らんま1/2 新婚編?

第六章 乱馬が豹変!? なにすんねん、乱ちゃん! 

  

 乱馬同士が争っている。

 どうやら、どちらが先にあかねとひとつになるかで言い合いになっているようだ。

 なぜだろう。同じ乱馬なのだから、ひとりになって、あかねを奪ってくれればいい。

 たくさんの乱馬から同時に愛撫を受けるのは気持ちいい。でも、やっぱり、結ばれるのはただ一人の乱馬とがいい。

 理想をいえば、こんなかび臭い場所ではなく、銀色の月明かりの射し込む窓辺のベッドの上で、潮騒を聴きながら、乱馬の体温を感じていたい。

 そう思うと――聞こえてくる気がする。海の音が。ざぁ……ざぁ……と身体の奥からわきおこってくるような――

 ああ、いま、あたしは乱馬とハネムーンの真っ最中なんだ――そんな気がしてくる。

 幻想を誘う香りが強まる。鼻孔ふかく吸いこまれた粒子が嗅覚細胞を刺激して、極彩色の夢をあかねの意識にもたらしているのだ。

 ああ。

 ふたりの乱馬のうちのひとりが――じゃんけんに勝ったらしい――あかねの太股を抱えて、身体を押しつけてくる。ピンと尖ったペニスがあかねを狙っているのがわかる。腰をずらしながら、入口をさぐっている。

 ついに……

 とうとう……

 ひとつになるのだ。

 乱馬が入って来る。

 ペニスがあかねの潤った部分に触れる。

 すべって、離れる。

 また、当たる。

(あ、乱馬、そこ……そこよ)

 もどかしいあかねの願いとは裏腹に、また別のポイントにペニスが当たる。痛い。

 乱馬は不器用に腰を動かし始める。入ってないのに。

「こ、ここかな……?」

 乱馬がとまどったように言う。自分でペニスに手をそえて、位置を確かめるようにしている。

 ぐいっ、と入れようとする。こんどは場所も正確だ。あかねは、結合の瞬間の痛みを覚悟して歯を食いしばる。やっぱり、いざとなると怖くなる。あかねは息を詰める。

 乱馬が身体ごと覆いかぶさってくる。乱馬の顔が間近にせまる。

 にきびの浮いた男子高校生の顔。あかねの記憶のなかの乱馬の顔とは似ても似つかない。

 うそ!?

 叫ぼうとして口をひらく。とたんに香の成分が侵入してきて、相手の顔が乱馬にもどる。あかねはほっとしながらも、不安に胸を噛まれる。いまのはいったいなんだったんだろう。

 

 

「あれ? くそ……へんだな」

 ヒロシが汗みずくになりながら、尻を動かしている。くちゅくちゅと粘膜同士が当たる音がしているが、明確なピストン音にはならない。

「どうした? 穴がわかんねーのか? なんだったら、おれが替わってやるけど」

 大介が笑いながら言う。じゃんけんで負けた悔しさが、まだ唇の端にのこっているようだ。

「うるせーな、場所はわかってんだよ。でも、キツくて、入らねえんだ」

「マジかよ、おまえ、そんなチンポでかかったか?」

「わ、覗くなよ」

 まわりこんできた大介に、ヒロシは慌てた声をあげる。

 赤く充血した男子高校生の性器の先端が、少女の股間の一点に半ば突き刺さろうとしている。だが、ある一点で阻まれて、それ以上の侵入はできないようだ。

「と……とっとと、やっちまえよ。後がつかえてるんだから……」

 大介の視線は、性器同士の結合部分に貼りついている。息が荒い。

「わかってるよ……くそ……」

 手で茎をつかんで、あかねの中にもぐりこませようとするが、うまくいかない。亀頭がぬるっとすべって、肉の隘路から飛び出す。

「あっ……う……」

 あかねがうめいている。亀頭が敏感な部分に擦れて、性感を得ているらしい。まぶたを半ばとじて、開いた唇から白い歯とピンクの舌が覗いている。

「ああ、ちくしょおっ! もう、出さねえと、おかしくなっちまう!」

 ヒロシは半ば自分でしごきたてながら、あかねのワレメの内側に亀頭をめちゃくちゃにこすりあげる。柔らかいあかねの性器の部品がヒロシの亀頭にかきまぜられ、さまざまに形を変えつつ内部から透明な粘液を吐き出す。

「あっ、あ……っ! 乱馬……乱馬……気持ちいい」

 あかねの声のトーンが高くなる。腕が動いて、どこにもいない乱馬を抱こうとしている。

「おっ……お、出る」

 ヒロシの動きが性急になる。亀頭をあかねのクリトリスに押し当てて、茎に最後の刺激をあたえる。ぴくんぴくんと震えながら、鈴口から大量の白濁液が吐き出される。

「ふ、う、うう……」

 ヒロシがペニスをあかねのワレメになすりつけながら、大きく息をつく。

「あーあ、ドロドロに汚しやがって……」

 大介が毒づきなずら、ヒロシを押しのける。

「次はおれの番だからな。さ、あかね、ケツをあげろ」

 あかねを犬のようによつんばいにさせる。

 徹底的な愛撫で羞恥心を奪われたあかねは、おとなしく、言われたとおりのポーズをとる。肛門も、精液まみれの性器も、大介の前にオープン状態だ。

「へへ、あかねをバックからやるの、何度も想像してたからな……」

 ヒロシとあかねの性器同士の接触を間近で見ていたためか、大介のペニスもこれ以上ないほどに充血し、猛りたっている。

「おれはヒロシとちがって、ちゃんと中に入れてやるからな」

 宣言しつつ、あかねのヒップをつかんで、尻の肉を左右にひらく。

「すげえ……ケツの穴がひくついてるぜ」

 大介の声がふるえる。目があやしい光をおびた。

 

 

「や……やりてぇ……」

 乱馬は廊下の壁に手をつき、足を引きずるようにして歩きつづける。

 家事モードに入ったかすみにやんわりと追い立てられて登校はしたものの、なびきの中でフィニッシュを迎えられなかったペニスは熱を保ったまま、たまらない焦燥感を乱馬の本能に囁きつづけている。

 しかも、そのなびきは乱馬に紙片を握らせると、さっさと自分の教室に行ってしまった。

「ちぇっ、なにが、続きは学校で……だよ」

 いっそ自分の手で、とも思ったが、それまでの快感が大きすぎて、とても自慰でごまかす気にはなれない。

「女が欲しい……おんな、おんな、おんな……」

 女の肉体がもたらす快楽の大きさを、かすみとなびきが、さまざまな角度から教えてくれた。好きだから、とか、大切にしたいから、などといった曖昧な理由ではなく、ただ、餓えを満たしたいというダイレクトな衝動――本能そのもの――が研ぎ澄まされ、鋭敏になった感じがする。

 一時間目の授業は体育だが、とてもそんな気分にはなれない。

 乱馬はなびきが握らせた紙片を見る。

『校舎裏の体育用具室で待ってるわ  なびき』

 本当だろうか、と考える。なびきのことだ。今度は大金を要求してくるかもしれない。

 押えつけて、むりやりにすることを想像してみる。血が猛烈にたぎった。

 あのなびきをひっくり返して、存分に突きまくる。相手が痛がろうがなんだろうが、かまわず――ぞくっとする。ふと、自分が女になってそんなふうにされたら、と想像したのだ。

 頭の芯がクラクラくるほどの衝撃と陶酔があった。この身体のなかに潜む凶暴性が、そのまま女の自分にはねかえってきたとしたら。自分はどうなってしまうのだろう。

(いや! おれは男だ! 女の身体で感じたいなんて思わねえぞ)

 それを証明するためにも、この猛りたったものを女の身体にブチこんで、思うさま射精したい。

 その時だ。

 女子トイレから出てきた女生徒とぶつかってしまう。

「あいたっ!」

 鼻を押さえながら目をあげたのは久遠寺右京だ。めずらしく女子の制服姿だ。手にはポーチまで持っていて、女の子っぽい。

「なんや、乱ちゃんやないの。遅刻したんか?」

「うっちゃん……どうして?」

 右京も乱馬と同じクラスだから、いまは授業中のはずだ。

「あ、あのな……うちはちょっと身体の調子が……」

 ちょっと顔を赤らめて、右京が視線をそらす。そんな表情も愛らしい。

 乱馬の中の衝動が限界を超えてしまう。

 いきなり右京の肩を掴んで壁に押しつける。

「あん、乱ちゃん……なにすんの……んっ!」

 右京の唇をむりやり奪う。

「んう……乱……ちゃ……」

 乱馬は右京の唇を割って、舌を侵入させる。右京の抵抗が弱まる。身体から力をぬける。

 むちゅ……ぶちゅ……ちゅるう……

 甘い成分を含んでいるかのような右京の唾液を味わう。

 ぷはあ。

 唇と唇の間に、たがいの唾液の橋がかかる。

「乱ちゃん……どないしたん……?」

 乱馬を見上げる右京の顔は、真っ赤に上気し、いまにも茹であがりそうだ。

「うっちゃんがあんまり可愛かったからさ」

 いつもなら歯が浮いて言えないことでも、今なら平気で言えた。欲望がそれを言わせているのだ。

「ほんま? うち、うれしい……」

 右京の目尻に涙が浮かぶ。

 乱馬は荒い息を吐きつつ、右京の身体を押していく。女子トイレの隣にある男子トイレに入る。授業中のためか、そこは無人だ。

「え……? 乱ちゃん?」

 とまどう右京を個室に連れこむ。

「うっちゃん、もうガマンできねえんだよ」

「そんなん、急に……あっ!」

 右京は個室の壁に押しつけられ、動きを封じられる。なんとか逃れようとしてもがくが、むろん、乱馬の力にはかなわない。

「うっちゃん……すげー女っぽいぜ」

 右京のうなじに顔を押し当てて、匂いをかぐ。いつもの右京のそれとはちがう体臭を感じる。

「あ……嗅がんといて……うち……今日は……」

 乱馬は構わず右京のスカートをめくりあげ、下着に手をかける。

「厭や……厭やああっ!」

 右京が悲鳴をあげる。

 女らしいヒップから、邪魔っけな小さな布きれをはぎとる。

 その一点に、赤い染みが見えた。

「血……?」

「ああっ! みんといて、みんといてえええ!」

 右京が泣き出す。

「あの日かよ……それで、体育を休んだってことか……じゃあ制服も」

「うちかて、今日は女の子の日やもん……詰め襟を着る気にはなれへんやん……せやから」

 これまでも右京が女子の制服を着てくることはあった。その理由を知って、乱馬は激しく興奮してしまう。

「うっちゃん……やりてえ」

 乱馬はズボンのジッパーを下ろす。

 もう、ペニスはずっと硬いままだ。

「乱ちゃん、うそやろ? そんな……うち……」

 右京の声が震える。

 乱馬は右京を後ろから壁に押さえるようにして、固定すると、脚の間に割って入る。

「乱ちゃんにやったら、うちいつでもさせたる……でも、今日は……今日だけは……」

 ぐぬぅ――侵入を開始する。

「あっ……うう……ぐぅ」

 痛みのためか、右京の声が喉にくぐもる。

「うっちゃんの中……気持ちいいぜ」

「厭や……乱ちゃん、後生やから……」

 右京の訴えを無視して、乱馬は強引に侵入を続ける。男根で右京を挿しつらぬく。

「あ……お……奥まで……」

 もがく右京の胸を後ろから掴んで揉みしだく。サラシで締めつけられていない右京の胸はふわふわだ。

 乱馬は半ば引きちぎるように右京のブラウスをはだけると、ブラジャーをずらす。

 こぼれ出した右京の乳房の感触を楽しみながら、乱馬は腰を突きあげる。

「ら、乱ちゃん、そんなにしたら、うち……」

 右京の声質が変化しつつある。

「あかん……あかんねん……うち……」

「おっぱいの先が感じるのか、うっちゃん?」

 乳首を指でいじくりながら、乱馬は右京の耳に息を吹きかける。

「あ……あ……」

 右京がまぶたを震わせる。

「うっちゃんの中、ぬるぬるだぜ? あの日だからか?」

「い……や……いわんといて……」

 鉄の匂いが個室にたちこめている。出たり入ったりしている乱馬のペニスも真っ赤だ。 右京は壁に爪を立てるようにして、必死で乱馬の責めに耐えている。

「うっちゃん、いいよな、中で出しても」

 乱馬は言いつつ、腰の動きを速めていく。

「あ……あかん……あかんて……乱ちゃん……堪忍や」

 右京は嗚咽を噛み殺しながら、なんとか男を思いとどまらせようと声をはなつ。だが、それはさらに乱馬の劣情を焚きつけて、フィニッシュを早めるだけだ。

「も、もう出そうだ……うっ」

「いやあっ!」

 右京はお好み焼き用の巨大コテを振り回した。ふだんは背中に差している、いわゆる《フライ返し》だが、いままでどこに隠してあったのかはよくわからない。

 コテのエッジが水道パイプを切断し、水が噴出する。その圧力で乱馬は跳ねとばされ、個室のドアごとトイレの壁に激突した。窓ガラスが砕けちる。

「乱ちゃんのあほぅ! あの日やかて、妊娠するかもしれんねんで! それに、乙女に対して、なんちゅう狼藉するんや!」

 右京がコテを振りかぶって怒鳴り声をあげる。

 散乱しているドアの残骸やガラスの破片の周囲に乱馬の姿はない。右京はきょときょとあたりを見廻した。

「乱ちゃん、どこいったん? まだ説教のこってるねんで?」

 

 

「あいてて……もうちょっとだったのに」

 らんまは頭をさすりながら起き直った。校庭の端にある植え込みの中だ。

 どうやら、らんまの身体だけ窓の外へ飛び出してしまったらしい。

 水をかぶったおかげで、らんまの肉体は女になっている。射精しかけたものがまた消えてしまって、モヤモヤだけが強く残っている。

 むき出しの下半身が、どうしようもなく火照っている。

「ちくしょう……」

 泣きたい気分で股間をいじる。充血したクリトリスが包皮から飛び出して、指との接触でとてつもない電流を送りだしてくる。

「き……気持ちいいぜ……」

 自分で胸にふれる。びりびり痺れるような感じだ。全身がおそろしく敏感になってしまっている。

 授業中の校庭は人気がない。土の匂いに包まれながら、らんまの性感が高まっていく。

「もう、女の身体でもいいや」

 これ以上のおあずけには耐えられない。なんとか絶頂を得てしまおうと、らんまはその場でオナニーを本格化させる。

 クリトリスを刺激しながら、乳房をつかむ。服ごしではたまらなくなって、中国服の前を開いて、ノーブラのバストを露出させる。

「あ……ああ……気持ちいい」

 盛りあがってくる。指が勝手に動きはじめる。意識せずとも、自分の感じる場所をサーチしていく。かすみに施されたトレーニングのおかげかもしれない。

「うあ……あ……いき……そ……」

 指を小刻みに動かしながら、らんまが極まりそうになった時だ。

「おさげの女ではないか!?」

 いやな響きを秘めた男の声が降ってきた。

 剣道着姿の勘違い大王、九能帯刀だ。

「て、てめえ、九能!? な、なんでこんなところに!?」

「ふふ、ぼくは園芸委員なのだ。クラスの者たちから是非にと推挙されたのでな。授業中でも、デリケートな花たちには水をやったりせねばならん。まあ、そういう誠実な仕事ぶりを評価されたのだろうが」

 むろん、授業の邪魔になるので教室から追い出されたに決まっているのだが、本人は解っていない。

「それにしても、おさげの女、ぼくが来ることを知って、こんなところで待ち受けているとは。恋する女の情熱とはおそるべきものだな」

 口許をゆがめながら、九能が近づいてくる。らんまは自分の現在の体勢を思い出し、あわてて脚を閉じる。

「ち、近づくな! ばか!」

「なにを言う、おさげの女。むかしから、据え膳食わぬは男の恥、と言うではないか。そんなふうに自分から誘っておきながら、いまさらいやよもないだろう」

 いきなりの立場逆転だ。さっき、右京にしようとしたことが、今度は自分に降りかかってきた。

 らんまは身体を起こして逃げだす。

 九能が笑いながら追ってくる。

 一見、花壇のなかでおっかけっこする仲睦まじい男女、に見えなくもない。

 らんまの脚がもつれる。九能が追いついて、らんまを抱きしめる。

「ははは、逃げるなよぅ、こいつぅ」

 笑いつつ、花畑のなかにらんまを押し倒す。

「やっ、やめろ、九能! おれは男だって!」

「そんな愚かな戯言を誰が真にうけるか。この愛らしい身体のどこが男だ」

 九能がらんまの乳房に触れ、乳首を吸いあげる。

 らんまの脊髄を無色の電撃が駆け抜ける。

 乳房が九能の手のなかで形を変え、先端を舌でねぶられる。

 かすみのそれとはまったくちがう、男の荒々しい愛撫だ。

「あっ……ああ!」

「乳首が立ってるぞ、おさげの女。ぼくのことを想って、こんなにしたのだな?」

「ち、ちがう……」

「だが、ここはそうは言ってないぞ?」

 九能の指がらんまの股間に入る。

 強引に指を入れてくる。らんまは痛みに声をあげる。

 異物感だ。竹刀ダコのいっぱいできた九能の指でかきまぜられている。

「うあっ……あ……なんだ……これ」

 なにか形容しがたいものが下半身からあふれて、喉元までせりあげてくる。

「濡れてるぞ、おさげの女。びしょびしょではないか」

 笑いながら九能が指を抜き差しする。そのたびに、らんまの頭のなかで小爆発が起きる。

 ただでさえ絶頂寸前にたわめられていた身体だ。着火点が異様に低くなっている。

「や……やめてくれ……九能センパイ……お、おかしく……なっちまう」

「ふふん、おさげの女よ。もっと素直になるがいい。ぼくのものが欲しいのだろう?」

 九能は剣道着の袴をたくしあげ、裾のところから勃起したペニスを引っ張り出した。

 竹刀のように長くて、反り返っている。

「わ、ばっちい! そんなの、しまいやがれ!」

 男の性器を見る趣味はらんまにはない。だが、九能はむろん言うことなどきかない。

「ふっふっ、ほんとうは嬉しいくせに」

「嬉しいわけねえだろ、ばかっ!」

「無理するな」

 九能はらんまの手にむりやりペニスを握らせる。

「あ……」

 らんまは掌のなかの不思議な感覚に混乱する。

 自分のモノで慣れているはずなのに、女の身体になって初めて触れるそれは、思いのほか大きく、太く、たくましく感じられた。らんまの掌が男のときよりも小さくなっているせいかもしれないが、不思議な感覚だ。

「ちくしょう……おれよりでけえ……かも……」

「当然だ、おさげの女。だが、おまえにはもっとよいモノがついているではないか――これだ」

 クリトリスを指でつまんでくる。らんまは声をあげて背中をそらした。身体の力が抜けて、抵抗の気力が失せてしまう――そんな衝撃だ。

「おさげの女よ、特別にぼくのモノをほおばらせてやろう。感謝して味わうがよい」

 九能がらんまの顔にペニスを近づける。いつもなら、一秒だって耐えられないシチュエーションだ。でも、いまはちがう。頭がボーッとなって、なにも考えられない。

 唇をひらく。九能の亀頭が押し込まれる。

 不思議な味と感触だ。考えてみれば、ペニスを口に含むのはらんまにとっても初めてのことだ。男のときは、自慰はしても、セルフ・フェラチオなてんできやしない――まあ、むりやり身体を曲げればできないこともなかったかもしれないが――

「はん……う……ん……」

「はっはっはっ、おさげの女、うまいぞ。天道あかねと甲乙つけがたい」

「む……ふぅ?」

「さあ、もっとしゃぶるのだ」

 らんまの顔にのしかかるようにして、九能が腰を振りはじめる。

 地面に後頭部がめりこむくらいに、上からのしかかられて、先端が喉まで達している。

「んぐぅぅ……うふぅぅぅ」

 らんまは苦しくて首を横にふる。それがさらに九能のペニスに刺激を与えるらしい。

「いいぞ、おさげの女、気持ちいい……出るっ!」

 前ぶれもなしに、九能が射精する。

 らんまの口のなかいっぱいに九能の生臭いザーメンが広がっていく。

「おさげの女……飲むのだ」

 九能がらんまの口と鼻を押さえるようにして命じる。らんまは呼吸をするためにやむなくその粘液を飲み下す。まるで金属を飲み込むようなまずさだ。

 口から喉、食道から胃にかけてが、九能の子種で汚されていく。

「よおし、いい子だ、おさげの女」

 九能がらんまの頭をなでる。いつもなら、反射的にカウンターパンチを繰り出しているところだが、どういうわけからんまの身体が反応しない。腹立たしいが、らんまの肉体は完全に堕ちてしまっているのだ。

「じゃあ、次はこっちに入れてやるぞ」

 すでに回復したペニスを九能は誇示しつつ、らんまの足首をつかんで広げる。

 らんまはまた花壇に倒れ込む。

「ふふふ、花畑のなかに、おさげの女の花びらも真っ赤になって開いているぞ」

 笑いつつ、九能は上から、らんまの脚のあいだの花弁に、赤黒い剛直を押しこんでいく。

「く、九能センパイ……やめて……くれ」

「もう止まらん」

「あっ、くあっ! あ、あかねぇ……っ!」

 らんまは、その瞬間、もっとも愛しい少女の名を呼んでいた。

 

 

 あかねにとっての「儀式」は続いていた。

 よつんばいになった状態で、おしりからいじくられている。イタズラしているのはむろん乱馬だ。どうやらおしりの穴が気になるらしく、しきりに指を入れてくる。

(そこは、いや……ちゃんと……して……乱馬ぁ)

 そう訴えたいのに、思うに任せない。なぜなら、唇を塞がれてしまっているからだ。むろん、それも乱馬のしわざである。

 さきほど、あかねの股間にこすりつけて射精したほうの乱馬だ。

 ペニスを舐めるように要求してきた。

 あかねが拒む間もなく、口に入れられてしまった。

 乱馬のものだから、汚くない――そう思いつつも、汗の匂いと、それとも異質な体液の味にむせかえりそうになる。

 それでも、不思議な弾力性のあるそれは、まるで人間の身体のパーツのようではなかった。なにかの小動物のような――それ自身が独立した生き物のような――気がした。

「あかね、うまいか?」

 男子生徒が腰を突き出し、ゆっくりと円を描くようにしながら訊いてくる。

 あかねは懸命に舌を動かすだけだ。ちゃんとしないと、喉がつまって、息ができなくなってしまう。そうすると、意識が混濁して、幻覚が見えてしまう。乱馬が乱馬でなくなってしまうという幻覚が。それがおそろしくて、あかねは乱馬のペニスをしゃぶりつづけた。

「上手じゃねえか……うっ」

 裏筋を舐められて、乱馬がうめく。また、大きくなっていく。

「あかねのやつ、尻をいじくられて、嫌がってねえぞ?」

 もうひとりの乱馬の声だ。おもしろがっている。排泄のための穴の内部が指でかきまぜられて、熱い。

「まんこもヒクつかせてら。すげえや」

 覗きこまれている。恥ずかしい。

「こっちにも指を入れてほしいのか、あかね?」

 言いつつ、つぷり、入れてくる。

「んふっ、んうっう……くぅ」

 あかねがたまらず鼻を鳴らす。

「気持ちいいんだな、あかね?」

 乱馬がきいてくる。どっちの乱馬が言ったのか、わからない。あかねはうなずく。

「あかねのこのアナ、ほぐれてきた感じだぜ? そろそろ入るんじゃねーか?」

 あかねのおしりを弄んでいた乱馬が姿勢をかえた。指をぬき、かわりにペニスを押し当ててくる。さっきの乱馬とはちがう感触だ。

 あかねは、もうひとりの乱馬のペニスの先端を吸い上げながら、涙目でふたりの乱馬を見る。

 ふたりがかりで、こんなふうに虐められながら、処女を捧げることになるなんて……

 なにかがおかしい気がするが、それよりもなによりも、衝きあげてくる感情のほうが強い。

(乱馬……)

 長かった、と思う。

 初めて逢ったときには、こんなふうになるなんて想像もしなかった。

 いろいろ事件があった。そのたびごとに反発しあい、ケンカもしたけれど、それらの出来事を通じて、少しずつ気持ちの距離がちぢまっていったような気がする。

 乱馬の無神経さには幾度となく傷つけられたけれど、時折垣間みせる優しさに癒されたこともあった。一緒に過ごす時間が長くなるほどに、離れていることが不自然に思えるようになった。

 だから、あかねは乱馬の隣でずっと歩いていくことに決めたのだ。乱馬からプロポーズされなくたって、いつかは――自分の口からその決意を伝えただろう。だって、そうすることがあかねにとって、いちばん自然なことだから。

 これから起こる出来事は、ふたりにとって記念すべき一瞬になるはずだった。何度も何度も思いかえして、おたがいしわくちゃのおばあさんとおじいさんになっても――

(きて……きて……乱馬)

 あかねは、股間の粘膜と口腔の両方に乱馬の性器の熱の塊を感じながら、その一瞬の到来を待ち受けた――

 ず。

(入ってくる)

 ず……ぬ。

(い、痛い)

 身体が断ち割られそうな激痛だ。だが、あかねのヒップをつかんだ力強い手は、痛みから逃れようとするあかねの本能的な動きをゆるさない。

 ぐぐぐぐぐぐっ!

 他者の肉体の一部が、明確な意志を持って、もぐりこんでくる。

 信じられない痛みが襲ってくる。裂けてしまいそうだ。でも、耐えられる。乱馬とあかねの「初めて」だから、耐えられる。

 ぐんっ!

(あっ……!)

 あかねは、そのプロセスが完了したことを感じた。奥まで、それが侵入してきている。

「入ったぞ……あかね……っ」

 勝ち誇ったような大介の声――ちがう、乱馬の声だ――でも、大介の声に似ている――なぜだろう――なにか――おかしい……

 おしりを高く掲げさせられながら、あかねは、自分の中で動きだした牡の生殖器があたえる刺激に意識を混濁させていった。

  

いかん、終わらない……次こそは!