ジャリン戦記 第二話
めがねっこ世にはばかる!(第五回)
「充分濡れていたはずなのになあ」
おれは腕組みをした。
隅で、エミィはすんすん鼻を鳴らしている。覚悟をきめた最初の一発に失敗したのだ。これがトラウマにならなければよいが。
「マスターが興奮しすぎるからいけないんです」
シータはさっきからずっと機嫌が悪い。
「わたしのときよりも大きくしていたんじゃないですか?」
「ははあ、シータ、おまえ妬いているな?」
シータの顔が赤くなる。怒ったようにそっぽをむく。
「妬くなんて、ありえません。どうせわたしは人形ですから」
「それはともかく、エメロンの処女膜を破らんことにはおれたちはここから出られないんだろ?」
「――そういうことに、なりますね」
シータも状況の悪化に思い至ったのか、ふくれていた頬をもとにもどした。
「おおい、エメロン、もっぺんしようぜえ」
おれは誘いをかけてみた。
エミィは激しくかぶりをふる。
「やですっ! もういやっ! 死ぬほど恥ずかしかったのに、恥ずかしかったのにいい」
「いいじゃねえか、もうケツの穴まで見せた仲だろ」
「勝手に見たくせに!」
「――だとさ」
おれはシータをふりかえった。
「マスターがもう少しやさしくしていればよかったんですよ」
非難がましくシータが言う。
「シータ、なんか魔法とかないのか。処女でもヌレヌレになって、おれの巨根でも受け入れられるようになるやつとか」
「さっきも言いましたが、この部屋のなかでは、ふつうの魔法は効くまでにどれだけの時間がかかることか……」
「じゃあ、媚薬とか」
「……たしかに、媚薬なら身体に直接作用するものですから、効くかもしれませんね」
そうでなきゃ、食い物を食っても餓える、ということになってしまう。
「きまり。媚薬を用意しろ」
おれは命令した。
「おれはひとっ走りイモリをつかまえくる」
「どこで、ですか、マスター」
シータが冷ややかな目でおれを見る。たしかに、このへんにはイモリとかマムシとかは棲んでいないだろう。いるとすれば紙魚くらいだ。
おれは腕組みをした。八方ふさがりではないか。
そんなおれに、シータはちらちらと視線を送ってよこした。
「材料なら……ありますよ」
シータが怒ったように言う。
「でも、マスターが意地悪ばっかり言うなら……むりですけど」
その表情、頬にやどった赤み、きらきらと光を帯びはじめた青の髪。その兆候から、おれはさとった。
おれはなにも言わずシータに手をのばした。
「あん」
抵抗するそぶりをするが、シータ、あっさりとおれの胸のなかに抱きとめられる。
「おまえ、さっきの見てて、興奮したな」
耳元にささやいてやる。耳たぶが赤くなっている。
「――おなかすいたんだろ?」
ホムンクルスの肉体は人間と同じ食物で維持できる。しかし、その脳細胞は契約したマスターの精液を必要とするのだ。
とはいえ、昨夜たっぷりしているので、ふつうならまだまだ耐えられるはずだ。それなのにシータが発情してしまったのは精神的な理由だろう。
「材料は、どっちだ?」
精液か、愛液か。
「ホムンクルスの愛液は……一定の条件がそろえば媚薬になるんです」
シータが顔をふせたままとぎれとぎれに言う。
へえ、そりゃしらんかった。どうりで金持ちのじじいが大枚はたいてでも欲しがるはずだ。
「条件は?」
「すごく、気持ちよくなったときに……」
「注文は承りました、マダム」
おれは抱きしめたシータの唇をうばった。シータは受け入れた。それどころか、飢えた小猫のように必死でしがみついてくる。
舌をからめる。今までにない積極さでシータは舌を動かした。
「マスター、マスタあ」
おれはシータの手をとって、おれの股間にいざなってやった。シータは指でおれの剛直をしっかりとにぎった。
「ああ……」
深いため息をつく。
シータは自分から跪き、おれのものをしごき、口にふくんだ。これもはじめてだな。今までは命じられたときしか、しかも食事のためだと割り切ってさえいそうな事務的さでしていたものだったが。
しゃぷ、ちゃぷ、ちゅう。
シータがおれのものをしゃぶり、舐めあげ、吸う。先端からにじみでるものさえ、シータにとっては甘露に感じられるらしい。
「マスター、おいしい……」
大きな目でおれを見あげている。
「いい出来だ。ほうびをやる」
おれは言い、シータを抱えながら横になった。身体を入れ替え、シックスナインの形になる。
シータはノーパンだ。しかも前後に張り型入りだ。そういや取ってもいいという命令はしなかったっけ。
なるほど。それなら前はこのままにしといてやろう。
おれは後ろの穴をふさいでいる栓をぬいた。
広がっていた桜色の穴が急速に閉じていく。いやらしい動きだ。
「うっ、う……」
シータがうめく。解放感のためか。
「舌をやすめるなよ」
いちおう、注意する。だが、シータには言うまでもない。シータにとっておれのチンポをしゃぶるくらい「グルメ」なことはないのだ。
おれはぬいたばかりのまだ温かい栓の匂いをかいだ。
ここがふつうの人間とホムンクルスのちがいだ。
まったく悪臭がしない。むしろジャコウの香水を思わせる芳香がする。舐めるとほのかに甘い。ホムンクルスの愛液が媚薬になるという話もこれなら信じられる。
「じゃあ、今日はケツだな」
おれは舌をのばし、シータの後ろの穴にめりこませた。
拡張されていたその部分はおれの舌の侵入を容易に許した。
「んうううっ、んうっ!」
おれのものをくわえながら、シータが鼻を鳴らす。チンチンに震動が伝わって、なんかいいかも。
サンキューの意味でシータの直腸を舐めてやる。うまい。ホムンクルスには雑菌もいないから健康面でも安心だ。まあ、人間の女相手でもおれはするけどね。
舐めるだけでは芸がない、おれは前の穴に埋まっている張り型を持って前後に動かした。
「うあっ、はあっ!」
シータは声をあげた。おれのものを噛まないように口から出す。
「あああっ、マスター、待って、待って……はああっ」
ケツを舐めながらアソコを張り型で刺激するというのは、さすがに初めての試みだ。シータも快感の大きさに驚いたらしい。身をよじって逃げようとする。
「だめだ。ケツでイカせてやる」
おれはシータの身体をつかまえると、背中から抱きしめる。膝の上にのせて、大きく股を割った。
「ああ……」
シータは観念したように目をとじた。
奉仕のおかげで、さっきのエミィのときよりさらに大きさと硬さを増したおれの幹を、シータのヒップの一点にあてがう。
「いくぞ」
「マスター……きて……」
「おう」
ぬりゅう。
まといつく感覚と火傷しそうな熱さを感じた瞬間、おれはシータのアヌスに挿入しおわっていた。
「うう……あ……」
拡張練習を続けていたものの、まだおれのモノはでかすぎるのか、シータの眉根に深いしわがよる。
しかし、痛いだけじゃあ媚薬ができない。
おれは張り型を動かした。回すようにしながら、深くえぐる。
「お……あ……ああ……あ……」
とぎれとぎれの声だ。太い異物をふたつ、小さな肉体に受け入れることによる痛みと、性感を刺激される快楽。そのふたつの境界線上にいまシータはいるのだ。
そのバランスを崩してやるためには……。
おれは腕をシータにまきつけ、胸をにぎった。布越しだが、シータの体温と早鐘のようにうつ鼓動が伝わってくる。
「マスター、胸は、や」
「ばかだな、さっき言ったことを気にしてるのか? おれはシータの胸、好きだぜ」
「ほ、んと?」
「ほんとだ。ほら、こうしたら」
乳首のとがりを指でつまみ、揉むようにしてやる。
「ひいっ」
鋭い感覚が走ったのか、シータの声が裏がえる。
「どう、シータ?」
「きもち……いい……」
涙声だ。
「こんなに感じやすいシータの胸、好きだ」
「……あっ、ああんっ! あっ!」
なにかが決壊したかのように、シータは声をはなった。おれが腰を動かしても、張り型をめちゃくちゃに動かしても、すでに痛みはなく、無色の快感だけが少女の全身を叩いているのだ。
「あっ、あっ、マスター、マスター、マスター……はああっ!」
おれはシータのお腹のなかに太くて長い槍を突き刺し、激しくかきまわした。そして、前の穴は張り型で存分に凌辱する。
「ひっ、ひいっ、ひあああっ!」
かつてないくらいにはしたない声を放って、ホムンクルスの少女は絶頂に達した。
おれも思いきり放っていた。シータの直腸のなかに。粘膜を通じて全身を満たしてやれるほどに。
シータの身体がおぼろに光をはなつ。最初の時と似ているが、色がすこしちがう。すこし赤みがかった暖かな光だ。
じゅぷっ、じゅるぷ。
粘った音とともに張り型を押しだすくらいの勢いで愛液がほとばしり出ていた。わずかに白濁したシータの快楽の涙だ。
おれはぐったりしたシータを抱えたまま、本棚に隠れてこっちをうかがっていたエミィの方にちかづいた。
「えめろ〜ん、お薬の時間だよお」