らんま1/2
その朝に……
(仮題)


第三章 おのおのに、悶える人々(承前)

「もっ、もうだめだっ!」

 乱馬はシャンプーの中に埋めたおのが分身の炸裂をはっきりと感じた。精液が勢いよく飛び出していく。

 その寸前に。

 冷たい衝撃が乱馬を襲った。

「ぶひゃっ――あああああンッ」

 昇り詰めながら、乱馬はらんまになる。

 性器がすぼまり、神経の数はそのままに、小さな芽に凝縮する。

 放出されつつあった精液は、外に出るための道を失い、おそらくは快感そのものに転化されて、らんまの下半身を灼熱させた。かわりに、大量の愛液がらんまの下の唇から潮吹きとなって飛び出す。半透明のいやらしいシャワーだ。

「く……ううううっ」

 らんまは胸をぶるんと震わせて、背中をそらした――その顔に。

「に゛ぃ〜っ!」

 毛むくじゃらの愛らしい動物になったシャンプーがしがみついてくる。余韻にひたって、ごろごろ喉を鳴らしながら、爪をたててくる。

 瞬時にらんまの本能的恐怖にスイッチが入る。

「ね゛ご〜っ!」

 パニックに陥って、顔にへばりついたネコを放り投げる。

 そこに、怒号が降りそそいだ。

「こらっ、シャンプーっ! 抜け駆けはあかんてゆうたやろ! そこまでするのは協定違反やっ!」

 水が入っていたらしいバケツを手に、仁王立ちの右京が怒鳴る。

「に〜」

 メスネコはびしょぬれになった毛皮をつくろいながら、そっぽをむく。怒りさめやらぬ右京はなおも言いつのる。

「作戦では、式が始まるまで乱ちゃんを引き止めとくだけやろ! なんであないなことまで……!」

 はっ、として右京は自分の口をおさえた。乱馬の表情が変わったのに気づいたのだ。

「ウっちゃん、いま、何時だ!?」

「あ……乱ちゃん……うち……」

「式まで、あと何分だ!?」

 らんまは結わえられた手足をものともせずに立ちあがっていた。どうやって立ったのか自覚していない。

 右京に詰めよる。右京は口をぱくぱくさせた。

「もう、まにあわへんて。だから、な、式はあきらめて」

「冗談じゃねえ!」

 らんまは自分を結わえているロープにかじりついた。むちゃくちゃに噛みついている。

「乱ちゃん、そうまでして、あかねちゃんのこと……」

「うるへえっ! 約束は約束だ!」

 もがくらんまのロープに、右京のコテが押し当てられる。一閃、ロープが切断される。

「……ウっちゃん?」

「あと三十分ある」

 右京はそっぽを向いたまま、言った。そのまつげには光るものがある。

「――あかねちゃんが、待ってるで」

 らんまは無言でうなずいた。

 走りだす。

 後ろは振り向かない。倉庫を飛び出していく。

 右京はその後ろ姿を見つめていた。

 その傍らでは、ネコが抗議のつもりか、にーにーとわめきたてている。

「おちつき、シャンプー。まだ終わってへん」

 右京は低い声で言った。ネコもとりあえずだまる。

「小太刀があかねちゃんにどんなコトしてるのか、うちらはしらん。けど、その現場を、もしも乱ちゃんが目撃したら、どうなるやろ?」

「にぃ……」

 シャンプーは声を飲み、右京を見あげた。

 ――怖い女ある、とそのアーモンド型の目はつぶやいているようだった。

 ちょうど、そのころ。某ホテルの結婚式場の花嫁控え室では――

 美女と野獣ならぬ、花嫁と子豚の交歓の図が実現しようとしていた。

 子豚の股間からふくれだしたピンクの肉の突起の先端が、花嫁の排泄のための場所にもぐりこみそうになっている。

 ふんわりと層をなすウェデイングドレスのレースのなかに結実したピンク色のヒップの割れ目は、その内部からあふれ出す果汁に濡れてきらきら光っている。

 子豚は――子豚の姿になった良牙は、その部分から目が離せなかった。

 いとしいあかねの秘められた部分――ブタの姿で一緒にベッドに入ることはあっても、その部分だけは禁断の場所だった。想像することさえはばかられた。その体温を、少女のあまい体臭を感じるだけで充分だった。

 それが、それが――

 九能小太刀に身体をつかまれて、短い四肢を振りまわしても逃れられるわけもなく、しかもおのれの股間はあさましいばかりに猛り立っている。

(――入れたいっ!)

 衝動がブタの肉体のなかをかけめぐる。それは牡の本能だ。

 だが。

(正気を失っているあかねさんの――しかも、おしりに入れるなんて、そんなことっ……!)

 忌むべきことだ。

 場所が不浄だとかそんなことではない。

 あかねが望んでことであれば、良牙はその場所を舌で清めることさえ否むまい。いや、むしろ、あかねのその部分は肌色よりわずかに色が濃いていどの美しさで、あかね自身が左右に開くことにより、体内の鮮やかすぎる粘膜の色さえ見せて、あまりに蠱惑的だ。

(おれはっ……おれは、おれはっ……!)

 良牙は煩悶した。

「さあ、子豚ちゃん、ここに入れましょうねえ」

 小太刀が囁く。ブタ化した良牙のペニスに指がそえられる。良牙の小さくなった肉体にものすごい量の快感が走り、抵抗する力が失せる。こんな女にさえ支配されてしまうのか。

 やはり、いやだ。こんなな女の思い通りになって、あかねさんを汚す片棒をかつがされるのは!

 ぶききーっ!

 良牙は渾身の力をふるって、小太刀の手から逃れようとした。が。

 ぬうっ。

(あ……)

 良牙は自分の敏感な粘膜が圧迫され、次に熱いものに包まれるのを感じた。

(あかねさんの……中に……)

「んくぅっ、入って……くる……」

 あかねが身もだえする。ふんわりと層をなしたウェディングドレスのレースの合間に結実したピンク色の桃がいやらしく上下する。まるで、異物を飲み込むかのような動き。

「ほうら、入った……」

 小太刀が嬉しそうに笑う。

(これが……あかねさんの……)

 良牙は悩乱した。熱くてうねっていて、そして、締めつけてくる。

 ピンク色の肉棒が、あかねのヒップの一点に食い込んでいる。

「あああん、あんっ、あはああっ」

 あかねが声をあげている。その声質が今までとはちがっている。さらに甘みを増している。感じているのだ。

「おしりぃ……おしりがぁ……きもちいい……」

(あ、あかねさんっ!)

 良牙は腰を動かしはじめた。もう、罪の意識もなにも、けし飛んでいる。ただ、あかねを感じさせたかった。そして、自分自身も――

 すでに小太刀に自由を奪われているわけではなかったが、良牙はそのことさえ意識せず、あかねのアヌスを犯す作業に没頭しはじめていた。

 らんまは倉庫街を走りまわっていた。まるで迷路のように入り組んでいる。

「ええいっ、良牙じゃあるまいし!」

 幾度めかの曲がり角を乱馬は駆けぬけた。

 視界が開け、潮風が顔をたたく。

 倉庫区画を抜けたそこは波止場だった。暗い色をした海の水をへだてて、乱馬とあかねが式をあげることになっているホテルの姿が見えている。湾状になっているので、対面に見えてはいても、陸続きだとかなりの距離だ。

「どうすりゃいいんだ。このままじゃ間に合わねえ」

 乱馬は歯噛みした。

 式の開始まであと二〇分を切っている。タクシーを拾おうにも通りに出るまでに時間を空費しそうだし、だいいち乱馬にはカネがない。

 目の前には海が横たわっている。

 考えは一瞬。

 次の瞬間にはらんまは海に飛び込んでいる。

 水はまだ冷たいが、そんなことはどうでもいい。かつては中国から泳いで日本に帰ってきたこともあるのだ。それに比べれば――

「あかねえっ! 待ってろよっ!」

 抜き手を切りつつ、らんまはわめいた。

「OH! おさげのガールではないデスか」

 泳ぎつづけるうちに、頭上から声が降ってきた。

「なっ……校長っ」

 見るとらんまに並走するようにモーターボートが近づいており、そこには釣り竿を持った風林館高校の名物校長――九能の実父でもある――の姿があった。

「HEY、ガール、まだまだ泳ぐには早い季節でーす」

「ちょうどいいっ、ボートに乗せてくれっ! 向こう岸まで急いでいるんだ!」

「それはダメでーす! いま、ちょうど釣りの真っ最中でーす!」

「釣りなんてどうでもいいっ! はやくっ!」

 らんまはボートの舷側に手をかけようとした。そのとき。

 水中から突きあげられて、一瞬身体が宙に舞った。

「OH! ついに姿を現わしたのでーす! 伝説の人喰いザメ! わたしのコレクションに最適でーす!」

 校長が喜色満面で叫ぶ。自宅の庭にミドリガメという名前をつけたワニを飼い、校内に勝手に密林の環境を作って、大蛇などを飼って楽しんでいる男だ。それを考えれば、釣りの対象が人喰いザメであることも納得もいく。

「納得いかねえっ!」

 弾き飛ばされながら、らんまは叫んだ。

 また、水に落ちる。そこに、サメがくる。水の上ではねている音にサメは反応するのだ。海水浴客がサメに襲われるのは、彼らのたてる水音が、弱った魚が水面近くでたてる音と似ているからなのだ。

 ひょい、とらんまの背中に何かが引っかかった。

 見ると、大型の釣り針だ。その針はむろん、テグスを通じて、校長の釣り竿につながっている。

「おさげのガール、サメを引きつけてくださーい! 校長命令でーす!」

 釣り竿を手に、校長が叫ぶ。どうやらエサにらんまが最適だと考えたようだ。

「ふざけんなっ!」

 らんまは釣り針を外そうとするが、濡れた布地とからまって、外れそうにない。

 そうこうするうちに、大口あけてサメが迫ってくる。ぞわわわ〜っと悪寒が全身を走り、とにかくらんまは泳ぎはじめる。

「逃げたら釣れなくなりマース! 校則違反でーす!」

「うるせえっ! 喰われてたまるかぁっ!」

 らんまは必死で水を掻き、蹴る。だが、魚類にはとてもかなわない。すぐ後ろでサメの口が開かれる。ずらりと並んだ牙が見えた。

「こぬやろぉっ!」

 らんまは渾身の蹴りをサメの頭部に叩き込む。が、鈍感な猛魚は痛みを感じないのか、平気でらんまをのみこもうとする。

「――だめか!」

 らんまの脳裏にショートカットの少女の笑顔が一瞬よぎる。

「だめじゃねえっ!」

 牙をかいくぐる。サメのエラのあたりに肘を打ちつける。苦しがってサメが身をよじったところをらんまは逃さず、その胴体にしがみついた。

「OH! 釣れたのでーす!」

 校長が快哉を叫ぶ。竿を引く、が、びくともしない。それどころか、苦しむサメが猛烈な勢いで泳ぎはじめると、竿ごと海中に引きずりこまれた。

 もはや方向感覚も失ったらしいサメは、陸地に向かって魚雷のような猛スピードで泳ぎはじめた。

「あっ、ああっ、はあああっ」

 あかねが声を放っている。ウェディングドレスの裾を大きくまくりあげて、テーブルに上体をもたせかけて、おしりを突きあげている。すごい姿勢だ。

 そのヒップには黒い子豚がしがみついて、あかねの恥ずかしい穴に挿入しているのだ。

 最初は小太刀によってむりやりその場所に押しつけられた子豚も、今では自分から腰を使っている。もはや、小太刀に強制されているのでもなんでもない。

「あっ、ああ、んあああっ」

 あかねは夢中で腰を動かしている。子豚はふりおとされまいと必死だ。

「て……天道あかねが……」

 九能は喉を大きく上下させた。ウェディングドレス姿の少女が、ブタとおしりで交わっているのだ。いくら非常識な九能にしても衝撃的な光景だった。

 これがべつの男だったら怒り狂ったであろうが、なんといっても相手はブタだ。しかも、おしりである。嫉妬よりも先に、興奮のみが加速する。

「あ……あああ……」

 半目になったあかねが九能を見あげた。意識はいまだに混沌としているようだ。目尻に涙が光っている。随喜の涙とでもいうのか。

 九能は、たまらない。

 思いきり木刀で突きを繰り出したいっ!

 だが、いまはそんなことをしている場合ではない。それくらいの判断は九能にもできた。本人は自覚していないが、彼としては画期的なことだ。

「天道、あかねっ」

 九能は男根をあかねの顔に近づける。一度は爆発したその部分は、しかし、すでに回復していた。それどころか、さらに大きく、固くなっている。

「これを……なめるのだっ」

 声が震えた。天道あかねにしゃぶらせる。なんということだ。これは交換日記十年分に匹敵する。

 朦朧とした目であかねは九能を見あげた。先っちょペロペロ

「くのう……センパイ?」

「天道あかね、早くっ」

 九能はせかした。もう発射してしまいそうに高まっている。

「あーんするんだっ、天道あかねっ」

 ああん。

 あかねは口をひらいた。快感に支配されたいまのあかねは、どんな命令にも従ってしまうようだ。

 九能はすぐに突っこんだ。

「うあっ」

「んむうっ」

 あかねの口腔の温かさと湿潤な柔らかさに九能はわれを忘れた。

「ああっ、天道あかねが、ぼくのをっ、ぼくのを……」

 九能は凝視した。あかねが大きく口をひらいて、九能のペニスを受け入れている。

 夢ではない。この感触は、現実だ。

「舌を……動かすんだ、天道あかね」

 ちろちろとあかねが舌を動かしはじめる。無意識の行動らしい。

「そうだ……うまいぞ……今度は吸ってくれ……」

 九能はあかねに次々と指示をだした。そのすべてに唯々諾々とあかねはしたがう。

 亀頭を舐め吸わせ、竿をこすらせる。それから、睾丸もマッサージさせた。

「どうだ、天道あかね……ぼくのは美味しいだろう」

 はあはあと荒い息をしながら、九能はあかねに訊いた。

 半目になりながら、あかねは、く、とうなずく。

 九能の興奮は最高潮に達していた。

「ようし、じゃあ、もっと美味しいものを、飲ませてやるからな」

 んん、と眉根をしかめるあかねの喉奥に、九能は男根を押しこんでいく。

* * *

「すごいわ……」

 小太刀は床にひざをついていた。椅子によりかかっているが、腰に力がはいらない。

 目の前で、天道あかねが豚にアナルを犯されながら、小太刀の兄のペニスをしゃぶっている。全員がすごく感じているのがわかる。

「なんで、わたくしだけっ」

 仲間はずれになった気分だった。あかねより自分が劣っているような焦りすら感じる。

 ブタと交わらせて笑ってやるつもりが、ブタさえもが夢中になっている光景を見ると、あかねには特別ななにかがあるのかも、という気さえしてくる。

「わたくしのほうが、ずっといいカラダをしていますのにっ」

 小太刀は職員から奪った制服のボタンをはずし、胸をひらいた。

 黒いブラジャーも外す。つりがねがたのおっぱいを露出させる。乳首をつまんでひっぱった。乳首は痛いほど尖っている。充血して真っ赤になっている。

「ああ、だれかあ、だれかあ、わたくしをさわってぇ、乳首を吸ってぇ……」

 甘い声を出す。

「ここもぉ……はあああ」

 くねくねとヒップを動かし、パンティをずりおろす。指で股間を触ると、自分でもびっくりするくらいに熱く、潤っている。

「す、すごいい」

 指を中に沈めた。たまらない。

 小太刀は、あかねがいやらしくヒップをくねらせるのにあわせて、自分も腰を動かした。

 あかねが九能をしゃぶりあげるのと同じように自分の指をすすった。

 声を合わせ、腰の動きを合わせるうちに、あかねの快楽が自分のものになったような気がしてくる。

 小太刀は、からみあう三つの肉体のほうへ、にじりよっていった。

つづく!