ゼロの使い魔

ルイズのねこ耳にゃんにゃんNIGHT!

 

8(承前)

 マリコルヌは、ルイズの乳房にイタズラを開始した。

「ルイズのオッパイ……これがオッパイか!」

 つぶやきながらマリコルヌはルイズのピンク色の乳首を指でクリクリと転がす。

 乳房全体としては小さくても、女の子の乳首は男のそれとはまったく異なる。ぷっちんと膨らんで、ひたすら可愛いらしい。

「あッ! そこ……敏感だから」

「すげえ……すげえ」

 乳首を指でつまみ、引っ張る。

「ひゃんっ」

 乳首を責められてのけぞるルイズ。その部分を自分以外の指で刺激されるなんて……

 マリコルヌは両手で、ちいさな膨らみをもみしだく。握りしめる指の間から、柔肉がむにむにとカタチをかえながら出たり引っ込んだりする。

「大きくはないけど、やわらかくて、あったかくて、乳首が硬くなってて……最高だ!」

「んっ、サイトは……大きいほうが……いいの?」

「今まではそう思ってたけど、実際さわってみると、これはこれでいいな」

 親友の彼女のオッパイだしな、とマリコルヌは思う。それにしても、いま、ぼくのことをサイトって呼ばなかったか……? もしかして、ぼくのことをサイトだと勘違いして……?

 性感を高めるのは適度な背徳感だ。

 もとよりマリコルヌにとってサイトは親友であり戦友だ。ルイズは同級生で、学園でもトップクラスの美少女だ。胸が小さく性格もツンケンしているからこれまでは射程外だったが、目の前に差し出されたオッパイを触らずにいられるほどマリコルヌは義理堅くない。それに酔ってるし。無礼講だ。

 親友の彼女とエッチ――なんて興奮するシチュエーションであることか。

 目の前のオッパイにむしゃぶりつく。

 小粒の固い突起を吸い上げる。

 あまい、少女の肌の匂い。わずかに汗の香りも混ざっている。でもいい匂いだ。

「あっ、あっ、そんな、強く……っ」

 思わず声を上げるルイズ。マリコルヌの頭を抱え込むようにする。

(なんだよ、感じまくってるじゃん、ルイズのやつ)

 ルイズの、薄い、でも男の子ではありえない柔らかな胸の感触を顔いっぱいで感じながらマリコルヌは思う。

(これならば、もっとしても大丈夫だよな?)

「なあ、おれたちにもオッパイ、さわらせてくれえ」

 ほかの男子がせっついてくる。マリコルヌはその場所を譲ってやり、ルイズの股間に顔を近づける。

「あ、あん、オッパイ、そんな」

 二人の男子に左右の胸を揉みしだかれ、あえぐルイズ。

 そんなルイズの股間からは、興奮した少女の匂いが漏れ出している。

「ルイズのアソコ、こんなに濡れてる!」

 そこはすでに愛液に濡れてヌルヌルしている。マリコルヌは、指で陰唇をつまんで、左右に――

「だめ、そんな……広げないで」

 くぱぁ。 赤い肉の華がはぜたような部分までを晒されて、ルイズはのけぞった。

「ほら、こんなにトロトロになってるよ。指を入れちゃうぞ」

「だめ……っ、だめなの……そこは……」

 くちゅぅ……

「おっ、指に吸い付く、きゅっと締まる。これが、オマンコかぁ……」

 マリコルヌはルイズの性器を指でもてあそびながら感動に包まれていた。

 指を締めつけてくるルイズの秘部。まだ陰毛もほとんど生えていない子供のようなオマンコだ。

 でも、想像していたよりずっときれいで可愛い感じがする。真っ白で、肉がはぜたところはピンク色で――

 ヌルヌルしてて、熱くて、うねるようにマリコルヌの指にまといつく。

「そんな……おく……まで……だ、めええ」

 ルイズが泣きそうな声を出す。マリコルヌに膣奥までいじられて、感じているのだ。

 無意識にだろうが、腰をくいくい動かしている。まるでマリコルヌの指をもっと奥まで求めるように。

「ここ、クリトリスだよな」

 マリコルヌは、ルイズの股間の突起を物珍しそうに撫でる。

「ひゃひッ!」

 最も敏感な部分に刺激をうけてルイズは愛らしく声をあげる。

「やっ……そこは……だめぇ」

「だめじゃないだろ? 触ってくださいだろ? だって、ピンク色のポッチがひくひくしてるじゃないか」

 マリコルヌはルイズのクリトリスを包皮からつまみ出す。

「ひゃうううん、ンッ!」

 身をよじる。逃げたそうにするルイズだが、左右からがっちりと男子たちに押さえられ、動けない。

 その間も乳房を愛撫されている。乳首を同級生の男子達に吸われている。

 そして、クリトリスを刺激されつつ、膣内部を指でまさぐられている。

 ルイズは快感の余り、甘い鼻声をもらした。

「あぅんんんん……んんーっ! そこ、らめぇ……らめなのぉ……」

 そのあえぎの色っぽいこと。

 まわりを取り囲んでいた男子たちが「くぎゅううううううう」と謎のうめき声をあげながら萌え死にするレベルだ。

「はあん、指がぁ! サイトの指が、気持ちいいのぉ!」

 マリコルヌの指が中をこすりたてるたびに、ルイズは軽くイキかけているようだ。

「ルイズ、今度は舌で可愛がってやるからな」

 マリコルヌは言いつつ、ルイズの股に顔を埋めた。

「ああ、やぁ、サイト、そんなとこ……きたないよぉ……」

 声をあげるルイズ。だが、そんなこともあろうかと、泉で念入りに洗ってきたのだ。

(ああ、なめてる……私のアソコ……サイトがなめてる……ぅ)

 実際はマリコルヌが舐めているのだが、ルイズは恥ずかしさと気持ちよさと幸福感に酔いしれた。

「すげえ、どんどん出てくる」

 マリコルヌはルイズの膣口に唇をつけ、舌で中をなめ回す。ルイズのラブジュースを甘露のように味わった。

 皮から顔を出したクリトリスにもキス。そうするとルイズが感じて身体に力をこめるのがおもしろい。

 クリの根元を舌で刺激してやると、特に可愛い声で鳴く。また、中は入り口から少し入ったお腹側の壁が弱いようだ。そこを指でこすると脚をじたばたさせて暴れながら悦ぶ。

「ルイズがおれの思うがままだ……すげえ」

 高貴な美少女の恥部をもてあそぶ快感に酔いしれる。

 これでもか、と、ルイズの弱点を責め立てる。

「あーっ! だめぇぇ、サイト、そこっ、もうだめぇ! イッ、イッちゃう……っ!」

 キューッとルイズの膣が締まる。中がひくついて指がの飲みこまれていく。

「ルイズ、イッちゃうのか? おれの指でイくんだな?」

 マリコルヌはルイズのクリトリスをきゅっとつまんで、包皮ごしにこする。とどめの一撃だ。

 ほかの男子もルイズの乳首を指でこね、舌で弾き、刺激を続けている。

 ルイズは顔を真っ赤にして、眉をしかめ、唇をあける。さくらんぼのような唇。白い歯とピンクの舌がのぞき、声が漏れる。

「い、い、イッちゃう……! こんなの、初めて……サイトぉ……わたし、イッちゃうイっちゃ……イくぅうう!」

 ルイズが絶叫する。マリコルヌの顔にルイズのラブジュースのシャワーが大量にしぶく。

「わっ! ルイズが潮吹きながらイッたぞ!?」

 ルイズはくたっとなり、敷物の上に横たわった。

 

 その頃のサイト。

 まだ、シエスタのお説教は続いていた。

「にしても、ミス・ヴァリエールはどうしたんです?」

「あ、いや、泉の方にいるんじゃないかな?」

「サイトさんと一緒だったんじゃないんですか?」

「あ、なんか、考え事があるとかで……全然一緒に行動してないよ」

 そこにもしもルイズが、「ネコミミ」なんぞをつけてやってきたら、大変なことになってしまう。

(ルイズ……来るな……来るんじゃないぞ……)

 祈りを捧げる。

 と、隣のテントから大きな歓声が聞こえてきた。マリコルヌたちのテントだ。それなりに離れているのに聞こえてくるくらいから、大盛り上がりなのだろう。

 男たちだけでも、ずいぶん楽しそうだ。

 それにひきかえ、サイトは我が身の女難を呪う。

(いいなあ、マリコルヌたち……おれもあっちにまざればよかった……)

 正座しつつサイトは思った。


その頃、マリコルヌたちのテントでは……

 

「ほら、ルイズ、入れるよ。ぼくのチンポを、オマンコに入れちゃうよ」

 敷布の上に横たわったルイズの両脚を抱え、マリコルヌはペニスの先端をルイズの性器に押し当てる。

 亀頭がルイズのワレメをこする。

「あっ……あん……」

 あれから、男子が代わる代わるルイズをペッティングして、五、六回は絶頂を迎えている。

 刺激されすぎて乳首は小指の先くらいまで勃起し、薄い胸から突き出しているし、クリトリスもかつてないほど張り詰めている。ましてや膣は愛液でとろとろだ。

 いつでもオッケイな感じにルイズの身体はできあがっている。

 それでも、挿入となると話は別だ。ペニスが膣口を探り始めると、ルイズの意識に冷静さがわずかにもどった。汗をかいて、少し酒が抜けてきたというのもあるだろう。

(い、いよいよなのね……私、女に……サイトのものになっちゃうんだ……)

 ドキドキする淫靡なフレーズだ。サイトだけの女。ライバルは身近にいっぱいいるけれど、でも、いまこの時から、サイトとルイズは分かちがたく結ばれるのだ。

 ルイズは、自分を征服しようとする愛しい男の背中に手を回した――

 届かない。

 太すぎるのだ。

 それにぷよぷよしている。マシュマロの巨大版を抱いているような感触。

 この世界にきたばかりの時はいざしらず、最近のサイトは剣術で身を鍛えているから、細くて筋肉質だ。指で押しても数秒間押し返してこないような弾力系ではなかったはず。

 それに、のぞき込んでいる顔も妙に丸い。

「サイト……ほんとにサイトなの?」

 ルイズの桃色の意識に一瞬、疑念が走る。

 目をこらす。酔いのためにぶれていた像が一瞬フォーカスする。

 丸い顔の目鼻が見て取れた。

「!?」

「そう、ぼくだよ。マリコルヌだよ」

「なっ、なんで、あんたが!?」

 一瞬にして酔いが醒める。

「なんでって、ルイズのことを最初にイかせたのはぼくだから、一番乗りに決まったんだよ。戦場における一番槍みたいなもんかな」

 マリコルヌはへらへら笑いながら、それでも執拗にルイズのワレメにペニスをこすりつけてくる。

「ん、あっ! ど、どこにナニこすりつけてのよ、このヘンタイ!」

 押しのけようとするが、マリコルヌは重い。それだけじゃなくて、強い、力が。

「ナニって、さっきルイズがナメナメしておっきくしてくれた、ぼくのチンポだろ?」

「私が……!?」

「ぼくのだけじゃないぜ。みんなのだって、ルイズ、しゃぶったり、しごいたりしたろ?」

「みんなって……」

 周囲を見渡すと、顔見知りの騎士たち――ようするに魔法学校の同級生たち――が股間を大きくして、ニヤニヤ笑っている。

「みんなに気持ちよくしてもらったお礼にって、ルイズが自分でしたんだぜ?」

「そんな……でも、あれってサイトじゃ……」

 記憶が混乱している。確かに、サイトにいっぱいいっぱい気持ちよくしてもらって、うれしくて、オチンチンにキスしまくった気はする。それが、なぜか何本もあって、「サイトってすごい」と感動していた気もする。

 よく考えれば、サイトのオチンチンは一本だけのはずだ。十人もサイトがいて、代わる代わるルイズを可愛がってくれるはずもない。

 ――ということは。

 今まで、ここで自分がしていたことは――

 ルイズの意識の中で現状がようやく明確になる。

 と、その瞬間。

 ズンッ! と。

 マリコルヌが入ってきた感触があった。

 

10

「なっ! なに勝手に、入れてるのよ!?」

 ルイズはパニック状態だ。どこに、なにが、どうして?

 逃げようにも、マリコルヌは重すぎる。

 魔法を使おうにも杖はない。

「ふうっ、こ、これが、女の子かあ……あったかくて、気持ちいいなあ」

 マリコルヌの息が耳にあたる。

 抱きしめられている。抱きしめられながら、挿入された。

 サイトにこうされるのが夢だったのに。

「うそ……っ、やめ……やめっ! 抜きなさいっ! ぬいてえぇ!」

「ここまでして、もう遅いよ! 入るよ……入っていくよ……おおお、女の子ってすげえ!」

「ひいっ……入って……くるぅ」

 マリコルヌのペニスがルイズの処女膜を引き裂いていく。まだ少し酔いが残っているせいか、痛みはそれほどでもない。

 それでも、ものすごい異物感だ。ルイズの中を広げていく。

 奪われた、という感覚が胸をえぐる。

「ヌルヌルだ、ルイズのオマンコ、ぼくのオチンチンを受け入れてくれたよ」

「ぬ、抜いて……抜きなさいよ……っ! ばかーっ」

 拳をかためて、マリコルヌの胸を叩く。だが、マリコルヌはびくともしない。

「だめだよ。せっかく入れたんだから、中でドピュッとしないとね」

 動き始める。

「あっ……あ……か……かきまぜないで……っ」

 自分の中でマリコルヌが暴れ始めたのを感じて、ルイズは声をあげてしまう。

「すげえ、ルイズのまんこ、マリコルヌのをがっちりくわえ込んでるぜ」

「あんだけいじくったんだ。処女まんこでもヌルヌルだとけっこう入るんだな」

 マリコルヌとルイズの結合部分をほかの男子がのぞき込んでいる。マリコルヌも、そこが見やすいように、ルイズの腿をつかんで大きく広げている。

「いやっ! そんなとこ、みないで! やだあああ!」

 記念すべき初体験が、こんな形でさらされるなんて。

「お、おい、映像結晶化の魔法、おまえ、使えたよな?」

「ああ、さっきからちゃんと記録してるぜ」

 杖を持った(フルチンの)少年が空中に水晶玉を浮遊させている。かれの得意魔法は空気中に出現させた水晶玉に、その場の情景を封じ込める「映像結晶化術」だ。サイトがここにいたら、「ビデオカメラみたいなものか」と言うかもしれない――いや、そんなのんびりとした状態ではないだろうが。

「おお、後で複製させてくれよな」「おれも」「おれも」

「そんなの、記録するな、ばかぁ!」

 ルイズの抗議もむなしく、むしろ水晶玉が増え――術が使えるのは一人ではなかったらしい――いろんなアングルから記録されることになってしまった。

「いいじゃん、ルイズも、記念に複製してもらったら」

 言いつつマリコルヌが奥の奥まで突っ込んでくる。

「あくっ……かは……っ」

 まだ異物の侵入を許していなかった聖域にまで、それは達していた。子宮の入口だ。指では届かない――

「うひょぉ……! ここ、こすりつけると気持ちいい! ルイズのまんこがチューチュー吸い付いてくる!」

 マリコルヌの声が裏返る。

「やぁ、いや……やめてぇ……そこはぁ……ん!」

 ルイズの声も切迫する。

(感じたくないのに、いやなのに、そこをコシコシされたら、すごく、なんかすごく……っ!)

「ルイズ!」

 マリコルヌがキスを求めてくる。そんな、ありえない。サイトのための唇だ。使い魔としての契約をした、大切なキス――そのための場所。でも、もうとっくにその唇で、マリコルヌやほかの男子達のペニスにキスしてしまっている。もう今更――

「はむぅ……ん」

 キスしていた。マリコルヌと。最後はたぶん自分から迎え入れていた。

 舌が入ってくる。からんでくる。へんな味。マリコルヌの唾液と、たぶんほかの男子の精液とか、いろいろ混ざっている。だから、こそ。

 すごいエッチな味がする。

 舌をからめながら、奥を突かれる。

 こういうことをサイトとしたかったのに。今日、できると思ったのに――

 想像していたよりずっとずっと、気持ちいい!

「おっふぅ、さらに締め付けが……! ちんぽがトロける! すげえ!」

 マリコルヌが快感のあまり声をあげる。尻を激しく上下させ、ルイズの膣壁を味わう。白い尻肉がたぷんたぷん動き、陰嚢もゆれまくりだ。

「ルイズのまんこ、すげー気持ちいい! 最高だぁ!」

「は、恥ずかしいこと……言わないで、ばかぁ!」

 だが、すこし嬉しい気もしてしまうのはなぜだろう。好きでもない相手に、大事なヴァージンを奪われたのに。サイトを裏切ってしまったのに――

 たぶん、サイト以外の男の子とセックスしても、それはとても気持ちいい、ということを、ルイズの身体が認めてしまったからだ。

「あー、出そう! 出るっ! 出る! ビュッと出るっ!」

 切迫したマリコルヌの動き。ストロークが浅く、速くなる。

「だめっ! 中はだめっ! あ、あかちゃん、できちゃう……!」

 この世界に確実な避妊具はない。むろん、マリコルヌのペニスも生のままで、ルイズの膣内に埋まっている。妊娠の確率を低くするには外に出すようにするしかない。

 だが、そんな加減がマリコルヌにできるはずもなく、本能のままに振る舞った。

「ルイズ! ルイズ! ルイズぅ!」

 名前を呼びながら奥にペニスを押し込んでくる。そして一番奥の行き止まりのところで、コツコツコツコツとピストン運動。まるで子宮をこじ開けようとするかのように。

 ルイズの身体もそれに応え――

「あっ! ああっ! それっ、ヘンになるっ! ヘンになっちゃううよおぉ!?」

 絶頂に迫る。お腹があつくて、震えて、もだえる。

 自分の胎内に侵入しようとする異物が愛しくて、離したくなくて。

 脚をマリコルヌの腰に回してつなぎとめる。無意識の動きだ。

「出る! ルイズのまんこの中で――うわぁああ!」

 何度も激しく腰を突き入れる。半ばまで引き抜いては、勢いをつけてさらに奥へと。

 子宮の中に亀頭を潜り込ませ――

 命の種を注ぎ込む。

「あああああっ! あついのがぁああ!? やあああああああああ!」

 初めての性交で、初めての膣内射精を、子宮壁にいきなり直がけされて、ルイズは絶叫とともにアクメに達した。

 おそろしいほどの達成感と被征服感だ。

 これまでの人生観を完全に破壊された。

 ルイズは荒い息のまま、虚空をみた。サイトの面影を念じた。だが、その顔はぼんやりしたまま、よく見えなかった。

 

11

「ああ夕べはさんざんだった……」

 結局、徹夜で正座説教をくらい、ほとんど一睡もできなかったサイトは天幕を出て大あくびをした。

 天幕内ではシエスタがすやすや就寝中だ。さんざんサイトに説教をし、ルイズを手ぐすね引いて待っていたが、明け方、ついに寝てしまったのだ。

 それでなんとか解放されたのだ。

 まだ夜が明けたばかりで時間が早いためか、ほかの天幕はひっそりしていた。特にマリコルヌたちの天幕は死んだように寝静まっている。夜中まで騒ぎまくっていたから無理もない。

「マリコルヌの天幕で仮眠させてもらおうかな。この分だと昼前までみんな起きてこなさそうだし」

 地方巡検のスケジュールはゆるゆるだから、多少の道草はどうということもないだろう。もともとギーシュが立てた行程計画では日程の大半がナンパに充てられていたくらいだし。

「おーい、入るぞ」

 一応、声をかけて天幕に入るサイト。中は魔法の常夜灯だけで薄暗い。

「うっ、くせぇ」

 中は酒の匂いと若草っぽい匂いで充満していた。

 みるとおよそ十人くらいの少年たちが全員フルチンで、思い思いの場所に寝っ転がっていた。

「また、とばしっこしてやがったな……うっ」

 敷布の上には精液らしき痕跡が至るところにあり、そのひとつをつい踏んづけてしまったサイトは死にたい気分になった。

「全員かよ……どんだけ出したんだ」

 なかでもマリコルヌは全裸で、天幕の支柱のように立てられたポールにしがみついて、まだ腰をカクカクさせていた。どうも夢のなかでまだヤッているらしい。

 散乱しているワインの空瓶の数からして夕べは狂乱の宴だったようだ。

 こんなところで仮眠どころではない。

 溜息をつきながら天幕を出たサイトは、天幕の間を歩いている人影に気づいた。

 ルイズだった。ネコミミにチョーカー、それ以外は男子と同じ格好――近衛兵の制服を身につけている。ただし正式な着方ではなく、あわてて身体に巻き付けただけのようにも見える。

 ルイズ、と呼びかけようとして、サイトはやめた。

 朝日に照らされるルイズの横顔が神々しいほどに美しかったから。

 桃色ブロンドの髪はよほど激しい運動をしたみたいにあちこち跳ね上がっていたけれど、ツヤツヤキラキラ輝いていたし、白磁のようになめらかな肌にポッと朱のさした頬、長いまつげ、かわいい鼻から形のいい唇のフォルムも完璧だった。なにより、満ち足りたようなあの表情。よほど安眠できたのだろう。

 ルイズは、あたりをうかがうようにして――早朝だから周囲に迷惑をかけないようにしているのだろう――サイトの天幕へと入っていった。

 なんだか、今朝のルイズは大人びて見えたなあ、きれいだったなあ……としばし惚けていたサイトだったが、はたと気づく。

 そういえば、中にはシエスタがいるんだった。

 これは一悶着おきる。

 サイトは今日も繰り返されるドタバタを予感して頭をかかえるのだった。

 

  

  追記 : 水精霊騎士隊 第**回巡回記録  報告者 サイト・ヒラガ

 ……おれが報告するんすか? まあ、責任者だったんで……そうすね。

 えーっと、ラべール地方への巡回は、特に山賊もモンスターも出なくて、問題はありませんでした。
 というか、たどりつくまで、毎晩宴会やってたんで、みんなヘトヘトになっちゃって。
 初日の夜が特にひどくて、マリコルヌとあと十人くらいの隊士は、全員、飲み過ぎて記憶なくなったそうで、「すごく気持ちのいい夢を見ていた気がする……」とか言ってました。
 天幕もボロボロになってて、後から調べたら、天幕の内側に焦げ跡が――ちょうどルイズのエクスプロージョンの小型版が炸裂したみたいで――でもそんな音は気づかなかったので、なんだかなあ、と。マリコルヌたちも覚えてないそうだし……
 あ、記録水晶球っていうんでしたっけ、ビデオみたいなやつの残骸が天幕に残ってたんですが、パーツが足りなくて復元できなかったので、結局、真相は闇の中……って感じです。

 え? ルイズとシエスタのことですか? その一泊目のあと、二人とも学園に返しましたよ。やっぱり危ないですから。そういえば、ルイズのやつ、やけにあっさり帰ったなあ……最近、忙しくて、あまり話す機会もないんですけど……

 え、そんなことはいい? ラベールの領主さんから苦情が来てる? す、すみません!

 

 おわり