バーチャルフィギュア大作戦2 電子の妖精を補完せよ! |
|
ハーリーの部屋のドアは当然のことながら閉ざされていた。
ルリはしばし思案する。
すこし判断に迷ったが、やっぱり本人から事情を訊くべきだろう。性格的に弱いところのあるハーリーだ。もしかしたらトラブルに巻き込まれているかもしれない。
「まあ、だいたい想像はつくけど」
ひとごとのようにつぶやく。
「さて、いきましょうか」
ドアの呼び鈴を鳴らす。
――と同時に、返事のないままにドアがひらいた。
「おやおや」
ルリは、室内の情景を見て、ツリぎみの目をまるくする。
ベッドの上で手首を後ろ手に縛られたハーリーが、十三歳のルリのデータに迫られて、へどもどしている。
「艦長っ、だめですっ、そんなっ」
「ハーリーくん、しようよお。ガマンは身体に毒よお」
十三歳のルリは、淫猥な笑みを唇にうかべ、ハーリーの股間に手を伸ばしている。
ドアのところに立つ、制服姿のホシノ・ルリは批評口調でぽつりと言う。
「古典的なセリフですね」
その声に、ハーリーが反応した。がばっと起き直り、そして恐怖に顔をゆがませる。
「かっ……かっ……」
言葉にならない。
ルリは手をひらひら動かした。つかつかと室内に入ってくる。
「そのまま、そのまま……っていうのもへんだけど」
ハーリーは硬直し、それから悲鳴をあげる。
「艦長っ、うしろっ!」
ルリが振りかえるより先に、背後から抱きすくめられた。
力強い男の腕だ。
抵抗を試みるまでもない。脱出不可能。
「どうも、艦長」
「やっぱり」
ルリはつぶやいた。
「ハーリーくんのどんな弱みを握ったんです?」
「それは――ちょっと言えませんねえ。こう見えてもけっこう口は固いほうでね」
高杉サブロウタはルリの自由を奪いながら破顔した。その手は、ルリの胸元にのびている。
制服ごしに、ふくらみを握りしめる。
「やっぱり、データは実地に採取してみないと……これは予想以上だ」
サブロウタの熱い吐息がルリの耳元に吹きかけられる。ルリは申し訳程度に身もだえた。
「やめなさい、高杉中尉、やめないと……」
「やめないと、どうするんです、艦長?」
「査定に響きますよ」
一瞬すべりかけたサブロウタだが、さすがにすぐに立ち直った。
「電子の妖精が元木連の部下に犯された、となったら宇宙軍はじまって以来のスキャンダルですな。ただでさえ好奇の目で見られているあなただ。軍にいられなくなったとしたら、どうします? また、もとの場所にもどられますか?」
サブロウタの言葉により激しく反応したのはハーリーだった。
「そんなっ! ラボにもどれって……!」
遺伝子操作をされた人間には普通の意味での両親はいない。ルリも某所から流出した受精卵がラボの手に渡り、そこで誕生させられたのだ。
ラボでは、常人ならば会得するのに何十年もかかるような膨大かつ精細な専門知識を脳に焼きつけてくれる。だが、ひとのぬくもりや優しさといったものはプログラムできない。だから、ラボの出身者たちは、軍や研究施設に就職しても、他人とコミュニケートできないというケースが少なくない。ルリやハーリーは、まだマシな方だと言える。
しかし、もしも軍にいられなくなったとしたら――ラボでのあの無機質な生活にもどらなければならなくなる。人というよりも、マシーンといったほうがよい毎日に……。
「――べつにわたしは軍に執着しているわけではありませんよ?」
ルリの返事に、サブロウタは底意地の悪い笑みをもって応じる。
「あなたはそうでも、ハーリーはどうですか? あなたがラボにもどったら、あいつはどうすると思います?」
「サブロウタさん!?」
ハーリーの絶望的な叫び。そして、ルリに向けられるすがるような視線。それらがすべてを語っている。
ルリは小さく息をついた。
「うまい脅しかたです、高杉中尉。わたしの負けですね」
「納得していただけてなにより。さあ、はじめましょう、艦長」
ルリの皮肉も通じないサブロウタは、電子の妖精と呼ばれる少女をソファに押し倒した。
タイツの太股に手をはわせる。
もう一方の手はルリの制服の上から胸をさわっている。
「なるほど、三年半の時間は偉大だ。しっかりと育っていますな」
比較対照のためか、一三歳のルリのデータを側に立たせて、サブロウタは感心したようにうなずく。
「胸ですか、それとも脚がですか?」
さわられながらも、ルリは無表情だ。たまに強く胸を握られると痛みに眉をしかめる程度だ。
「どっちもですよ、艦長。ところで、少しは気持ちよくはならないんですか?」
太股の内側を撫でながら、サブロウタはルリに質問する。
「べつに。あえぎ声が必要ですか?」
「いや……艦長に演技であえがれても困ります」
「そうですか」
ルリはすまし顔にもどる。
サブロウタは、ルリのスカートのなかに手を入れる。
下着の股の部分に指をあてた。
「ここは、艦長? ちょっとは感じるでしょ」
薄い布ごしに、指先からのバイブレーションを送る。
「一応は」
ルリが答える。
「――ところで、フィギュアのデータは、どこに保管しているんですか?」
「思兼にでもモニターできない、侵入できない領域ってのがありましてね。その領域ならば、いくら電子の妖精でもデータをどうこうできない。この部屋のシステムに直結しない限りは」
「なるほど……ハーリーくんを巻き込んだ理由がだいたい見えました」
この艦で、ルリの干渉できないコンピュータリソースを維持するためには、ルリに匹敵するオペレーターの力が必要だ。それに該当するのは、マキビ・ハリしかいない。
ベッドの上で事のなりゆきをおどおどと見守っていたマキビ・ハリが、ルリの視線を受けてちぢこまった。
そんなハーリーの反応を横目に、サブロウタはルリの腰の下に腕をこじ入れ、掌を太股にあてると、ぐいと股を開かせた。
下着がまる見えになる。
その股間の布地の部分を指でもみはじめた。布の下で、ルリの谷間が変形し、やわらかな突起が押し出され、布地を圧し上げているのがわかる。
「それより、高杉中尉はバーチャルフィギュアのデータをどうするつもりなんです? たんなるアルバイトというにはリスクが高いでしょう?」
ルリの声はまだまだ平静だ。だが、こころなしか小鼻がふくらんで、やや息がせわしない。
「ちっちっちっ」
サブロウタはルリの股間を愛撫していた指を数回振った。
「あれこそ芸術です。しかも、未完の物も残っている。シューベルトの交響曲しかり、ガウディのサグラダファミリア教会しかり、未完の美を完成させるために損得ぬきで心を砕く者も、また存在してよいでしょう?」
「そういうタイプだとは思いませんでした。意外に理想主義者なんですね」
「艦長のココも意外にしぶとい。でも、そろそろ……」
サブロウタの指が、ルリの突起部をとらえ、下着ごしに刺激を加えてくる。
「……っ」
ぴくん、とルリのあごが動いた。調子に乗ってきたらしいサブロウタは、ルリが反応したポイントに中指を立て、ぐりぐりと動かす。
「――く」
ルリは唇をかむ。
「やっぱりクリトリスは感じるんですね、艦長。ちょっと、パンツが湿ってきましたよ。濡れているかどうか確かめてみないとな」
サブロウタはニヤニヤ笑いながら、下着のなかに手を突っ込む。
「うっ」
ルリがうめく。
「おおっ、ちゃんと生えてるんですね。さて、その下は……と」
サブロウタの指がルリの下着にもぐりこんでいる。指が股間に達した。
「あ……」
ルリの唇が半開きになった。虚空を見ている。
サブロウタの指が動いている。
くちゅくちゅと音がしている。
「ポーカーフェイスのわりに、しっかり感じてるじゃないですか、艦長。入り口のあたり、べとべとですよ?」
「高杉中尉……やめ……」
サブロウタの指の責めに、ルリは身をよじった。閾値を超えると、平静を保つことはできなくなる。
「この感触は――処女じゃありませんな。これはこれは」
その言葉に、ベッドの上のハーリーの顔が凍った。
ハーリーの表情の変化をサブロウタは見逃さない。
「おやおや、ハーリーくんは、艦長にどんな幻想を抱いていたのかな? 艦長だって一六歳の女の子だ。好きな男もいるだろうし、セックスだってするさ」
「サブロウタさんっ!」
ハーリーが声を張りあげる。
「こんなこと! こんなこと、もうやめましょう!」
「そうかい?」
サブロウタはニヤニヤ笑う。
「でも、艦長はそんなにいやがっていないぜ。ほうら、ほら」
下着ごしにでも、はっきりわかるくらい激しくサブロウタの指が動いている。
「……っく……っ」
声をこらえているらしいルリの息づかいは、しかし、どんどん荒く、速くなっている。
「さあて、そろそろご開帳といくか。艦長、パンティをぬがしますよ」
白いシルクのパンティだ。女性士官用に軍が支給しているものである。
ぬがせるのに慣れているのだろう。たくみな手つきでパンティをずらしていく。
ルリも抵抗はしない。むしろ身体をよじって高杉がぬがすのに協力している。
「ほうら、下半身はスッポンポンだ」
パンティを取り去り、ルリの脚を大きく広げさせる。
「さあ、ハーリー、見てみろ。正真正銘、これが艦長の大事なところさ」
「だめっ!」
ハーリーはまぶたを固くとじた。
「おい、ハーリー、見ないのか?」
「そんなの! 艦長がかわいそうですっ!」
ハーリーが叫ぶ。今にも泣きそうな声だ。
サブロウタがルリの耳元に囁きかける。ルリはうなずきもしない。だが、抗う意志表示もしない。
「ハーリーくん」
ルリは呼びかけた。
「えっ」
「ハーリーくん、見て。わたしのここがどうなっているか」
落ちついた声でそう言った。
信じられなくて、ハーリーは目をひらいた。そこには、大きく脚をひらいたルリの姿がある。
草むらはまだ淡い。髪の毛と同じ色のヘアだ。そして、その下に、まだ未成熟な感じのする谷があり、その峡谷に花びらが息づいている。
「艦長、自分で開いてみてくださいよ」
サブロウタが命じると、ルリは指で股間の谷間を左右に開いた。
くにっ、と内部から血の色を透かした花びらが顔をのぞかせる。色素の沈着のまるでない粘膜は、濡れてきらきら光っている。
「かん、ちょ……お……」
ハーリーの目はその部分に釘付けになっていた。
わずかに頬を上気させたルリが、自分の指でそこを開いている。
「見える? ハーリーくん」
「艦長……み、見えます」
ハーリーは生つばを飲み込んだ。襞の合わせ目から透明なしずくがあふれ出しているのがわかる。それが、女性が興奮している証しだということも、知識としては持っている。だが、信じられない。あの、きれいで優しくて理知的なホシノ・ルリの身体にこんないやらしい形をした器官があって、しかも、昂ぶっているだなんて。
だが、その光景はまぎれもなくハーリーの眼前に存在している。
「ハーリー、おまえのモノで、艦長のデータを採取してくれよ」
サブロウタがコンソールを片手で操作しながらハーリーに笑いかける。
「なっ、なんですってぇ……あうっ」
ハーリーは股間に熱を感じて腰を引いた。
いつの間にか固く張り詰めてしまっている少年のその部分に、格子状のラインが浮かんでいる。体内のナノマシンがその部分に集まってきているあかしだ。すなわち、ハーリーの生身の性器がセンサーとなって、その部分が感じる情報すべてがデータとして採集できるようになるのだ。コンピュータチルドレン――ナノマシンを体内に持ち、神経伝達組織が最適化されているハーリーだからこそ可能なことである。
「かつて、テンカワ・アキトがミスマル・ユリカのデータを採取できたのも、彼が火星移民者でナノマシンを持っていたからだ」
サブロウタが歴史を諳んずるように言った。
「さあ、ハーリー、今度はお前が歴史を作るんだ」