ジャリン戦記 第四話 ダンジョン・シーカー(第五回)


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 おれは獲物を見下ろした。

 裸の美女だ。胸を両腕でかかえ、おれをキッとにらみつけている。

 キースリング・クラウゼヴィッツ。あのいけすかない堅物騎士が実は女だったなんて、なんつーお約束、じゃねえ、意外などんでん返しだったことか、きしし。

 まあ、ホムンクルス、めがねっこ、ネコミミときたら、そろそろボク女がくるって、予想がつきそうなもんだがな。

 それはともかく。

 おれは、こみあげてくる笑みを自制することなく、キースにむかって声をかける。

「なあ、そんなにしゃちほこばることはないだろ? いっしょに旅をしてきた仲間じゃねえか? 楽しいバスタイムといこうぜえ」

「ふ、ふざけるな! は、はやく出て行け!」

 硬質な震えを帯びた声が広い浴室にこだました。

 それを無視して、おれはブリーフを脱ぎ脱ぎする。

「だって、おまえの剣は、いま、マモンとお楽しみ中だしなあ」

 浴室の一角では、魔神同士のお医者さんがいよいよ佳境らしく、広げたマモンの股間にヴュルガー先生の指が入っていくところだ。

「ああん、先生のいけないお指がぁ……」

 気分を出してるなあ、マモンのやつ。ふだんはレズっこで、しかもタチ専門のくせに、意外と受けもできるらしい。

「くっ……ヴュルガーめ」

 悔しげに顔を歪めるキース。

「クラウゼヴィッツ家の宝剣でありながら、なんとあさましい!」

「まあまあ、そんなに堅いこといわないで、おれたちも楽しもうぜ」

 おれは左手をキースの胸元に伸ばした。

「触れるな、下郎!」

 あらま。手をはねのけられてしまった。

 それにしても、下郎て。

「おいおい、この状況で、そーゆー態度はないだろう」

 おれは両手を突き出して、もみもみポーズをつくる。

「そんなおっぱいしやがって、もんでくれ〜って、いってるよーなもんだぜ?」

 みごとな三角錐を描くキースのおっぱいを目で愛撫する。キースはふたつのふくらみを守るようにぎゅっと抱き締める。

「それにしても、どうやったら、そんな胸になるんだ? やっぱり、偽乳なんじゃねーか? シリコンでも入れてるとか」

「ばかな! どうして胸など大きくしようと思うものか!」

 キースが悔しそうに言う。

「胸を大きくするまいと、わたしがどんなに苦労をしたと思っている!? 板をおしつけ、布で身体をぐるぐる巻にし、寝るときは必ずうつ伏せになった――それでも大きくなるのをやめなかった憎っくき胸だ!」

「ほう、それはそれは、けなげな胸だな。ご褒美にチューしてあげよう」

「よせというのに!」

 おれが唇をとがらせて近づいていくのを、キースがキックで応戦する。

 いわゆる、猪木ーアリ状態だ。

「殺せ、ジャリン! おまえも剣士の端くれなら、騎士としてわたしを死なせてくれ!」

 キースが絶叫する。むろんおれの返事はきまっている。

「やだ」

 拒絶しつつ、キースにのしかかっていく。

「くるなぁっ!」

 蹴りがくる。

 おれはその足首を捉える。

 そうしながら、キースのサイドポジションをねらって、横にまわる。そうはさせじと、キースが床の上でくるりと向きをかえる。

 むう、まるで、総合格闘技の戦いのようだ。

 なんでもありなら、まけないぞ。

 キースの髪が床に広がっている。おれは、それを踏みつけた。

「あっ!」

 キースの動きが止まる。くけけけ、油断大敵。おれは一気にキースの横にまわって、その白い身体に覆いかぶさった。

「ひ、卑怯な!」

 悔しげな叫び。だが、セックスはルールのない格闘技みたいなもんだ。レフェリーもいないし、スリーカウントもない。反則上等、やったもん勝ちだ。

 おれはキースの豊かな胸に顔をうずめた。

 ふわふわでむちむち。そして、風呂で磨いたばかりの肌は、えもいわれぬよい香りがする。まさに女体の醍醐味。

「ぐっ!」

 嫌悪の表情を満面に噴出させ、キースがうめき声をだす。なんとかおれを振り払おうと、拳を固めて打ってくる。ってぇーな。

 おれはすばやくキースに馬乗りになると、体重をかけて動きを封じる。キースの両手首を押さえることも忘れない。おうおう、ウソのように細い手首だのう。

 おれは、キースの剥き出しの胸に唇をつけた。その部分が「吸って吸って」とやかましくねだってくるから仕方がない。

 舌先で乳首をころがしたおす。吸ったり噛んだり嘗めあげたり。そのたびにキースの眉が険しくすぼまり、まぶたに震えがはしるが、すんでのところで声を飲み込んでいる。

 だが、身体は嘘をつけない。口のなかに含む尖りが、次第にその体積を増していく。むずかしく言うと、乳頭勃起。

 キースの顔が赤く染まり、息が荒くなっていく。でかくて形がいいだけでなく、感度もなかなからしいな。

「気持ちいいんだろ? 声出していいんだぜ」

「だ、だれが、貴様なんぞに……っ!」

 おやま、強情な。

 だが、いつまで、そんな態度を保っていられるかな?

 おれは、右手のみでキースの腕の動きを封じると、空いた左手をつつつと移動させる。

 エロエロパワーをほとばしらせるイーブル・ハンド――邪掌の出番だ。

 邪掌をつかってキースの腋から腹を撫でさする。おれが触れた肌の下で、いかなる性感の奔流が駆けめぐっているのだろう。キースはさっきから目をぎゅっとつぶって、懸命に声をこらえているようだ。抵抗もやんでいる。

 うひょひょひょ、ほうれほうれ。

 おれの手はおもむろにキースの太ももに当てられ、じっくりと撫で上げていく。

「う……くぅ」

 おやまあ、意外とこらえ症のない。

 まあ、おぼこい小娘じゃなし、かなりハードなオナニーも繰り広げていたらしいから、これくらいは当たり前かもな。

 おれは、ムチムチの太ももの感触を存分に楽しむ。筋肉がよく発達しているが、ゴツゴツにはならない。適度に脂肪でコーティングされている。やはり、女の脚はこーでなくっちゃ。ダイエットだかなんだかしらないが、ガリガリ脚のモデル体型なんぞ、男から見たらなんの魅力もないのだ。脚を閉じたら、太ももがぴたっとくっつくかい? その上で、お股のところに三角形の透き間があったらベストだがな。

 そういう視点からすると、キースの太ももをは満点に近い。白くてすべすべで、掌に吸いつくような感覚。しかも、デルタ近くで、きゅうっと切れ上がっている。

 その内側のゾーンをなでなでする。

「くぅっ! やめろ! それ以上は……!」

 ひざを立てて抵抗しようとするキース。だが、それはむしろこちらの思うつぼだ。

 太股のガードがなくなったシークレットゾーンにむけて、おしりの方から攻め上がる。

「あっ」

 動揺したところにつけこみ、キースの両脚の間に腕をこじ入れ、強引に股を開かせる。

 ごっかいちょお〜!

「み、見るな、見るなぁっ!」

 キースは声をからし、どうするかと思いきや、バッと顔を手で覆ってしまった。

 泣いてるのか? なんかそんな感じだぞ?

 なーかしちゃった、なーかしちゃった、セーンセにいってやろ〜

 なんか、子供のころ、近所の女の子と遊んでて似たようなことがあったよーな。むりやりつきあわされたママゴトで、夫役を振られたので、当然の役得として夜の生活を求めたのだが、あのとき指を入れたら泣き出しちゃったみっちゃん、元気かな。

「でも、まあ、今回は、おたがい大人だし、合意の上だし」

「合意してないっ!」

 ともかくも、おれは、キースが正真正銘の女の子であることを確かめるべく、その部分をじっくりと観察することにした。じいー。

 さすがに大人だけあって、あそこの毛もりっぱなものだ。ココも金髪なのな。おれの女たちはパイパンか、せいぜいちょぼちょぼレベルなので、こーゆーのもいい感じだ。

 肌が白いだけでなく、粘膜にも色素が沈着していないせいで、性器が血の色に近い。くくく、充血してやがる。滞っているのは静脈血だから、紫がかった色になる。いやらP色だぜ、まったくもう!

 それにしても、使い込まれてないアソコだ。子供のような、とまではいかないが、端正な造花を思わせるつつましさだ。ふつう、キースくらいの年の女なら、咲き乱れて、いろんなお道具がずんべらぼん、という感じになってるのがフツーなのに。

「ここに、突っ込んだのか? あの剣の柄を……」

 おれは、マモンと遊び興じている魔剣ヴュルガーを見やった。

 白衣をまとったマモンが、鉛色の全身タイツ男にのしかかっている。 

「ヴュルくん、動いちゃダメよぅ。診察できないでしょぉ?」

 どうやら医者と患者の役が入れ替わったようだ。幼女医に局部を診察されてあえぐ、ぐるぐるマーク顔の巨漢――なんつーか、冗談のような光景である。

 そのヴュルガーの股間はすさまじく巨大化していた。こいつより小さくても自尊心は傷つかない。なにしろ規格外だ。

 マモンのちいさい口ではくわえことはおろか、しごくことさえ困難らしい。なんと、両手を使い、竿に抱きつくようにして、舌を表面にはい回らせている。

「おいおい、マジであんなの入れたのかぁ?」

 おれは、ヴュルガーの巨根とキースのアソコと見比べた。ぜったい、無理。残虐女体引き裂きショウになっちまう。

「ば、ばかもの……剣のときに決まっておるだろうが」

 キースは顔を手で覆いながら、それでも律義に訂正する。まあ、そうだろうな。

 それにしても、すごい光景だ。

 魔神同士のお医者さんごっこは、激烈過熱、地獄の闘争の様相を呈している。

 むろん、圧倒的に優勢なのは巨躯を誇るヴュルガーにあらずして、幼女にしか見えないマモンの方だった。

 マモンのやつ、ヴュルガーの巨大ちんぽに細い手足をからめ、はだけた白衣からのぞく薄っぺらな胸をこすりつけながら、亀頭に舌を這わせている。すなわち、全身でヴュルガーをしごきたてているのだ。

(うおう……うお……うううう)

 ぐるぐるマークが喜悦に歪み、その奥からよがり声が聞こえてくる。

「ほら、そろそろイッちゃいなさい」

 わ、ひで。

 マモンのやつ、指を鈴口に入れやがった。しょんべんの出る穴を、指でぐりぐりぐりと。

(うおおおおおおおお)

 ぐるぐるマークが複雑な指紋のように変形した。

「あは〜気持ちい〜でしょぉ? んね?」

 指を増やしていく。ついには五本の指をそろえて、ズコズコと。おいおい、手刀だぞ。

(ぬおおおおうおううう)

 ヴュルガーの苦悶の声。マモンの眼がきらきらと輝き、口元がきゅうっと三日月型に変形する。

 足で、タマタマを踏ん付けてやがる。身体のサイズが違い過ぎるからこその技だな。

「ヴュルちゃん、も、出していいよ〜」

 マモンが凄艶に媚笑しつつ、亀頭から手刀を引き抜いた。

「ぜ〜んぶ、のんだげる」

 その言葉がトリガーだった。ヴュルガーが腰を突き上げた。

 噴水。

 ねばっこくて、白い粘液を吹き上げる噴水って感じだ。

 栗林の中で花粉のシャワーを浴びたような、濃密な香りが漂う。

 だが、それも一瞬。

 鈴口に唇をつけたマモンは音をたててヴュルガーを吸い上げる。

 ただでさえすげー大量の射精を、さらに速度アップさせる。おそるべきスピードで精液が尿道を駆け抜けていき、快感が幾倍に増幅されているはずだ。

 これは死ぬ。やられたら死ぬ。気持ちいいなんてもんじゃない。魂すら吸い上げられかねない。精液が尽きたら、まんま、睾丸がシャーベット状にグズグズになってしまいそうだ。

「んく……くぷ」

 唇の端から白い泡をぷくぷくさせつつも、マモンは飲みきった。

 吸い尽くされたヴュルガーは、ふしゅううと気の抜けたような音をたててしぼんでいく。

 人の形を失い、剣の姿にもどる。それも、表面にうっすら錆さえ浮いた、なまくらっぽい剣である。

 これがあの魔剣だとはとても思えない。

「ん、もう、ヴュルちゃんったら、濃ぉいんだからぁ。でも、三百年ぶんくらいのせーえき、吸い取ったちゃったから、しばらくは人型にはなれないっぽいかも〜」

 口元についた白い粘液をぬぐいながら、マモンが笑った。

つづいたり。