がくえん おうじゃ
学園王者2
〜真奈の異常な漂流〜
第十回 凌辱 

16

「う……」

 真奈はうめくことで自分の存在を知覚した。

 身体が浮いている。まるで宙を飛んでいるようだ。

 手足の自由がきかない。かなしばりにあったみたいだ。

 腕と脚が、広げられている感覚。大の字だ。手首と足首に違和感がある。

 真奈はゆっくりと覚醒していった。

 そして、目を開いたとき、すぐ眼前に巨大なカエルがいるのを見た。

「ふえ……」

 真奈は惚けていた。

 信じられないシチュエーションだった。

 目の前にはカエル人間と呼ぶしかない者たちがいた。

 ぬめぬめした皮膚。大きく額のあたりから飛び出している目。大きな口。たまに伸びる舌はびっくりするほど長い。そして、みずかきのついた四肢。それでいながら、直立しており、身体のバランスは人間に似ている。

 カエル人間は三人というか三匹というか、いた。

 真奈のことをめずらしそうに観察しているようだ。

 さらに、真奈の意識を萎えさせているのは、自分がおかれている状況だった。

 泉のそばの木立に、手首と足首をゆわえつけられていた。

 むろん、身体にはなにもまとっていない。服は泉の脇にたたんで置いてある。

「げこ。気が、ついた、ようだ――バアド」

 一匹のカエル人間が、人語をしゃべった。

「げげ。ほんとうだ、ようやく起きたか――ワーイ」

 もう一匹が大きな口許をゆがめた。もしかしたら、笑ったのか。

「ぐげ。まったく、手間を、やかせよって――ザー」

 最後の一匹が苦々しげな口調で言う。

 その異常な光景がさらに真奈の思考能力を奪った。

「よくも、聖地を、汚したな――バァド」

「おかげで、メスがはずかしがって逃げてしまった――ワーイ」

「せっかくの、繁殖期が、だいなし――ザー」

 真奈は視界がうるんでいくのを感じた。泣きそうだ。怖いというより、自分が狂ったのではないかというおびえが走る。が、ここは異次元なのだ、どんなことでも起こりうることだ、と心をはげます。

 三匹のカエル人間はみんなオスらしい。ほっぺたをぷくう、とふくらませてディスプレイ行動などをして見せるが、むろん、周囲にそれにポッとなるカエル少女とかはいやしない。

「こいつが、卵を、うめたら、なあ、バァド」

 カエル人間一号――バドととりあえず呼ぼう――が真奈を見た。

「でも、こいつも、メス、だろう、ワーイ」

 カエル人間二号――ワイが考えこみながら指摘する。

「そう、だな、卵をうめそうな、穴がある、ザー」

 カエル人間三号――ザーは真奈の股間を見ている。

 バドが真奈に近づいた。真奈は奥歯を噛みしめ、股を閉じようとする。が、できない。足首を蔓のようなもので結わえられているのだ。両手首も同じだ。

「へんな、こぶが、ついているな」

 バドは、真奈のむき出しの乳房をしげしげとみつめた。

「これは、なにかの、病気なのか?」

 水掻きのついた手で、胸のふくらみにふれる。

「いやっ!」

 真奈はそのぬめぬめとした感覚に悲鳴をあげる。

 バドは、めずらしそうに、真奈の胸をさわっている。

「これは、おもしろい。ふわふわしている、ぞ」

 カエル人間のメスには乳房はないのかもしれない――おそらくそうだろう。ごく稀なケースを除いては、卵を生む生き物は授乳するということはしないだろうからだ。

 もにもにと真奈のバストをもてあそぶ。

「このまんなかの、ポッチは、なんだ」

 桜色の乳首を指先でつつく。

「きゃっ」

 真奈は悲鳴をあげた。

 乳首を、左右交互にいじられている。つまんで、ひっぱられた。

「やめてえ」

「ほう、かたく、なった、バァド」

 真奈の乳首が勃起していた。これは、刺激に対する反応だ。真奈の意志ではどうにもならない。

「おもしろ、そうだ、おれも、さわる、ワーイ」

「おれも、ザー」

 カエル人間たちは、どうやら真奈の身体で遊ぶことに決めたらしい。

 *

 *

「これで、十八人、だ」

 太助は疲労困憊した表情で報告した。

 かたわらでは東南アジア系の男たちが酩酊状態でラリっている。

「うひゃーう、もーのめな〜い」

 などということを自分の国の言葉でのたまっているようだ。

「この人は?」

 小夜子がノートにメモをとりながら確認する。

 太助は目の下に濃いくまを作っていた。いまにも倒れそうに憔悴している。

「アマンダたちの例に似ている。自分の好きな飲み物が際限なくでてくる場所だった。このおっちゃんは酒好きで、どうしても離れたがらないから、手間取ったんだ」

「今回の異次元世界の特徴かしら? これまでの例をみると、お菓子、ビキニの女の子、お金、フィギュア等のおもちゃ、そしてお酒――それぞれがいちばん好きなものが望むだけ出てくる場所ばかりね」

「なんちゅーか、助ける気がうせてくるぜ、ったく」

 太助は倦み果てたようにつぶやく。

「みんな、帰りたくない、帰りたくない、と言いつづけるんだ。日本にきて、こんなに幸せを感じたことはなかったって。もどれば、また苦しい生活が待っている、日本人にはバカにされ、仕事はなく、つらいことばっかりだと。一生ここにいられればそれに越したことはないってな」

「うーん、むずかしい問題ね、それ」

 小夜子が腕組みをする。

「でも、はっきりしていることは、異次元世界はわたしたちの本来の居場所ではないってことよ。現実世界にはたしかに矛盾や限界はあるけど、わたしたちはこの世界でがんばるしかない」

「言葉ではわかるよ……でもな……」

 太助は視線を動かした。アマンダが心配そうな表情をうかべつつも、もどってきた仲間をねぎらい、飲み物などを与えている。

 救出作戦がはじまってすでに三時間以上が経過している。だが、ハルキと真奈が落ち込んだルートはまだ発見できていない。

 むろん、太助としても捜している。何度か、それらしい痕跡も見つけた。だが、あとすこし、というところで、痕跡は失せ、べつの異次元世界にぶつかるのだ。そして、そこには楽天荘の住民がいたりするのだった。

 そうなると、現世に連れて帰らざるをえない、だろう。

「住民記録によると、あとふたりね」

「インド人留学生と、ハルキだ」

 太助は苦いものを吐き出すように言う。

「そして、真奈と」

 真奈の家には小夜子が連絡をいれていた。生徒会の用事で残ってもらっている、と。むろん時間稼ぎだが、これ以上遅くなると、事実を報告しないわけにはいかない。そしてそれは、事件を学外に出すということであり、生徒会と学園王者の敗北を意味する。

「じゃあ、行ってくる」

 太助はきびすをかえして楽天荘の玄関にむかう。と、よろめいた。

「だめよ!」

 小夜子が後ろから抱きかかえる。

「限界よ。次元わたりはただでさえ体力を使うんでしょう?」

「ゆうべは、もっと長時間もぐっていたよ」

「昨日とは条件がちがうわ。もう二〇人ちかくも救助しているのよ。身体がもつはずないわ」

 太助にもそれはわかっている。昨日は浅い階層で次元トンネルの崩落を直していただけだ。時間はかかったが、現実世界との時間のギャップもそうはなかった。

 しかし、深いレベルまでもぐることで、そのギャップは飛躍的に大きくなるのだ。実際のところ、現在の太助は、まる三日ぶっつづけで動きつづけているようなものだった。

「今までの例からして、だれも危険な目にあっていないわ。むしろ、ほしいものがなんでも手に入って、気楽に過ごせる場所だったのよ。志村さんたちもきっと大丈夫よ。今日はもう休んで、明日、再開すればいいわ」

 小夜子の声からはクールな響きが消えていた。ほんとうに心配しているらしい。

 それは太助にもわかる。だが、そうはいかないのだ。

「待ってるんだ、真奈が……」

 つぶやくように言うと、小夜子を振り払って――振り払えるほどの力も残っていなかったのだが―― 一歩を踏み出した。

 そして、そのままくずおれた。

「太助クン!」

 小夜子が駆けよる。そしてアマンダも。

 二人の女に抱きかかえられた太助はそれでもうわごとのようにつぶやいている。

「まってろ、いま……いくからな……」

「もうイイよ! タスケ! このままだとアナタしんじゃうヨ!」

 アマンダが泣いている。

 だが、タスケにはもうその言葉も届いていないようだ。うつろな目をひらき、手足を動かそうとしている。自分ではまっすぐ歩いているつもりなのかもしれない。

 小夜子が一瞬まぶたをとじた。

 それから、開いた切れ長の瞳をアマンダのほうにむける。

「この建物に浴室はありますか?」

 突然の問いにアマンダは目をまるくする。

「キョウドウの、おおきなおフロがあるネ。ワタシはつかわないけど、ほかのヒトたちはつかってるネ」

 小夜子は瞬時に結論を出したようだ。

「アマンダさん、手伝ってもらえます?」

「ナニを?」

 驚いたようにアマンダは黒髪の美少女を見つめかえす。

「本来なら、わたしと、奉仕隊の仕事なのですが、この時間では奉仕隊のメンバーに呼集をかける時間がありません。だから、手伝ってほしいのです」

 小夜子の言葉の一言一言をアマンダは必死の面持ちで聴いていた。

「それは、タスケのタメになることネ?」

「もちろんです」

「だったら、ヤルよ。なんだってスル」

 アマンダは深くうなずいた。

 *

 *

 楽天荘の浴室は、湯垢まみれで、けっしてきれいではなかった。

 壁には、極彩色のラクガキなどもされている。

 ヒンズー寺院の内部を一瞬おもわせるような意匠と色彩だ。

 浴槽には湯がはられていた。

 貴水小夜子生徒会長が浴室にあらわれた。

 小夜子は全裸になっていた。17歳のまぶしい肢体だ。

 真っ白な肌に、ひきしまった身体。スレンダーなのに、胸の隆起はゆたかで、いささかもたれていない。

 脚も長い。腰から腿にかけてのラインは、一流モデルでさえため息をつくだろう。

 小夜子はメガネをはずしていた。実際には視力はコンタクトレンズで矯正していて、メガネはダテなのだ。

 浴室にはもう一人の女がいた。

 アマンダだ。

 こちらは褐色の肌に豊満な肉体の持ち主だ。

 子供をひとり産んでいるとはとても思えないスタイルだ。小夜子ほどの完璧さはないが、その多少のルーズさがかえって魅力にもなっている。

 なにより、胸の大きさは小夜子以上だ。乳輪も大きい。

 そして、浴槽のなかに、一陣太助がいた。むろん、裸だ。小夜子とアマンダで協力して脱がせたのだ。

 疲労の極みで、ほとんど昏睡といっていいほどの深い眠りについていた。

 ふつうなら、数日は目覚めないだろう。いや、それ以前に、常人ならば衰弱死しているかもしれない。

 異常事態に対するなみはずれた適応能力を持つ学園王者だからこそ、昏睡ですんでいる、といっていいだろう。

 太助は浴槽の壁にもたれかかって、浅く速い息をしている。

 小夜子とアマンダはたがいに顔をみつめ、うなずくと、浴槽に入った。

 湯温はぬるめにしてある。

 体温よりもやや高い程度だ。正確にいえば、内臓の温度に等しい。

 小夜子は太助の身体を抱きかかえた。母親が幼子をいだくように、自分の胸のなかに太助の顔をおさめる。

 その双眸に、愛しいものをみつめる色があらわれる。

「太助クン……」

 小夜子は、自分の乳房をねむれる太助にあたえた。

 太助は無意識のうちにか、小夜子の乳房に吸いついた。

 飢えた赤子のように、乳首を吸いはじめる。

「タスケ……」

 アマンダは、湯のなかで太助の下半身を浮かばせて、そして、萎えた男根を手で支えた。

「前みたいに……ゲンキださせてあげるネ」

 口をひらき、太助のものを受け入れた。

 舌をからめる。

「小徳学園、奉仕隊の心得――そのいち」

 小夜子がつぶやくように言った。

「力線の重なりし場所で、学園王者の男根に力を注がしめよ――」

 *

 *

 その、ころ。

 真奈は三人のカエル人間のおもちゃにされていた。

 よっぽど乳房がめずらしかったのか、三人がかわりばんこに、もみしだき、乳首をいじった。

 真奈としては身をよじって悲鳴をあげるしかないが、カエル人間たちにはその反応がおもしろいらしく、さらにいじられる。

 そうこうしているうちに、真奈もぐったりとし、血の巡りだけが活発になるという状態になってしまった。

「はあ……はあ、はあ」

 真奈は身体の力をぬいていた。

 嫌悪はむろんある。が、ねとねとしたカエル人間の舌の感触は異常に心地よかった。

 なぜなのか、自分でもわからない。

 かつて、このようなおぞましいバケモノに凌辱された夢を見たような気がする。

 ゴキブリのような、軟体動物のような、ヌメヌメの嫌らしい生物によって、全身をまさぐられ、何度も絶頂を迎えさせられたような記憶が身体にのこっている。

 その記憶は、真奈の深層心理にわだかまっていた、のかもしれない。

 それが欝積して、真奈の性欲をいびつに育てていた、のかもしれない。

 真実はだれにもわからない。

 ただ、真奈は感じていた。吐き気を催しながら、快感をえていた。それは事実だった。

 カエル人間たちはいれかわりたちかわり、真奈の乳房をもてあそんだ。

 脇の下をくすぐり、あばらのあたりをなで、腹部をさわった。

 ああ、と真奈は思う。

 ――てほしい。

「どうした、バァド?」

「さっきから、腰をふってるぞ、ワーイ」

「肢のあいだをさわってほしいのか、ザー」

 真奈は顔を真っ赤にして首を横にふった。でも、その部分は、すごいことになっている。

 カエル人間の手がのびる。水掻きのある手が、真奈の秘部にふれた。

「ふあっ!」

 腰がはねる。脚はとじられない。カエルの指が、動いている。

「ねちょねちょだ、バード」

「やっぱり、ここから卵をうむんだ、ワーイ」

「だが、アナはふたつあるぞ、ザー」

 カエル人間たちは合議をはじめた。

「やっぱり、このアナをちゃんとしらべよう」

 ザーがのぞきこむ。

「このアナ、ビラビラにかこまれていておもしろいな」

「い、いや……」

 真奈は喉がふさがった。カエル人間の手で、股間がひらかれている。恥ずかしい肉のあわせめが、粘膜でおおわれた生物の手によって、全開にさせられる。

 クリトリスも、膣口も、さらされてしまっている。

「奥を、しらべて、みろ」

「指、とどかない」

「ならば、舌を、つかえ」

「そう、しよう」

 ザーが、真奈の膣の入り口に舌を当てた。

 舌が、のびる。

「うあっ……あああっ!」

 細い、しかし、ねとねとした物体が、真奈の身体のなかにうちこまれる。

 それは思いのほか内部で硬くなり、そしてまた柔らかくなったかと思うと、真奈の内部へと侵入をすすめる。

「おお、おくが、ふくろに、なっている」

 舌をのばしながらも、ザーは器用にしゃべった。

 真奈の中で、舌が動いている。お腹のなかを、にゅちゃにゅちゃするものがはいまわっている。

「ひだが、たくさんある、な。ざらざら、している」

「そこから、卵を産む、のか?」

「かも、しれん。だが、フンのにおいはしない」

「それは、へんだ」

 カエルには産卵も排泄も同じ穴からするのだ。つまり。

「おお、こっちだ」

 もう一匹のカエル人間ワーイが、真奈の後ろにまわって言った。

 舌を、真奈のおしりの穴の周囲で動かしている。

「フンの、においがする。このアナだ」

 ワーイの舌が、侵入してくる。

 おしりの中にだ。

 一方で、性器に入った舌もせわしなく動いている。

 真奈は背筋をそらす。電撃的な感覚が絶え間なく全身を襲っている。

「ひっ……ひいいっ」

「おう、なんだか、汁がいっぱいでてきたぞ」

 真奈の性器を探っていたザーが言った。

「やはり、こっちのアナかもしれん。人間は、かわっているからな」

「ならば、両方のアナにおれたちの輸精管を入れてしまえば、まちがいない」

「では、さっそく、しよう」

 バドが言った。股間から、赤い粘膜でおおわれた組織が勃起している。人間のペニスとやや似ているが。もっと毒々しい血の色だ。長さは三十センチくらい。直径五センチはある。

 真奈の背筋に戦慄がはしる。

「いや……いや……やめて……」

 頭のなかがくらくらする。あんな大きなものが入ってきたら、どうなってしまうのだろう。

「腰がくねくね動いているぞ」

「ほんとうは入れてほしいんだ」

「たっぷり、精液を注ぎ込まれたいんだ」

 真奈の腰は意志に反してゆっくり上下に動いていた。まるで挿入を待ち受けるかのようにだ。

「ちがう、ちがうう!」

 真奈は叫んだ。こんなのあんまりだ。悪い夢だ。たしかにエッチな想像はしたけど、そんな目にあわされるほど悪いことをしてはいない――はずだ。

「ちがわない、バァド」

 バドが真奈の腰をかかえる。

 股間の粘膜どうしをこすりあわせはじめる。

 鋭い快感が真奈の意識を灼いた。

「くはっ、あっ!」

「ぬるぬるで、気持ちいい、バァド」

 カエル人間の生殖器の先端が真奈の入り口を探っている。粘膜同士がじかに触れあっている。くちゅくちゅ音がしている。

「入る……入る……バァァァド」

 戦慄が耳の後ろを駆けぬけ、背筋が震える。真奈は絶叫した。意識が灼熱する。

 そのとき、真奈は自分のなかから二種類の声がわきおこってくるのを感じた。

 ――もっ、もうガマンできないっ、入れて、入れてええっ!<カエル編最終回へ>

 そして、もうひとつは

 ――太助ちゃん、たすけて……!<太助編最終回へ>

 つづく!