ジャリン戦記 ドリーマー編

最終話

ラ プ ン ツ ェ ル

11

 アシャンティは丸まって眠っている。コタツもないのに、あったかそうだ。

「むにゃにゃ……かーしゃん」

 シルヴァイラの夢を見てるのか。手をもぞもぞさせているのは、母親のおっぱいを揉むしぐさだな。子猫に戻った夢でもみてるんだろう。

 夢――か。

 だが、夢をみられるやつは、それゆえに強い。

 こいつなら、次に目を覚ました時、おれがいないことを知ったとしても、「まあしょうがないにゃ」と言ってひとつ伸びをして、歩きだすだろう。自分の足で。そしてうまくやっていくだろう。自分の才覚で。

 おれは眠るアシャンティをべつの部屋に移した。マモンの力の残りを使って、結界を張ったから、雑魚にはまずみつかるまい。

 あばよ、ねこすけ。

 縁があったら、またヤろう。

 

 おれは階段をのぼり始める。

 最初からわかっていることだが、空間がねじってある。螺旋階段がいつまでも続く。トラップもしかけてある。へたをすれば別の空間にほうり出される。

 だが、今のおれにはそんなものは意味はない。

 少々体力を使い過ぎでめまいがするが――異界とつながった数秒間がきつかった――マモンの力の残りで、魔法を中和できる。つまり、のぼってりゃ、いつかはたどり着ける。

 だから――

 やつが待っていた。

 階段の途上の、踊り場で。

 まるで、門番のように――

「ここまで、よく来れたな、ジャリン」

 黒いフードの魔道士。ディーだ。

「だが、ここまでだ。ザシューバさまの邪魔はさせぬ」 

「よお、さっきおれのチンポしゃぶった魔道士さんじゃねえか。舌使いはうまくなったか?」

「う……うるさい!」

 声が裏返る。

「さっきは不覚をとったが、今度はそうはいかん。この場所では――」

「無駄だ」

 おれはだるさを隠さずに言う。いや、マジでだりー。

「おめーら人間の魔法ごときじゃ、いまのおれには通用しない」

 魔神の力を借りてるからな。

 もっとも、身体の方は限界なんだが、そっちは内緒にしとこう。

「だまれ! 炎の刃、氷の飛礫よ!」

 攻撃魔法だ。お得意のミックス戦法。あらかじめ、呪文を仕込んでいたのだろう。立ち上がりが早い。だが。

 おれは指先をちょいと動かすだけで相手の呪文を無効化した。

「な……なぜ?」

「言ったろ。おまえ程度の力じゃ、おれに傷ひとつつけられねえ」

 もう少し元気だったら、「無駄無駄無駄ァ!」とみえをきってるとこだぜ。

「ば……ばかな」

 ディーがうろたえる。

「ここはザシューバさまの構造呪文のただ中だというのに……」

「だからさ。構造呪文ってのは、定型のフォーマット、いわば、聖魔が残したレシピのそのまま複製(コピー)だ。コピーがオリジナルに勝てる道理がねえのさ」

「オリジナル……だと?」

 ディーの表情が驚愕にゆがむ。こいつも一応は魔道を修める者のはしくれだけあって、おれの言葉の意味を悟ったようだ。

「まさか聖魔の――? だが、聖魔の力を使うなど、ふつうの人間にできるはずが――魔神の力を借りることができたとしても、これは……」

「借りたんじゃねえ――返してもらったんだ」

 おれはディーにすっと近づくと、無造作に腕をつかんで抱き寄せた。

「ひ!?」

 ディーからしてみれば、前触れもなくおれの姿が消えて、とつぜん抱き締められたように感じられたろう。

 疲労がどんどん深く重くなってゆく。それと反比例するように、おれの中の魔力が大きくなっていく。蓋が、あいたかのように。

 くそ。だりい。やべえな……いつまで意識を保っていられるか……

「ジャリン――きさま――何者だ」

 おれはディーのおっぱいをもんだ。ああ、いい手触りだ。女の乳はいい。こんなものがあるから、世界は捨てたもんじゃない。少し意識がすっきりする。

 ローブをひきちぎるようにして脱がす。やっぱりローブの下は裸だ。

「や……やめろ……」

 ディーの抵抗はまるで紙のようだ。まるで手ごたえがない。

 乳首をつまんで引っ張る。ゆがむディーの顔。その頬に舌をはわせる。

 でも、まあ、認める。自分でも淡泊な責めだ。それでも。

「ああ……や、めて」

 邪掌からほとばしる波動だけで、ディーのやつ、よがってる。異界からの波動が、だだ漏れだ。エロパワーもすごいが、それだけ、「おれ」という存在もおびやかされている。

 触れるまでもなく、ディーのまんこは濡れているわけさ。

 自分から脚をひらき、腰を浮かしている。

 立ったままでも、入れやすいように。

 全部無意識だ。邪掌にやられた女はだれでもそうなる。まして、フルパワーだ。堕ちない女はいない。もしもいたら、そいつには速攻でプロポーズだな。茶番をそれで終わらせられる。

 おれは、ディーと、つながった。

「ああっ! ふぁああっ!」

 ディーがおれにしがみつく。深いところから、声をはなった。

 せまいな。

 たしかにエメロンと感じは似ている。だが、やっぱりちょっとちがう。不思議なものだ。肉体は同一でも、人格が違えば、アソコの味もかわっちまうとは。

「あっ……あ……こ、これが……男……?」

 ぼうぜんとディーが感想をもらす。

「し、しんじられ……な……中で、こんな……ひうっ!」

 なんだ、初めてかよ。処女膜はねーけど、それはエミィの身体だからしょうがねーな。意識のうえで、男とセックスするのは初めてってことか。あれ、でも、たしか――

「ザシューバさま……おゆるしを……」

 ディーがすすり泣く。

 そうだ。ザシューバとディーはデキてたんじゃなかったのかよ?

 まさか……?

 いや、あり、える。

 おれに声をかけ、ここまで導いて来た理由――それが、「そういうこと」だったとしたら。だが、それはあまりにも――

 ディーの反応は完全な処女とはちがう。感じ方はわかっている。

「あは……っ、あ……っ、き……きもち……いいっ」

 身体はこなれている。それなりに。だが、男の肉棒だけはしらないのだ。

 おれはディーの大きな尻をつかんでもみたくりながら、奥をえぐった。

 天井に当たる。エミィの絶品のザラザラの感触。子宮への入口部分の複雑な形状。そこを直接突きあげる。

「あ……くぁ……なに……?」

「そろそろ、でてこいよ」

 扉をこじあける。

 子宮の入口の、この部分で感じるようになるには、それなりの躾がいる。エミィの肉体にはたっぷりそれを仕込んである。

 ディーには創造もつかない感覚のはずだ。それをいきなり味わわせている。

「やあっ! だめえ! いひっ!」

 ディーが痙攣する。意識より先に肉体が感じてしまっているのだ。

「ああああああっ! わたし、もお……はあっ! たえらんな……ふあっ……」

 衝動に翻弄されるように髪を振り乱しながら、ディーは絶頂をむかえる。暴走する性感に、振り回されている。

「はあああっ! イヤあああ、だっ、だめっ! だっ――! ぅいいいいいっ……いっ、う……」

 気を遣る。気を喪なう。気を飛ばす。なんと言ってもいい。ディーの意識は快楽の突風に吹き飛ばされ、散り散りになり、そして――

 まぬけそうな表情を浮かべていた。

 のほほんとした――

 なにがあっても笑ってそうな――

 それでも――こいつくらい泣きむしなやつをおれは知らない。

「えっとぉ――ジャリンさぁん……おひさですぅ」

 おれの腕のなかで姿勢を変えないままで――おしりを突き出して壁に手をついたままで――そいつは言った。

つづく