ジャリン戦記 ドリーマー編

最終話

ラ プ ン ツ ェ ル

 

「お……おゆるしを……ゆるしてくだされ」

 じじいが情けない声をだして、おれに懇願する。

 まったく、これじゃあ、おれがお年寄りに暴力をふるったみたいじゃねえか。

 いっとくが、殴ったりはしてねえぞ。

 とりあえず目の前でセンズリをさせたけどな。

 べつに見たくはねーが、じじいがちゃんと射精できるかどうかってのは、学問上、けっこう興味があるだろ?

 ってわけで、ゾーシュライにそれを命じたわけだ。

 さっきまでキースにぶちこむつもりでギンギンだったチンポもすっかりしなびて、たんなるしょんべんの通り道になっている。

 まあ、この年齢で五発ぬいたんだからたいしたもんだよな。もっとも、二回目以降は白いものは出なくなったけどな。五回目では、なんか血みたいのが出てたよ。あれがもしかしたら伝説の赤玉ってやつなのかね。

 ともかくもゾーシュライは疲弊しまくり、枯れ木のようだった肉体は、さらに精気をうしない、死後半年といっても通用するくらいだ。

「ほれ、もう一発やってみれ」

「も、もう、むりです。死んでしまいます」

「死んでも本望だろ。てゆうか、腹上死?」

「まだ乗っておりません。あやまります、申し訳ありません」

 だから、情けない声をだすんじゃねーよ。

 しょーがねえ、本題に入るか。

「ザシューバの居所を教えな」

「……それは」

「ほい、もう一発いっとこーか。なんだったら、キースのまんこの匂いをかいでもいいぞ」

「――ふざけるな!」

 すでに術からさめているキースが声をあらげた。乱れた衣服はおれが直してやったから、キース自身は、イタズラされたという自覚がない。

 本人が知ったら、自尊心のかたまりのような奴だから、壊れかねないな。

「相手は老人だぞ。もうすこし別なやり方が……」

 知らぬが仏。

「んじゃー、殴るか、蹴るか、斬ろう」

「ジャリン――よせ! 怒るぞ」

 こわい顔をするキース。ったく、まじめなやつだな。

「ご老人、わたしたちは仲間を救いたい。ほんとうのことを教えてもらえないだろうか」

「騎士どの……」

 ゾーシュライはキースの視線に捕らわれて、恥じらいを感じたかのように顔をふせた。そりゃそうだよな、眠らせてレイープしようとした相手からかばわれちゃあな。

「塔ですじゃ……」

 ぽつりと言う。

「塔――?」

「森のなかに建っております。かつて、ザシューバが使っていた館の焼け跡に唯一残った建物ですじゃ」

 しわがれ声でゾーシュライが語り始めた。意外とあっさりとだ。これはあれかな、二人一組で、片方が強烈な追い込みをかけた後で、もう一方が優しい言葉をかけると、容疑者があっさり白状するってやつかもな。

 だが、まだ知りたいことは残っている。

「おっさん、あんた言ったな。ドリーマーの力をつかって、この地を栄えさせたいと」

「うむ……」

「そのための方法をザシューバが持ち帰ったとも言ったな。では、なぜ、この地はまだ変わっていない?」

「材料が……整っていない、と」

「材料?」

「眠らずの魔法を破るためには、アムリアの肉体と精神に強い強い刺激を与えねばなりませんのじゃ」

「強い……刺激?」

「そう……たとえば気を失うほどの痛み、あるいは――」

「――快感、だな」

 女の子に気を失わせるほどの刺激となれば、それに決まっている。

「それで、閨房魔法か」

 ゾーシュライはうなずいた。

 ふーむ。眠れない女の子をいかせまくって眠らせるってのは、わかりやすくていいな。

 って、ことは、ベルカーンツの図書館で読みふけった閨房魔法の魔法書、あれにも意味はあったんだな。伏線ってやつだ。

 閨房魔法は、しかし、東方のもののはずだ。ベルカーンツを中心に栄える魔道研究とは相いれない。

「なるほどな、それで追放されたわけだ」

 魔道博士にまで登りつめたザシューバの記録が残っていない理由も、これなら納得できる。崇高な魔道研究に身を捧げるべき魔道博士が、実利のために異端の閨房魔法の研究にふけっていたのだ。追放されて不思議はない。また、体面を気にしたギルドが、ザシューバに関する記録そのものを抹消することもありえなくはない。

「しかし、われらはザシューバにさからうことはできなかったのですじゃ。もしもやつがドリーマーに再び洪水の夢を見せたら――この地は滅びてしまうのですから」

 つか、18歳相当のアムリアちゃんはさすがにおねしょはしないだろう。ほかのおつゆを飛び散らかしたりするかもしれんが。くふ。

 む、まてよ。

「さっき、材料がそろってない、といったな」

「う、うむ」

「それなのに、おれたちを襲った――たんなる旅人として扱って、適当にあしらって返せばよかったのに、あえて危険を冒してまで――なぜだ」

「そ……それは……」

 ゾーシュライはうめいた。

「材料をそろえるために襲った――そうだな?」

「わしには、わからぬ」

 唇がわなないている。顔が真っ白だ。精神を縛る魔法の残滓か――それも強力なプロテクト。

 これ以上はむりだ。これ以上追い詰めたら、さすがにやばいだろう。それに、知りたいことはもう聞いた。

「塔だな」

 おれは立ち上がった。

「ジャリン――」

 まだ、事情を飲み込めていないらしいキースが怪訝そうな声で呼びかける。おれは一瞥さえあたえない。

「媚薬だ」

「なに?」

「ザシューバのやつ、おれたちをここまで誘い込んだんだ。アムリアを燃え立たせる極上の媚薬を手にいれるためにな」

「なんだと?」

 目をむくキース。にぶいな。いくら美形でスタイルがよくても、頭のわるい女は趣味じゃない。すくなくとも、仲間としては。

「まさか――シータどのか」

 お、気づいたか。なんとか合格だな。

「そうだ。ホムンクルスの愛液は強力な媚薬になる。しかも、ヴェスパー・ホムンクルスのマスタースピーシーズともなれば、強力な魔法の禁忌にも対抗できる」

「そんな……老師の最高傑作を……そんなことのために」

 ショックをうけたようにキースが手で顔を覆った。

「だからだろうぜ。ドリーマーは現世の理を無視したデタラメな存在だ。そういう意味ではヴェスパーホムンクルスも似たようなものだからな」

 おれは歩きだす。

「ジャリン、どこへ」

「塔だ」

「わ、わたしも行く」

 あわててキースが腰を浮かせる。

「足手まといだ」

「わたしは監察官だ。不逞魔道士を取り締まる職務がある」

 剣をつかみ、まっすぐ立つ。

「それに――シータ殿を救わねば」

「猫もいるぜ」

 いちおう、指摘してやる。

 あれでも、おれの女のはしくれだからな。

 

 

 ――こちら、アシャンティにゃ。

 あちしの大かつやくで、じーちゃんたちをぶっ倒し、敵のほんきょをせんめつ、みなごろし、ねずみの皮にしてやったにゃ。

 もう、このお話はこれでおしまいにゃ、めでたしめでたし。

 長いあいだ、ごあいどくありがとうございましたのにゃ。次回から、アシャンティが主役の大河ぼーけんドラマ、「ねこのしっぽ!」が始まるのにゃ。お楽しみに〜。

 ――ってのは、うそにゃ。

 あまりほーこくしたくないんにゃが、つかまったままなのにゃ。ぐぐるるぅ……。

 ここは石づくりの、しめった匂いのする、暗い部屋なのにゃ。

 壁から鉄の鎖がのびていて、あちしはそれに首からつながれているじょーたいなのにゃ。まったく、ひとをどーぶつあつかいして、失礼なのな。

 シータおねいちゃんは手かせをはめられた状態で――でも、眠ったままなのにゃ。これって、ふつーの眠りではないよーにゃ……心配だけれども、鎖がみじかすぎて、シータおねいちゃんのところまでいけないのにゃ。

 そうこうするうちに、おっちゃんたちがもどってきた。

 あちしたちを襲った、宿屋のおっちゃん――トマリに、手品のおっちゃん、ゼンジー、そして、その他おーぜい有象無象の、ソタノ、ゼイオ、ウーゾ、ムーゾの六人にゃ。名前は、それぞれ呼びあってたのをおぼえたのにゃ。

 作者の手抜きじゃないのにゃ! ほんとうにそういう名前なのにゃ!

「ディアマンテはまだもどらんのか――あいつがいなければ、せっかく獲物をとらえても、ザシューバさまに取り次いでももらえぬ」

 この中では一番年かさのトマリがいったのにゃ。それに、ゼンジーが答えていうのには、

「族長さまのところへ行っているらしいね。あの女剣士はなかなかの腕だそうだからね。まあ、じきに戻ってくるでしょ。族長にディー、なにより、ザシューバさまの術があるんだから、よもや遅れはとらないでょ」

「それに族長は、アッチのほうは老いてますます盛んだからなー。あの女剣士を眠らせたて、きっといろいろやっているんじゃねえか」

 ソタノが平凡な顔を歪め、ゼイオが、げへへ、と笑った。

「うらやましいっす」「おれらもしたいっす」

 ウーゾとムーゾが声を合わせる。むむ、こいつら双子なのかにょ?

 男たちがあちしとシータおねいちゃんをなめるように見たのにゃ。ぞくり。

 いやらしい笑いが男たちの顔をいろどる。

「ホムンクルスの愛液は至高の媚薬なそうな。それをザシューバさまは必要としているわけだろう」

「ならば、愛液を出させねばならぬのう」

「下準備というわけか」

「げへ、げへ、げへへへ」

「おれらもするっす」「やりまくりっす」

 男たちの悪巧みの相談はあっさり決まってしまったのにゃ。

 トマリとゼンジー、ソタノが、眠っているシータおねいちゃんの服を脱がし始める。もともと寝間着だから、あっと言う間に裸にされてしまったのにゃ。

「これは……」

「なんて美しいね……」

「これがホムンクルスかよ……?」

 感嘆の声をもらしまくりにゃ。シータおねいちゃんのまっしろですべすべの肌には、ほくろも、しみも、くすみもぜんぜんないのにゃ。体毛すらないので、かえってかわいそうなくらいなのにゃ。

 あちしよりちょびっとだけ胸がおおきくて、とがった乳首を中心にして、ほのかに隆起している。乳首はほとんど肌色とかわらなくて、突起の部分だけがピンク色。

 ほそくくびれた胴に、やっぱりほっそりした腰。真っすぐにのびた手足は、たしかに作り物のように形が整っているのにゃ。

「さすがというか、いかにヴェスパー博士の手になるとはいえ、ここまでとは……」

「それを、わたしたちが、これから辱めるのね」

「へへへっ、ディー、さまさまだな」

 男たちの目に欲望がたぎった。劣等感が征服欲にかわった瞬間にゃ。

 ゼンジーとソタノがシータおねいちゃんの左右の胸を握り締め乳首をなめはじめる。トマリは年長の特権か、シータおねいちゃんの脚もとにまわって、大きく広げさせる。

「これはまた……」

 男たちがその部分を凝視する。

「まるで工芸品のようだな。花びらが透き通るようだ」

「こんな真っ白で汚れのない股ぐら、見たことないね」

「使い込んでるようにゃみえねえな」

 指でシータおねいちゃんを割りひらく。

 ほんとに華がひらいたように、花弁とその内側のかたちがあらわになる。

「おおお」

 トマリは喜悦の声をあげると、シータおねいちゃんのあそこに吸いついた。

つづく