らんま1/2 新婚編?

第七章 乱馬とあかね、終わらない愛の彼方に

  

「おさげの女、ぼくに処女を捧げる幸福を与えてやるぞ」

 らんまの足首を掴んだまま九能が腰を寄せてくる。その中心の尖った部分が、らんまの女性の器官を狙って近づいてくる。

「やめろっ! ふざけんな、てめえっ!」

 らんまはなんとかして九能を蹴り飛ばそうとするが、身体に力が入らない。弱々しい抵抗しかできない。むろん、九能には通用などしない。

「いやだっ! いや……やめてくれぇっ!」

「古人いわく、いやよいやよも好きのうち」

 しかつめらしく九能が言い、行為をつづける。先端が触れ、内部への侵入を開始する。

 甘い疼痛がらんまの意識に食い入ってくる。

「やっ、やめろっ……いてえ……や……やめてくれぇっ」

 頭が痺れて、なにがなんだかわからない。 

 らんまは茫然として、目の前の花を見つめる。花弁が開ききって爛熟している。花は植物にとっては性器なのだと、これを見れば納得できる。花弁の中に、屹立しためしべにおしべたちがむらがるようにからみついている。まるでよってたかって犯しているようだ。いやらしい。

 異物感が股間にもたらされる。

「はあっ……入って……くる……九能の……が……」

「そうだ……もうすぐ全部入るぞ」

「あ……あ……すご……」

 乱馬は熱い息をはいた。九能との結合部分を見つめている。肉の茎が食い込んで、もうすぐ一点を突破してしまう。そこが破られたら――らんまは正真正銘の<女>になってしまう――のだろうか。

「行くぞ、おさげの女!」

「うわぁっ!」

 その時だ。花畑の一角から幽鬼のように男が立ち上がった。

「乱馬……なにやってる、きさまは……っ」

 響良牙だ。大きなリュックを背負い、旅装モードの姿だ。どうやら食事の支度をしていたらしく、湯気をたてたやかんとカップめんを手にしている。カップめんにお湯を注いだところらしい。

「り、良牙!?」

 らんまは我にかえって、仁王立ちになっている少年を見上げる。

「お、おめー、旅に出てたんじゃ」

「そうだ。おれは自分の見つめなおすために、遠い旅に出た。いまは北海道の山のなかのはずなのに、乱馬、どうしておまえがこんなところで――しかも、九能と破廉恥な真似を――見損なったぞ、乱馬!」

「い、いや、これはだな……」

「響良牙! ぼくとおさげの女の愛の営みのジャマをするな!」

「おめーは黙ってろ!」

 らんまは、げしげしと九能を蹴りつけながら一喝する。だが、九能はらんまへの侵入をあきらめず、なおも身体を密着させてくる。

 それを冷たい目で眺めながら、良牙は全身に昏い気をまとわせはじめる。

「乱馬、おれがどういう気持ちであかねさんの前から姿を消したのかわかるか。おれの汚れた魂ではあかねさんを幸せにできないと思ったからだ。なのに、きさまは、節操もなく――男とさえもやりまくるとは――」

 重い空気が周囲にたまっていく。らんまは慌てた。

「ちょっ、ちょっと待て! 落ち着け、良牙! こ、これは九能のバカが……」

「問答無用! 獅子咆哮弾っ!」

 陰の気のパワーが爆裂し、九能の身体がらんまからひきはがされる。

「おさげの女、また続きをしようなぁぁぁぁぁ……っ!」

 高笑いしつつ、九能が上空の星になる。

 九能を狙ったピンポイントの獅子咆哮弾だ。らんまはホッとする。

「た……助かった。わりーな、良牙、助けてもらって」

「だれが貴様を助けると言った」

 良牙の視線は冷たい。口許が歪み、牙がのぞく。

「貴様にはあかねさんを守る資格はない。このおれと同様にな――その烙印を押してやるぜ!」

「りょ、良牙!?」

 良牙が掴みかかってくる。完全にキレた状態だ。

 らんまは良牙の打ち込みをかわそうとして、身体が自由に動かないことを悟る。

(こ、腰が……っ)

 抜けている。幾度となく絶頂寸前まで畳み込まれた身体が、まともに反応するはずがなかったのだ。

 あっさりと良牙に組み伏せられる。らんまの乳房がぶるんと揺れる。

「こんな身体をしやがって……あかねさんの夫になるだとぉ……? ふざけやがって」

 良牙の掌がらんまの乳房をつかんだ。

「い、いてぇっ! 良牙、触るんなら、もっと優しく……」

「うるせえっ!」

 力まかせに揉みしだく。らんまの乳房が良牙の掌のなかで形を次々と変えていく。らんまは苦痛に顔をゆがめた。

「どうした、乱馬……乳首が立ってるじゃねえか。九能にさんざんいじくられた後か?」

「いや……やめろ……あっ!」

 ピンピンに立った乳首を良牙が吸いあげる。無色の衝撃が脊髄を叩いて、思わずらんまはのけぞる。

「この変態野郎、男に乳を吸われて喜んでるのか?」

 舌で乱馬の乳首を弄びながら、良牙が笑い声をあげる。理性を喪失した目の色だ。

「こっちはどうだ? ええ?」

 指をらんまの股間にこじ入れる。ぞくっ、と、らんまの肌に鳥肌が走り、産毛がたつ。嫌悪感とないまぜになった快感が、身体をかけぬける。

「良牙……だめ……」

「なにがだめなんだ、乱馬、グチョグチョにしてるくせによ」

 指をらんまの中に入れてかきまわす。

「あはあっ! ふあっ!」

 喉をさらして声を放つ。乱暴にされているのに、感じてしまっている。九能のときともちがう。自分の声を聞いているだけでも、いやらしい気分が盛りあがってくる。なんて甘い声を出すんだろう。これでは、ほんとうに女じゃないか。

「ああん……あっ……良牙……ぁ」

「甘えた声を出すんじゃねえ、この変態野郎。おまえは男なんだぞ?」

 良牙はせせら笑いながら、指でらんまの膣壁をかき回す。らんまは全身をわななかせる。自分が濡れていくのがわかる。おなかのなかが熱くて、そこからなにかが湧き出ている。

「あう……あ……へんになっちまう……」

「おめーは最初から変なんだよ、この変態!」

 良牙は残酷に言い放ち、らんまを引きずり起こした。自分の膝の上に座らせ、背後から乳房をつかむ。

「ああっ!」

「逃げられるもんなら逃げてみな。ほんとうならできるはずだぜ」

 たわわに実ったらんまのバストを掌で味わいながら、良牙が囁きかける。らんまはゾクゾク感がとまらない。耳にかかる良牙の侮蔑的なささやきさえも、興奮をかきたてる。

「さあ、乱馬、おまえに、おれの恨みを教えこんでやるぜ。最愛の人の純潔を――ブタの姿で奪ってしまった、その罪の深さをな」

「な……なに……言ってやが……」

「うるせえっ!」

 良牙は乱馬の乳首をぎゅうっとつまむ。

「いだっ!」

「おれが黒ブタなら、おまえはメスブタにしてやるぜ、乱馬!」

 良牙は自分の股間を露出させる。すでに猛り立ったペニスが天を衝いた。

「で……でけえ……」

 らんまの声がふるえる。

「そんな……こんなの……入らねえよ……」

 言いつつ、吐息が弾んでいる。らんまの耳まで赤く染まっていく。

「なんだよ、心臓がバクバクいってるぜ、乱馬」

 そのとおりだ。外から見ても、乳房が鼓動に合わせて動いているのがわかるほどだ。興奮している。

 認めざるをえない。セックスしたいのだ。たまらなく。

 その相手として考えた場合、九能より良牙の方が何万倍もマシだ。

(いや、そんなこと比べてる場合じゃねえ……)

「いくぜ、乱馬――」

 良牙が迫ってくる。らんまは受け入れのための姿勢を無意識に作っている。自分で自分が信じられない。

「あっ……良牙……痛……っ!」

 分け入ってくる。らんま自身が広げられていく。女性の器官がありえないほどに拡張され、良牙のペニスを呑みこんでいく。

「うあ……ああっ! 裂けちまう……あああっ!」

「そんなこと知るか。乱馬、おれはおまえに、そして同時におれ自身に罰を与えてるんだ。わかるか!? おれたちはともにあかねさんにはふさわしくないんだ。あかねさんにはもっとマトモな男がふさわしいんだ!」

「あ……あかね……?」

 らんまは疼痛と同時に襲ってくる性感の物凄さに失神寸前になりながら、天道あかねの面影を思い浮かべた。

 

それと同時刻。校庭裏の花壇から数十メートルと離れていない体育用具室では――

 

 複数の声、そしてぴちゃぴちゃという粘っこい音が、体育倉庫のなかに響いていた。

 かびくさい匂いがたちこめ、埃の舞う空間で、高校生の男女の裸体がからみあっている。

 マットの上で、大介があかねをバックから犯していた。よつんばいのあかねは、おしりを大介にあたえながら、あぐらをかいたヒロシの股間に顔をうずめ、そのペニスに口づけを繰り返している。

 五寸釘は撮影役に甘んじている。だが、あかねの痴態をあますところなく記録する聖なる役割なのだ。ほかの誰にも譲れない。

 明るくて可愛くて、五寸釘にさえ優しい声をかけてくれる天道あかねが、男の性器を二本も同時に身体に受け入れて、快楽に酔いしれているのだ。そんな光景を記録しないでどうする。

「うっ、イッちまう」

 ヒロシがうめく。あかねの口のなかで今日二度目の爆発を起こす。あかねが口を外すと、ヒロシのペニスの先端から勢いよく白い粘液が飛び出す。あかねの顔が精液で彩られていく。

「お……おれも……っ!」

 あかねのヒップを掴みながら腰を打ちつけていた大介も、荒い呼吸のなかで、感極まった声をもらす。

「あ、あかね! 中に出すぞっ!」

 ペニスを激しく出し入れさせながら、うめく。上体を傾けながら、あかねの乳房を握りしめる。

 五寸釘は、大介の尻の下にカメラを近づけ、結合部の様子を接写した。大介の陰嚢が振り子のように揺れながら、あかねの性器を叩いている。肉棒は全体を赤黒く変色させつつ、あかねの身体の中にねじこまれ、引き抜かれ、ぶちゅぷちゅと音を立てている。

「あっ……あああ……んぅぅぅ……乱馬ぁ……」

 鼻にかかったあかねの声が聞こえてくる。五寸釘はたまらない。ブレないようにシャッターを切る。その瞬間瞬間がクライマックスだ。

「おうっ……!」

 大介の睾丸がひくつく。尻を小刻みに動かし、あかねの奥に奥に沈んでいく。たぶん、射精している。この瞬間に、あかねの中で大介の子種が吐き出されているのだ。

「あ……あつい……のが……な、か、に……」

 あかねの声がくぐもる。 

「ふうう〜」

 息を吐きつつ、大介があかねのヒップから離れる。どろりとした精液があかねの出血とともに肉の亀裂をつたって、太股にまでたれてきている。

 五寸釘はシャッターを押す。

 だが、おりない。

 フィルムが尽きてしまったのだ。

「ああ……なんてことだ……せっかくのあかねさんの中出し記念が……」

 五寸釘の心を絶望が支配する。このままでは、この決定的瞬間を極大に引き伸ばし、粒子のひとつひとつまで丹精をこめて印画紙に焼くことができないではないか。

 はやくフィルムを買いに行かないと。この際、写るんデスでもかまわない。

 きびすを返しかけた五寸釘をヒロシが呼び止めた。

「おい、五寸釘、あかねはまだ足りないみたいだぜ? せっかくだからやらせてもらえよ」

「そうそう、おれたちは休憩させてもらうから、その間はあかねを好きにしていいぜ」

 大介が笑いながら、ぴしゃぴしゃとあかねのヒップを叩いた。まるで所有物を見せびらかすような態度だ。香の威力なのか、あるいは初めての性体験をこなした自信からか、理由はわからない。だが、ヒロシも大介も、さっきまでの、性におびえる少年の面影はすでにない。

 あかねのおしりが開かれて、赤い粘膜が見えている。血が流れ出ているが、量はさほどではないようだ。それを覆い隠すように、大介が放ったものがこぼれ出ている。

 まるで五寸釘を誘うかのような淫猥な光景だ。

「あ……あかねさん……」

 五寸釘はふらふらとあかねのヒップに近づいていく。五寸釘のペニスはズボンの中でに痛いほど屹立していた。震える指でジッパーをおろす。

「はは、五寸釘、おまえ包茎か? 真性だろ、それ」

「それに、ちっちぇえな。小学生かよ?」

 ヒロシと大介があざわらう。五寸釘の足がとまった。気にしていることだった。

 五寸釘はヒロシと大介の股間を見る。それぞれ射精直後だから、しぼんでいる。それでも、五寸釘のそれよりも大きい。五寸釘は股間を手で隠してうなだれた。やはり、自分にはこの場に参加する資格はないのだ。

 そう五寸釘が思って、肩を落としたときだ。

「待って、乱馬……あなたも、乱馬なんでしょ?」

 あかねが声をかけてくる。鼻声になっているが、泣いているわけではないようだ。目には優しい光がともっている。

「あなたも乱馬だったら……ほかの乱馬がしたようなこと、してもいいのよ」

「あ、あかねさん……」

「だって――」

 あかねがはにかんだように笑う。

「あたしたち、夫婦なんだもん」

「あかねさんっ……!」

 五寸釘は涙を流しつつ、あかねに走り寄った。そして、永いあいだ思い描いていたあかねの裸の尻に触れる。

 まだ大介が開けた穴が閉じきっていないその部分に、精一杯に勃起したペニスを挿入する。むろん、初めての異性との交わりだ。

 五寸釘の細いペニスは、穿たれたばかりのあかねのその部分にぴったりと填まった。

「あっ……乱馬……そこ……あっ!」

 大介との時には出さなかった類の声だ。

 五寸釘は、自分とあかねの肉体がつながったのを肉眼で確認した。信じられないが、これは事実だ。実際に、ペニスがあかねの体内の熱と感触を感じとっている。

「蕩けそうだ、あかねさん……すごいぃ」

 五寸釘は白目をむきながら、腰を動かした。

 細いペニスがあかねの中にもぐり、そしてまた半ば引き抜かれる。稚拙なピストン運動。すぐに抜けてしまう。

 それをあかねが手で補正する。正しい位置に導いていく。

「乱馬、動いて」

「あかねさん……っ」

 五寸釘はあかねの中で夢中に跳ねた。

 じきにあかねが背中をうねらせはじめる。

「乱馬……なんだか、そこ……感じる……あああ……」

「あ、あかねさん、き、気持ちいい?」

 五寸釘は痩せた腰を揺すらせ、奥を、さらに奥を突くようにする。

「ん……ぅ……うっ、頭のなかが……熱くなって……くぅ……」

 あかねの声が湿度を増していく。

「おいおい、五寸釘ので感じてるぜ、あかねのやつ」

「傷つくなあ」

 大介とヒロシが顔を見あわせる。だが、すぐに新しいアイディアを思いついたらしい。

 ニヤリと笑いあうと、バックスタイルでつながっているあかねと五寸釘に手を伸ばした。

「ほら、体位をチェンジしろよ。バックだけだと、あかねが飽きるだろ?」

「そうそう、五寸釘、おまえ、下になれよ」

 大介とヒロシは言いつつ、五寸釘とあかねのかたちを変えさせる。

 マットの上に五寸釘が仰向けに寝て、その上にあかねが座る格好だ。

「あかね、脚を広げろ」

「支点の棒は外すなよ」

 五寸釘のモノが突き刺さったまま、あかねを開脚させる。

「ど、どうするの? ら、乱馬」

 顔をしかめつつ――快楽のせいらしい――あかねが不安そうに訊く。

「こうするのさ」

 大介があかねのあごをつまんでねじまげ、口を開かせる。さっきまであかねの中に入れていたペニスを含ませようというのだ。あかねは首を振って抵抗した。だが、ヒロシも手伝って、その所業を完遂する。

「んぅ……んぅぅぅ……」

 あかねは苦鳴を漏らし、涙目になる。

「ははは、汚ねえってか? だが、そりゃあ、おまえの味だぜ、あかね。きれいにしてくれよ」

 大介は容赦なくペニスをあかねの口腔の奥深くに挿しこんでいく。

 あかねは懸命に舌で奉仕しはじめる。その間にも、下から五寸釘に突きあげられては、眉を切なげに寄せる。

「あかね、すげー濡れかただぜ? 興奮しまくりだな?」

 ヒロシの指が動いて、小指の先ほどに膨張したあかねのクリトリスをいじくる。

「すげ、おまんこから白い汁が吹きだしてきたぞ? 本気汁ってやつか?」

 大きく開脚させたあかねの股間――膣から分泌される愛液の色がかわっていた。白濁して、泡立ってさえいる。五寸釘のペニスが押し込まれるたびに、じゅぷ、じゅぷっと音をたててあふれてくる。

「んぅ……んん……んうううぅぅ」

 あかねの表情が苦悶にゆがみピンクに染まる。声を出したいが、自由に発声できないぶん、表情筋にしわよせがきているのかもしれない。

「いい顔だぜ、あかね……たまんねえ」

 大介があかねの口を犯しながら、酔いしれた口調でつぶやく。

「ほんとうだ。すげー、あのあかねがこんなふうになるなんて」

 引きつった笑みを浮かべながらあかねの性器を弄んでいるのはヒロシだ。

「お……重いよ……ヒロシくん、大介くん」

 あかねの下に組み敷かれている五寸釘が情けない声を出す。あかねだけではなく、その身体に挑みかかっているヒロシと大介の体重もかかっているのだ。

「うるせえ、おまえが一番いい役なんだぞ」

「そうそう、ケツとはいえ、憧れのあかねとヤってるんだぞ。文句を言ったらバチがあたらあ」

「それは……そうだけど……あっ、あかねさん、そんなに、締めたら」

 五寸釘の声が裏返る。

「んふっ、んっ、ふぁんふぁ……」

 あかねが自分から腰を回している。まるで、より強い刺激を五寸釘のペニスから受け取ろうとしているかのように。

「ふぁんふぁ……いひひょほ……んううう」

 乱馬、イキそう、と言ったのだろうか。

「こっちも手を……じゃねえ、舌を休めんなよ」

 大介があかねの髪をつかんで、引き寄せる。

「んむぅぅ……んぶっ……」

 喉奥まで、ペニスを突き入れている。あかねの表情が苦しげにゆがむ。大介の口許が引きつる。

「いい顔だ、あかね……たまんねえ。出ちまうっ」

 大介はあかねの唇の刺激に屈した。あかねの口のなかで、射精する。

「あかね、全部飲めよ」

「んくっ……んぅ……」

 あかねが懸命に喉を動かすが、飲みきれず、唇から精液の大半がこぼれ落ちてしまう。

「こっちもすげーぜ、後から後から汁が出てくる」

 ヒロシが指であかねの性器をいじくっている。五寸釘のペニスの動きとシンクロさせるように、クリトリスをこすりたてている。

「あっ、そこ、気持ちいいの……あっ、ああ……すごい、すごいよ……乱馬あっ!」

 あかねが声をはずませた。嬌声がどんどん大きくなっていく。

「あっ、あああっ、中と外で擦れて……すごい……乱馬……気持ちいいよぉ……」

 あかねは、もう、なにも目に入らない様子で、夢中でおしりを前後に揺すっている。激しい動きに、五寸釘が目を白黒させている。

「あ、あかねさん……ぼく……で、出ちゃうよ……」

「だ、出して……乱馬……中で……出してぇっ!」

 あかねが絶叫する。

 ヒロシと大介は目くばせすると、左右からあかねの乳首をつまみ、ぎゅっと潰した。

 その衝撃にあかねが身体を大きく反らし、わななく。声も出ないまま、絶頂に達している。

 びゅぴゅっ。

 あかねの股間からアクメの涙がほとばしる。

「あかね……さん……」

 五寸釘も腰を跳ね上げさせている。射精しているのだ。あかねの身体の中に、たっぷりと。

「は……あ……ふ……」

 ぐったりとして、あかねが崩折れる。五寸釘も半失神状態だ。

 マットの上にうつぶせに転がり、脚をかるく広げた状態で、あかねは大きく呼吸をしていた。もりあがったヒップは、いままで加えられてきた凌辱になんの影響も受けぬままに、美しいスロープを描いている。

 ヒロシと大介は、膨張したペニスを自らこすりながら、あかねのヒップをしげしげと観察する。

大介に続いて五寸釘のペニスを受け入れたその部分は、もはや自らでは閉じず、赤裸々な肉の穴と化していた。

「すげーな、あかねのやつ……見たかよ、さっき、尻の穴でイッちまったぜ」

 大介が唇をゆがめる。自分が最初に広げたその部分に格別の愛着があるかのように、ヒップの割れ目をなであげる。

「まったくだ。まんこはキツキツで入らなかったのに、ケツにはすんなり入るなんて、あかねのアナル、開発済みなんじゃねえか?」

 ヒロシも笑っている。やはり指をあかねの股間に入れているが、狙いは肛門ではない。そのわずか下に位置している肉の合わせ目に指をもぐらせる。二本もだ。

「でも、おかげで、こっちもずいぶんほぐれたみたいだぜ。本気汁出しまくりで、今も襞がひくひくしてらあ。これなら、チンポもすんなり入りそうだぜ」

「だな」

 大介も歯を剥き出しにする。

 二人とも、二度ずつ射精したはずのペニスが、もう首をもたげている。

「じゃんけんだ」

 ふたり同時に拳を突き出す。

 勝ったのは、またもヒロシだった。大介は地団駄をふんで悔しがったが、ヒロシにしてみれば、「おまえはあかねのアナルをやったけど、おれはワレメをこすっただけだぞ」いうことになる。

 ヒロシはぐったりとしたあかねを抱きあげた。あぐらをかいた上に、またがるように座らせる。もう前戯は必要ない。濡れそぼり、充血しきったあかねの性器に、先端をあてがっただけで、ぬるり、亀頭が呑みこまれてしまう。

「は……あ」

 あかねがヒロシの首に腕をまわしながら、うめく。

 そのヒップを下から支えているのはヒロシ自身だ。亀頭を出し入れしながら、あかねの入口付近の感覚を楽しんでいる。

「どうだ、あかね? 気持ちいいだろ?」

「ん、ふぅん……気持ちいい、乱馬ぁ」

「膜に当たって、押し広げているのがわかるだろ? もうすぐ、これを破って、奥まで突っ込んでやるからな」

 抵抗のある部分でいったん止めて、ヒロシが言う。あかねは自分でおしりを蠢かせている。ヒロシが支えていなければ、自分から結合を求めていきそうだ。

「ああ……乱馬、意地悪しないで……入れてぇ……」

「ああ、いいともさ。乱馬には悪いけど、あかねのヴァージンはおれがもらったぜ」

 ヒロシはうそぶくと、あかねのヒップを支えていた腕の力をぬいた。

「ああ、乱馬……入る……入っちゃう……っ!」

 その時だ。

 爆裂音とともに周囲に白煙がたちこめた。

 あかねに覆いかぶさったヒロシは吹き飛ばされ、大介、五寸釘ともども失神する。あかねだけは無傷でマットの上だ。

 煙のなかに小柄な影がある。

 八宝斉だ。手には八宝大火輪を持っている。

「けけけけ、ばーかジャリども。だれがおまえたちにあっかねちゃんの処女をくれてやるものか。すべては、この時のためにあかねちゃんの身体をほぐす手伝いをしてもらっただけのこと」

 ニタリと笑って、八宝斉は猿股の前を開く。

 年齢には似合わない雄渾な逸物がそそりたつ。

「さあ、あっかねちゃん、わしと楽しいことをしようぞい」

「ら……乱馬……?」

 うつろな目であかねが顔をあげる。八宝斉がやはり乱馬に見えているのか。

「早く……乱馬……来て……」

 自ら脚を開いて、八宝斉を誘う。

「よぉし、いい子じゃ。すぐに楽にしてやるからのぅ」

 八宝斉は先端をあかねの濡れそぼった入口に押し当てて、ゆっくりと沈めていく。

 

 ぬぬぬぬ……

 ずぷうっ!

 

「あぐっ!」

 巨根が花びらを引きちぎる勢いで、女性器に食い込んでいる。

 根元近くまで押し込まれ、陰唇が裂ける寸前まで広げられている。

「あああっ! 痛いっ! 痛いよ……っ!」

 女の声が高まる。だが、それはただ苦鳴だけなのではない。

 それは、男根がずりずりのと動きはじめるとともに、明らかになっていく。

「はあっ! 動いてる……中で……動いてる……んくっ、あああっ!」

 結合部から鮮血が流れだしている。乙女が流す赤い涙だ。

 容赦なく、男根が処女地を蹂躙している。ぐちゅぐちゅと音をたてながら、肉が肉にもぐりこみ、奥までえぐっている。

「どうだ、乱馬――思い知ったか」

 良牙がせせら笑った。らんまの乳房を握りしめながら、低くささやきかける。

「あっ……良牙……やめ……」

 涙目のらんまが言いかけるのを待っていたかのように、良牙は下から激しく突きあげる。

「や……ああああっ! 痛い……痛いよ……良牙」

「ほんとうにそうか? 自分から締めつけてくるくせによく言うぜ」

「そんな……ぁ……っ」

 らんまは自分の股間を凝視する。良牙のペニスが胎内深くに入り込んで、内部で粘膜同士がからみあって、激しく刺激しあっている。

 たまらない。良牙にいじくられている乳首も、心地よくて仕方がない。

「良牙、いい……よぉ……」

「気持ちわりぃよがり声あげてんじゃねえ、乱馬! これは罰なんだぞ」

 言いつつ、良牙は鬼の形相で責めたてつづける。

「ああ……ああっ! おかしくなる……おれ……おかしくなるぅ……」

 らんまは花壇の土を掴んだ。良牙のペニスがお腹の奥のある部分――女の身体の中心にある器官に当たって、揺り動かしている。

 これがそうなのか、と思う。

 この感覚が、おんな、というものなのかもしれない。

 かすみが優しく笑っている。

 なびきが小馬鹿にしたように鼻を鳴らしている。

 右京がまぶたを閉じて頬を染めている。

 シャンプーが挑発的に唇をとがらせている。

 女たちの顔がらんまの意識のなかで次々と閃いては消えていく。

(あかねも……そうなのか……? こんな感覚を身体のなかに潜ませているのか……?)

 耐えがたい欲求――満たされたいという渇望――そして、いちどそれがかなった瞬間の爆発的な快感――多幸感――女は、その体内で幸福をつくりだすことができる――あらゆる意味で。

 あかねが顔を上気させて、あえいでいる。愛らしい顔で、感じている。それはいつの夜の記憶なのか。あるいは、それは一方的な思いこみにすぎないのか?

(あかね……おれはおまえに、この感覚をもたらしてやることが……できなかったのか……?)

 すこしさびしげにうつむいたあかねの横顔。そして、顔をそむけると、そのまま遠ざかってしまう。だれか別の男の腕のなかに身を寄せている。

(あかね! 行くな、あかね! おれが……おれが、おまえを幸せにしてやるから……!)

「くぅっ! 乱馬っ! 貴様っ!」

 良牙の声が切迫する。

 二人の肉体の密着度が増している。らんまの膣をこすりあげる良牙のペニスの裏筋が、まるで鋼鉄のシリンダーシャフトのようにてらてら光りながら、上下動をくりかえしている。

「あっ、あっ、あっ! ふあっ! あああ!」

 らんまはあえぎながら、腰を動かしている。むさぼるような激しい動きだ。

「し……絞られる……っ!」

 良牙が必死の形相でこらえている。その良牙に、らんまが吐息をふきかける。

「良牙……出せよ……受け止めてやるぜ……っ!」

「ばかな、罰してるのは、おれなんだぞっ!」

「いいんだよ、もう――いっしょに、いこうぜ、良牙」

「くそおっ……! 出ちまうっ!」

 良牙が絶叫する。

「おれも――いきそうだ……っ!」

 らんまも切なげに声を放つ。

「あ……あ……あ……っ! もうすぐ……」

「うっ!」

 どぴゅどぴゅどぴゅっ!

 良牙が一足先に堰を切った。大量の精液をらんまの胎内に弾かせる。

「ちょっ……良牙……おれ、まだ……っ!」

「あ……ああ……気持ちいい……」

 良牙がうっとりとした表情を浮かべている。らんまとの結合部から、白い粘液がこぼれ出る――それほどの量の射精量だ。

「ふっ……どうだ、乱馬、思い知ったか」

 らんまから身体を離すと、勝ち誇ったように良牙は言った。らんまは股間から流れ落ちるものを感じながら、怒りにまかせて怒鳴りつける。

「思い知るかっ! 自分だけさっさとイきやがって! この早漏!」

「そ……早漏?」

 良牙の顔が引きつる。

「ふざけんなよ! あとちょっとだったのに……! ヘタクソ!」

「へ……ヘタクソ?」

 良牙は頭を抱えてうずくまった。傍らにあるカップラーメンに気づく。ちょうどおいしそうに出来上がっていることに衝撃を受ける。

「そ……そうだったのか……おれがあかねさんと結ばれないのは……ブタ体質のせいではなく……早漏でヘタクソだったからなのか……」

「もっいっちょだ! もっかいしよう、良牙!」

 ギリギリまでたわめられたらんまは、もう飢えた獣と同じだ。すべてをかなぐりすてて、良牙の股間にむしゃぶりつく。

「そんな気分じゃねえよ……」

 奈落の底まで落ちこんだ良牙は黒い霧のような冷気をまとっていた。

「ちくしょおおおっ! どうせおれは早漏だ、獅子咆哮弾っ!」

 冷たい拳がらんまを撃ち抜く。同時に、まだ熱湯がたっぷり入ったやかんも巻き添えにする。

「ぶあっ! あぢぢぢっ!」

 空中で熱湯を浴びながら、らんまは吹き飛ばされていく。

 校庭裏の端にあるプレハブの建物に目掛けて――。

 

 

 乱馬はプレハブの建物に激突し、その壁を突き破った。

「いつつ……」

 ほこりがもうもうと舞うなかで、乱馬は頭をさすった。

 どうやら落下したのはマットの上らしく、頭が痛いほかは大丈夫だ。つくづく丈夫な身体である。

 薄暗い用具室のなかは、饐えたような匂いとともになにかしら香の匂いが漂っている。頭の芯がぼうっとなる香りだ。

「なんだよ、この匂い……」

 その時、乱馬はようやく気づいた。

 マットの上に、だれかがいる。 

「ら……乱馬?」

 聞き慣れた声がする。

「あ、あかね!?」

 マットの上に、あかねがいる。それも全裸だ。

 乱馬も素っ裸である。ついでにいえば、股間はビンビンだ。女の身体で絶頂寸前まで追い込まれた余韻がそのまま残っている。

「な、なんで……?」

「乱馬……やっと一人になったのね」

「一人? なんのことだ?」

 乱馬は訳がわからない。それよりも、知りたいことがいっぱいある。

 ここは体育用具室のはずだ。ということは、なびきの手紙にあった場所である。

 そこになびきではなく、あかねがいるのはなぜなのか。それに、全裸なのは――

「乱馬、来て」

 あかねが脚をひらく。ピンク色の花びらが見える。その部分はたっぷり濡れて、いまにも蕩けそうなほどだ。

 乱馬の理性が崩壊する。もうどうしようもない。

「あかねえっ!」

 抱きついていた。マットに倒れ込む。

 いい匂いだ。発情したあかねの匂い。あかねの感触。あかねのぬくもり。

 これこそ、求めていたものだと思う。

 乱馬はあかねの膣口の位置をペニスでさぐる。

 あかねの腕が乱馬の背中にまわり、抱き寄せるようにする。

「待って……乱馬に……してほしいことがあるの。なにかわかる?」

「もっと触ってほしいのか?」

 あかねは首を横に振った。

「もう、それは充分。そうじゃなくて……」

 唇が欲しがっている。乱馬はすべてを理解する。

「あかね……キスしよう」

「うん!」

 仔犬のように嬉しげにあかねが微笑む。乱馬は、恋する少女の頬にまず唇をつけ、それから、口と口、舌と舌で愛情を交わす。

 濃厚で甘いキスだ。

 唾液のなかに、たがいの想いを伝える成分が含まれてでもいるのだろうか。舌と舌の間に唾の糸を引かせて、さらに深いくちづけに移行する。

「んぅ……う……乱馬……」

「あかね……入れるよ……」

「うん、来て」

 待ちかねていたかのように、あかねが瞳を輝かせる。乱馬もだ。この瞬間のために、これまでの出来事のすべてがあったような気がする。

 この上なく、優しく、落ちついた気持ち。いちばん大切なものを抱きしめている満足感。

 ほかのさまざまな価値観を知ったからこそ、たどり着けた場所なのかもしれない。女の肉体が与えてくれる感覚や、男の突発的な生理、さらには女性の弱さ・強さ・愛おしさ――性にまつわるいろいろなこと。

 その先にあるのは――出発点かもしれないけれど――好きな人と一緒にいること。

 もっとも単純で、それでいてなかなか辿りつけない答え。それを実感するために、人はセックスをするのだ。たぶん。

 乱馬のペニスが、あかねの中にもぐっていく。

 わずかな抵抗があったが、それも自然に乗り越えることができた。

 ひとつになる。

 びくんっ、あかねが反応し、ぎゅうっと乱馬を抱きしめた。

 熱い息を吐いている。

「乱馬……やっと……」

「あかね……」

 乱馬はあかねを感じていた。熱くてせまくて、心地よい。

 かすみやなびき、右京のものとも狭さや奥行きやざらつきがちがう。愛液の質や量もそれぞれの特質がある。感じ方もちがう。

 だれが良いとも悪いともいえない。だが、ひとつだけ確かなことがある。

 あかねのその部分は、誰のものよりも乱馬にぴったりだということだ。

「乱馬の……入ってるのね」

 あかねの目尻に涙が浮いている。

「痛いか、あかね?」

「ちょっとだけ……でも、平気だから、動いて、いいよ」

 乱馬はあかねにキスの雨を降らせながら、腰をつかいはじめる。性急ではない、あわててもいない、あかねに気を配りながらも、おびえすぎてはいない。

「乱馬……乱馬のが……感じる……動いてる……」

 あかねがまぶたを閉じて、声をあげる。

「あかねのアソコ……すごく気持ちいいぜ」

「ほんと? 嬉しい……」

「ああ……だから、もっと強くするぞ」

 乱馬の動きが少しずつ速くなっていく。

「はっ、はっ、あ……んん……乱馬ぁ……熱いよぉ」

「気持ちいいか、あかね?」

「うん……初めてなのに……へんだよね……」

「へんじゃないさ」

 あかねの奥にペニスを突き入れる。あかねの狭い膣の最奥部に亀頭がとどく。

「つついてるのがわかるか? あかね」

「あ……わかる……よ……乱馬のが……当たってる……ああっ」

「もっと感じろ、あかね」

 かび臭い体育のマットの上でも、乱馬とあかねにとっては極上の褥だ。なぜなら、最愛の人と抱き合っているから。

 若い二人はからみあい、激しく互いを求めあう。

 乱馬は体位を変えていく。あかねの脚を抱え、挿入の角度に変化をつける。

「あっ、乱馬、気持ちいい……そこ……」

 陰毛の生えた部分をたがいにこすりあわせ、あかねの敏感な箇所に刺激を与えながら、さらに身体の重なりかたにバリエーションをつける。

「あは……あ……乱馬のが横に当たって……くふぅ」

 ひっくり返されて、マットにうつぶせになりながら、あかねはおしりを突き上げる。

 乱馬はそのおしりを左右に広げ、亀頭のくびれの部分が覗くくらいまで引き抜いてから、反動をつけて一番奥まで送りこむ。

「あ……はあ……っ」

 たまらないように、あかねが息を吐く。

 乱馬がペニスを引くと、乱馬が抜けてきってしまわないように、あかねのヒップに力がこもる。無意識の反応らしい。

 一拍おいて、また乱馬が勢いよく最奥部を突く。

「んは……あっ!」

「あかね、気持ちいいか?」

「うん、うん……乱馬、すごいよ……すごく気持ちいいよ……今まででいちばん……」

「じゃあ、もっとしてやる」

 乱馬はあかねのヒップをつかんで、ピストン運動を速めていく。

「あっ、あっ、ああっ、乱馬、乱馬……あたし、もお……」

「おれもだ……」

 乱馬とあかねはふたたび抱き合った。バックで絶頂を迎えるよりも、たがいの目を見ながら極まりたい――ふたり同時にそう思ったのかもしれない。

 交わった部分からは、あかねの白濁した愛液とともに、初性交の徴ともいうべき赤いものが流れ出ている。

「あかね、あかね……いくぞ、出すからな」

 乱馬は射精の予感にさいなまれ、腰を小刻みに叩きつける。

「も……もうすこしで……あたしも……っ!」

 自ら乳房をもみながら、あかねも高まっていく。

「あかねっ!」

「乱馬ぁっ!」

 ふたり同時に叫び、かたく抱きしめあう。

 乱馬はあかねの中に、溜りに溜まったものを一気に吐き出した。

「あ……あ……乱馬のがいっぱい……出てる」

 あかねはうっとりとした表情で余韻に浸っている。

 乱馬もだ。あまりの快美感に、あかねとつながったまま、ぼうっとしている。

 しばらくしてから、二人見つめあい、キスを交わした。自然な動きだ。

「やっぱり……あかねが一番だ」

「乱馬は、一人いれば、それで充分よ」

 あかねの言い回しがおかしかったのか、乱馬は吹き出した。

「なんだよ、あかね、おれは一人に決まってるだろ?」

「乱馬こそ、あたしが一番って、だれと比べてるの?」

 いつもならここで他愛ない口喧嘩に発展するところだが、今日、この時にかぎっては、おたがい詮索はしない方がいいと悟ったらしい。

 乱馬があかねの乳房を撫でる。

「なあ、あかね……もう一回、いいだろ?」

 あかねも頬を染める。

「うん」

 乱馬とあかねはマットの上で、たがいの身体を抱きしめあった。

 

 

 乱馬とあかねが抱きあっている。

 その光景を、跳び箱の向こうからビデオカメラが捉えている。

 むろん、なびきである。

「あかねったら、ずいぶん感度がいいわね。処女をなくしたばかりには見えないわ」

 独り言のように論評する。

 それに応じる声がある。

「乱馬も見違えるほどに女のあしらいがうまくなっているではないか」

 八宝斉だ。跳び箱にしがみつくようにして、乱馬とあかねのセックスを見物している。よだれをたらさんばかりだ。

「おじいちゃん、あかねの処女、先に味見したなんて言わないでよ」

「なにを言う。わしが入口をほぐしてやらなんだら、ああもうまくいかんかったはずじゃぞ! だいたいにして、なびきちゃんこそ、乱馬を食べてしまったんじゃないのかや?」

「乱馬くんを食べたのはかすみおねえちゃんよ。あたしはちょっとご相伴にあずかっただけ」

 いたずらっぽくなびきは笑う。

「ともかくも、お疲れさま。これでようやく乱馬くんとあかねの片がついたってわけね。ここまで結びつけば、もう正真正銘の夫婦だわ。証拠の映像も撮ったし――でも、おじいちゃん」

 体育用具室の隅で気絶したままのヒロシ、大介、五寸釘を見つつ、なびきが訊く。

「あの子たちの記憶は大丈夫なの? あかねにまとわりついてきたら面倒よ」

「大丈夫じゃて、この幻身夢遊香をかいだものは、その香の支配下にあった時の記憶はすべて失うのじゃ。こいつらが記憶をとりもどすことは、まずありえんわい」

 八宝斉が自信たっぷりに言う。なびきは感心して声をあげる。

「へえ、すごいじゃない。でも、そうすると……」

 なびきの視線が乱馬とあかねに移る。

「あれも……忘れちゃうわけ?」

「……ま、そういうことに、なるかの」

 八宝斉の返答に、なびきは肩をすくめた。

「なーんだ……じゃあ、まだ延長戦は続くわけ、ね」

 

 そして、また――天道家に夜がやってくる。

おしまい