らんま1/2 新婚編?

第四章 姉妹の桃尻・蜜くらべ!?

 

(いったい……なにがどうなったっていうんだ……)

 女体に加えられた快感の余韻を引きずりながら、男に変じた乱馬は事態を理解しようとした。

 だが、それは無理な話だ。現実があらゆる想像を凌駕してしまっている。

(かすみさんが、おしりを……)

 天道家の長女が、浴槽のなかで、つんとヒップを突き出している。

 張りきった白い肌は、19歳のみずみずしさを香気にかえて発散している。

「見える?」

 片手で尻肉をつかんで、自らその部分を開く。

 果実が割れて、果汁に濡れた芯の部分があらわになる。

 陰毛に縁どられた愛らしい唇は、薄いピンク色をしている。形もおとなしく、まるで少女のそれだ。だが、発達したクリトリスが、その部分がすでに女として成熟していることを伝えている。

 性器に隣接する、排泄に使う肉の穴さえはっきりと見えている。天女のように美しいかすみにも、やはりケダモノめいたナマな器官が息づいているのだ。

 女に変身した時の自分のものを含めれば、乱馬にとって女性器はある意味なじみのものだ。だが、こんなシチュエーションで、まじまじと見たのは、むろん初めてだ。

「す……すげえ」

 乱馬はかすれ声でつぶやいた。興奮して、息が苦しいほどだ。

 ペニスがお湯のなかで脈打って、ゆっくりと上下している。

「よく見て……場所を憶えてね」

 かすみはもう一方の手で、乱馬の指をからめとる。

 まるで幼稚園の先生がお遊戯のふりつけを指導するかのように、乱馬を導いていく。その部分へと。

「さわって……優しくね」

「ああ……」

 乱馬の指先がかすみの粘膜に触れる。とたん、それが内包する熱量に圧倒されてしまう。

 熱くて、湿って、とろけそうだ。

「乱馬くんとおふろに入って、興奮しちゃった……かしら」

 かすみもその部分がどうなっているのか自覚しているのだろう、恥ずかしそうに言う。

「か……かすみさんっ!」

 たまらず乱馬はかすみのヒップにむしゃぶりつく。熟れた女陰の匂いに陶然となりながら、その味を舌全体でとらえようとする。

「あらあら、乱馬くん、せっかちさんはだめよ」

 かるく逃げながら、かすみがクスリと笑う。拒絶ではない。乱馬の欲望を肯定的に受け止めながら、しかし、性急さだけをたしなめているようだ。

「さっき、女の子の身体のこと勉強したでしょう? あんなふうに、優しく、いたわりを持ってね……少なくとも最初のうちは」

 そうか、と思う。

 女の身体は気持ちが高まるほどに感じる場所が広くなり、さらに感じ方も深くなっていくのだ。

 あのものすごい快感も、かすみがたんねんに愛撫してくれたおかげだ。

 だが、最後のほうは優しいだけではなかった。激しい愛撫にかわっていた。そして、らんまの女の身体は、その激しさを愛おしくさえ感じていた。

 女の身体は、最初のうちは、じれったいくらいがちょうどいい。それが高まっていけば、貫かれることさえ求めるようになる。

 昨夜の自分はあかねに対してどうだったろうか。性急すぎはしなかったろうか。

 そうだとすれば、もっと落ちつかなければならない。女の身体は神秘的だが、けっして嘘はつかない。きちんと手順をふんでノックすれば、ちゃんと扉を開いてくれるのだ。

 乱馬は、かすみのヒップを両手ではさんで中央部を広げると、うやうやしく性器にくちづけした。唾液をたっぷりのせた舌で、その部分を愛撫する。

「あっ……あ……乱馬くん……じょうずよ」

 ひだをなぞるように動く乱馬の舌に反応して肛門をひくつかせながら、かすみは優秀な生徒をほめる女教師のようにふるまう。

 だが、その女教師はどうしようもなく淫乱だ。

「もっと、中のほうまで……舐めて……あっ! ああ……」

 肉の弾けた部分をめくれあがるほどに広げて、自分から乱馬の顔におしりをこすりつけてくる。

「かすみさん……っ!」

 乱馬はかすみのその部分を舌でえぐりつづける。なんという柔らかさ、なんという芳香だろう。脳が痺れるほどだ。

 音をたててかすみの身体の内部を味わう。分泌してくるものが乱馬の舌にさらなる滋味を感じさせる。

 おいしくて、いやらしい液。天道かすみという名の天女が乱馬のために甘い汁をたらしてくれているのだ。

「も……もう、おれ……」

 乱馬の欲望がふくれあがる。矢も盾もたまらない気持ち。

 かすみはそんな乱馬に目をやると、微笑みながら身体を入れ替える。浴槽のなかで乱馬と向かいあうと、自ら脚を開いて、腰を沈めていく。

「か、かすみさ……」

「あかねには……ナイショよ」

 かすみは悪戯っぽくささやくと、乱馬のペニスに手をそえて、自分の中へと導いていく。

「あ……」

 乱馬はおのれ自身がかすみに包みこまれていくのを感じた。言葉にしがたいほどの幸福感。

 かすみと繋がってしまった。あかねの姉で、天道家の家事を切り盛りしていて、料理がものすごく上手で……この上なく優しく、きれいなお姉さんだ。そのかすみのヴァギナに乱馬のペニスがぴっちり填まって、粘膜同士を刺激しあっている。

 あかねとは違い、入り口をふさぐ障害物は存在しない。適度にこなれた大人の器官だ。男を悦ばせる術をわきまえている。

「乱馬くんはじっとしてて」

 かすみは熱い息を吐くと、乱馬の身体を抱いたまま、腰をくねらせはじめる。

(かすみさんは……やっぱり大人なんだ……)

 乱馬はほんのちょっぴり喪失感を味わう。自分勝手だとは思うが、かすみが誰と最初の儀式を通過し、相応の経験を積んだのか気になってしまう。もしかしたら東風先生なのだろうか……とてもそうは思えないが――

「んっ……うんっ……んぅ……」

 かすみの身体がうねるたびに、浴槽に張られたお湯がはねて、ちゃぷちゃぷ水音がおこる。

 同時に乱馬の充血した器官がかすみの柔肉に絞られて、あまい快感が全身をさいなむ。かすみの膣のいろんな場所が蠢いているようだ。

「かすみさん……すごい……気持ちいい」

「乱馬くんのも、すてきよ」

 おせじなのだろうか、それとも本気で感じてくれているのだろうか。始めた経緯はともかく、乱馬はそれが少し心配になる。

「かすみさん、ほんとに……」

 乱馬は浴槽のなかで臀部に力を入れて、かすみを突きあげるようにしてみる。

 ひくんっ、かすみが反応し、白くてすべすべの喉をさらす。鎖骨の彫りが際立ち、肩が上下する。

「あっ、あああ……あっ! 乱馬くん……いいっ!」

 天使の声であえぐ。ああ、かすみさんがこんな声を、こんなにいやらしい声を出すなんて。

 乱馬はたまらなくなって、かすみの華奢な腰を抱くと、下から激しく突き上げる。

 先端がかすみの奥に届き、天井に突き刺さる。

 ずん……! と。

「ふぁ……あっ!」

 かすみの声が高くなる。ぎゅううっと乱馬にしがみつく。

「ほ、ほんとに気持ちいいの……すごいわ、乱馬くん……! さ、最高よ」

 半泣きのような声を出して、乱馬の後頭部をかきむしるようにする。

 乱馬の胸に誇らしさが立ちのぼる。牡としての自信と言ってもいい。女を感じさせることの喜びは、単なる肉体の快感とは次元がちがうものだ。

 そして同時に、女の身体のときに自ら体験した快感の深さを思い出し、そこはかとないうらやましさも感じてしまう。

「あっ、あっ、乱馬くん……おっぱい、吸って、おねがい……っ」

 かすみの声が切迫する。乱馬の首に手をかけて大きくのけぞる。乱馬はそのふくらみに顔をうずめ、乳首を吸いあげる。

「ああっ! あっ! ああああっ!!」

 絶叫とともに、かすみの膣が絞り上げられる。

 乱馬は射精感が衝きあげてくるのを感じる。甘く切ない衝動だ。すべてをかすみの中にぶちまけてしまいたい……!

「かすみさん……お、おれ……っ」

「いいの……中で……っ」

「でも、そんなことしたら……」

 子供が出来てしまうかもしれない。そうしたら、かすみと結婚することになるのだうか。あかねではなく。

 ショートヘアの、きかん気そうな眉と目を持つ少女の面影が乱馬の脳裏をよぎる。

 そのとき。

 かすみが上気した顔を乱馬の目の前に近づけた。長いまつげがふるえている。小鼻が開いて、息がはげしい。唇がひらいて、赤い舌が見えた。

 唇を合わせてくる。舌がからみつく。唾液がまざりあい、乱馬の脳が爆発する。睾丸が熱くなり、炸裂のパルスが前立腺を駆けぬける。

 かすみの身体の中で、ペニスが弾ける。尿道のなかを精液がせりあがって、たまらない灼熱感が快感に変化する。

「おああっ!」

「乱馬くん、出るのね……」

 かすみがうっとりとまぶたを閉じる。

「いっぱい出して、乱馬くん」

 かすみが慈母のような笑顔をうかべつつ、腰をグラインドさせる。

「あっ、出るっ! かすみさ……」

 その時だ。

「みいちゃった」

 声がした。乱馬は弾かれたように首を動かす。

「なっ、なびき!?」

「いいのかなあ、乱馬くん。許婚のあかねを差し置いて、かすみお姉ちゃんとエッチなんかして」

 Tシャツにホットパンツ姿のなびきが浴室に入ってきている。今まで夢中で気づかなかったが、脱衣所から覗いていたらしい。

「み、見てたのか!?」

「じゃあん」

 手にしているビデオカメラをしめす。録画中の赤いランプが点灯している。

「もう、なびきったら……困った子ね」

 乱馬からゆっくりと身体をしながら、さほど困ってはいない口調でかすみが言う。

 だが、乱馬にとっては一大事である。

 もしもそれが他人の目に触れたら……。まして、あかねに、なんてことになったら――

「さて、自分の立場はわかってるわよね、乱馬くん」

 勝ち誇ったなびきが仁王立ちになる。乱馬は戦々恐々だ。言い訳のしようのない現場をおさえられてしまった。どんな法外な口止め料を要求されても、不当な労働を強いられても、黙って従うしかない。

「くそ……っ! わかったよ! なんでも言えよ!」

 乱馬はヤケになって叫んだ。

 なびきは唇の端をゆがめると、乱馬が予想しなかった行動に出た。

 なんとホットパンツを下着ごと膝までずらしてしまったのだ。

 天道家の次女のなめらかな下半身があらわになる。スポーティでほっそりとした腰から、意外にむっちりとした太股につながっている。

 乱馬は、なびきのデルタ地帯を呆然と見つめた。ちぢれた陰毛が、こころなしか濡れている。

 なびきは自らその繁みをかきわけて、ワレメの間に指先をこじいれる。くちゅ、という湿った音が聞こえる。なびきのその部分は濡れている。

「かすみお姉ちゃんと乱馬くんのエッチみてて、こんなになっちゃったのよ。乱馬くん、責任とってよ」

「な、なびき……ウソだろ!?」

 乱馬は引きつれた声をあげた。

  

そして、そのころ、風林館高校では――

 

 五寸釘は狂ったようにシャッターを押していた。

 ほんの数メートル先に、あかねの裸身があるのだ。しかも、八宝斉なんかに股を開いて、秘められた部分を開陳しようというのだ。

 信じられない。

 五寸釘は体育倉庫から流れだす不思議な香りに陶然となりながら、願う。

 ――夢なら醒めませんように……!

 もうすぐ、あかねのすべてを見ることができるのだ。肝心な瞬間に、母親の陰気な声で起こされるなんて、まっぴらだ。

 カメラをホールドする指が汗ですべりそうになる。

 ビューファインダーの中で、あかねの形のいい膝が開いていく。

 あ……あ、もう少し……

 だが、あかねは開きかけた膝をとめた。

 恥ずかしそうに脚をすりあわせる。

「なぜやめるのじゃ、あかねちゃん」

 八宝斉が咎めるように訊く。あかねは上気させた顔をうつむかせた。

「だって……やっぱり、恥ずかしいんだもん。いくら乱馬にだって……」

 あかねは八宝斉に対して、「乱馬」と呼びかけた。どういうことなのか、五寸釘には事情がわからない。だが、八宝斉はこれ以上焦らされることにはガマンならないようだった。

「なにをいっておる、ここまできて――さあ、ご開帳じゃ! カポーンと、開いてみせい」

 八宝斉があかねの膝に手をかける。

「あっ、乱馬、だめっ……!」

 ぐぐぐ、八宝斉の手であかねの大事な場所が開かれていく。

「あ……ああ……」

 あかねが脱力したように声をもらす。観念したのか、身体にこもっていた力が失せる。

 脚が、ひらく。大きく。

 五寸釘はカメラをズームさせる。だが、見えるのは、あかねの股間の中央部をまじまじと覗きこんでいる八宝斉の後頭部だけだ。

「ほほお……これがあかねちゃんのおまんちょか……可愛いのぉ」

「いや……乱馬……見ないで……」

 あかねは曲げた指の第二関節を噛んでいる。羞恥を痛みでごまかそうとしているのか。

「よぉく見えておるぞ? 桃色のいやらしい唇がヒクヒクしているところまでな」

「や……やだ……そんな言いかた……」

「助平な子じゃのう、あかねちゃんは、こんなに濡らしよって……」

「あっ!」

 あかねの声がはねる。五寸釘はカメラのアングルを色々とかえるが、やっぱり禿頭しか見えない。どうやら、八宝斉があかねの股間をいじって遊んでいるらしいのだが、肝心なところが見えない。

 くちゅくちゅと音がしている。音からあかねのその場所の状況を想像してしまい、五寸釘の脳の血管は破裂寸前にまで脈動する。

「あっ……やあっ……ら……んま……」

 びくびくびくんっ――と身体を震わせて、あかねがマットに上体を倒す。仰臥状態になると、硬そうな乳房が、ぶるんっ、と震える。膝は立てたまま、八宝斉の指技を受け入れる姿勢になる。

「ほっほぅ……武道の修練を続けたわりに、立派な処女膜が残っておるのう。この強靭さでは、乱馬のやつが突き破ることができなんだのもうなずけるわい。ひょひょひょ……楽しみなことじゃて」

「らん……ま? なに……言って……」

 訝しさを感じたのか、あかねが顔を動かす。八宝斉は懐から香炉らしきものを取り出すと、ふたをずらした。すると紫色の煙が漂い出て、周囲に満ちる。

 あかねの瞳がとろんと溶けて、またもとの姿勢にもどった。

 煙は用具室の外にいる五寸釘の鼻孔にも届いている。さっきから感じていた玄妙な香りの正体はこれだったのか、と悟る。

 五寸釘もバカではない。ふだんのあかねなら八宝斉の言いなりになるはずがないことはわかっている。なにかしら理由があるはずだとは思っていたが、もしかしたら、この煙が――

「くひひひ、あかねちゃんのおまんちょがおツユを漏らしてきおったぞ。さて、味見を……」

 八宝斉はあかねの股間に顔をうずめると、じゅるじゅる音をたてながら、なにかを吸いあげはじめる。

「あっ! 乱馬、だめ……そんなとこ……きたない……」

 反射的にか、きゅっと股間をすぼめようとするあかね。それを八宝斉は許さず、なおも顔をこすりつけていく。

「あっ……あ……だめ……ぇ……」

 あかねの声が消え入りそうに尻すぼみになっていく。

 五寸釘は目の前の現実に愕然とする。

(あ、あかねさんを助けなきゃ……)

 男として、勇気を振りしぼるのは今だ、と思った。

 体育倉庫の扉を蹴破って突入すると、意地汚くあかねの股間にむしゃぶりついている八宝斉をぶちのめす。

「あかねさん! もう、大丈夫ですよ! 悪漢はぼくが、この五寸釘がやっつけました!」

 五寸釘は高らかに宣言する。絶望の涙を流していたあかねは、自分の貞操の危機を救ってくれた英雄をうるんだ瞳で見あげる。

「ご、五寸釘くん……あたし、汚されちゃった……もう、五寸釘くんに愛される資格を失ってしまったのよ」

「はっはっはっ、そんなことはないよ、あかねさん。ぼくはきみがどんな姿になっても愛し続けることを誓うよ」

「うれしいわっ、五寸釘くんっ!」

「ぼくもだよっ、あかねさんっ!」

 ヒシ、と抱き合うふたり。そして、その影はすぐにひとつに溶けて――

 妄想にひたっていた五寸釘の視界のなかで、八宝菜が身体を動かした。その拍子に、あかねの脚のあいだがちらりと見える。

「シャッターチャンス!」

 反射的にカメラを構えてしまう五寸釘。どうやら、救出に入る考えはあっさりと捨ててしまったらしい。

 ――と。

「なにやってんだ、五寸釘、こんなところで」

 背後から声をかけられる。

 五寸釘はその場で五センチくらい跳びあがった。身体にバネがないので、せいぜいそんなものだ。

 振り返ると、そこには体操服姿の大介とヒロシが立っている。二人とも五寸釘のクラスメートで、乱馬の悪友でもある。

「どっ、どうしてここに……!?」

 カメラを取りおとしそうになりながら、五寸釘はわたつく。

「どうしてもなにも、体育だぜ、一時間め」

 大介が、かったるそうに言う。ヒロシもだるそうだ。

「今日、ハードルだってよ。五寸釘、おまえも準備手伝えよ」

「え……?」

 五寸釘は腕時計を見る。たしかに授業がそろそろ始まる時刻だ。あまりのできごとに時間の感覚を失ってしまったらしい。

 だが、いま、大介たちに用具室の中の様子を見られるのはまずい。まずすぎる。

「あっ、あっ、そ、そーだねえ……!」

 声をあげつつ、窓の透き間を身体で隠す。

「ぼ、ぼくが全部出しておくから、きみたちはグラウンドに行っててよぉ……ははは」

 この場はなんとか追い返さねばならない。あかねのあられもない姿をほかの誰かに見せるなんて、とんでもないことだ。あくまでも盗撮するのは五寸釘でなければならない――ちょっと主旨がずれてきているが。

「なに言ってるんだ。おまえ一人でハードルぜんぶ出せるわけねーだろ」

「そうそう、クラスメートなんだから、協力しようぜ」

 大介とヒロシが口々にいう。

 ふだん友情にめぐまれていない五寸釘は、状況もわすれて、じ〜ん、と感極まってしまう。

「だ、大介くん、ヒロシくん……」

「てゆーわけだから、どけよ、五寸釘」

「そうそう、邪魔邪魔」

 単に、どんくさい五寸釘には任せておけない、という理由での先の発言だったらしい。

 感動中の五寸釘を押しのけるようにして、大介とヒロシは体育用具室の扉を開けた。

「ああ、し、しまった!」

 ハッと我にかえった五寸釘はすっとんきょうな声をあげた。

 だが、もう遅い。大介とヒロシは用具室に入ってしまっている。

「ん……? なんだ、この匂い、だれかヤニでも吸ったか?」

「線香じゃねーの?」

「ああ、たしかにそれっぽいな……」

 大介とヒロシの緊張感のない会話が一瞬とぎれた。

「なっ!」

 悲鳴のような声があがる。

「なんだ!? あ、あかね……!?」

「ウソだろ、おい……」

 泣き声に近い声を出したのは、大介か、ヒロシか――

 

つづく……