モニターNo.1

 くるめく光がモニタースクリーンのなかを駆けめぐり、ひとつの像をむすんだ。

 蘭が映っていた。おっかなびっくりで通路を進んでいる。

『なによぉ……これじゃあ迷路じゃなくて、お化けやしきみたいじゃない……』

 泣きそうな蘭の声。

『きゃっ! なにっ!?』

 蘭の声が高くなった。

『いやっ! だれっ!? 離して!』

 悲鳴をあげている蘭に黒ずくめの人物が襲いかかっている。一人が背後から羽交い締めにし、もう一人が蘭の口許にガムテープらしきものを貼りつけようとしている。

『んぅっ!? んううううっ!』

 口をふさがれた蘭がうめいている。その腹部をめがけて黒ずくめの一人が拳を打ちこんだ。蘭はぐったりと崩れおちる。

 男たちの顔に浮かぶ表情は、邪悪な笑い。

モニターNo.4

 つから眠っていたのか、まぶたを閉ざした髪の長い少女の顔が映っている。

 女らしく柔らかな身体のライン――薄手のジャケットの下にサマーセーターとキュロットスカートを身につけた、毛利蘭だ。意識を失っているのか、ぴくりともしない。

 そこはなにもない、倉庫のような一室だった。コンクリート打ちっぱなしの壁や床が寒々しい。

 黒ずくめの男が画面に入ってくる。体格のよい男だ。サングラスをかけているので人相はわからないが、酷薄そうな雰囲気をまとわりつかせている。

 男は注射器を持っていた。蘭の側にしゃがみこむと無造作にジャケットとサマーセーターの袖をめくりあげる。慣れた手つきで蘭の腕に注射針を立てる。静脈注射だ。

 痛みのためか、蘭がぴくりと身じろぎする。男は手早く脱脂綿で注射痕を消毒し袖を戻すと、蘭の頬を軽く叩く。

 どうやら蘭は意識を取りもどしたようだ。なにが起こっているのかわからないように、ぼんやりと目を動かしている。

 サングラスの男が側にいるのに気づいて、ハッと身体を起こそうとする。

 と、男があごをしゃくって、蘭になにかを示した。

 蘭の表情が固まる。

『歩美ちゃん……哀ちゃん……』

 フレームがゆっくり動く。たぶんカメラは三脚か何かに固定されているのだろう、スムーズで上下動のない動きだ。

 部屋の一角を映し出す。そこには、年端のいかない少女がふたり、パンツ一枚の姿で鎖につながれていた。鎖は、彼女たちの首に巻かれた輪と部屋の壁に埋めこまれた金属製の鉤の間にゆるやかな孤をつくって伸びていた。

 ひとりの少女――泣きそうにうるんだ目を見開いている――吉田歩美は、もうひとりの少女、灰原哀にすがりつくようにしている。

 二人の少女のそばには、やはり黒ずくめの男が二人立っており、ニヤニヤ笑いを頬に浮かべていた。

『わかってると思うが、得意の空手でなんとかしようと思うなよ、お嬢さん』

 サングラスの男が聞こえてくる。カメラがまたゆっくりと蘭とサングラスの男にもどる。

『あんたが暴れると、あの子たちがかなり悲惨な目にあうことになる』

『卑怯者!』

 蘭が声をあげた。

『卑怯でけっこう……それはおれたちにとってはほめ言葉でね』

 男は余裕しゃくしゃくの様子で言葉をつづける。

『毛利蘭さんだったかな、さっそく始めさせてもらっていいかな?』

『わたしの名前を知ってるの!? あんたたちは誰!? 目的はなによ!』

 蘭は声を硬くする。男はあいかわらずふやけた笑みを浮かべたままだ。

『いっぱい質問されたが、答えるわけにはいかないな。おれたちも雇われているだけなんでね。もっとも、最後のひとつだけは答えてもいいかもしれないな――あれだよ』

 男は画面に顔を向けた。カメラのレンズの存在を蘭に意識させようとしているらしい。

『あれに蘭お嬢さんのことをいっぱい映してくれと頼まれていてね。お嬢さんの恥ずかしいところだとか、いろいろね』

 蘭の顔が恐怖に一瞬ゆがむが、すぐに表情を消して怒鳴りかえす。

『わたしたちを放しなさい! でないと、ひどいわよ! わたしの父は――』

『名探偵・毛利小五郎……ってか? そんなことは百も承知なんだよ、お嬢さん』

 男は蘭のあごに手をかけた。蘭は男の顔めがけて唾をはきかけた。ぴしゃっと音をたてて、男の鼻のあたりに唾液が命中する。

『ふっ……ふふ……気の強いお嬢さんだねえ』

 男は激高することなく、蘭の吐きかけたものをぬぐった。

『ふだんなら顔の形が変わるまで殴ってあげるところだが、時間があまりないんでね。まずは服を脱いでもらおうか』

『冗談じゃないわ! だれがそんなこと!』

 嫌悪もあからさまに蘭は叫んだ。男は指をぱちんと鳴らした。

『いやあっ! やあああっ!』

 歩美の悲鳴が聞こえてくる。鎖がじゃらじゃら鳴っている。

『やめなさいよ、あんたたちっ!』

 哀の声が割って入り、次の瞬間、ビシャッという音ともに哀のくぐもった声が低く入る。

『歩美ちゃん! 哀ちゃん!』

 蘭は顔をゆがめて叫び声をあげる。

『やめて! そんな小さい子に、ひどすぎる!』

『それじゃあ、年上の蘭お姉さんにがんばってもらわないと……なあ?』

 サングラスの男が唇をゆがめる。蘭は震えながら顔を伏せた。怒りと闘っているのだ。

 ややあって、顔をあげる。決意が表情にやどっている。

『わたしが脱いだら……その子たちには何もしないって……約束して!』

『約束か……いいだろう。そのかわり、ちょっとでも変なマネをしてみろや。ガキどものすべすべのお顔がひどいことになるぜ。あんたは空手の達人だそうだが、おれたちも荒事は苦手じゃないんでね』

『……わかったわ』

 蘭はそうつぶやくと、ジャケットに手をかけた。

モニターNo.9

 ちあがった蘭をほぼ正面に捉えて、映像がスタートした。

 そのすぐ側にサングラスの男が立っている。けっして油断していないのは、不敵に笑いながらも蘭から注意をそらさないところからもわかる。

 視線を感じてか、蘭の顔が赤らんでいる。単なる羞恥ではないだろう。怒りに満ちているのだ。

『早くしないと、またおチビちゃんたちが泣くことになるぜ』

『わかったわよ』

 蘭は唇を噛んで、ジャケットを脱いだ。

 蘭が画面をまっすぐに睨む。

『いったい、だれの差し金なの? なんの目的でそんなビデオなんか……。わたしが毛利小五郎の娘だから?』

『さあてな。時間稼ぎのつもりかもしれんが、無駄だぜ。あんたが粘っても、そのチビどもが痛い目をみるだけだ』

『脱ぐわよ! 待ってなさい!』

 やけぎみに蘭はサマーセーターを脱ぐ。上はブラジャーだけになった。キュロットも脱ぐ。

『ブラもパンツも白か……色気のねえ』

『わ、わるかったわね……!』

 蘭は胸元を隠しながら言いかえした。

『服、脱いだんだから、もういいでしょ!?』

『おいおい、ふざけてもらっちゃあ困るよ』

 男が笑いだす。

『スッポンポンにならなきゃ意味ねえだろうが、ああ?』

 蘭の顔に動揺がひろがる。むろんそのことは予測していただろうが、やはり面とむかって要求されるとショックらしい。

 蘭の眼が動いた。歩美と哀がいる方向に視線をやったようだ。その表情に悲壮なものがうかぶ。

 いったんカメラに背を向けて、腕を後ろにまわす。指がブラジャーのホックにかかる。

 外れた。蘭の身体との密着性を失ったブラジャーが、重力に引かれて落ちていく。あわてて蘭はこぼれ出した胸を手で押さえる。

 蘭の背中には、無駄な肉はまったくついていない。きゅっと絞られたウェストからヒップにかけてのラインが画面におさめられている。ショーツのしわが、まるいヒップを断ち割るラインのありかを示している。

『へっへへ、じらすねえ、蘭お嬢さん。最後の一枚は、自分で脱ぐかい? それとも脱がしてやろうか?』

 サングラスの男が蘭の身体を舐めまわすように見て、声をかける。

『自分で……脱ぎます』

 弱々しい声をだす――蘭。

モニターNo.5

っ……』

 唇を噛みしめて、蘭は最後の一枚を脱ぎ去る。カメラが蘭にズームアップする。胸を押さえたまま蘭はしゃがみこんでしまう。

『ぬ、脱いだわよ! もう、いいでしょう!?』

 蘭がサングラスの男を見あげた。角度からいえば、サングラスの男は蘭の身体をほぼ正面から見ていることになる。いやらしい視線を蘭の肌に貼りつかせているのが、サングラス越しにでもわかる。

『意外にいい身体をしてるなあ、お嬢さん。眼福ってやつだな』

 男の視線から大事な部分を守ろうとしているのか、蘭が身をよじった。

『約束よ! その子たちを放して!』

『おいおい、勝手にそんな約束を作っちゃいけないな。おれは、脱いだらおしまい、とも言ってないし、チビどもを自由にしてやるとも言ってないぜ?』

『ず、ずるいわ!』

『ずるくて結構。さて、お嬢さんの奇麗な身体をカメラにじっくりおさめさせてもらおうかな。正面を向いて、じゃまな手をどけてもらおうか』

『これ以上は……許して……』

 蘭の声がうるんだ。耐えてきたものが砕けたのかもしれない。許しを乞うかのようにうなだれる。

『許してもらいたかったら言われたとおりにしろよ。なあに、見せたって減るもんじゃあないし、おまえたち女子高生はこういうバイトをよくやってるんだろ?』

 サングラス男が蘭に笑いかける。

『……ひどい』

 蘭は自分を抱きしめたまま、へたりこんでしまう。

『お嬢さんがどうしてもイヤだって言うなら、しょうがない、主演女優交代だ』

『――いいわよ、こんなことくらい』

 哀の醒めた声が、サングラスの男の言葉に応じるかのようにかぶさってくる。カメラマンもそれに反応して、画面が右に動く。鎖につながれた少女たちの裸身を捉える。

『あたしがやるわ。そのかわり吉田さんと蘭さんは解放して』

 哀は平板な裸の胸をさらしたまま、カメラを睨んだ。歩美と同様、二次性徴の訪れはまだはるか先の幼い姿だ。

『ほお……このチビ、おもしろいことを言うな……わかっていて言ってるのか?』

 サングラス男の声がトーンをかえる。ほんとうに興味をひかれているらしい。

 赤い首輪をはめられたショートカットの少女は、冷徹に視線をずらした。

『あたしくらいの子とヤッてるビデオのほうが高く売れるんじゃないの? ちがう?』

 傍らで歩美は目をぱちくりさせている。哀の言っている意味が理解できないようだ。

『まあ、商売としたらそうかもしれんな』

 男の声が笑いを含む。そこに飛び込んできたのは蘭の必死の叫びだ。

『だめ! 哀ちゃん! だめよ!』

『いいのよ、蘭さん……あたしには守る理由がないもの』

 哀は視線を蘭のいる方角に向けた。なにかしら達観してしまっているような表情だ。自分自身というものに見切りをつけてしまっているかのような。

『――やっぱりだめよ、哀ちゃん……あなたにそんなことさせられない』

 ややあって、蘭の思いつめた声が響く。

『わたしがやるわ、哀ちゃん』

 画面が蘭の顔を捉えなおす。カメラの方を向いて座っている。もう胸を隠していなかった。ぷるん、とふくらみの先端が震える。サングラスの男が口笛を吹いた。

『なかなかいいモノ持ってるじゃないか』

 空手で鍛えた蘭の身体には無駄な肉がついておらず、鎖骨のラインも深い。華奢といってもいい肩から胸にかけてのラインが、しかし、乳房のところで急激にカーブしている。ボリュームのあるふくらみだ。

『じゃあ、次はあんよを開いて大事なところを見せてもらおうかな』

 サングラスの男が次の要求を出す。

 蘭の表情は変わらない。もう腹はくくっているのだろう。それでも、なかなか脚を開くことはできない。

『早くしろよっ!』

『ガバッといけ、ガバッと!』

 サングラスの男だけでなく、ほかの男たちもせっつき始める。

 蘭の顔が泣きそうにゆがむ。

『新一……ごめん……』

 じりじりと膝を開いていく。密着させていた腿のあいだに撮影用のライトの光が届く。その部分に画面がズームしていく。陰毛のかげりと、その下の縦線が見えはじめる。

『もっとちゃんと広げろよ。よぉく見えるようにな』

 蘭はまぶたをぎゅっと閉じたまま、両脚の角度を大きくしていく。形のいい長い両脚がMの字を形作る。

 毛利蘭の性器が画面いっぱいに映し出される。少し色づいた厚めの唇がわずかに開いて、複雑に入り組んだ粘膜の花びらが顔をのぞかせている。膣口はまだ見えない。

『さすがはお嬢さん、ピンク色のピラピラがかわいいじゃねえか』

 カメラが上下に激しく揺れた。どうやら三脚から外されて、カメラマンが手に持ったらしい。カメラは被写体に近づきながら、ゆっくりと下から上へ移動し、顔をそむけて耐えている蘭の顔をアップでとらえる。頬を上気させ、耳たぶまで朱色に染めた蘭は、唇を噛み締めたまま固まっている。

『よぉく見えるぜぇ……蘭お嬢ちゃんのアソコ……バッチリだ』

 サングラスの男が顔を蘭の耳元に近づけて囁いた。蘭が身をよじる。

『い……や……』

『見られて感じてるんじゃないか? おいおい、濡れてるぞ、おまえのアソコ』

『う……そよ……』

 蘭は否定する。だが、カメラが蘭の局部に近づいて、その嘘をあばく。ピンク色の花びらは透明な分泌物にまみれて、てらてらと光っている。

『なんだ、なかなか脱がねえから純情な娘だと思ってたら、なんのことはねえ、見られたくてウズウズしてたんじゃねえか? ああ、淫乱なお嬢さん』

『そんなこと……あっ!』

 男の指が無遠慮に蘭の秘部を開いた。大陰唇が左右に引っ張られて内部の濃いピンクの粘膜があらわになる。包皮をかぶったクリトリスと、その下にある肉の弾けた部分さえ、カメラの餌食になる。

 膣口のあるあたりを隠す肉びらがひくっと痙攣して、透明な粘液を盛りあがらせた。

『み……みないで……お願い……』

 蘭が懇願する。涙を浮かべているが、小鼻がふくらんで、激しく興奮しているのが伝わってくる。

『なにいってんだ、見られてこんなにオマンコをびしょびしょにしてるくせによ』

『あ……あ……いわ……ないでぇ……』

 蘭の分泌が激しくなる。ぷぴゅっ、と愛液が飛んで、画面に水滴をつける。それほどレンズが近づいているのだ。

『ほうら、自分で開いてみろよ……』

 男の手が蘭の手首を掴んで誘導する。蘭は抵抗しない。

 細くてしなやかな指が、自らの外陰部を掴んで、左右に開く。

『こ、これで……いい?』

 うるんだ声で蘭が言う。

『そうだ、いい子だ。穴までよぉく見えるぜ。じゃあ、そろそろオナニータイムといこうかな?』

 子供をほめるような口調で、サングラスの男が言った。

『いいんだぜ、本気でやっちゃって』

モニターNo.2

 がいやらしく動いている。

 蘭の自慰が始まっていた。

『あっ……あぁ……』

 クリトリスの包皮にかけた指が引っ掻くような動作を繰り返している。包皮のなかの敏感な芽に刺激を与えているのだ。

 くにゅくにゅと指を動かすと、赤い突起が顔を出した。

『はっは、蘭お嬢さんはいつもそんなふうにオナニーをなさっているのかい?』

 あざけるようにサングラスの男が笑う。

『ち……ちが……』

 蘭が否定しようとする。だが、自分の指がその言葉を裏切ってしまっている。自分自身の感じるポイントがどこなのか、男たちにひとつひとつ教えるかのように順を追っていく。

 乳房も自分で触っている。掌を乳首にかぶせて、ゆっくり円を描くように動かしている。もどかしくなったのか、指で乳首をつまんでこする行為も織りまぜる。

『うあっ……ああ……きもち……いい……』

 指がクリトリスを直接刺激しはじめる。中指の先端を当てて、自分でバイブレーションを送っている。蘭の声が大きくなる。

『だめっ、なんなの……? わたし……へん……へんよぉ……!』

 悲鳴じみた声をあげて、蘭はのけぞった。汗が全身から噴き出してくる。サングラスの男が顔をよせて鼻をひくひくさせた。

『メスの匂いがするぜえ、蘭お嬢さん。どうやら薬が効いてきたみたいだな?』

『く……すり……?』

 股間に当てた中指を回転させながら蘭は男を見あげる。男は小さな注射器をポケットから取り出して見せた。

『気絶しているあいだにチクッとな。ちょっと強めの媚薬を打たせてもらったんだよ』

『そ……ん……な……』

 驚きの声をあげつつも、蘭は指をとめられない。自分ではもうコントロールできないようだ。

『あっ、ああっ、うふぅぅああ……っ!』

 声が高くなっていく。蘭はコンクリートの床に背中から倒れこむ。もう座っていることさえできないらしい。

『はずかしい……のに……きもちよくて……とまらないよぉ……っ』

 せわしなく指を使いながら、蘭の声が切れ切れになっていく。

『おほっ……ぷちゅぷちゅ汁を噴き出してるぜ、お嬢さん』

 サングラスの男がその部分を覗きこむ。蘭は身をよじる。

『だめぇ……だめぇ……見ないでぇ……』

 蘭の声質がかわった。愛らしい顔を切なげにゆがめて、今までよりもずっと甘い声を出した。

『おいおい、肉ビラがヒクヒクしてるぜ?』

 男の言葉に打ちすえられたかのように蘭がビクンと痙攣する。

『あああ……おねがぃぃ……』

 蘭はむせび泣きながらも自分の指をとめられない。膣口をかきまわしている。腰を突きあげて、むしろその部分を男たちに見せつけているかのようだ。

『ああっ、はあっ……だめぇ……っ! わたし、もう、だめぇ……!』

 あたりはばからない嬌声だ。媚薬のせいなのか、それともこれが毛利蘭のほんとうの姿なのか。

 蘭は、のぼりつめていく。

『うあああっ! あ……ああっ! いくぅぅぅっ!』

 声を張りあげ、身体を震わせ、いっぱい汗をかいて、蘭は激しく身体を震わせた。

 そして、激流が去ったあとは、だらしなく股を広げたまま、ぐったりとして、動かない。

モニターNo.3

 たいけな少女が二人、寄りそっている。

 より正確には、吉田歩美が灰原哀にすがっている。同い年にみえる二人だが、今は哀が精神的な支えになっているようだ。

『蘭おねえさん……どうしちゃったの?』

 歩美がおびえた視線を一点に向けて震える声で言った。

『あんなに叫んで……ぐったりして……どうなっちゃったの?』

 哀は答えない。かすかに眉をくもらせているだけだ。

 歩美が身じろぎした。手を動かしている。

 それに気づいた哀がいさめるような声をだす。

『吉田さん、あなたどこ触って……』

 歩美は自分の脚の間に触れていた。パンツの上から指を当てている。

『だって、だって……ここ、熱くて……どうしていいか、わからない……』

 ハッとしたように哀が歩美の肩を抱く。

『まさか、あなたも媚薬を……』

『そうさ……子供だから、どれくらいの量を使えばいいか、ちょっと悩んだけどな』

 黒い丸眼鏡をかけた痩せた男が画面に入ってきて、そう言った。その傍らには相棒もいる。こちらは肥満した巨漢だ。

『なんてことするの、あんたたち!』

 哀は男たちをなじった。男たちは声を出してあざ笑い、太ったほうが返答する。

『そういう哀ちゃんにも打ったんだよ。効き方には個人差があるみたいだけど』

『くっ……』

 哀が悔しそうに顔をゆがめる。胸を手でおさえる。なにかをこらえるように――

『灰原さん……どうしたらいいの、わたし……なんか、ヘン、だよぉ……』

 歩美が哀に抱きついてくる。顔が真っ赤になって、大きな瞳がうるみきっている。もじもじと内股をこすりあわせつつ、そこを触らないように努力しているようだ。

『こっちのお嬢ちゃんのほうは、ずいぶんと出来あがりが早いな。まあ、目の前であんな激しいオナニーのお手本を見せられたら、無理もないか』

 丸眼鏡が歯をむきだしにして笑い、歩美を拘束している鎖をつかむ。

『どれ、おじさんがいろいろ教えてやろうかな』

『やめなさい! 吉田さんはまだ子供なのよ!』

 歩美を抱きしめて、哀が叫ぶ。守ろうとしている。

 その哀の鎖をつかんで引っ張ったのは肥満男だ。哀の首輪が締まっていく。

『くっ……あ……』

 たまらず歩美の身体を放した哀は、脂肪のクッションに抱きとめられた。

『哀ちゃんだって子供でしょ。他人のことをとやかく言える立場じゃないよね? 薬が効いてくるまで、哀ちゃんは歩美ちゃんのお勉強ぶりを見学するんだよ、いい子だから』

 哀の細い身体を背後から抱え込んだ肥満漢は、少女の髪や頬を撫でつつ囁きかける。

『いい子だ……いい子』

モニターNo.6

わいよ……いやだよ、やめて……こわい……』

 歩美が泣きべそをかいている。

 丸眼鏡の男は、そんなかぼそい少女の胴に腕を巻きつけて固定すると、下着に手をかける。

 脚をじたばたさせてはいるものの、おとなの男の力に逆らえるわけもない。ペンギンのキャラクターがプリントされたお子様パンツは、いともかんたんに脱がされてしまう。

『ほうら、歩美ちゃん、カメラのほうを見てごらん』

 男は歩美の右の腿を掴んで引き上げながら、優しい声で囁きかけた。

 涙と鼻水で汚れた顔が画面に映しだされる。それでも歩美の可愛らしさは損なわれていない。

『ほら、力を抜いて……歩美ちゃんのココをお友達に見てもらおうよ』

 画面が下にパンする。歩美のぺったんこの胸、色の薄い乳首――おへそは男に抱えられているので見えない――そして、歩美の未成熟な性器。それは単なる一本の縦の線でしかない。

 割れ目の上端に見えるクリトリスは、かぶさった包皮がぷっくりとふくらんで、まるで小さなオチンチンのようだ。わずかに赤っぽく色づいているのは、さっき歩美自身が下着ごしにいじったせいだろうか。

 開いた形に固定された歩美の股間に、男の指が入っていく。割れ目を開くと、内部の赤い粘膜がかすかに覗くいた。その部分はすでにかなり充血している。

『こわい……こわい……やめてぇ……』

 歩美がしゃくりあげる声が聞こえてくる。画面には少女の幼い秘裂――その部分をもてあそぶおとなの男の指――

『そんなこと言って……さっき蘭おねえちゃんのいやらしいところを見てて、興奮したんだろ?』

 指先で割れ目をほぐすようにしながら、男は歩美に問いかける。

『ちがう……ちがうよ……そんな……』

 歩美の声が震えている。おびえている。しかし、ただ恐怖にさいなまれて泣き叫ぶ――というのとはちがっている。

 小さな入口の部分を男の指が探りあてた。指の第一関節の半分までが、歩美の肉の隘路に沈む。

『あっ、なに……?』

 不思議がっているような声。もちろん、その部分に指を入れられたのは生まれて初めてのことだろう。

『やっぱりもう濡れてるよ、歩美ちゃん』

 男が楽しそうに言う。

 その幼い粘膜の部分をゆっくりとかきまぜるようにしてから引き抜くと、透明な糸が指と粘膜の間に橋をかけた。

『ちっちゃいのに、感じやすいんだな、歩美ちゃんは』

『わからない……そんなの』

『ここならわかるだろ?』

 男は包皮をかぶったクリトリスの部分に標的を移す。指先でちょんちょんと叩く。

『あ!?』

 歩美がうろたえたような声をあげた。男は薄い唇の端を曲げる。

『ほうら、やっぱり気持ちいい』

 男はなおも指先で歩美の肉芽に刺激を加える。誕生してからまだほんの二千日あまりしか経過していないまっさらな肉体に、ねちっこい大人の技巧が加えられているのだ。

 その指の蠢きによって、歩美の息づかいは激しくなり、表情はうつろになっていく。

『ほら、ここをこするとどんどん身体が熱くなるだろ?』

 包皮をつまんで上下に動かすと、歩美の脚がぴくぴくと動き、まだ受胎能力を持たないはずの性器から、男性器を受け入れるための潤滑液が吐き出されはじめる。

『なに……これ……わからないけど……気持ちいい……』

 今度は指が二本になって、歩美の膣に差し込まれる。粘膜が広げられて、指と指の間に暗闇が見える。膣口が拡張されているのだ。

『あああ……ああ……それ、すごく気持ちいいよぉ……』

『歩美ちゃんはいい子だね。ごほうびをあげようか』

 男はズボンのジッパーをさげた。男根を取り出す。黒光りする雄渾な逸物だ。歩美との対比だと、ほとんど破滅的な大きさに見える。

 その巨根に、茶色いアンプルに入った液体をかける。歩美の小鼻が動いて、おそらくはその匂いに反応する。

『ほうら、おいしいシロップをかけてあげたよ。おじさんのキャンディバーを舐めさせてあげる』

 歩美はフェロモン物質に誘引される蛾のようにふらふらと顔を動かし、男のペニスに唇をつけた。

『あまぁい……』

『歩美ちゃんには好きな男の子いるのかい?』

『ん……いるよ?』

 ぼうっとした表情で歩美は亀頭を舐めあげた。美味しいらしく、ちゃぴちゃぴと舌鼓を打ちながら男性器を味わいはじめる。

『なんて子だい?』

『あのね……江戸川……コナンくん……』

『いっしょにこのテーマパークに来ている子かい?』

『うん……』

『じゃあ、きっとこの映像を見ているのはそのコナンくんかもしれないな』

 男は画面のほうを見た。いやらしい笑みを浮かべる。

『歩美ちゃんはなかなかフェラが上手だぜ、コナンくん』

 歩美は目を細めて、画面に向き直る。だが、まるで酔っぱらっているかのように視線がさまよっている。

『コナンくん……みてる? わたし、いま、オチンチンしゃぶってるの……とってもおいしいよ?』

 唇を一杯にひらき、男の巨根をくわえる。あごが外れそうなほどに開いて、ようやく先端が口のなかにおさまる。どんなに飲みこもうとしても、先端の四分の一までだ。

 それでも歩美は首を前後に動かす。ぢゅぷぢゅぷと唾液があふれる音がしはじめる。

『んふぅ……んぐぅ……うぷっ……ふうう……』

『いいぜえ、歩美ちゃん、もっと奥まで吸いこむんだ。これがすんだら、もっといろいろいやらしいことをしてやるからな』

モニターNo.7

んてこと……吉田さん……』

 辛そうな哀の表情がアップになる。その横に、巨大な丸い顔があらわれる。肉の塊のような男が、哀の顔をべろべろと舐めはじめる。哀は顔をしかめ、逃げようとするが、身動きができないようだ。たちまち哀の顔が男の唾液に汚される。

『ふへへ、かわいいなあ……哀ちゃんだっけ。おれはね、きみくらいの女の子が大好きなんだよ』

『うるさいわね、この変態――豚野郎』

 哀は侮蔑の表情と口調で男に相対した。男は嬉しそうに笑う。

『いいねえ……たまんないよ、哀ちゃんのそのクールさ。そんなきみをこれからメチャクチャにできるかと思うと、もう射精しちまいそうだよ』

 画面が下に動いた。哀の胸元を映す。男のちんまりした指が、哀の乳首をつまんでいる。上下左右に動かす。長時間そうされているらしく、哀の乳首は真っ赤に腫れて、体積を増している。

『くっ……』

 哀が唇を噛む。痛みに耐えているのか、それとも屈辱にか――

『哀ちゃんのおっぱい、ぺったんこで最高だよ。ちゅうちゅうしてあげるね』

 男が笑いながら哀の身体を抱きとる。胸元に顔をうずめる。哀は男の頭をおしのけようとするが、むろん力でかなうわけがない。

 男のぶあつい唇が哀の腫れた乳首をはさんで、音をたてて吸いあげる。

 脂肪の蓄積のない子供のバストを、成人した男がさもおいしそうにむさぼっている。異常な映像だ。哀がこらえきれない嫌悪の声をはなつ。

『はあはあ、哀ちゃんの乳首、コリコリしてるよ。気持ちいいだろ? え? ペロペロされて最高なんだろ?』

 舌先で哀の左右の乳首をつつき、転がす。

 哀は身をよじってその愛撫から逃れようとする。

『抵抗したってむださ。薬が効いてきて、たまんないくせに。ここ、調べればわかるんだぜ?』

 男は指を愛の股間に這わせる。

『う……や……やめなさい……』

『ははは、やっぱりぐちょぐちょだ。濡れまくってるじゃないか、哀ちゃん。お友達にも見てもらわないとな』

『こ……この映像、どこに送ってるの……?』

 哀は呼吸を整えようとしながら、なんとか質問する。男はへらへらと笑う。

『メイズ・キャッスルの男性用の迷路のモニターのどれかにさ。つまり、迷路卿の挑戦を受けて、きみたちを救おうと迷路をかけずりまわっているやつが見ていることになるな』

 哀の切れ長の瞳がまたたいた。くどうくん――と唇が動いたように見える。

『じゃあ、そのマヌケなヒーローのために、いいモノを見せてやるかな? 灰原哀ちゃんの大股開きだ!』

 男は哀の身体を軽々と抱えあげると、股を開かせた。哀は必死で脚を閉じようとしているが、あっけなく開脚させられてしまう。カメラが容赦なく近づく。

 哀は顔をそむけていた。誰にこの映像を見られているか、すでに悟っているのだろう。

『ほうら、きれいだろう、哀ちゃんのおまんこは……キラキラ光ってるぜえ』

 男の指が哀の性器を広げる。色白の哀は、その部分も色素が薄いようだった。陰唇も、内股の肌の色と変わりがない。広げられて露出した粘膜の色もあざやかな血の色だ。

『サービスでおしりの穴も見せちゃおうかな』

 哀の体をひっくり返し、小脇にかかえる。小さなおしりの山をつかんで、ぐいっ、と左右に開いた。排泄のためのすぼまりがあらわになる。その部分も色素の沈着はなく、小さくすぼめられた赤ちゃんの唇のようだ。

『おお、哀ちゃんのおしりの穴、すごくきれいだよ。いいなあ……』

 男は指をひとなめすると、哀のアヌスにもぐりこませていく。

 哀がうめいた。細い脚をばたばたさせている。

 だが、男はまったく頓着せず、肛門にうずめた指をぐにぐにと動かしはじめる。

『うはあ……哀ちゃんのおしりの穴、熱くてキツキツだよ。すごく中が柔らかいねえ……』

『んうう……ううーっ!』

 平素の哀が決してだすことはないだろう、苦悶に満ちたうめき声が聞こえてくる。誇り高い彼女が肛門をいじられて声を出すなど――ありえないはずのことだった。

『あれ? もしかして哀ちゃん、おしりの穴で感じちゃってる?』

 男が興味をひかれたように顔をゆがめる。

『おまんこから、オツユがタラタラ流れてるよ?』

 アヌスを男の指がかきまわすたびに、その下にある性器から透明な液体が染みだしているのが見える。

『哀ちゃんはおしりの穴で感じちゃうんだ。子供のくせにすげえ変態だ』

 ぎゃははは、と太った男が笑いだす。

 哀の肛門を標的に、指を激しく抜き差しする。

『うぐううっ! いひぃぃぃぃぃっ!』

 哀が泣き叫ぶ。おしりをひくひくと動かしている。股間のワレメもぱっくり口を開き、充血して肥大したラビアをはみ出させている。白濁した愛液がこぼれて、内股をつたわっている。

 それはまさに哀の仮面が叩き壊されたしるしだった――いわば、淫蕩の烙印。

モニターNo.8

ああっ、あんあんっ、ああっ! すごいよぉぉぉっ!』

『うあっ! うくぅっ! いや……いやぁ……』

 声が聞こえてくる。まだ幼い少女たちの声だ。同時に、激しい男の息づかいと、肉体と肉体がぶつかる音、湿った粘膜同士がこすれる音などが混ざる。

 失神していた蘭が身じろぎする。

 眼がさめたようだ。はっと身体を震わせて、開いていた脚を閉じる。

『目が覚めたかい、蘭お嬢さん。オナニーで失神とは、いいご身分だ』

 サングラスの男がにじり寄るようにしてフレームに入ってくる。

 蘭の表情が絶望にゆがむ。その視線の先にはなにがあるのか。

『ひどい……歩美ちゃんや哀ちゃんには手を出さないでって言ったのに……』

『おいおい、言っておくがおれたちは約束は守ろうとしていたんだぜ? だが、ちっちゃなお嬢ちゃんたちがあんたのオナニーにいたく感銘を受けたようでね。どうしてもって言うから、一足先に開通させてあげただけさ』

『うそよ……! あの子たちにも薬を……』

 言ってから蘭の眉がひそめられる。閉じた脚をこすりあわせるような動き。

 サングラスの男は笑った。

『その通り……この薬はそうかんたんに切れやしない。たった一回、オナニーでイッたくらいじゃあな。むしろ、自慰によってどんどん効果は強くなっていく。男のチンポをぶちこまれねえと満足できないほどにな』

『う……うそよ……』

 蘭が声を硬くする。自分の身体を守るように抱きしめる。

『ほうら、熱くなってきた……濡れてきた……チンポがほしくなってきた……』

 男が歌うようにささやく。

 その間も、歩美と哀の嬌声が聞こえてくる。そして、蘭はいやおうなくそれを耳にし、情景すら目の当たりにしているのだ。

 蘭の表情が変化していく。悲しみと嫌悪から、じょじょに恍惚に近づいていく。それを自覚してか、蘭は目を閉じ、耳をふさぐ。それでも――

『気持ちいいよぉ……ああん、おまんこ裂けちゃううっ……!』

『おしりが……おしりが……ぐちゃぐちゃにぃっ……ああああっ!』

 少女たちの声は絶頂間際だ。ボリュームがさらに高まる。

 蘭は頭を振った。長い髪が乱れる。汗をかいた白い肌にはりつく。

 次に顔をあげたとき、蘭は泣いていた。唇をわななかせ、声をあげずに泣いていた。同時に、脚を開き、自ら性器をいじりはじめている。

 蘭の秘部は、どうしようもなく充血し、蜜をしたたらせていた。肛門さえ、ぷっくりと腫れている。

『ああ……お願い……』

 蘭は震え声で懇願していた。

『新一、いますぐ来て……助けにきて……でないとわたし……わたしぃ……!』

 自分の指を肉壺に沈め、声をはなつ。せわしない指の動き。だが、もはや自慰だけでは絶頂はもたらされないのだ。

 サングラスの男はおもむろにジッパーをおろした。巨大な海棲の軟体動物を思わせる男性器が顔を出す。亀頭の付け根にボコボコとグロテスクな瘤が並んでいる。亀頭も真っ黒で、見るからに硬そうだ。それを、まるで餌であるかのように、蘭の目の前に突き出す。蘭の顔色がかわった。莫迦のように口を開き、はあはあと荒い息をしている。視線は男根に釘付けだ。

『ああ……あ……チンポ……チンポぉ……』

 それしか考えられなくなった末期患者のように、蘭は淫語をつぶやく。喉が動いて唾をのみこむ。おさまりきれなかった唾液がよだれになって流れ落ちる。

『おれのチンポがほしいか? だったらおねだりしてみろ』

 サングラスの男が男根をぶらぶらさせる。それを目で追う蘭にもはや清楚な美少女の面影はない。

『あ……あ……ちょうだい……』

 声質そのものは本来の愛らしさ、さわやかさをとどめている。だが、言葉の内容は、これまで毛利蘭の口からは絶対に出なかった類のものだった。

『チンポ、チンポちょおだぁい! お願いぃぃ、チンポ、そのチンポ、でっかいチンポをわたしのココにハメてぇぇっ!』

 自らで処女膜を引き裂きかねない勢いで、蘭は性器を押し広げる。ピンクの粘膜がひくついて、もう一秒の猶予もないかのようだ。

『はやく、はやくぅぅぅっ!』

 蘭は絶叫した。自らの切迫した飢えを満たす――ため。

そして、終局へ――