偉大なる助平
SUPER
番外編
199なつやすみ
by うづきはじめ


18

「真由美ちゃん……」

 美琴はモニターのなかの出来事に打ちのめされていた。

 そのためか、いつのまにかドアが開き、背後に人の気配がしのびよっていることに気づかなかった。

 肩に、手が置かれた。

 悲鳴が喉を衝きかける。それをこらえられたのは自分でも不思議だった。

「すごいことになってますね。色事くんが盛大に<サマーメモリー1999>を使ったのかな。風向き的にはそうか、島の80%は影響を受けているようですね」

 ごく平静な助平の声。美琴は身体が小刻みに震えるのをどうしようもない。

「……どう、して……」

 ようやく声になったのは曖昧な問いかけだった。

「フェロモン物質というのはごくごく微量でも効果をもたらすんですよ。とくに<サマーメモリー1999>は分子レベルで脳に働きかけますからね。1ミリリットル分の噴霧で、そうだな、1万人以上――槍倒島のような密集地ではもっとかな」

 助平は化学の実験について語るように説明した。むろん、美琴が知りたいのはそんなことではない。肩に置かれた助平の手から逃れるように美琴は動き、そして、相手を見た。

 どんな表情を自分が浮かべているのか、美琴自身よくわからない。ただ疑問と、そして悲しい思いが胸のなかにわきおこっている。

 助平の表情には屈託はなかった。無邪気、とさえいえる。

「――ぼくは不思議なんですよ。人間の男女の営みというものが。生殖行為だ、と理解するにしてはあまりに頻度が高いし、だいいち妊娠・出産を目的としない場合がおおすぎる」

 美琴は答えない。答えられない。

「むろん、愛という概念が存在することは知っています。だが、その概念によっても、人間の性行為は説明できない。愛しあっていればかならず性交するわけではないし、性交の動機は愛だけではない。といって、たんに肉体的な刺激を求めているだけでもなさそうです。では、なんなのだろう。なぜ、人は身体を重ねるのか」

 スキダカラ

 とか

 キモチイイカラ

 それ以外に?

「コミュニケーションの方法なのかもしれない、と思いました。原生動物のなかにはたがいの細胞質をやりとりして情報を交換するケースもあるということですし、たがいの性器を接触させることで、医学のレベルでは説明しきれないなんらかの情報伝達があるのか、とも。単性でも増殖できるはずの生命がなにゆえに両性にわかたれたのか、その秘密もそこにあるのかもしれない」

 助平の言葉はさらに理解不能な領域に入っていく。

「だから、実験することにしたのです」

 実験? 美琴の心のなかに哀しみの雲がひろがっていく。

「――助平さんが言っていること……わからないけど……これは、助平さんがしたことなのですか?」

 これ、と言うときにモニター群のほうに顔を向けかけ、やめた。真由美が顔をゆがめて男根をほおばっているのが見えたから。

「そうです」

 助平はうなずいた。ああ、と美琴は思う。なんてこと。

「この槍倒島じたいがぼくの実験場のひとつなんですよ。だからあちこちに監視カメラがありますし、事態が外にもれないような仕組みもほどこしてあります。それに、いろいろな団体を招待もしています。実験結果が恣意的なものに左右されないように……。ちょっと今回はヘンな団体がまざってしまったようですけれど」

「なぜ? なぜ、そんなことを!?」

 助平は微笑んだ。いつもと同じ。底が見えない。

「このあと、鳥羽さんの記憶も操作してしまいますから、ここで教えてもしょうがありません。それよりも、身体が熱くなってきたんじゃありませんか?」

 助平があごをしゃくる。ほのかな香りがただよう。美琴はあとずさる。膝がふるえた。

 モニターが背中にあたる。

『あっ、あんっ、あはあ……』

 真由美の声がモニタースピーカーから聞こえた。いやらしい声。

 まゆみちゃん……

 親友の痴態がまぢかに見えた。見知らぬ少年とつながっている。黒光りするフランクフルトが出たり入ったりしている。なんていやらしい。

 美琴の股間が熱くなった。潤っていた。あまい香りを鼻先にかんじる。

 そして、美琴はその瞬間思いだした。なぜ自分がこの部屋に来たのか、その理由を。

 あの謎の通信――あれは――

19

「あっ、はっ、いきそうだ!」

 面堂が切迫した声をだした。

 かぽかぽと音をたてて、少女が面堂のペニスを吸いこんでいる。

 眉間にたてじわが刻まれて、すこし苦しそうだ。喉まで男根を押しつけられているのか。

「ううっ」

 面堂がうめく。

 腰を小刻みに痙攣的に動かす。

「ああ……あ」

 面堂が喉をさらして声をはなつ。

 出している。少女の口のなかに。

 蕩けた目をしたままの少女の喉がうごく。飲んでいる。精液を。

 のみほせなかった余剰が白い糸をひいて唇の端からたれる。

 その流出を惜しむかのようにピンク色の舌が動き、残滓を舐めとる。

「おいし……」

 真由美が笑う。すぐにその顔が切なくゆがみ、熱い吐息を吐きはじめる。

 あたるが腰の動きを再開したからだ。

 あたるは真由美とつながっていた。

 本格的なピストン運動だ。根元まで挿入し、半ばまでぬく。さらに押しこむ。体内で分泌した愛液が湿った音をたててあふれてくる。

「あっ、ああっ、あんん」

 真由美があえぎ声をあげる。楽しそうにあたるは笑った。

「自分で腰を動かしてるぜ、この子」

 真由美の腹筋が激しく波打っている。腰が円を描くようにうねっている。あたるはさらに腰の動きを激しくする。

「あっ、うっ、ああ……」

 あたるは腹を真由美に押し当て、強く前後に動いた。クリトリスの部分に自分の陰毛を密着させ、激しく刺激する。

 びくん、びくん、と真由美は腰をはねあげる。

「そこぉ、そこぉ、いいのぉ」

「へえ、きみ、気持ちいいんだ? もっとしてほしい?」

 真由美はうなずいている。何度も。

「してっ、してえっ! もっとグリグリしてえっ!」

「よおし」

 あたるは真由美の腿を肩にかつぎ、上からのしかかるように激しく腰をたたきつけた。

 いちばん深く差し込むと、腰をぐるぐるまわし、陰毛をクリトリスにこすりつける。

「あ、ああっ、気持ちいいっ、気持ちいいよおっ!」

「子宮のなかまで、とどいてるよ。先っぽに当たる。ほら」

 あたるはくいくいと腰を動かす。そのたびに、先端が真由美の体内の触れえざる部分を犯す。それが心地よいのか、真由美は身体を震わせ、あまい声をはなつ。

「うっ、すごく締まるなあ……もう、出そうだ……」

 あたるの声がくぐもった。動きがせわしくなる。

「うっ、あっ、ああっ」

 真由美も夢中であたるにしがみついている。

「いくよっ」

 あたるが二度、三度強く突きいれる。先端は真由美の子宮に届いている。

 そのまま、かまわず発射する。

 直撃を受けた衝撃からか、真由美の唇から声がはなたれる。感極まった声だ。

「ああっ! あっ! いっちゃ……う、いっちゃううッ!」

 そのまま真由美は動きをとめた。あたるにしがみついたまま、かるく失神したようだ。

「はああ、いっぱい出たあ。気持ちよかったあ」

 ぞんざいにあたるは真由美の身体をおしのけ、男根をぬいた。大量に射精したなごりが先端から糸を引いて、真由美の膣口とのあいだに橋をかける。真由美が大きくあえぐたびに、奥から白い粘液が押し出されてくる。

「諸干、次はぼくが入れる番だぞ」

「そーだな。おれはお口できれいにしてもらおっと」

 ふたりはそれぞれのポジションを交換した。

「ほら、ケツをあげろ。ぼくはバックからしてやるからな」

 面堂が真由美の腿を持っておしあげる。

 真由美は唯々諾々だ。自分から四つんばいの姿勢をとる。

 ヒップを高くかかげ、すべてを面堂の前にさらす。

 あたるは真由美の顔のほうにまわり、真由美の頬をペニスでぺちぺちと叩いた。

「ほーら、大好きなモノだよ〜。なめてきれいにして〜」

「あ……」

 真由美が顔をあげる。朦朧としている。

 あたるが導くままに、粘液にまみれたあたるのペニスを口にふくむ。

 しゃぶりはじめる。

「うっ、うまいなあ……。ね、気持ちいいこと好き?」

「すき……だいすき……」

「じゃあ、これって和姦だよね。ワカンってわかんないか、ぎゃははは」

「ばかな会話をしているんじゃない。気がちるだろ」

 面堂が吐き捨てるように言い、自分のものを真由美のヒップに挿入していく。

 なかなか入らないようだ。じりじりと腰を進めていく。

「ひっ」

 悲鳴をあげた真由美の目がかすかに恐怖の色をたたえる。

「や、そこは……」

「動くな、じっとしていろ」

 面堂は真由美のヒップをしっかりと抱え、固定する。

 ぐいっ、と引きつける。

「うあああっ、あっ」

 真由美は身体を激しく震わせた。

「おいおい、面堂、まさか」

「ふん、諸干が使った穴になんか入れられるか。さいわい、もうひとつ入れるところがあるからな」

 面堂は腰をゆっくりと動かして、にやりと笑った。