息。

 うーん、これって、ツンデレ? ちがうか。

 にしても、人格が入れ替わるたびに、締める場所が変わるのがおもしれーな。

 エミィは中程で、二か所、ひくひくっと絞ってくる。ディーは入口の抵抗が強い。つまり、変形の三段締めだ。切り替わりのタイミングをは かってピストンすると、実に気持ちいい。

「ひゃあんっ!」

「おのれっ!」

「んにゃあ……っ」

「やめろぉ……!」

「はうはぅ……すごぉいですぅ」

「いいかげんに……うあああっ!」

 これはお得な3Pですね。二人の女をいっぺんに責められる。

「バカ姉貴……なんで、こんな、男に……」

 悔しそうにディーがうめく。

「ザシューバさまは……望み半ばで……なのに――こんな――」

「ふああん……ディー、それはちがうのぉ……ジャリンさんは……」

 もだえつつもエメロンが答えようとする。

 姉妹の会話――か。いつ以来なんだろう。

「姉貴はザシューバさまを裏切った……! やだ! そこはいじらないで、気持ち悪い!」

 後半のクレームはアナルをほじほじされたことについてらしい。

「そでなくてそでなくて……くあっ……ジャリンさんは……変態さんだけど……すごいひとだから……あっ、あっ、おしり、おしり、いいで すぅ!」

 姉のほうはアナルへの指ピストンに好感触だ。姉妹でも好みがちがうなあ。

「なにが……ただの女好きではないか……」

 憎々しげに――それでも耳まで赤くそめて、ディーが吐き捨てる。

 それをなだめるように、エミィは――

「ザシューバさまを……きっと……救ってくれる……のは、ジャリンさんだよ。だから、わたしは――」

 おれをここまで導いて来た、というのか。

 どういう理屈だ、それは。ザシューバは敵だ。敵の手助けをするほどおれは甘くない。ここを突破したら、おれはザシューバのいる最上階―― ボスはてっぺんにいるに決まってる――まで行き、まぬけ魔道士に引導を渡してやるつもりだ。

それ以外の展開はないだろう、さすがに。

 は!? まてよ。

「まさか……ザシューバは女、というオチじゃねーだろな?」

「はあ? ザシューバさまは男ですよう」

「そうだ! なにを考えている、この女ぐるい!」

 あうう。姉妹に続けざまに注意されてしまった。

 おれだって、違うって、すぐに思ったんだい! キースでそのネタやってるしな! でも、つい、口に出ちまったんだよぉ!

 くやしいので、突きまくってやる。うりゃー! うりゃー!

「あああうっ! はげしいですう、ジャリンさぁん」

「な、内臓が出たらどうするつもりだ――あ、ひぃ!」

 ――体力はとうに底をついているってのに、異界の波動はますます強くなるな。

 それにともなって、おれのペニスはさらに硬度と大きさを増していく。その部分が熱をもち、波動を放ちはじめている。邪掌のチンポ版だ。

 これは――やべえ。

「なああ!? はあっ! お、おかしく――なる! うあああっ!」

「ほああ!! こ、こんなの、はじめてですぅっ! ひゃうっ!」

 身体のキャパシティをはるかに超える快感が断続的に襲いかかり、姉妹は気息えんえんだ。

「やめ……っ! もお、やめてぇ!」

「はうはうはうっ! ふわわわわっ!」

 心拍数は上がり、血圧も最大。内臓を制御する神経のパルスさえ狂う。

「あーっ! あーっ! あーっ!」

「くひぃ、ひぃ、はぁあぁ!」

 この状態があと数分続けば、死ぬ。

 まずいだろ、それは。

 おれは、自分を押さえ込みにかかる。強制リセット――つーか、射精中枢に命令。とりあえず出せ! それで落ち着く。

 りゃあああっ! 

 ほあたあああっ!

 むにょりせようっ!

 掛け声はどうでもいいんだが。

「はう……うぅう……お!」

「おぉ……おふぅ……う!」

 この状態になるとディーもエメロンもかわらんな。数秒に一度、あるいはもっと早いペースで絶頂を迎えている。心臓がバーストし、神経系が 焼き切れるまで、それが終わらない。

 天国のような地獄。地獄のような天国。

 それにハマりきる寸前で。

 おれはおれの意志で――チンポ的にはまったく余裕なのだが――射精の感覚を引き寄せた。

 びゅくっ!

 びゅくびゅくびゅくびゅく……!

 出る。

 出まくる。

 もはや、むちゃくちゃ。

 いくらおれでもここまで精液を量産できるはずがない。

 これは「あっちがわ」のモノだ。

「うああ……あううう!」

「……っ、ゃあああっ!」

 やべえ、カエル腹だ。

 このまま出し続けたら、裂ける。

 おれは渾身の力で腰を引き抜こうとする。そうしなければ、勝手に腰を振り続けることになってしまう。

 抜く。

 ぶしゃあっ! 白い粘液が弾け出す。

 びしいっ! 男根が跳ね上がる。

 どくどくどくっ! おさまらない精液が尿道を駆け上がり、噴水となる。

 どぽどぷどぴゅ――満杯の子宮と膣から、圧力のかかった状態でおれの放ったものが垂れ落ちる。

「ジャリンさぁん……」

「ば、ばけもの……」

 エメロンとディーが交互につぶやき、そのまま失神する。精液の海にダイブするように。

 なんとか間に合ったようだ。それにしても、意識が薄れる。足元もおぼつかない。それでいて、身体の奥底から力が生まれ、ほとばしるのはな ぜなのか。

 わかってる。

 終わりが始まったのだ。

 おれは足元――石造りの床に横たわるエメロン――ディーでもある――を見下ろした。

 思えば、エメロンには、最初に出会ったときにおれの正体に関する真実をすでに告げていたのかもしれない。その名前で呼ばれることだって、 なかった訳ではないから。

 魔王――そんなもんじゃあもちろんないが、似たようなものだと言われればそれまでだ。

 おれはエメロンとディーを放置した。こいつらはこの塔で育った。だから、この場所が終わるとするならば、ここで終わるべきだろう。むろ ん、別の場所で生きるというならば生きればいい。こいつらくらいの力があれば、おれにくっついている理由はない。あるいは、すべてが無駄かも しれないが。

 なぜならば、この塔のてっぺんには、世界を創り変えるに足りる「掟破り」が存在するのだから。

次回……対決。