偉大なる助平FF(3)


「このへん、道いりくんでるね」

 美琴が地図を見ながら半ば独り言のように言った。

 自分の記憶にとりこまれていた好男は、はっとわれに返った。

 歩くうちにラブホテルのような建物はなくなり、あたりは本格的なお屋敷街になっていた。それにしても、空き家が多く、さびれているのにはかわりがない。

 好男は、電柱に貼りつけられている住所表示を見た。

「番地とか、どうなってる?」

 このへんであることはまちがいないのだ。メモに控えられている助平の家の番地と照らし合わせれば、目的地のだいたいの場所がわかるはずだ。

「ええと、2の2361……7かな……?」

 美琴がメモを凝視しつつ自信なげに言う。中条先生は、その外見に似合わぬ悪筆で、とくに数字がまぎらわしいのだ。

「どれ?」

 好男は美琴が持っているメモを覗きこんだ。そのとき、ふうっ、美琴の髪の香りを感じた。どきり、とする。美琴のこの匂い、ぬくもり。

 思わず好男は飛び退いてしまっていた。不思議そうに美琴が好男を見ている。

「どうしたの?」

「ええと……その……」

 好男はしどろもどろになった。まさか、こんなことになるとは……。あの時、あんなことをしなければ。あの時、おれはこの子に――

 遮蔽カーテンの向こう側の情景に、好男は見入っていた。

 クラスメートの鳥羽美琴が全裸で、しかも股間をひらかれて、横たわっていた。

 美琴の発毛はまだかすかで、髪の毛と同様に猫っ毛でふわふわだった。

 恥丘の盛りあがりはまだまださほどでもなくて、子供っぽさが残っていた。

 大淫唇の色づきも薄い。今はそれが左右に開かれているので、内部までよく見えている。

 ぽろん、と飛び出している肉色の芽がクリトリスだ。思ったよりも立派だ。そして、小陰唇が薔薇の花びらのような複雑な構造を見せている。

 その部分が、好男のいる場所からわずか数十センチのところにあるのだ。

 助平がその部分を愛撫していた。

 指先で円を描くように刺激している。

 ゆっくりとした、単調な動きだ。それでも美琴には快感を与えているようだ。目隠しをしたまま、美琴は身体をよじり、甘い声をあげている。

 だが、助平自身は表情もかえず、ただ淡々と作業をこなしている風情だ。

 助平自身の欲望はどこにも感じられない。

 美琴は、しかし燃えている。助平の愛撫のなくなった自分の胸に自ら手を伸ばしていた。

「あっ……は……ああ……」

 自分で乳房を揉みしだいている。自分の身体についた炎をもてあましているのだ。

 切なげな指の動きだ。美琴は、もっと責められたがっている。好男は自分のものをしごきながら、そう確信した。

(ああ、もう……!)

 好男は左手を伸ばした。遮蔽カーテンをかきわける。美琴の肉体はすぐ側にある。

 触れた。

「あっ、はああっ!」

 美琴がえびぞった。好男の掌が胸に触れたとたん、電気が走ったようだった。

(なんて感触なんだ……)

 好男は感動した。何度触れても、女の子のこの部分の柔らかさには心を打たれる。

 たまらなかった。

 美琴の乳房を握りしめる。

「あっ……い……いたっ……」

 はっ、と思って好男は力をゆるめる。

「ごめんね、美琴くん。あんまりすてきな胸なんで、つい、力を入れすぎちゃった。でも、すこし乱暴にしても、いいよね?」

 助平が優しくフォローする。助平の視界からすれば、なにもない虚空から腕が生えだしてきたように見えているだろう。だが、むろん、すべての黒幕である彼が驚いたりはしない。

「はい……助平さんが……そうしたいなら……」

 視界をふさがれた美琴は素直に受け入れた。彼女のよりどころは、いまは聴覚と触覚だけなのだ。

 ほっとした好男は、おずおずと指に力を入れた。

 美琴の乳房の弾力がかえってくる。

 ドキドキした。クラスメートの胸を触っている。

 乳首にふれた。美琴がピクンと震える。固くなっている。指先で乱暴にこねる。

「んくっ……う……」

 美琴が声をこらえている。痛みがあるのかもしれない。それでも、耐えているようだ。

 指でつまんで、引っ張る。指の腹で押しつぶしてやる。それを繰り返すと、美琴の乳首は大きくふくらんだ。

(乳首、吸いてえ)

 好男の欲求が高まっていく。もう、手だけではがまんできない。

 そのとき、助平が遮蔽カーテンを開いた。首を突っ込んでくる。

 助平は好男に笑いかけた。好男はペニスを握りしめながら、片手を伸ばしている情けない格好だが、どうしようもない。

「鳥羽さんには見えないから、色事くんも参加しなよ」

 このカーテンの中の音は、外にはもれない。それでも開口部があるから、助平は小声だった。

「でも……さ」

 好男は躊躇した。もともとは、傍観者に徹するつもりだった。正直、助平がどんなふうに美琴を抱くのか、興味もあった。いままで、何人もの「実験」を重ねてきたが、助平が女性に触れるケースは皆無といってよかったからだ。

 でも、こんなシーンを延々見せつけられた上、美琴の肌に触れてしまった以上、もうこらえられなかった。

(これって、3Pか……すげえ……)

 好男は生つばを飲み込み、そしてズボンを脱ぐために手をかけた。このカーテンから出てベルトをカチャカチャ鳴らすわけには、いかない。

***

 好男は美琴の乳房に吸いついた。

(美琴のおっぱい……乳首だ!)

 クラスの男子だけで集まると、どうしたって話題は女の子のことになる。とくにクラスメートの女子の品定めだ。「あいつ胸でけーよな」だとか「もう処女じゃねーだろ」とか「やりてー」とか、そういったたぐいのバカ話だ。そんな際に、人気が集中するのが美琴だった。クラスの男子たちの妄想で、美琴は何度も裸にされ、よつんばいにさせられて、すべての穴に精液を注ぎ込まれていた。

 真由美を通じて比較的美琴と親しかった好男は、「おい、鳥羽のパンツ盗ってきてくれよ」などと話を持ちかけられたものだ。むろん、冗談である。

 中にはマジメに「鳥羽とつきあいてぇ」と言うやつもいたが、けっきょく、まともに告白したやつはいなかったようだ。素直で優しい性格の美琴に対しては、少し距離をおいて見守ってあげる、という不文律が男子たちのあいだにはできていたようである。

 なんだかんだいって、みんなどこかしらで美琴のことを大切にしていたのだ。

 その美琴の乳房に――好男はむしゃぶりついていた。

 乳首を吸った。

 舌で嬲った。

 美琴の白い肌にたちまちキス・マークが刻まれる。

「あん……ぃたっ……はあんっ……」

 乱暴な好男のペッティングに、美琴は身体をよじり、それでも苦情は言わない。

「助平さ……ああっ」

 自分の胸を蹂躙する男の頭を抱きしめようとするのを、助平がやんわりとおしとどめる。美琴の手首をつかんで、やさしく、囁きかける。

「ね、鳥羽さん、お願いがあるんだけど……」

「はい……なんでも……します」

「フェラチオ、してくれる?」

 美琴がかすかに息をのんだ。いまどきの中学生なら、その言葉が意味するところは――わかっている。それは美琴のような奥手な少女でも変わりはない。

 ややあって、うなずいた。

「します。助平さんのなら……」

 助平は好男の方を見て、優しげな笑みをうかべる。

(美琴に……しゃぶらせるのかよ……)

 好男はぞくぞくする感覚が背筋を這うのを感じた。

***

 好男は美琴の顔にまたがるようにした。屹立したものが美琴のほっぺたに当たる。

「つば、いっぱい出た? じゃあ、あーん、して」

 助平が好男の顔の横で言う。

 美琴は従う。

 かるく、助平が好男の肩を叩いた。行けよ、のサインだ。

 好男は手で美琴の顔をはさみ、開かれた唇の奥に、猛り立った部分を押し込んでいった。

「んっ……むうう……」

 美琴が呻きながら、それでも好男の男根を口にふくむ。唾液がからみつく。柔らかくて温かいものが触れてくる――美琴の舌だ。

「舌を――動かして? さあ」

 助平が言葉で美琴を操る。口がふさがっている美琴は、ふっふっ、と鼻からの呼気でなんとか服従の意志を伝えてくる。

「う……」

 好男は声をもらしかけて、歯を食いしばった。ここで声を出してしまったら――でも、美琴の必死の舌使いは、あまりにも刺激的だった。

「いいよ……美琴くん」

 助平が囁いている。それが、美琴の羞恥心やためらいを融かしてしまうらしい。美琴は懸命に舌を動かす。

「手で添えて、棒を下から舐めあげて」

 美琴は言われた通りにする。好男の男根を細い指でささえて、舌を裏筋に這わせる。

「睾丸もお願いするよ。一個ずつ、舐めてね」

 はむはむと美琴が口を動かす。好男の陰嚢がまるで甘い飴玉であるかのように、慈しみつつ舐める。

「あ……ううっ」

 好男は天をあおいだ。声をこらえるのが苦痛なほどだ。こんなに気持ちのいいフェラチオは初めてだ。助平の「研究」につきあったおかげで、それなりに体験は重ねたつもりだったが、ここまで快感は知らなかった。美琴の技量が優れているわけではない。むしろ稚拙だ。なのに、こんなに感じてしまう。それは、なぜなのだろう。

 はぷっ、と美琴は口を離した。ちろり、あかい舌をのぞかせて、その唇が笑みをつくる。

「助平さん……だいすき」

 目隠ししているから、表情はわからない。が、好男には、その瞬間の美琴の微笑みが見えるようだった。

 好きな人を気持ちよくさせている悦び――それが、美琴の舌から、指から、あふれ出しているのだ。それが、ものすごい快感をもたらしていたのだ。

「美琴くん、ぼくも、きみが大好きだよ」

 助平がセリフを読みあげるように言った。

「さあ、出すから、ぜんぶ飲んでね」

 好男の心臓がはねた。いいのかよ、と思った。

 こいつは、この美琴を見て、なにも感じていないのだ。自分に対して精一杯の恋心をぶつけてきている女の子をだまして、べつの男のチンポをしゃぶらせている。

 助平の手が好男の肩に触れた。その瞬間、好男の身体に電気が走ったようになって、身体の自由が効かなくなった。

 そのまま、美琴の開かれた唇に男根を突き入れた。

 美琴が必死で舌をからめてくる。好男はなにもわからなくなった。夢中で腰を動かしていた。美琴の首ががくがくと揺さぶられる。んふー、んふー、という息づかいと、唾液まみれの粘膜同士が触れ合う粘着質の音だけがあたりに響く。

「うあっ!」

 好男は、決壊した。

 クラスメートの口の中で、激しく何度も噴出した。

 身体に戦慄が走った。恐ろしいほどの快感だ。魂まで蕩けて、揮発してしまいそうだった。

 美琴の口からペニスをぬいたとたん、白い粘液が唇の端からこぼれ落ちた。それほどの量が出ていた。

「飲んで……美琴くん」

 助平が囁く。ほのかに口許をやわらげ、美琴を見つめながら。

「ん……」

 美琴ののどがこくん、と鳴る。

 口一杯に溜まった精液を飲みほしていた。

「どう? おいしい?」

 助平が訊く。純粋な興味から質問している、ようにさえ聞こえる口調だった。

 美琴は答える。幸せそうに。

「助平さんのだから……おいしい……」