機動戦艦ナデシコ
バーチャルフィギュア大作戦2
電子の妖精を補完せよ!

PART IV  これもひとつの『お約束』

「艦長……」

 ハーリーはベッドに横たわったまま胸を上下させていた。股間は、ルリの舌と指でさんざんに刺激されて、もうどうしようもなく屹立している。

「ハーリーくん」

 ルリは、少年にまたがるように身体の位置をかえた。サブロウタの指を受け入れていた部分が真っ赤に充血して、とろとろに潤っているのが見える。

 ――なんて奇麗なんだ。

 ルリのその部分は透明な愛液の分泌に輝き、可憐な花びらをわずかに露出させている。

 ――艦長の、あの、中に……入るんだ、ぼく……

 ほとんど陶酔に近い感覚がハーリーの意識を支配していた。

「じゃあ、艦長、よろしく」

 サブロウタがニヤニヤ笑いながら言う。

 その諧謔をふくんだ声にハーリーの陶酔が破れる。

 忘れていた――この行為はサブロウタに強要されてのものであり、目的といえは――そうだ――ルリのデータをバーチャルフィギュアに転用するためなのだ。

 すなわち、これからハーリーが体験するルリの体内の感触を、多くの男たちも味わえるということなのだ。

 ――そ、そんな……!

 ハーリーは、ぞっ、とする。ホシノ・ルリの秘部の精緻なデータを埋めこまれたバーチャルフィギュアが、いろいろな付属データ付きで、宇宙にバラまかれるのだ。セーラー服とか体操服にブルマとか裸エプロンとかネコの着ぐるみとか、それとか、それとか――

 そんなこと、許してはならない。あってはならないことだ。ルリのその部分は――大切なものだ。かんたんに複製されたり、売られたりするべきものではない。

 なぜならば、ホシノ・ルリはハーリーにとっては間違いなく――

「ハーリーくん、いくよ」

 ルリはハーリーの性器に手を添えた。自ら腰を動かして、ハーリーの張り詰めた部分の先端に、おのれの入り口をあわせていく。

「ん……」

 わずかに眉間にしわを寄せて、ルリが腰を沈めてゆく。ハーリーの先端に柔らかくて暖かくて湿ったものが押し当てられて――

「だめです、艦長っ!」

 ハーリーは身体をよじった。先端がルリの柔らかな谷間をすべて、横にすべる。

「ハーリーくん、動いたら入らないよ?」

「艦長がこんなことしなくちゃならない必要、ありませんよ! こんなデータがばらまかれたりしたら……艦長が、可哀想です……う、うう……」

 語尾は嗚咽になった。ハーリーはしゃくりあげていた。

「……ハーリーくん」

 ルリが目を伏せた。

「それこそ可哀想ってもんだぜ、ハーリー」

 サブロウタが肩をすくめた。無造作にルリのおしりを抱える。ひく、とルリが軽くのけぞる。

「もうこんなに準備ができちまっているってのに、入れてやんないなんて――無情だぜ」

 指でルリの部分をにちにちといじる。そうするだけで雫がたれてしまうほど、そこは濡れている。

「あ……ああ……う」

 ルリは抵抗しない。どころか、サブロウタの指の動きに合わせて腰を回している。

「しょうがねえな。センサーが役に立たないんじゃ、おれが実地に入れて、手入力でデータを修正するか」

 サブロウタが自分のペニスを露出させる。おとなの性器だ。完全に亀頭が露出しているし、反り返っている。

「入れてやるぜ、艦長。尻を上げな」

「艦長……」

 ハーリーはルリを見あげた。そんなばかな、と思う。

 ルリと目が合った。いつものクールさはすでにない。うるんだ瞳が、一瞬だけ哀しそうに揺らぐ。

「ごめん、ハーリーくん……でも……もう、がまんできない」

 ルリがおしりを上げていく。サブロウタのモノを自ら求めているのだ。

「高杉中尉……お願い……はやく……」

 ルリがせがむ。ほんとうに切迫しているようだ。

「行くぞ、艦長――いや、ルリ」

 勝ち誇った大人の男の声でサブロウタが言った。

「かんちょ……」

「は……んっ」

 仰向けのハーリーの顔のすぐ上で、ルリの眉根がきゅっと寄せられた。

 ぐん、とルリの身体がハーリーの方に近づく。胸がほとんどハーリーの顔のところにまできた。

「――艦長!?」

「ハーリー、おしいことしたなあ。せっかくお前に一番乗りを譲るつもりだったのに――」

 サブロウタの声が聞こえた。ルリの肩ごしに、笑っている顔が見えた。

「――奥まで、入っちゃったぜ」

 サブロウタが言い、また突いた。ルリの身体もそれに合わせて動く。大きいとは言えないが小さくもない胸が、ぷるぷると固そうに揺れる。

「あっ……あ……」

 ルリの顔が、もどってきた。

 かたくまぶたを閉じているが、唇が開いている。熱い吐息がハーリーの顔にあたる。

「気持ち……いい……」

 ハーリーはたまらなくなった。もう、どうしようもない。

「艦長っ!」

 わめきながら、ハーリーはルリの唇に吸いついていった。

 もはやハーリーにも否やはなかった。眼前で、ただルリが犯されるのを見ているだけなんてできない。

 縛めはもう必要なかった。

 解かれた両手はルリの乳房をもみしだき、唇は乳首に貼りついた。

 そして、少年のペニスは――ルリの中におさまっていた。

 その場所をハーリーに譲ったサブロウタは満足そうにコンソールを見やった。

 ルリの膣内の形状、体温、柔軟性、分泌の量、子宮頸部のカーブとざらつき感に至るまでが、精緻なデータとして採集されている。

「これで電子の妖精のデータも完璧になる。マスター・ウリバタケの仕事をおれは補完したことになる」

 サブロウタは深くうなずき、それから腰を激しく上下させているルリのヒップにまわった。

「おれも楽しませてもらうぜ。こっちの穴でな」

 ルリのその部分は先程すでに指と舌で開発済みだ。サブロウタは、ルリの後ろの穴に、自分自身をゆっくりと沈めていった。

「くうっ……」

 ルリは声を押し殺しながら、二本目の侵入を受け入れる。

 ルリは乱れていた。髪を振り乱し、声も抑えていない。

 下からハーリーに突きあげられ、後ろからはサブロウタに挿しこまれている。

「どうだ、艦長? どんな感じがする?」

 サブロウタの意地悪な問いに、ルリがかすれた声をあげる。

「中で、こすれて……ごりごりって……ああっ!」

 二本が両方とも巨根だったら、ルリの小作りなセクションは破壊されていたかもしれない。だが、ハーリーの未成熟なこわばりと、サブロウタの充実した剛直は、セットでちょうどよいバランスだった。

「ああ、はあ……す……すごい……あああ」

 ややハスキーなルリの声はさらに鼻にかかって甘さを増していた。

「こんなの……はじめて……んぅぅ」

「艦長のアナルもなかなかいいぜ。可愛い顔して、たいしたもんだ」

「あうっ……高杉中尉……いわないで」

 ルリの顔は真っ赤だ。唇が開いて、赤い舌が覗いている。

「か、艦長……し、締まる」

 ハーリーが悲鳴じみた声をあげる。

「ハーリーくんのオチンチンが……奥に当たって……こつんこつんって……気持ちいい」

「ああ、おれも感じる。ハーリーの硬いのが、艦長の子宮に当たってるんだろ」

「うわっ……サブロウタさんのが……」

 ハーリーも叫ぶ。

 その唇をルリが奪った。舌を挿しいれて、からませる。

「むうう……んぷぶ」

 ハーリーは呼吸さえできない様子だ。舌を入れてきたルリは、懸命にヒップを振っている。

 均衡はほどなく破れた。

「艦長っ、出ちゃいますっ」

 ルリのくちづけから逃れ、可愛らしい声をあげて、まずハーリーが達した。

 ルリの膣の奥めがけて、精液をロケット弾のようにほとばしらせる。びくんびくんと身体がはねる。

「す、すごい……っ」

 ハーリーは虚空を見ている。呆然としていた。

「ハーリーくん……たくさん出したね」

 ルリが優しく言う。だが、新しい世界に衝撃を受けたらしいハーリーの耳には届いていないようだ。

「ハーリー、早いぜ」

 サブロウタが唇をとがらせる。

「ま、いいか。データは完全に集まったしな」

 ニヤリと笑うと、ルリのヒップをつかんで引き寄せた。ハーリーのペニスがにゅるんと抜けて、ルリのその部分から――

「ハーリーくんのが……たれてる」

 若者が放った精液がぬろぬろとこぼれ出て、ルリの太股をつたう。

「おれも、最後はこっちにするかな」

 サブロウタはルリの肛門からペニスをぬくと、ハーリーの精液にまみれた膣に亀頭を押し当てる。

「あ……あ……」

 ルリが切なげに声をあげる。亀頭がクリトリスをこすっているのだ。

「ヒクヒクして、誘ってるぜ、艦長」

「いじ、わるしないで、入れて……」

 サブロウタがルリの花びらにペニスをねじこむ。

「あっ、おおき……い……」

 肉穴の奥から白い粘液が圧し出されてくる。その漏出は、サブロウタの腰の動きにともなって激しくなり、白く泡立ちはじめる。

「すげえぜ、艦長のまんこ、さっきより具合がよくなってるぜ。ハーリーのおかげか?」

「あ……あっ……高杉中尉……お、大きいの、すごいの……」

 人形のように整ったルリの美貌に淫猥の影がさす。

「きも……気持ちいいの……あっ、ああ……あそこが……あそこが……」

「艦長、おまんこがイイって言ってみろよ――スッとするぜ」

 腰を叩きつけながら、サブロウタがそそのかす。ルリに淫語を言わせる――それをサンプリングして、バーチャルフィギュアにバンドルすれば、さらに付加価値がつくというものだ。

「んぅ……うっ、はぁっ、はぁ……」

 ルリが自分で胸をもみしだきながら、声をはずませる。

「言えません……そんな……」

「言えるさ。『おまんこがイイ』――ほぅら」

 ペニスをルリの胎内奥深くまでねじこむ。

「あはぁっ! こすれるっ……! おまんこに……っ!」

「ほうら、言えた。もっと、言ってみな」

「おまんこ……わたしのおまんこ……気持ちいぃ……っ!」

「艦長ぉ」

 ハーリーが真顔でルリに迫る。股間が回復している。ぴくんぴくん震えている。

「ハーリーくん……オチンチン……ちょうだい」

 バックからサブロウタに犯されながら、ルリはおろしたての少年のペニスを要求した。

 包皮のなかに舌を挿しいれ、恥垢ごと削ぎ落とすように、舌べらを這わせていく。

「艦長……すごい……」

 鈴口を吸われながら、ハーリーは陶然とした表情でうめく。

「たいしたもんだ。フェラもずいぶん上達したな」

 サブロウタが感心したようにつぶやく。

「このデータを商品化したら、ほかのバーチャルフィギュアが売れなくなっちまうぜ……絶品だ」

 腰の動きを速めていく。もう、彼自身、自分の欲望をコントロールできないのだ。

「んふっ、んぅ……むぅぅ……はぁぁ」

 ハーリーのペニスから口をはなし、ルリはもどかしげに息をはく。

「ひさ……しぶりに……いき、そう……ぅっ」

 サブロウタが体位を変える。ルリを仰向けにすると、足首をつかんで大きく左右に広げさせ、真上から腰を落すようにピストン運動する。

 押し込むたびにペニスがルリの子宮をえぐる――それくらいの勢いだ。

 ハーリーもルリの顔にまたがり、亀頭をしゃぶらせている。サブロウタと二人がかりでルリを凌辱している。

「かんちょおっ……」

 泣きながらハーリーは二度目の射精を始める。ルリの唇にザーメンを注いでいる。

「ハーリーくん……んぅぅ……んふぅ……うあっ……」

 精液を飲み下す余裕もないままに、ルリの表情が蕩けていく。

「高杉中尉のオチンチンが、おなかの奥に……ささるぅ……っ! しびれる……も……もう、わたし……っ!」

「出すぜ、艦長、まんこの一番奥に突き刺してやるからな……っ!」

 サブロウタは顔を歪ませて、最後の一突きをルリの性器の最奥部に食らわせる。

「ああああっ! い、いくぅぅぅっ!」

 ルリが絶頂に達する。わななきながら、全身をピンク色に染め上げる。

 びゅくっ! びゅるびゅるびゅるっ!

 サブロウタのペニスから物凄い勢いで精液が噴出し、電子の妖精の子宮を満たす。ハーリーが放ったものとルリ自身の分泌物、そしてサブロウタのザーメンが混ざり合い、ルリの体内でシェイクされていく。

「あ……ああ……はあ……」

 ルリは崩れ落ち、百戦錬磨のサブロウタさえ息もたえだえに倒れ込む。

 ――と、コンソールで小さくチャイムが鳴った。データの読み込みを終了したのだ。自動制御のプログラムはそのデータをホログラムに反映させていく。

 一六歳のルリと一三歳のルリが、完璧なフォルムで再生された。

 二人は裸で、手をつないでいる。

 まだ荒い息をしながら、サブロウタは自分の作品の出来栄えに目を細めた。

「これこそ、芸術だ。瞬間の美を永遠にした――しかも、うつろいゆく快感さえも――」

 サブロウタの感歎の独話は、しかし、完結しなかった。

 ホログラムのルリの形状が突然壊れたのだ。データの破片が四散して、文字コードに還元していく。

「なっ……なに!?」

 サブロウタはコンソールに走った。

 システムが完全に制御を離れて暴走してしまっている。サブロウタのコマンドをまったく受けつけない。

「げっ、マスターデータに食い込まれた!」

 サブロウタの眼前で、バーチャルフィギュアのデータが破壊されていく。ルリだけではなく、ほかの女性クルーたちのデータもだ。

 次々とデータが無意味な数字の羅列に変化していく。猛烈な破壊ウィルスだ。しかも、女性のホログラムデータだけを選択的に攻撃している。思兼からも独立したシステムなのに、どうやってこんなものが侵入したのか。

 ――その意味するところに気づいたサブロウタは弾かれたように、ベッドの上のルリに目をやった。

 ルリはティッシュで股間の後始末をしていた。その、部分にグリッドが走っている。ナノマシンによる、肉体の特定部位のコンピュータ端末化――

「まさか……そんな……」

 ルリが自分の身体をインターフェイスにし、ハーリーを経由してコンピュータに侵入したのはもはや明らかだった。

 その結果、バーチャルフィギュアの貴重なマスターデータのすべてが消滅してしまった。

 サブロウタは肩を落とした。

「真の芸術が……瞬間の美が……失われてしまった」

「その『一瞬』に複製は不要です。ひとつだけ、あればいいんです」

 ルリが顔をあげて言った。ほんのついさっきまで身も世もないほどに感じていた、その気振りさえない。

「ま、悪の野望は潰えるってことで」

 サブロウタはまじまじとルリの顔を見た。

「最初から、そのために――?」

「いえ、その場のノリで。最初は強制的にハックするつもりでしたけど」

 ルリは小首を傾げた。もしかしたら、かすかに笑ったのかもしれない。

 サブロウタは苦笑する。というか、そうするしかない。

「じゃあ、すこしは楽しんでくれたってことか」

「――教えてあげません」

 ルリはすまし顔で言い、事務的な口調にもどる。

「高杉中尉。艦のコンピュータリソースの違法使用ならびに風紀紊乱を助長するメールを送ったかどで、あなたに罰を与えます。今後一ヶ月間、艦内すべてのトイレを掃除すること。ハーリーくんについてはこのあと事情聴取の上、別途処分を検討します。なにか質問は?」

 サブロウタは敬礼した。軍人としての条件反射である。

「ありません」

「では、退室してよろしい」

「はい」

 サブロウタはきびすを返した。ベッドの上ではハーリーが幸せそうに寝息をたてている。その髪に、ルリが手を触れている。恋人同士にはぜったいに見えない。仲のよい姉弟の雰囲気だ。

 ――優しくしてもらうんだぞ、ハーリー。

 心のなかでつぶやいて、サブロウタはハーリーの部屋をあとにした。

***

 それは大樹だった。幹は大地の支柱さながらそそり立ち、そこから伸び出ずる無数の枝は、さながら天蓋のように空を覆っている。その空の色は電子の流れによって微妙に変化する。

 広大な電脳世界の中心に位置する、その『場所』。思兼の本体のあるところ。

 あれから数日のち――ルリは、定時の艦内チェックを終えて、そこに潜ってきていた。

 彼女の肉体は艦橋の艦長席にあるが、精神は思兼の最奥部まで降りてきているのだ。ここへはルリ以外の誰も入りこむことはできない。もちろんハーリーであってもだ。ただ一人だけ例外はあったが、それは――

 さやさやと梢が鳴っている。情報を保持する量子の波動が木の葉に姿をかえて、ルリの髪にかかる。そのひとつひとつが記憶。思兼の――そして、ルリ自身の――思い出たちだ。

 ルリは葉っぱを手に取り、ふう、と吹く。あの『瞬間』の映像と会話の断片がふっとひらめく。ルリの頬に、薄く笑みがさす。

 ふたたび空に舞いはじめた記憶たちを見やりながら、ルリは小高い丘にのぼっていく。そこに、巨木が生えているのだ。

 丘の頂上に着いたルリは大樹を見上げる。思兼の本体であり、そして――

「こんにちは」

 ルリは声をかけた。

「――こんにちは」

 返事があった。いまのルリよりも、ほんのすこし細く、抑揚にとぼしい声だ。

 幹のうしろから、少女がおずおずと姿を現わす。水色の髪に黄金の瞳。長い髪を両側でたばねて垂らしている。

 ルリだ。それも一三歳のころの――それも、生まれたままの姿で。

 ふたりのルリは仲良く腰をおろす。思兼の本体のまわりには、柔らかな草が生えていて、あちこちに名もない花が咲いている。

「――『あの人』は、見つかった?」

 一三歳の姿をしたルリが訊いてくる。一六歳のルリは静かに首を横にふる。

「『あの人』は死んだの」

「そんなことないわ、だって」

 一三歳のルリはそっと自分のお腹にふれる。薄い、幼い下腹部だ。

「ここに感じるもの。『あの人』の命を――」

「――知ってる」

 一六歳のルリは、かつての自分の<正確なデータ>が入力されているバーチャルフィギュアの肩を、そっと包みこむように抱いた。

「だから、もういちど思い出させて――あの『一瞬』を」

 ふたりのルリは身を寄せあい、草むらに倒れこんだ。記憶をつたえる量子の風に吹かれながら、ふたりはいつしかひとつになっていった。

おわり