「この後は監督さんにお任せしますわ」
知世がおれにささやきかけた。
「でも、さくらちゃんが痛がったり、傷ついたりするようなら、その時点で中止します」
それは難題だ。初めてで、それもこんな少女なら、痛がらないはずはない。
だが、おれはプロだ。セックスの――ではなく、ビデオ屋の。
おれはさくらにカメラを寄せてゆく。にじり寄ってゆく。
さくらがおれを意識してベッドの上で身体を固くするのがわかる。
だが、好奇心が勝っている。広げた脚を閉じようとはしないのがその証拠だ。彼女は想像している。そこが触れ合ったらどんな感じがするのか。
きっと、ビデオのなかで、挿入された女は喜悦に震えていたのだろう。快楽にまみれて、息もたえだえだったのだろう。自分もそうなってしまうのか、どうなのか、それを確かめたいのだろう。
彼女がしたいのはセックスではない。実験だ。あるいは冒険か。
ふつう、冒険には手痛い代償がつきものだ。だが、それは現実世界でのこと。おれが撮るのは、客が見たいと思うファンタジーであって、リアルではない。
おれはペニスをさくらのワレメに触れさせた。
「あ……っ」
ペニスがワレメを押し広げ、その内側の赤い粘膜に接触する。
「ふぁ……あ……」
さくらは目を閉じた。
粘膜からいろいろな情報を受け取っているのだろう。
腰を進めた。
亀頭が小陰唇をかき分け、左右に分かつ。その中にある――さくらの封印。
扉をノックした。
「はうっ!」
小学生の狭隘な膣が鍵の侵入を阻む。
まだ解除はできないようだ。
周辺を男根でこする。とくにクリトリスをたんねんに。亀頭から分泌されるカウパー液でさくらの小粒な突起をぬめらせ、裏筋をブレードのようにあてて、前後に。
「は……あ? あ……あっ」
ゆっくりと。
くりかえし。
すべらせる。
さくらの呼吸が激しくなり、お腹が波打つ。
「なんだか……な……あっ、あはっ、はああ……」
声が高まってゆく。刺激が蓄積して、性感に変化してゆく。
少女の表情に、女のそれがひらめく。
そして、それが訪れた。
「ああああっ! いいっ! それ、いいよお!」
シーツをつかんで身もだえる。
「きっ、気持ちいいよぉ……っ! ふぁあっ!」
おれは入口を亀頭でノックした。だが、あせらない。また、クリトリスを責める。さくらを悶えさせるとまたノック。その一連の動きを繰り返す。
じょじょにほぐれてくるのがわかる。亀頭が半分以上入るようになってきた。
潤いも増している。さくらの身体が受け入れのための支度をしているのだ。小学校では教えてくれない。本能だから、としかいえない。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
さくらの胸が上下し、あばらの影が浮き出しては消える。ピンクに上気した肌が汗をふくんで芳香をはなっている。
少女の亀裂が愛液にぬるみ、大陰唇はぷくっと膨らんでシュークリームのようにふわふわだ。ほんとうに、そこはお菓子のように柔らかくて、甘いクリームがたっぷり詰まっているみたいだ。
食べ頃だ。もう、挿入してもそうは痛がらないだろう。それどころか、イかせる自信もある。
だが――
知世がおれとさくらの接合部分を凝視していた。
思い詰めたような――つらそうな――
なぜだ。これはすべて知世自身がしくんだことのはずだ。おれは、知世の演出プランに沿っていたはずだ。
それとも――ちがったのか。
「知世ちゃん……」
さくらが手を差し伸べる。
「知世のちゃんも……一緒に……」
「え」
黒髪の少女が初めて意表をつかれた。眉があがり、目を見開く。
その知世にさくらはやさしく微笑んだ。
「初めては……知世ちゃんと……したいよ」
「さくらちゃん……」
黒い大きな瞳に涙がもりあがった。
たしかに――主役はこの二人だ。おれじゃない。
「それでは、失礼しますわ」
照れたようにおれに断ると、知世はさくらにおおいかぶさった。
キスが始まる。いままでよりずっと濃厚な、恋人どうしのキス。
さくらが積極的に下から知世を愛撫している。
指で股間を――自分がされていたみたいに――広げて、いじくる。
「ああっ、いけませんわ――監督さんが撮ってらっしゃるのに」
うろたえ声をだす知世。
「そんなのずるいよ、知世ちゃん。わたしのコトはいっぱいいっぱい撮ったのに」
からかうように言い、知世の秘部を全開にする。
カメラのフレームいっぱいに知世のヒップをとらえる。
色が白いだけに粘膜の美しさがきわだつ。
性器の色も肛門のヒダも、あますところなく映し出す。
開口部がひくつき、愛液の分泌がわかる。知世の濡れ方は素晴らしい。
「さくらちゃん……恥ずかしいですわ……ああ……」
恥じらう知世、責めるさくら。まったく逆の展開だ。
「あっ、あっ――さくらちゃん」
「知世ちゃん……大好きだよ」
「うれしいですわ……さくらちゃん」
抱き合い、舌をからめ、ワレメどうしをこすりつける。おさない貝肉がふたつ、濡れそぼってからみあう。
「と、知世ちゃん、いっしょに……初めて、しよ」
「ええ、ええ、さくらちゃんと一緒に――」
二人が同時におれを振り返った。いや。カメラと、ペニスをみた。おれの存在はそのふたつだけだ。
それでいい。それこそがおれの仕事だ。
おれはふたつのワレメのあいだにペニスを挿し込んでいった。
さくらと知世の性器にサンドイッチされる。
ふわふわプリプリの肉の感触。
角度を少しでも変えれば、どちらかの膣にぬるっと入ってしまいそうだ。
たまらない。だが、なんとか理性をたもって、ピストン運動を始める。
にゅくっ!
にゅちっ!
粘っこい音とともに肉棒がしごかれる。
「ああっ」
「うくっ」
さくらと知世が同時に反応する。
ふたつのクリトリスとペニスが密着し、たがいに刺激しあう。
「気持ちいい、ね? 知世ちゃん」
「ええ……すてきですわ、さくらちゃん」
二人の睦み声を聞きながら、おれは腰を動かし続ける。
「はうっ!」
「ひいっ!」
少女の声が大きく、切迫してゆく。
「か、かたいよぉ」
「あ、あついですわ」
ふたりのヴァージンに挟まれたおれのペニスは、鈴口からカウパーを漏らしつつ、快楽のプレッシャーを楽しんでいた。
下からはさんでくるさくらのワレメ。上から押さえつけてくる知世のワレメ。知世の場合はアナルも丸見えで、その部分が開いたり閉じたりして、まるで息をしているようだ。
「はあっ、はあっ、知世ちゃん、知世ちゃん……わたし、わたしぃ――」
「さくらちゃん――わたしも――ああああっ!」
さくらが知世の――
知世がさくらの――
それぞれ入口を広げてさけんだ。
「い、いれて、知世ちゃん!」
「く、ください、さくらちゃん!」
どっちが先とか、そんなことは考えなかった。
侵入した。
少女に包まれた。熱い肉が巻きつく。
抜いて、もうひとつの穴にもぐりこむ。
ひだがからみついてくる。すごい。
そして、また穴をかえる。
入れるたびに深さが増してゆく。
三往復で、亀頭が隠れるまで。
五往復で、半ばまで。
そして、十往復め――
「ああっ!」
さくらの膣はおれを完全に受け入れた。裂けた膜からの出血がシーツに赤い点をおとす。
その、さくらの血がついたペニスで、知世を――
「ひぃっ!」
強引に貫通した。
「あ……く……ぅ」
知世の背中が苦痛に耐えるかのようにゆがむ。
「知世ちゃん……痛かった? ごめんね」
なぜだかさくらが謝罪する。
「かまいませんわ。さくらちゃんとひとつになれた痛みですもの……幸せですわ」
知世が泣いている。満たされて、嗚咽している。
ふたりは指をからめ、舌をからめた。
おれはふたりの膣にかわるがわるペニスを挿しこんだ。ふたりの破瓜の血がまざりあい、愛液に溶けて、ひとつになるように。
「入ってるよ、知世ちゃんのが――」
「感じますわ、さくらちゃんを――」
ふたりは抱き合いながら声を重ねた。
「知世ちゃんがわたしの――」
「さくらちゃんがわたくしの――」
はじめての、ひと。
そうだ。ふたりはおたがいを奪いあい、与えあった。
おれはその媒介役にすぎない。
知世の子宮とさくらの子宮を交互につつきながら、おれはカメラそのものになっていた。
「あああ、当たってる、おなかに当たって、こつ、こつ、こつって――知世ちゃん、すごいよお!」
「さくらちゃんこそ、奥まで奥まで、いっぱい、いっぱいですわ!」
ふたりは興奮の絶頂だ。おれのことを完全に忘れている。
「知世ちゃんのオチンチンで、気持ち良くなっちゃうよう――!」
「さくらちゃんのオチンチンのほうがすてきですわ――!」
たがいにたがいを犯し、犯されている錯覚に陥ってるのだろう。それが、おれがふたりに見せるファンタジーだ。
さくらの小さくて熱い性器――湿潤で奥が深く、吸い込まれそうな気がする。
知世のやわらかで豊かな性器――天井近くのざらつきと締めつけがたまらない。
二人ともすばらしい。そのすばらしさを、それぞれに伝えたい。
さくらの膣の熱さと奥の深さを知世に。
知世のやわらかさと締めつけをさくらに。
そう願いつつ、おれはふたりにメッセージを送り続けた。
「知世ちゃん、わたし、わたし……もお……っ!」
「さくらちゃん、わたしも……わたしも……っ!」
ふたりは高まっていた。
「と、知世のちゃんっ! い、いっしょに!」
「はいっ! さくらちゃん、ご一緒します……っ」
さくらが悲鳴じみた声をあげ、知世があえぐ。
おれも、もう限界だ。
どちらの中に出すか。
「ともよちゃん、すきいいいっ!」
「さくらちゃん、わたくしも――っ」
おれは二人のぬるぬるの秘肉の間にペニスを突き入れた。
さくらと知世も同時に腰を揺すっていた。前後に。クリとクリをこすりつけあうように。
そこにおれのペニスがはさまり、圧しつぶされる。
ぬるっ。
出る。
――寸前でさくらの膣の中にもぐりこむ。
「ああっ!」
さくらの奥のせまい部分に亀頭を押しつけて――
「と、知世ちゃんっ――!」
びぴゅっ!
精液が飛び出す。さくらの子宮に粘液をぶつける。
――そのまま。出しながら。
知世に飛び込む。
奥まで。一番奥まで突き入れて、残りの精液をすべて絞り出す。
「さ……さくらちゃん……っ!」
どくどくっ! どく……っ
たっぷりと――
「いっ……い……くぅ!」
「……きますわ……っ!」
ふたり、極まって意識をはじけさせる。
イキつづけている。
抱きあい、たがいのクリトリスをこすりつけあいながら――
おれはカメラの液晶ファインダーを見ていた。
――撮れてる。
最高の絵だ。
少女たちのピンクの肉壺がひくつき、そのはざまから白い粘液がとろりとろぉりと、糸を引きながら流れおちていった――
撮影が終わり、シャワーを浴びると、さくらは帰宅した。
「ばいばい、またあした、学校でね」
屈託のない微笑みを知世に向け、おれにむかってぴょこんとお辞儀ひとつすると、駆け出していった。
あんな行為の後だなんて想像さえできない。
知世も着替えを済ませていて、微塵も隙のない少女にもどっていた。
「ごくろうさま。お礼はご指定の口座に振り込ませていただきましたわ」
過去形でいった。たぶん、シャワーの合間に電話一本で手配したのだろう。
「手回しがいいな。作品は編集してから、マスターテープごと渡すよ」
おれはいった。あの素材をこれからいじれると思うとそれだけで興奮した。徹夜だって厭わない。ずっとスタジオにこもってもいいくらいだ。
だが。
知世はにこやかに笑っていった。
「けっこうですわ。編集は自分でしますから」
小さな掌を出した。おれはうろたえた。おれはビデオ屋だ。作品づくりは全うしたい。
だが、おれの小さなクライアントは決然としていた。微笑みを浮かべたまま、1ミリもゆずらない。
泣く泣く撮影テープをすべて渡した。
「それと、お胸のポケットの――MPEGカメラでしょうか――そちらもお願いしますね」
まいった。
おれは仕事柄、一応、証拠用の動画を撮ることにしていた。べつに脅迫のネタに使うつもりはないが、タチの悪い客に引っ掛かったときのための保険だ。
超小型の動画カメラで、いままで見抜かれたことはなかったのだが――相手が悪かったようだ。
観念したおれからカメラを受け取った知世は、心からの微笑みを向けてくれた。
「もしかしたら、またお願いするかもしれませんわね。そのときはまたメールでご連絡しますわ」
これでおれの話は終わりだ。
礼金は約束どおり、きっちりと振り込まれていた。
最初のうちは、知世の素性を探ってやろうかとも思ったが、やめた。
あれは夢だったのかもしれない、そう思うようにした。
妖精たちが気まぐれに地上に降り立ち、たわむれてあったところに、偶然立ち会っただけなのだ。
それでも――心のどこかでおれは待っている。
あの少女からのメールを。
秘密のお茶会へのお誘いメールを。