ジャリン戦記 ドリーマー編

最終話

ラ プ ン ツ ェ ル

 

「きさまを、辱めてやる」

 ディーの手がおれの股間に伸びた。

 やめてー! きゃー!

 ディーのやつ、たどたどしい手つきで、おれのズボンの前をあける。

 あーん、エッチー!

 ――ビシュッ!

 何の音かって?

 おれのチンポが飛び出した音に決まっておろうが。

 さしものディーものけぞって、目を白黒させている。

「ほ……ほんとうに、大きくしていたのか」

 呆れ声を出す。

 ああ、勃ってるよ、悪いか? だがな、このシチュエーションで萎えてたら、そっちの方が男として情けないぞ。

「な……なんという……い、異常者め」

 言いつつ、ディーのやつおれのチンポから目を離せないでいる。ゾーシュライのチンポを一顧だにしなかったのとはえらいちがいだ。

 ディーの喉が動く。そりゃあ唾もわくだろう。こんなにくわえごたえのあるチンポはそうはないからな。

 さあ、どうする?

「き、きさまを、は、辱めて……」

 ディーが身をよじる。ローブの下はたぶん素っ裸だな。女魔導士の正装ってのは、魔力の放散をふせぐために、魔力の伝導性を高めたローブ一枚と決まっている。エロいボディラインが浮かび上がってるぜ。

「――どうやって辱めるってんだ、ああ?」

 おれはなんとか声を絞り出した。魔導の力がいまだにおれの行動の自由を奪っているのだ。それでも、せいぜい余裕のありそな表情を浮かべてみせる。

「おまえのような腐れ女に、おれを感じさせることなんかできっこねえぜ」

 挑発ってやつだな。ディーのやつ、どう反応するか?

「言ったな――こ、後悔、させてやるっ!」

 あっさり、乗ってきた。エメロンとは性格が違うが、こいつも基本的にアホだなー。

 ディーの手がおれのペニスに触れる。ためらいはあったようだが、怒りがそれを乗り越えさせたようだ。

 上下にしごきはじめる。

 単調な動きだ。わはは、くすぐってえぞ。

「ど、どうだ! か、感じるだろう!?」

 顔を赤らめつつ、挑みかかるように言う。

「ぜんぜん」

 涼しい顔で応える。

「な、なに!?」

「手でしごいたくらいでおれが落ちるとでも思ったのか? 甘いんだよ」

「な、ならば……!」

 ディーがおれの前に膝をつく。口をあける。ふほっ、負けず嫌いもここまでくれば立派だな。

 くわえやがった。

 ディアマンテがおれのペニスを。

 エメロンと同じ唇と舌の感触、同じ体臭、それに――

 だが、テクは全然ちがう。拙い、というより、まったくの初心者だ。

 くわえただけでは何も始まらない。

「ど、どうだ……はふっ……感じるだろう」

「ちっとも」

「う、うそだ! エメランディアがこうしたら、おまえは顔をゆ、ゆがめて……」

 ある程度、記憶は共有しているらしいな。だが――

「エメロンの舌づかいはおまえとは全然ちげーよ。このヘタクソ」

「わ、わたしがエメランディアに劣るとでも……っ!」

「劣るどころか、女としては勝負にならねーよ」

「き……きさま……! これでもか!」

 意地になってしゃぶりはじめる。舌を懸命に動かし、おれの亀頭を刺激する。竿を舐め上げては、唇で吸いつく。陰嚢まで口に含んで舌で転がす。

 おうおう、このへんはどうやらエメロンの記憶から引っ張り出したテクニックだな。

「こ、これなら、どうだ……っ! エメランディアより上手だろう!」

「ばーか。何度言ったらわかる? おまえとエメロンじゃあ比べモノにならねえんだよ」

「ばかな……! 魔導で何でも、わたしの方がうまかった! 同じことを習えば、わたしの方がいつも早くマスターした!」

「勉強ではそうかもしれねー。でもな、女にとって大切なのはそんなことじゃねえ。おまえにゃないものがエメロンにゃあんだよ」

 おれを感じさせたい、という気持ちがな。それがなきゃ、どんなに巧みな舌技も肉の刺激にすぎない。それだけじゃあ、男はイカない。いや、出すけど。でも、それは排泄だ。

「く……っ」

 ディーが悔しげに顔をゆがめる。

「わたしが……あのグズに劣るなど……っ」

 おいおい、よーわからんが、姉貴だろ? つーか、肉体的には同一人物だっちゅーに。

 だが、おもろしいので焚きつける。

「おらっ! もっと舌使えよ。エメロンに負けていいのか?」

 おれは腰を突き出した。身動きができなくても、体重移動で、多少は身体を揺らすことができる。

「ほえづらをかかせてやる……っ!」

 ディーは眦に怒りをたたえつつ、ふたたびおれのイチモツを吸い込んだ。

 おうおう、マジになっちゃって。

 ムキになっておれのペニスを舐めすするディー。エメロンのそれとは動機はちがうが、たしかにおれをイカせようと懸命になってるな。

「今度はちっとはいいぜ、舌からめろよ、ほらあ!」

「うぐぅっ!」

 喉を詰まらせる。苦痛にまみれながらも、負けず嫌いのディーはおれのチンポをしゃぶりつづける。おれの尻をかかえると、顔を前後に動かす。

 亀頭が口蓋のでこぼこをこすり、さらにその奥に届く。舌がたっぷりの唾液とともにからみついてくる。

 おほっ、ディーの口まんこ、気持ちいー。奥まで突いてやるぜ、おら、おら、おら!

「ぐぅっ! うぅ……」

 涙を浮かべつつ、ディーは舌を動かしつづける。

 もうあごも疲れて、舌も痺れている頃だろうな。

 でも、ディーはあきらめない。おれをなんとか射精させようと、指をおれのアヌスにまで這わせた。

「へえ……おれのケツの穴をいじってくれるのか」

「……ぅるさひ……ここに……男の弱点が……」

 おぅ。指が、入ってくるぜ。なるほど、前立腺を刺激して、射精させようという魂胆か。でも、そんな知識はさすがにエメロンにもないだろうに――

「まさか、おまえ、女の子雑誌でエロテク磨いてるクチか?」

「だまれ、これもまた閨房魔術の一端だ……ふぶっ、はぷっ」

 お口と指を駆使して、ディーが言う。なるほど。ベルカーンツの図書館で、東方の閨房魔術の書籍コーナーがやたら充実していたのもうなずける。ザシューバは閨房魔術を研究していたのだ。その弟子のディーがその道について詳しいのは当然かもな。ただ、経験がともなわない分、やることなすことすべてぎこちないが。

 でも、まあ、しゃぶられながら、肛門をくにくにされるのは、ちょっと効くかもな。

 お。そこそこそこ。いいぞ。

「ふぐっ、ふむっ、はぷっ、はあう」

 ディーの舌づかいが激しくなり、亀頭を吸いながらくびれ部分を甘噛みする。

 おれのアヌスを刺激する指も第二関節あたりまで入ってきているのだろう、くにくに動く範囲が大きくなっている。

 うむ。これならイけるかも。

「よし、ディー飲ませてやるぜ」

 おれは言いつつ、ディーの頭を押さえた。

 突然のことに固まるディー。おれが動けるのが理解できないらしい。

「な、なぜ、きさま動け……うぐぅ」

 奥まで突っ込む。

「あのな。術者が二人ともエッチに夢中になってたら、どんなに堅固な魔法だって弱まるだろうが」

 ゾーシュライはキースに悪戯するのにかまけているし、ディーもなんだかんだいっておれのチンポにはまっちまっていたからな。

 まあ、ほんとうはもっと早く動けてたんだが、ディーに奉仕させるのが楽しくてつい。

「そ……そんな……うぶっ」

 ディーの顔を両手ではさんで、ペニスで喉を突きまくる。

「ううううっ! うぶぅあっ」

 苦しげなディーの表情を見物しつつ、命じる。

「ほら、ケツのなかをもっとえぐってみろよ。お望みのものをくれてやるぜ」

「ふぐぅぅぅ」

 悔しげな顔でディーは指を動かす。

 ぞくぅっ。

 そこだよ、スイッチは。

 おれは前触れなしに、ディーの口の中で射精した。

 大量に、激しく、精液を流し込む。

「ひぶっ……! あふ……っ!」

 ディーがのけぞって唇から白い粘液を吐き出す。

 その顔に向けて、第二弾の粘弾をたたきつける。

 ふつうの男のひと月分くらいに相当する量の精液だ。

 あっという間にディーの顔が白い粘液で汚されてゆく。

「ぐっ、こほっ……な……んて……濃いの」

 ディーは咳き込みながら、顔についた粘液を指で拭き取ろうとする。

「さあ、次は、おまえのアソコに注ぎ込んでやるぜ」

 おれは獲物を抱きしめるべく腕を伸ばした。

 だが、ディーはすばやくそれをかいくぐると、短く呪文を詠唱した。

 壁に突然穴がひらいた。魔法の扉か。即席のワープポイントか。ずるいよなー、魔法って。ご都合主義の小説みたいじゃん。

 まあ、ここは、もともとザシューバの「準備」が整っていた場所らしいから仕方ないが!

「――ふざけるなっ!」

 ディーはその穴に飛び込みながら、おれを憎々しげに睨んだ。

「どんなにおまえがえらそうに振る舞おうが、ホムンクルスはこちらの手のうちにある! ザシューバさまの研究は今こそ成るのだ!」

 捨てぜりふを吐いたかと思うと、ディーの姿はその場からかき消えた。

 ちっ、逃がしたか。一気にやっちまって、おれの女にしようと思ったのに……って、ディーとやったら、エメロンとやったことになるんだろーか……わからんなあ。

 まあ、それはともかく。

 おれは自由を取りもどした首をこきこき鳴らし、指もポキポキさせながら、おもむろに振り返った。

 そこには、キースにまたがって、今にも挿入しようとしているゾーシュライの枯れ木のような姿があった。

「さて、じじい、人のモンに手を出したらどーなるか、わかってるよな?」

 おれは、唇の両端をめいっぱいつり上げて笑って見せた。