偉大なる助平FF(17)


終章 朱理

「この世界の人々をすべて無差別に交合させて――子供をつくるのです。われわれの世界の新たな担い手にするために」

 朱理の言葉に好男は首をひねる。

「子供を――さらっていくというのか?」

「ふつうの意味での子供ではありません――受精した瞬間に放たれる生命エネルギーそのものというか――胎児になる可能性そのもののことです。この世界の言葉でうまく説明できないのですが……」

 朱理が言葉に窮する。

「兄がいったように、この世界とわたしたちの世界は因果律で正しく結ばれているわけではありません。わたしたちの世界が、この世界の未来の姿、と決まっているわけではないのです。ただ、ごくごく近い時間の流れを持つ平行宇宙であるとすれば、その世界で『生まれるはずだった命』が、別の、ごく近いところにある宇宙で実際に肉体を持つ、ということが起こりうるかもしれません」

「――わりぃ、理解できない」

 好男は正直に告白する。頭のなかがこんがらがってしまう。

 朱理が考え考え言う。

「わかりやすい例えかどうかわかりませんが――生命という果実を盗んでいる――ようなものです。彼らは、この世界を作物を育てる苗床にしようとしているのです。すべての人を見境なしに交合させることで――」

「すべての人を――?」

 たしかに、あの島での出来事を思えば、それも可能だろう。島にいる者は老若男女問わず――老人と幼児が分け隔てなく肉体をむさぼりあっていたのだ。

 もしも、それが全世界に広がったら一体どうなるのだろう。ある種の宗教団体はそういう世界をパラダイスとして描き出すかもしれないが、その結実がすべて別の宇宙に流出していくのだとしたら――

「おれたちは養鶏場の鶏――産卵前に筋子をぬかれる鮭――みたいなものか」

「しかも、自分たちは幸せだと――愛しあっているから完全なのだと――信じこんだままで」

 美琴が口をひらいた。自分自身の体験と重ね合わせているのかもしれない。愛する助平に抱かれていると信じながら、好男に捧げてしまったおのれ自身の『初めて』を――

 好男にも美琴の想いは伝わった。悔恨が胸を焼く。

「その計画はどこまで進んでいるんだ!? とめることはできないのか!?」

「兄の送ったデータをもとにプログラムが走っているとすれば、おそらくは第一実験体――ごめんなさい――色事さんを中心に同心円状に人々を巻き込みながら伝播していくはずです。色事さんが過去に関係を持った女性――恋人――家族――その周辺のひとびと、というように……」

「恋人……家族!?」

 好男は目を見開いた。まさか、沙世や、親父までこの件に巻き込まれているというのか――

「防ぐ方法はないのか!? 助平にならできるんだろう!? やつはどこにいるんだ? 立体映像じゃなくて本人に会わせてくれ!」

 好男は焦燥から強い声を出して朱理に迫った。

「兄は……いません……」

 朱理が苦しそうに顔をそむける。

「もう……いないのです……」

「好男くん」

 美琴が触れてくる。好男は心臓がはねるのを感じながら、クラスメートの少女を振り返る。美琴の顔は思い詰めてはいたが、過度の怒りや怯えといったものは感じられなかった。好男に対する怒りや不信さえ、すでになくなっているように見える。

「助平さんのことは忘れましょう。いまなにかができる人がいるとしたら、それはあなたよ」

「美琴……」

 好男には美琴の態度の変化が信じられない。これではまるで、美琴が好男のことを――そんなわけはない。あるはずがない。

「たったひとつだけ、方法があります」

 朱理が聞き取りにくいほど小さな声で言う。

「それはなんだ!? 朱理ちゃん!」

 好男が勢いこむ。

 だが、朱理はなかなか答えようとしない。顔を赤らめ――身体を震わせている。

 詰まり詰まり、ようやくと言い出す。

「それは……プログラムとは別の方法で、子孫を私たちの世界にもたらすこと……です。この世界でおこなわれているのと同じ方法で――」

「それって――」

 好男はあっけにとられる。

「色事さん」

 朱理が思い切ったように顔をあげる。

「お願いです――どうか、わたしを――わたしを抱いてください。あなたの命の種を――わたしに撒いてください」

「なっ……なんだって……」

 好男は絶句した。

「それしか、ないのです……」

 朱理は耳まで赤くして、消え入りたげな風情でたたずんでいる。

「ちょっ……いま? ここで? 会ったばかりなのに?」

 好男は美琴の視線を意識しながら、しどろもどろになる。せっかく美琴の信頼を取りもどしたように思えるのに、これでは元の木阿弥だ。

 だが――美琴が動いた。

 好男の肩を押すようにする。

「好男くん……朱理さんにしてあげて。朱理さんが、それしかない、言うからには、きっとほんとうなのよ」

「でも……さ」

 反論しようとする好男を美琴が悲しそうに見つめている。

「いまこの瞬間にも、真由美ちゃんがどういう目にあってるか――それに、影響は色事くんにとって大事な人に広がっていくのよ」

「ああ……」

 好男は先ほど見てしまった真由美の痴態をまざまざと思い出す。そして突然、今まで体験したことがないほどの喪失感にさいなまれた。

 なぜだろう――どうしていままでこの気持ちに気づかなかったのだろう。

 大切なものを――意識しないまでも、ずっと胸の奥に秘めていた美しいなにかを、好男は自分の手で壊してしまったのだ――そのことに、どうして思い当たらなかったのだろう。

(真由美……)

 好男は幼なじみの少女の顔を思い浮かべた。好男を睨みつけている、生意気そうな顔を。

(待っててくれ……もう手遅れかもしれないけど……おまえを助けたい)

 好男は顔をあげた。朱理に向かって手をさしのべる。

「朱理ちゃん――おれでできることなら――できるかぎりのことをするよ」

「へへ、すげえな、あの親父。ついにてめえの娘にまで中出し決めやがったぜ。ありゃあ、妊娠まちがいなしだな。ただでさえ、排卵日周辺だってのによ」

 ひとつになったまま、抱きあって動かない父娘を眺めながら、長崎が嗤った。

「おじさん……沙世ちゃん……」

 真由美は長崎に組み敷かれながら、ふたりの姿を見ていた。いやらしい――あさましい――とはなにかがちがう。切迫した――追いつめられた――どちらかというとそれだ。なにかに追いたてられるかのように極太と沙世は交わり、果てた。

 なんだろう。ふたりを駆りたてたものは、いったいなんなのだろう。

 それと同じものが、真由美のなかにも潜んでいるのだろうか。

「あああっ!? 小出くんっ! いいっ!」

 すぐそばで、静香と小出がつながっている。小出は静香の乳房をめちゃくちゃにもみしだきながら、バックから腰を叩きつけている。静香の白い肌に赤い手形がつくほどの乱暴さだ。しかし、静香は感じているらしい。

「もっと! もっと握りしめてっ! ぎゅっと――ぎゅううっと!」

「こうかい、先生!?」

 小出が静香の胸をわしづかみにして、ぎゅりぎゅりと指を絞っていく。

「いひぃっ! いいわあ、小出くん――もっと、乳首を責めてぇっ!」

「先生の胸、どんどん張ってきたぜ――もしかして、おっぱいが出るんじゃねえか?」

 言いつつ、静香の尖った両の乳首をつまんで強く揉むようにようにする。

「きひっ!」

 静香がのけぞる。美しい鎖骨を浮かびあがらせて、苦悶と喜悦のないまぜになった表情をさらしている。

 びゅっ!

 静香の乳首の先から白いものがほとばしる。

「おほっ! 先生、マジに母乳だぜ!? 」

 小出は嗤いながら、乳首を引っ張る。

 じゅぴっ――ぴゅっ

 大きく上体をそらした静香のたっぷりとした両の乳房から、白くて細い線が円弧を描いた。まさにミルキーウェイだ。

「うああああっ! 気持ちいいっ!」

 まるで乳房から射精しているかのように、静香はわななく。

「センセって、もしかして、いま孕んだ? 色事オヤジのタネ? それともオレのかな――」

 言いながら、小出は握りしめた静香の乳房を上に向けて絞りあげる。静香の肩ごしに、飛び散る母乳を口にうけている。

「へへぇ、これがママの味かあ!? もっと出せよ、センセイ!」

「うあ……あっ……あっ……」

 静香は母乳をとびちらし、そのつどイッているらしい。

 あたりには静香の母性の匂いがたちこめている。

「やっぱ、センセの場合は、オッパイでやってもらわないとね」

 小出は静香の膣から男根を引きぬき、あおむけにさせた静香の、母乳でぬるぬるの乳房に男根をこすりつけた。ふたつのふくらみの間に男根をはさむと、擦りはじめる。

「ああ……センセのオッパイ、ふわふわですげえ気持ちいいぜ。お乳でぬるぬるになってるしな」

 乳首をつまむと、まだまだ噴出する。母乳まみれのパイズリだ。

「ほら、おれのミルクも飲んでくれよ、センセ」

 小出は先端を静香の口に受け入れさせた。静香は美味しそうに、小出の亀頭を吸いたてる。

「でっ、でそうだ――ううっ」

 中学生のペニスがふるえながら精液を吐き出していく。女教師はその命のしずくを顔面に浴びて、歓喜の声を放った。

「もっとぉ――もっと――いっぱい、かけてぇ……っ!」

 まだまだ静香の情欲は衰えないようだ。

 真由美は静香の狂いっぷりを見つめていた。たぶん、極太としているときの自分もああだったはずだ。あるいは、柔道部員たちと交わった時も――

「おい、真由美、先生のエロい姿をじっと見て――いやらしいやつだなあ?」

 長崎が真由美の乳房をなぶりながら笑った。

「おまえも母乳を出したいのか? 出るようにしてやろうか、ああ?」

 その重みと体温を感じて、真由美は嫌悪にふるえる。

「も……やめて……充分、でしょ」

「なにいってんるんだよ、これからだろ?」

 ひしゃげたような長崎の顔――いちばん嫌いなタイプの顔だ。整っていないからではなく、高圧的で、なんでも自分の言うなりになると信じて疑わない性格がにじみ出ているからだ。

 乱暴に吸いあげる。真由美の脳がビリビリしびれる。勝手に甘い声がでてくる。

「ああん……あっ……だめ、長崎くぅん……」

「おまんこもびちょびちょだな。色事オヤジにたっぷり中出しされたのが、たれてきてるぜ」

 中指と人差し指をぐりぐりと入れて、膣の奥で開くようにする。

「ああっ! いやっ! 中で……指がぁ……」

 真由美は身をよじり、声をはなつ。自分も沙世や静香と同じだと思う。抗えない。どんなにひどいことをされても、身体が受け入れてしまう。

 なぜなのかはわからない。

 心では拒んでいるのに、それが行動にならない。

(好男くん……あたし……どうなっちゃうの?)

 真由美は長崎の指の動きに夢中になっていく自分を感じながら、幼なじみのことを想う。

(お願い――たすけて――)

「ほうら、真由美、みろや。カメラ回してるぜ」

 はっ、とする。目をひらくと、そこにレンズがある。デジタルビデオカメラだ。長崎が片手に持って、真由美の顔をねらっている。

「い……や……撮らないで……」

 頭がぼうっとしていく。

「はは、真由美ぃ……おまえはほんとうにビデオ撮られるのが好きなんだな? もう、ここがヒクヒクしてて、たまんねえぜ」

「ああっ……うそっ……うそよぉ……」

「いやらしい姿を映してもらうのが好きなんだろ? それをみんなに見てもらいたいんだろ? ああ?」

「ちが……う……」

 必死で答える。身体が溶けそうだ。長崎の指がものすごく愛おしいものに感じられていく。

「ほんとうか? じゃあ、いいことを教えてやろう。おれたちの最初の作品な、ネットに載せたら大好評だったぜ? 『美少女解体新書――真由美14歳』ってタイトルでMXで共有したとたん、ものすごい数の変態どもがダウンロードしていったぜ。もう、何百人、何千人も、おれたちがハメまくってるところを見て抜いてるんだよ」

「う……うそ……」

 真由美はその光景を想像して慄然とした。無数の――顔も知らない男たちが、真由美の痴態をモニターに映して鑑賞している。そして、男根をしごきたてて――

 全身に快の震えがかけめぐった。無数の男の男根から白濁液が飛び散り、モニターのなかの真由美を汚していく。いまも、この瞬間も、その数を増やしながら。

「ほんとうさ。ネットにつないで見てみろよ。おまえはもう有名人だ。第二弾もネットで撒いてるところさ。『柔道部の精液便所・中学二年・大河原真由美』ってな」

「あはあっ! だめぇっ!」

 戦慄がとまらない。見られている。顔も胸もおしりもおまんこも――全部ぜんぶ、みんなに覗かれている――そしてその映像がどんどんコピーされて増殖していく。真由美の狂態が、快楽そのものが伝播していく。

(ああ――あたし――だめ――欲しい)

 震えがとまらない。

「へへへ、やっぱりおまえは撮られて、見られて、感じるんじゃねえか。指だけでイキやがって……この露出狂め!」

 否定できない。一度イッても、ぜんぜん終わりがこない。次々と波がやってる。

「おまえ、色事が好きなんだって?」

 カメラが訊いてくる。

「え……?」

「さっき、色事のオヤジにハメられながら、大声で叫んでたろ。廊下まで丸きこえだったんだぜ」

「う……うそ」

「うそじゃねえよ。よしおくん、大好きっ、と言いながらよがってたじゃねえか」

 カメラが責めたてる。真由美の表情を克明に映しとっている。

「あ……あ……だめ……いわないで……」

 指が三本になった――ようだ。ぐちゅぐちゅ音をたてながら、真由美を広げていく。

「色事がこれ見たらなんていうかな? 真由美がビデオ撮りながらだと、めちゃくちゃ感じちまって、だれとでも寝て、中出しOKなド淫乱だって知ったらよ?」

「いゃぁ……いわないれ……おねが……い」

「だめだ。おまえ自身で告白するんだ。このカメラにむかってな」

「らめぇ……らめ……」

「言えよ、真由美。ビデオ撮られんの、好きだろ? 正直に言えよ。でねえと、やめるぜ?」

 カメラが屈伏を強いる。記録をやめれば、「撮られている真由美」はその瞬間存在をやめてしまう。それは死に等しい。

「うっ……くぅ……やめ……ないで……」

「なら、言えよ、ほら。3、2、1、スタート」

 だめだ。もうだめだ。女優は、この言葉に逆らえない。

「うあっ……わたし……は、ビデオ撮られるの……好き……です」

「チンポハメられながら、だろ?」

「あああっ! そっ……そうです……ビデオ撮られて、チンポハメられるのが……だいすきなんですっ!」

「じゃあ、おねだりしてみろ。長崎さまのチンポをくださいって、言ってみな」

「ちょ、ちょうだい――長崎さまのチンポ――ビデオ、撮りながら、ハメてくださいいいっ!」

 真由美は両脚をつっぱり、腰を浮かせる。両手をヒップの下からまわして、秘肉が大きく広がるように左右に開く。

「チンポ――ちょうだいっ……ここにっ! 真由美のおまんこにっ……入れてぇ……っ!」

 言いながら、自分の子宮が蠢くのを感じる。挿入への期待――いや、もっと直接的に射精を求め、蠕動しているのだ。

「お願い……っ! 中で出して……孕ませてぇっ!」

 真由美は絶叫した。長崎が入ってくる。それに腰をあわせていた。手をのばしていた。場所がずれないように。自分が好きな角度でそれが挿しこまれるように。

「あああっ! いいいっ!」