ジャリン戦記 第三話 仔猫モノ騙り(第九回)
ターンエーが鼻髭をひねくりながら、アシャンティのおしりの間近に移動する。にたにた笑いながら、覗きこむ。
「おうおう、ケツの穴まで丸出しだな。これだから畜生は」
「にゃっ、にゃにゃにゃっ! 見るにゃっ!」
アシャンティが、身体を揺すり、しっぽを振りたてて、抵抗を試みる。が、四肢を結わえられているのだから、どうしようもない。
ターンエーは無造作にアシャンティの局部に指をかけた。ヒップを強引に左右に割る。割れ目がわずかに開いて、肉色が見えた。
「じゃぎゃああっ! ふーっ!」
産毛を逆立てている。
ターンエーはさらに開こうとしたようだが、アシャンティが激しく尻を振るので、いったん手を離した。その部分はすぐに閉じてしまう。
「まんこは、ほとんど密閉状態だな。まあ、ガキだからしょうがねえが」
「発情期まではまだ間があるからな」
ゾルドが言った。グラスの中の赤い液体をながめている。
「だが、アレを使えば問題ない。それに、ガキ猫を喜ぶ客もいるからな」
「今夜のショーには、きちんと仕上げた形で出せるようにしますよ――ちったあ傷がついちまいますがね」
グフがぐふぐふ笑いながら言う。
「鞭はあとだ。まずは、このまんこを使えるようにしてやろう」
ターンエーがいったん視界から消え、そして、次に現われた時には燭台を手にしていた。燭台には毒々しい赤のロウソクがセットされている。変な形だ。途中から二股になっていて、一方には火がついている。そして、もう一方はいわゆるチンポ型をしている。
どういう仕組みか、チンポ型の先端には液体が盛りあがっている――融けたロウだろうか。どうやら、一方の先端についた炎の熱が、もう一方の先端に伝えられて、チンポ型の先端のロウが融けているようなのだ。
じじじ、ロウソクが燃えている。植物っぽい芳香があたりに漂っている。
アシャンティの耳がびくびく動いた。顔を動かして、鼻をひくつかせている。激しい反応だ。
「気づいたか」
ターンエーの口許がいやらしくゆがむ。ついでに鼻髭も片方があがる。
「これは、オニマタタビとヨガリグサのエキスが混ざった特別製の張り型だ。しかも、ほどよく熱せられて、ちょうどいい柔らかさだぜ。こいつでおまえのまんこをほぐしてやるのさ」
「にゃっ……そんなの……効かないにゃ」
「強がりを言っても無駄無駄。ここはバイラル、深き森からはおまえら獣人どもが薬草をいくらでも運んできてくれる。しかも、魔導士の偉い先生が調合してくださってるんだ。効き目は抜群よ」
む。
気になる情報だな。助けに入ろうかと思ったが、もう少し状況を見守ろう。
ターンエーは、げへげへ笑いながら、張り型をアシャンティの尻に近づける。
「にゃっ、にゃああ、にゃめっ!」
熱を感じるのか、アシャンティの尻が逃げる、逃げる。でも、その動ける範囲はごく限られている。
「じっとしてろ!」
ターンエーがアシャンティのしっぽの付け根を握って引っ張った。
悲鳴が少女の喉を鳴らした。
グフも、アシャンティの腰を固定するのを手伝っている。
張り型の先端が、割れ目に接近する。真っ赤な亀頭部分が、熱いロウをしたたらせながら、仔猫の粘膜への攻撃を開始する。
「ぎゃにゃああああああっ!」
ねこふんじゃった状態でも、これほどの声は聞けないだろう。愛猫家のみなさん、すみませんねえ。
「あぢぢぢぢちっ、ぢにゃっ!」
猫舌という言葉はあるが、猫膣というのもあるんだろうか――って、猫でなくても熱いよな。
「ヤケドしそうだろ? でもな、これはヤケドをしないギリギリの熱さになるように作ってあるんだよ」
顔の凹凸をロウソクの炎で浮かび上がらせながら、ターンエーが狂気をはらんだ笑顔を浮かべる。
ゆっくりと張り型をアシャンティの性器にうずめていく。
「どうだ、わかるか? 熱いモンがおめえの道具の形にあわせて、形が変わっていくだろ? 中で融けて、流れて、うねって――気持ちいいだろ?」
半透明の赤いロウの張り型の中ほどまでが、仔猫の小さな性器に呑みこまれている。赤くゆらめく炎と半透明のロウソク――そのパーツひとつひとつは美しいが、使われているシチューションはけっこうえげつない。
「ひはっ、ひはっ、ひひ……ひっ」
アシャンティは目を見開き、舌をのぞかせながら、短く浅く息をしていた。灼熱感のせいだろうか、生っ粋の猫ならばほとんどかくことのない汗を玉のように肌に浮かべている。
「たいして痛くないはずだぜ? このロウは特製だからな。処女膜さえ破らねえ。だが、おまえのあそこん中に広がって、いま、粘膜にエキスをたぁっぷりすりこんでいる。それが効いてくりゃ、チンポが欲しくて欲しくてたまらなくなるんだぜ?」
そのロウソク、ちょっといいな。
「ふあっ、はあっ、にゃ……お……」
アシャンティの苦鳴を楽しむように、ターンエーの手が動く。張り型が、亀裂を押し広げながら、出入りしている。
冷えたロウが、土手に白くこびりついている。そこに、内部から漏れてきた赤いロウがかぶり、層を作っていく。
「ひ……ひは……にゃは……」
アシャンティの目の焦点がぼけている。開いた唇からたれた唾液が糸を引いている。
「効いてきたな? ケツが動いてるぜ」
グフがアシャンティのヒップを撫でながら言った。確かに、三角木馬にまたがった状態で、アシャンティのヒップが律動しはじめていた。
「ケツの穴をひくつかせているぜ。ここにも欲しいのか?」
指で、アヌスをいじる。アシャンティの排泄の穴は、ヒップの動きに合わせて引っ込んだり、盛りあがったりしている。括約筋をアシャンティが動かしているのだ。
「にゃぅ……らめえ……」
だが、その声はもはや拒絶からは程遠い。
「いいともさ。まんこは充分ほぐれたしな」
ターンエーが張り型を膣から抜いた。おお。なんか、変形しているぞ。微妙に曲がりながら、太くなったり細くなったりしている。表面にも刻印っぽいパターンが見える。立体版のマン拓だな。
張り型は外に出すと、また元の形に復元しはじめる。融け出して減ったロウの分は、火がついている側から融けて流れてきて補充されるようだ。なかなかうまくできている。
「さあ、お望みどおりケツに入れてやる――欲しかったら鳴いてみろ」
「に……にゃおおおおう」
アシャンティが喉を鳴らした。どうやら、欲しいみたいだ。
「ようし、いい子だ。いくぜ?」
張り型をあつかうターンエーは実に生き生きしている。きっと天職なんだろうな、こういうの。「働くお父さん」という題名で作文に書きたいくらいだ。
ぐ、ぬぬぬ。
ターンエーとグフが左右から協力してめいっぱい広げたアシャンティの肛門に、張り型を沈めていく。
「ふにゃっ、にゃううううう」
語尾が「るるるる」に近づいている。喉を鳴らしているのだ。
「エキスが効いてきたな? ケツでも気持ちいいんだろ?」
ターンエーが張り型を動かして、小さなヒップに異物をさらに侵入させてやりながら、質問する。
「にぃぃぃ、なああああああ」
身動きもならないアシャンティが、それでも身体を三角木馬にこすりつけるようにしている。見ようによっては、うっとりしている。
「ほうら、こっちもぱっくりと開いたぜ」
グフが、成果を確認するように、アシャンティの性器に指を入れた。
さっきまで、ぴったりと閉じていたその部分は、咲きほころぶ花弁のように開いて、ピンクよりもさらに濃い色の粘膜を露出させていた。そして、その奥からは、血のように赤いロウが漏出してきては、半固形化し、小さなオブジェを作りだしている。
「おほっ、中はぬるぬるだ。やっぱり、熱いモノをブチこむと、分泌がよくなるんだろうなぁ」
指を動かしながら、いいかげんなことを言う。
「しかし、まだまだキツいな。ちゃんと拡張してやらねえとな」
グフの糸のような目が陰惨に光る。手にしていた鞭の柄をべろりと舐めた。
「これで、仕上げておくか」
「おいおい、まず味見はゾルドさんがやるんだぜ? ひっちゃぶくなよ」
相棒のターンエーの忠告に、グフは顔をゆがませた。これがこいつの笑顔なのだ。
「なに、ゾルドさんのデカマラがちゃんとおさまるようにしてやるだけさ――いいですよね、ゾルドさん」
雇い主の意志を確認する。ゾルドは鷹揚にうなずいた。「まかせる」
許可を得たグフは鞭の柄――チンチンよりは細いものの、指とは比較にならない太さだ――をアシャンティのとろとろのあそこにあてがって、躊躇なく押し込んだ。
「ふなっ、んごおおおおうっ」
アシャンティの身体がびくびくっ、と三角木馬の上ではねる。
「へへっ、いいぜえ、もっと鳴け、鳴きやがれ、ケダモンが」
グフは心から楽しそうに――こいつも天職らしいなあ――鞭の柄を動かした。
ターンエーも、アヌスへの張り型攻撃をやめていない。
異物二本挿し。ちいさな身体へは過酷すぎる責めだ。
それでも、仔猫はすでに苦痛は感じていないようだ。例のオニマタタビ&ヨガリソウのおかげだろうか。むしろ、くちゅくちゅと湿った音が仔猫の股間からは聞こえてくる。あふれんばかりに愛液が漏出して、三角木馬にしみを作りだしているほどだ。
男たちも、ただ道具を使うだけではなくなっている。ターンエーは、アヌスホールを張り型でえぐったかと思うと、いったん抜いて、赤く爛れた肛門の粘膜を舌で味わっている。グフも鞭の柄ばかりでなく指も使って、割れ目の中を弄んで楽しんでいた。むろん、二人とも股間はビンビンで、パンツから半ば以上はみ出している。
「へへっ、すごい薬だぜ。おれたちまで変になっちまう……」
「そうとも。こいつがあるかぎり、獣人どもはおれたちの言いなりだ。魔導士さまさまだ」
うーむ、気になるな。ちょっと質問するか。
「その薬はだれが作ったのニャ?」
裏声だ。
「へっ、決まってるじゃねえか。おまえに指令を出したのと同じ、ディー様だよ」
アシャンティの尻の穴に舌をねじこんでいたターンエーが言った。おれの作り声に気づいてないな。
「ディー様ってだれニャ?」
「知るかよ。ギルドの偉いさんじゃねえのか? おれたちはカネと薬が手に入れば、それでいいんだからな」
クリトリスいじりに気をとられつつ、グフが答える。こいつらはアホだな。もっと訊いてやれ。
「ディー様と会ってみたいニャ。どこに行けば会えるかニャ?」
「おまえ、なにやってる」
頭上で声がした。見上げると、部屋の戸口のところにゾルドが立っていて、おれを見下ろしていた。
「な、なぜわかった」
「あのな。声の出所がぜんぜん違うんだから、普通わかるだろ」
「そりゃそうだ」
おれはすくっと立ちあがった。まあ、そろそろ頃合いだしな。
「てめえは――」
ゾルドはおれの顔形を認めたようだ。狼狽が走る。
「どうして、ここが!?」
「昨日の襲撃の礼が言いたくてな。さいわい関係者はだいたい揃っているようだ。あとは、ディー様ってやつの居所を教えてもらおうかな」
おれが言いおわるかおわらないかのうちに、ゾルドがきびすを返した。
「てめえら! やつを殺せ!」
グフが先に動いた。鞭を閃かせる。
おれはスキップしながらグフの間合いに入った。そして、振り下ろされつつあった鞭の先端を手でつかむ。
グフの糸目が丸くなった。わお、人体の神秘。
「なっ……てめえ、おれの鞭を――見切ったのか」
長い鞭ならば、その先端の速度は音の速度を超えることもある。が、調教用のしょぼい鞭ならばそれほどのものではない。まあ、それにしてもおれならではだが。
「おら、電気流してみろよ」
おれは鞭をつかんでたぐりよせながら言った。
「ザクとは違うんだろ。ザクとは」
「な……なに?」
意味がわからなかったらしい。だめだな。これだから最近の若い奴らは。
おれは鞭を引きつけた。グフの足が床を離れる。グフが悲鳴をあげた。てゆうか、手を離せばいいのに、律義なやつだ。よっぽど鞭が好きなんだろうな。赤ん坊のときに、ガラガラのかわりに鞭であやされたとか。
グフの四角い顔が近づいてきた。おれは首を横に傾けて、鞭を手放した。
重量感のある物体が顔の横を通過し、背後の壁に激突する。
ぐしゃ。
「う、わわわ」
ターンエーが後退りしつつ、おびえ声を出す。腕に覚えがなさげなタイプだな。アシャンティのケツの穴を舐めていた時の輝きっぷりがないぞ。
「くっ、くるな!」
火のついた張り型ロウソクを燭台ごと投げつけてくる。ぶねーな。おれは燭台の取っ手を空中でつかむと、ロウソクの火を吹き消した。火事になってはいけないからな。
「くるなっ、くるなくるなくるなーっ」
ターンエーはそこらにあったものを手当たり次第に投げつけてきた。ヒゲってそんな戦い方だっけっか?
飛んでくるものは、手錠だとか、ギャングボールだとか、革のピンヒールだとか、ディルドーだとか、浣腸用の注射器とか、そんなのばっか。SMショップか、ここは。
と思ったら、きらん、と光るものが飛んできた。
カミソリだ。剃毛プレイ用かな。こんなのあるんなら、投げるほかに使いみちあるだろうに。
はし。
おれはカミソリの柄を正確にキャッチする。ちょっとひやっとするよな、さすが。刃の方をつかんだら、ちょっとアレだ。痛い話が嫌いな人だと「どかーん」とか叫んで逃避しちゃうかもな。
カミソリを手におれはターンエーに近づいた。もう投げるものがなくなったターンエーは、ガタガタ震えながらおれの接近を凝視している。
おれはターンエーを睨みつけながら、ずっと言いたかったことを口にした。
「よくもヒゲなんか生やしやがって。剃ってやるぜ、シド・ミード」