ジャリン戦記 ドリーマー編

最終回
 

 階段が尽きた。もう、まやかしはない。

 だが、まっとうな場所でもなかった。

 そこは夜で、空があった。たぶん、空間を魔法でいじってあるのだろう。ありえない大きさで月がでていた。

 雲が流れている。いや、月も動いているのか。早回しの夜空。星空も天盤の上で動かされているようだ。

 でも、終わらない。月は動き、相を変えていくのに、朝はこない。

 そこには夜しかないのだ。月と星空だけの閉じた場所だ。

 そして――その世界の中心には――ベッドがあった。

 天蓋のない――いや、あの「夜空」が天蓋なのだろう――寝台だ。

 だが、その寝台への接近を阻むように――あるいは導くように――黒衣の男が立っていた。そして、そのかたわらには刑台のような十字架があ り――全裸のシータが張りつけられていた。

 のっけから挑戦的だな。シータに意識はない――ようだが。

 脚をおおきく広げるような刑台であり、股間も無残にさらされている。

 周辺に転がっている責め具からして、なにが行われたかは明らかだ。

 愛液の採集。

 実際、シータの膣には透明なチューブが差し込まれ、足元のガラスの容器に愛液を導くようにしつらえられている。

 おれは冷たい視線をシータの傍らに佇む人物に向けた。

 ほっそりした姿だった。フードが深いが顔が隠れるほどではない――が、見えるのは道化の面だけだ。狂言回しを気取っているのか。

「ようやく――か」

 きしるような声で言う。

 まったく。それはこっちのセリフだ。

「てめえが悪い魔法使いさんかい」

 おれは怒りをおさえつつ言った。

「おれの女が世話になったようだな」

「――このホムンクルスのことかね。非常に興味深い材料だ。ヴェスパーホムンクルスは優秀だとは聞いていたがこれは予想以上だったな」

「シータに、なにをした」

「性感帯を刺激して、愛液を分泌させた。ドリーマーを発情させるために必要だったのでね――それにしてもこの人形は見事な出来だ。百やそこ らの研究テーマがすぐに思い浮かぶ。きみ、譲ってくれんかね」

「だめだ。ローンがまだのこってるんでな」

「きみが買った価格の倍をだすが?」

「売った」

 意識を失っているはずのシータの額に#マークが浮かぶ。いまのは冗談だ。本気にするな。

「金じゃねーんだよ。そいつはおれのもんだ」

「ほう、それは残念だ。交渉決裂だな」

 そいつは――ザシューバと呼ぶしかねえだろうな――くぐもった笑いをたてるとシータの股間に手を伸ばし、チューブを引っ張った。

「ん……あ」

 シータの唇が開き、声がもれる。

 奥まで入っていたチューブがゆっくりと引き出されて来る。太い。シータのあそこの中に入っていたのは極太サイズの張型だったのだ。陰唇が 広げられる。張型が透明だから、シータの内部までが見通せそうだ。

「う……んん」

 意識はないまま、シータの腰が前後に動く。まるでおれのモノをぶち込まれた時のような動きだ。

「やめろ!」

 おれは叫んでいた。

 ちゅぽん、と張型が抜ける。

 びくん、シータが身体を震わせる。

「シータ!」

 力を失った人形のように、シータは首をたれた。

 衰弱と凌辱――おれの精液を断った状態では最低限の魔力さえ宿らないのだろう。このままでは――壊れちまう。心も、体も。

 それが隙となった。

「ふ」

 ザシューバが仮面の下で笑った。

 おもむろに、細い腕を上げる。まるで糸で吊られているかのようなぎこちなさ。

 周囲の見えない壁が発光し、魔法文字が浮かび上がる。

 精緻な構造呪文。おそらく、ずっと以前から、この場所に仕込まれていた呪文だ。

 古代魔法に限りなく近いレベル――いや、目的が絞り込まれている分、さらに洗練されているといっていい。

 なるほど、ザシューバ――まともな道を歩んでいれば、どんな大魔導士になっていたことか。

 ドリーマーに魅入られさえしなければ――いや、それより先か。破滅の種がまかれたのは。

 見えない力がおれの動きを縛る。強力な呪縛の呪文だ。あらゆるものを操り人形にする力がある。この<場>ではおれさえその例外ではない。

 くそ。勝手に手足が動いて、寝台のほうへと向かいはじめる。刀を鞘ごと投げ捨て、衣服をかなぐりすてる。

 寝台のなかの眠れる――いや眠れぬ少女は、目を見開いていた。だが、なにも見えていないかのように天井を仰いでいた。

 アムリア。

 地下迷宮の肖像画と寸分たがわぬ姿だ。

 金髪が川のように流れ、寝台からこぼれ落ちている。長い。たぶん、背丈よりも。

 見開かれた瞳は夢見る憂いをたたえながら、あくまでも美しく澄み切っている。

 金色の産毛が輝くような頬の稜線は、いかなる彫像家によっても再現不可能だろう。

 美貌という名の魔法。

 ドリーマーという能力がなくても、世界を混乱させるに十分な存在だ。

 だが、その完璧さに、わずかな乱れが感じられる。

 目尻が朱にそまり、呼吸が早い。

 そして白魚でさえ無粋に思える繊細な指が求めてうごめく部分は――

「なるほど、シータのアレ、投薬ずみってか」

 アムリアは瞬きもしないまま、自慰にふけっていた。

 一糸まとわぬ姿で、まばゆい肌をさらしつつ、手指で秘部をこねている。

 それでいて、表情は冷たいままだ。

 エッチというより、幻想的な光景。むしろ、悲痛さを感じさせる――

「犯せ……その女とまぐわい、悦楽が深い眠りに代わるまで――そして夢をみさせるのだ。この世の終わりの夢を」

 ザシューバが言う。それがねらいか。だが――

「おいおい、アムリアちゃんをイカせるのはいいとしてだ、夢をみさせるってどういうことだ?」

「そのための仕掛はもうとうに用意してある。アムリアが絶頂に達すれば、その意識を縛る呪いは解ける。いままで禁じられていた眠りが一気に 戻って来るのだ。その時、わが魔道が発動し、アムリアに見せるべき夢を流し込む――それですべてが終わるのだ」

 そのためにすべてを作ったのか、こいつは。この塔も、地下道も、盆地全体を使ったからくりも――

「そこまでやっといて、なんで自分で最後までやんねーんだよ。自分のチンポでやれや」

 つか、アムリアがブスならともかく、超美女だぜ? 美乳で、乳首も薄ピンクだぜ? 脚も長いし、下のおけけも金髪だし、おまんこもめちゃ きれいだぜ?

 あ、いかん勃起してきたじゃねーか。

「――それができれば、している」

 乾いた返答だ。EDってやつか?

「恥ずかしがることはないぞ、病院に行って相談しろ。そして、色っぽい女医さんにアソコにぎにぎしてもらってこい。一発で元気になるぞ」

 おれの親身なアドバイスをザシューバは黙殺し、そのかわりに張り型を取り上げた。

「アムリアを犯すのだ。さもなくば」

 シータのアソコをそれを再びうずめていく。シータはひくひくと反応しているが、それはまるで瀕死のもがきのようにさえ見える。

「おまえの人形を完全に犯し尽くす――そうすれば、どうなるか」

「わかったよ」

 おれは息をはいた。体さえまともに動けば――だが、この強力な魔法結界のなかでは無理だ。

「アムリアちゃんをイかせるから、シータには手をだすな」

 半ば自動的にベッドまで移動する。まるで見えないレールでもあるみたいだ。おれが乗ってもきしみ音さえたてないベッドに上がり込む。

 すぐそばに裸の美女。悪くないシチュエーションだが、強制されてるってのがどうもな。

 思いのほか豊かな乳房に触れる。脅迫されてるんだからね! ほんとはこんなことしたくないのになあ、もみもみ。おお、ふわふわであったか いぞ。

「……っ」

 視線を天井に向けたまま、アムリアが息をのむ。他人の手の感触に驚いたのか。だが、こちらに目を向けることはしない。

 ずいぶん長い間、自慰をしていたらしく、ふくらみ全体がうす紅色に染まっている。乳首も立ってるな。乳輪を指先でなぞって、それから突起 をつまんでやる。

「あ……」

 うーん、いかんな。敵の思惑だというのに、楽しくなってきたぞ。もっと触ってやろう。

 のしかかって、本格的な愛撫を開始する。

 真っ正面から見ると、アムリアめ、ますます美人さんだな。だが、視線がおれを突き抜けているのが気にくわない。

 まあ、いいや。おっぱい揉んでやれ。

 両手でEカップ相当の美乳を揉みしだく。ふむふむ。エメロンとキースの中間くらいかな。でかすぎるよりも、これくらいのほうがいいな。

 それにしても、しみもほくろも一切ない真っ白い肌だ。肌理もこまかい。なんつーか……シータの肌に近いな。もっとも、シータよりも年齢が 上なので脂が乗っている感じがするぞ。

 ぎゅっと乳房をしぼって、左右から押しつける。とがった乳首が目の前にふたつ揃ったところをしゃぶりたてる。

「はう……あ……」

 感じてるな。だが、あいかわらず、おれの存在にすら気づいていないようだ。

 いまいち張り合いがないが、せっかくだから乳首をちゅうちゅうすることにする。

 てろてろてろ。

 ちゅみちゅみちゅみ。

 ちゅぽ。

 ちゅるん。

 左右の乳首を舐め、吸いたてる。

 んー、美味。

 乳首は制覇したので、リップ攻撃を下にずらしていく。

 美しい起伏のある脇腹を舐め上げ、舐め下げる。ふつうならくすぐったい部分も、今くらいにできあがっていれば性感帯になる。まして、おれ の愛撫だ。邪掌のみならず、全身から異界の波動が出ているのだ。

「ん……あ……はぁ、はぁ……」

 息がはずんできたぞ。よしよし。

 きゅっと細いウェストをなでなでしてから、舌を這わせる。おへそをれろれろ。これは効くぞ。へそは内臓につながる場所だから、そこに波動 を送り込めば――

「あーっ! ああ……あうっ!」

 こうなる。

 のってきたな。反応が強くなってきた。

 さて、いよいよ、へその下に舌をずらしていく。美女のアソコはどんなんかな?

 と、その前に。

「ザシューバさんよ」

 微動だにしない魔導士に顔を向ける。それまで棒立ちだった身体がひくんと揺れる。

「教えてくれよ。あんたの狙いは何なんだ? おれがアムリアをイかせまくって、眠らせたとして、だ。それで、どうなるってんだ? おまえに どんなメリットがある?」

 ザシューバはしばらく答えず、やや間をとってから、言った。

「――眠りさえ、訪れれば、よい」

 感情のないはずの音声に、息遣いのようなものが交ざっている。想いがそれだけ強いのか。

 だが、その答えでは、おれはともかく、納得できないやつが多いだろう。

 重ねて、問う。

「おまえは、ドリーマーにどんな夢を見させようとしてだんだ?」

「わが、望み――」

 ザシューバはわずかに天を仰いだ。道化じみた仮面が泣いているように見えた。

「――もう、忘れたな」

 はいー? なんですとー?

「かつては野心もあった。魔道士として名をあげ、権力をふるうことを望み、うらさびれた故郷をベルカーンツと並ぶ学問の都とせんとした夢も 見た。そして……生涯をともに歩みたいと思った女もみつけた。しかし、もはや――」

 そこで、ザシューバは、深いため息をついた。

「しんでしまってはしようがない」

 

 おれは、床に転がったままの刀をついと引き寄せた。マモンが宿らぬ抜け殻であっても、いまのおれであれば魔法剣として扱うことができる。 刀は鞘ごと宙を飛んでおれの左手におさまった。

 次の瞬間、抜きはなつ。

 たまに自分でも忘れるが、おれはサムライだ。

 居合も免許皆伝の腕前だ。自己流だけどな。

 神速の抜き打ちは、真空を作りだす。遠間の敵もこれで斃せる。だが、いま、狙ったのはザシューバの身体ではない。

 ザシューバの頭上の空間を薙いだ。

 ――かたん

 ――こと

 ――かららん

 ザシューバはふいに力を失い、崩折れた。まるで糸が切れた操り人形のように。

 おれは、すぐ間近に横たわる、眠らない姫に声をかけた。

「もう十分だろ。死者を解放してやんな。この下の階段で、そいつの弟子がひとり――いや、ふたりか――そいつのことを気に病んでる」

 アムリアの目が動いた。おれの方に視線を向けて、一度だけ、ゆぅっくりと、閉じて、また開いた。操り人形のようであった朦朧とした眼に理 性の光がもどる。

「知っていたのですか」

 ほほう、こりゃ声も美形だ。島本須美さんもびっくりだな。

「ザシューバがもしもまともな男だったら、あんたみたいな美女をさらっておいて、手を出さないどころか、ほかの男にやらせようなんて考える はずがねえ。それにシータもやられてなかった」

 張り型を使ってたしな。

「ザシューバがあんたをさらったところまではほんとうだろうな。きっと、やつにはやつなりの望みがあったんだろ」

 おれは無粋な剣を投げ捨てると、邪掌でアムリアを骨盤のくぼみを愛撫した。

「ええ――驚きました。塔の結界を破って侵入してくる人間がいるなんて。おかげで百年ぶりに外へ出ることができました」

「塔からあんたを出したのは、構造呪文を仕込むため。そのあいだ、地下迷宮にあんたを閉じ込めた。むりやりというより、この時点ではもう協 力関係にあったんだろ?」

 女は否定しない。かわりに言った。

「あそこはおふろが絶品でしたわ」

 だろうな。天然の温泉つきだ。

「だが、ザシューバは死んだ。数年前の火事で負った傷がもとだろう」

「――というより、生きているのが不思議なくらいでしたわ。ほとんど黒コゲで」

 恐るべき執念だ。

「やつは最後の力を振り絞って、自分を魔法で動く操り人形に変えた――起きたままのあんたには、そんな力はないからな。それがなんのためな のかまではわからないが……」

「あの方はすべてを呪っておいででした。自分の才能が中央で認められないこと、また、異端の研究に対する激しい攻撃、そして焼け焦げた自ら の肉体と、失ってしまった未来――すべての不満、すべての恨み、すべての呪いをわたしに託していきました。わたしとあの方は契約を結んだので す」

「契約――」

「あの方の肉体の維持には魔力の補給が不可欠でした。ドリーマーであるわたしは、いわば生きている魔力の泉、わたしから漏れ出す魔力をあの 方が利用するかわりに、あの方はわたしのもとに眠りを届けてくださると――つまりは、あなたがたのような適性のある冒険者を」

 やっぱり冒険者ホイホイだったのか。

「ほかにもいたのか――こんなふうに誘いこまれた冒険者が」

「ここまでこられたのはあなたがたが初めてです」

「で、やつの託した呪いとは」

「この世界を――とこしえの闇の手にゆだねよ、と」

「――魔人に、この世界をくれてやれ、と?」

「そういうことですわね」

 できるのか、そんなこと?

 できるんだろうさ、ドリーマーなら。

「おもしろいな……心底おもしれえ」

 たしかに適役だよ、ザシューバ。おまえは最高の喜劇作家だ。

「もしも夢を見られたら――あんたはそれを望むのか?」

 世界に幕を引くことを。

 すべてに終止符をうつことを。

「ええ」

「あんたも死ぬんだぜ?」

「100年間、眠らずにいることがどういうことかおわかりでしょうか?」

 にっこり、と、アムリアは笑った。

「いっそ世の中ぜんぶなくなってしまえばいい、って、思うようになります」

 笑顔のままで怖いことを言う。

「だが、呪いが解ければ、楽しい生活が待ってるかもしれないぜ」

「呪いが解けたら、わたし、108歳のおばあさんですよ?」

 うわ、そうだっけ。じゃあ、呪い解かないほうがいいじゃん、精神衛生上。

 でも、そういうわけにもいかないんだな……いい女を目の前にして、いただかないなんてことは不可能だ。なあ、そうだろ?

 おれはアムリアの火照った肌を楽しむ。すべすべで、適度に脂が乗り、すばらしい感触だ。この身体が、いままで百年間、男を知らずにきたな んて、もったいない話だ。

「ふぅん」

 感心したようにアムリアが言う。

「どうした? まじまじと見て。惚れたか、やっぱ」

「いえいえ、そんなことは」

 なんだ、ガックシ。

「その掌――そして、あなたの身体から発散する気――あなたは、やっぱり」

 唇が動く。

「あなた――聖魔でしょう」

 あっさり言いやがった。

「すくなくとも、そのかけら。わたしが造物主の能力のかけらを持つように――」

 それ以上しゃべらせるわけにはいかない。おれはアムリアの唇をふさいだ。

 かすかな抵抗。だが、それも積極的に受け入れる前の儀式のようなもので――

 舌をさしこむと、反応がある。

 からませた。

 音をたてて、口のなかをねぶる。

 アムリアの身体がふにゃふにゃになっていく。

 唇をはなすと、はあう……とため息をついた。

「これがキスですか……わたしはじめてです」

 自慰はひとりでできても、キスはふたりいないとできないからな。

「もっといろいろ教えてくださいな。世界の終わりを夢見る前に」

 おいおい……

 まさか、最後の決戦がエッチだとは――しかも、世界を終わらせるためにまぐあうなんて――まったくふざけた展開だぜ。

 でも、おれたちらしい決着のつけ方だ。

 おれはアムリアの脚の間に指を入れた。さっきも撫で撫でしていたから知ってるが――まだ固い。シータの愛液が効いているし、自慰もしてい たから、濡れてはいるのだが、アムリアのその部分だけは18歳相当とは思えない未成熟さだ。陰毛も生えていないし――ほんとうに10歳の少女 のようだ。

 入口に指をためしに入れてみると、アムリアが顔をしかめた。痛いらしい。

 おいおい、蕾じゃねーか。アシャンティのほうがまだよっぽどほぐれてるぞ。

 乳は大きいし、腰も張り出しているってのに。

 おれは、あることに思い至る。

「アムリア――おまえ、まさか、初潮もまだなのか」

「ええ。それが呪いですもの」

 アムリアは天井を見つめた。その視線の先には、作り物の月と星が――

 

 ラプンツェル、ラプンツェル、いまも夜

 偽りの月は満ちることなく

 欠けて毀れて消えてゆく

 いつになったら時はくる

 愛しい貴方はどこにいる

 顔もしらない王子さま

 女の月が満ちたなら

 きっと貴方に逢えるでしょう

 いつか貴方に届くまで

 いつか貴方に届くまで

 

 呪いの正体は、眠りを奪うことではなかったのかもしれない。

 女の身体は月に支配されている。

 月のない世界では女は生きられない。女になれない。

 女は身体のなかに海を持っているのだ。月に満ち欠けに支配される海を。 

 だからなのか。

 アムリアを愛した人々は、彼女を女にしたくなかっただけかもしれない。

 つまり。

 こいつは百年間、ずっと、ガキのままってことだ。

 

 おれはアムリアの秘部に唇をつけた。

 その部分を舌で愛撫する。

 亀裂を広げて未発達の性器をあらわにする。

 指でさやを引っ張ると、ようやく顔を覗かせる芽。

 萎縮したクリトリスを唇ではさみ、舌先で刺激。

「び……びりびり……しますね」

 だろ? 自慰慣れしてても、おれさまの舌先が与える刺激は未経験だろ。

 さっきよりも濡れが激しくなってきて、指が一本だけなら入るようになった。

 突っ込む――が、入らない。

 膣口をのぞき込んで納得する。処女膜が――完全な膜になっている。

 ふつう、処女膜には小さな穴があいている。経血を外に出すためだ。だが、アムリアのそれは、ぴったりと膣を塞いでいる。もしも月経があれ ば、経血が排出されず、医者の世話にならなければならなかったろう。

 数多くの処女をいただいてきたおれだが、さすがにこのタイプは初めてだ。

 うーん。おっぱいでかいのに完全処女で、しかも自慰慣れしてるって、滅茶苦茶だよな。しかも、世界滅ぼそうとしているし。さすがラスボ ス。

 にしても、こりゃ、一気にいくしかないな。この未成熟な性器は、どんなに濡らしても無駄だ。

「いくぜ、アムリア」

「え……もう?」

 もっといろいろしてもらえると思ってたらしい。動揺がみてとれる。

「おれは入れてから感じさせる派でな」

 めんどくさがりという説もあるが。

「ま、まって、こ、心の準備が……」

 急におぼこになるんじゃねーよ!

 まあ、完全無欠な未通女(おぼこ)だけどな。

 アムリアの腿を抱えると、腰を押しつけて――

 ドリーマーの膣にペニスをねじこんでいく。

「か……はっ! いだぁぁぁ……」

 完璧な美貌を苦痛にゆがめている。あーいいな。処女破り最高。美女は特に楽しい。

 今回は正面突破だ。組織を完全に破壊した。出血も多い。

 痛みのあまり、アムリアがずりあがっていく。そうはさせじと、おれはアムリアを抱きしめる。

「や……だぁ……いたい……はなして……」

 神秘的なキャラ立ても忘れて、アムリアがもがく。もがきつつ、おれの肩口に歯をたてる。

 ぎりり。

 噛みぐせがあんのな。

 かまわず、奥までねじこんでやる。

 うへっ。さすがにキツキツだ。でも、深さは大人なみだな。ピストン運動できるだけの長さがあるぜ。

 容赦なく動く。うわ、処女のヒダヒダが。

「うぐぅ……っ! うぅぅぅっ!」

 アムリアがおれの背中に爪をたてた。歯の次は爪か。攻撃力あるなー。

 でも、腰の動きはやめない。理由はかんたん。

 いまのおれのチンポは邪掌と同じ力がある。それで擦ってやれば――だ。

「くぅ……う……あ……?」

 感覚が変わってきたようだ。おれの背中に裂き刺さっていた爪がぬける。ちぇっ、また背中に傷が増えちまったぜ。男の勲章だけどなー。

 ちゅぶちゅぶ、湿った音をたてて、チンポを出し入れする。おーお、竿が真っ赤だぜ。スプラッタだな。

「あ……っ……ああ……おなかが……おなかが……」

 子宮をつついてるんだぜ。わかるか? おらおらっ。

「ああ……ズンズンっ……て……そこがわたしの――」

 女の器官だよ。ずっと眠らされていたけどな。

「わたしにも……子宮が……あって……き、気持ちいい……っ!」

 アムリアの唇をふさぐと、必死に吸いついてくる。夢中だな。

 処女破り一発目から子宮で感じられるって、すげーことなんだぜ。一生それを知らずに死んでいく女だっているんだ。つまんねー男とくっつく と、ろくなことがないんぜ、お嬢さん。

 よっしゃ、体位チェンジだ。

 アムリアの細い腰を抱いて、四つんばいにさせる。

「あ……こんなかっこう……」

 恥じらうお姫様。でもな、貴婦人は昔からバックからズコズコ犯されるって決まってるんだ。

 ずぶっ!

「はああっ!」

 ヒップをわしづかみにしながら、乱暴に突きまくる。ドリーマーは肛門もきれいなもんだ。ぱくぱく開くお尻の穴を堪能する。

「ああんっ! はあ……あ……これが……セックス……」

「いいもんだろ?」

 ぺちんぺちん、陰嚢をぶちあてながら、おれは訊いた。

「想像してたのと……ぜんぜん、ちがう……けど……っ、気持ち、いいものですね」

 おお、語尾、立て直したな。さすがお姫様。

「こんどは自分で動いてみな」

 おれが下になり、アムリアを座らせる。やっぱ、女王さまプレイもせんとなー。

「どうやれば……あっ」

 下から突き上げてやる。リズムをあわせて、ツンツン突くことで、アムリアの腰の動きを引き出してゆく。

「はあっ……はうっ……こ、こんなの……」

 おれの胸板に爪を食い込ませながら、アムリアは腰を動かす。たどたどしく、前後に。

「もっと、円を描くようにしてみな」

「はくっ! こ……こうですか……うぃ!?」

 いいところに擦れたらしいな。

 くねっくね、くねっくね、腰をくねらせはじめる。

「ひあっ、ふぅ……んっ」

 らくちんだな。懸命に腰を振る女の子を見るのっていい気分だし。

「はうあっ……ああっ! これが……これが……あああっ!」

 汗が飛び散る。金髪がたゆたう。白い乳房が揺れて、桜色の尖りがいっそう艶めく。女の身体は官能で輝く。いのちが燃え立つ。これが、生き ているということだ。

「おとうさま……おかあさま……ああ……アムリアは……アムリアは――」

 秀麗な少女の顔が喜悦にゆがみ、熱い吐息をもらす。

「生まれてきて……よかった……こんな、きもち……いい……こと」

 おれはカリへの血流量を増やし、体積を増大させた。アムリアの子宮を亀頭で埋める。ふふ。加藤鷹にもこれはできまい。

「あぁ!? い……いっぱい……いっぱいに……っ!」

 波動を直接子宮に浴びせる。女の器官そのものに快楽を与えていく。

「い……いくっ! いっちゃいますっ! ああああっ! はあああっ! ぉっおおおおおっ!

 貴婦人にはあるまじき獣じみた声とともにアムリアがのぼりつめていく。

「そろそろおねむの時間だぜ」

 おれは、アムリアの子宮の中に、精液を放った。

「あっ――」

 とろけるような表情をアムリアは浮かべ――そして――

 眠りに落ちていった。


 アムリアが眠りに落ち、ドリーマーの魔法がはじまる。


 おれも、おれの意識までも、アムリアの眠りの深さに引きずられる。

 眠りの――アムリアの夢の世界に――


 あなたは、なにを望むの――?


 アムリアが光のなかで花のように笑いながら問うてくる。

 ああ、子供の姿に戻っている。眠りを失う前の、十歳の少女の姿に。


 ねえ、ジャリン、あなたの望みはなあに? あたし、そのお夢をみてあげる。


 そうだなあ……なにがいいかな。

 肘枕をしながらおれはつぶやく。


 ほしいものはねえな。


 ほしいものはないの?

 アムリアが首をかしげる。


 ああ、そんな顔すんなよ。また勃っちまうだろーが。おれは守備範囲が広いんだ。イチローとか殿馬の5倍くらい。

 そうだ。

 ほしいものはあるな。

 世界を手に入れるよりも、ちょびっとだけ、優先順位が高いかもしれない、望みだ。


 おれはその願いを言葉にした。

 

 ***と、もっぺんヤリてえ。

 

 あら……


 アムリアが笑う。


 ちょっとだけ、妬けるかも。


 アムリアは大人の姿に戻って、おれにキスした。


 ありがとう、ジャリン。

 そして、おやすみなさい。

  

 

 

 ん、なんかうるせーな。起きろ起きろってよう。いまいいとこなんだよな。

 ああ、なんか、いっぱい声が聞こえるな。知ってる声ばかりだ。

 ……泣いてる声もあるな。

 泣いて……

 マスターって……おれのことをそう呼ぶのはだれだっけ……

 だれだ……

 青い髪の――



エピローグ


「だから、なんだよ文句ゆーなっての」

 ものすごい晴天だ。雲ひとつない。だが、おれたちの間に平和はない。

「意味がわかりません。そう申しあげているのです、マスター」

 マスター(ご主人さま)と言いつつ、おまえ絶対おれのこと尊敬してねーだろ。

「おれたちは今日、ここから旅立つ。さしあたって、二人だけでな。それだけだ。どゆあんだすたん?」

「異国の言葉を使ってもだめです。わたしはあなたの持ち物としていいます」

 緑の髪を持つ、外見十二歳(実年齢はもっと少ない)の少女が抗議をつづける。

 「どうして、世界を手に入れなかったのですか? これまであまたの冒険者が潰えてきた難関を乗り越えたあなたが――」

 どんな願いでも叶う「夢」を観させる権利――それを手に入れたのは、たしかにおれだ。

 ジャリン。

 何の肩書きもない、ただのジャリン。

 だがな。  世界の支配者になりたいと思うのは十二歳までのガキか、六十過ぎのジジイだけだ。

 そうだろ?

 な?
 

おわり