ビデオ屋本舗(1)

妖精たちのシエスタ(仮題)

 

「この後は監督さんにお任せしますわ」

 知世がおれにささやきかけた。

「でも、さくらちゃんが痛がったり、傷ついたりするようなら、その時点で中止します」

 それは難題だ。初めてで、それもこんな少女なら、痛がらないはずはない。

 だが、おれはプロだ。セックスの――ではなく、ビデオ屋の。

 おれはさくらにカメラを寄せてゆく。にじり寄ってゆく。

 さくらがおれを意識してベッドの上で身体を固くするのがわかる。

 だが、好奇心が勝っている。広げた脚を閉じようとはしないのがその証拠だ。彼女は想像している。そこが触れ合ったらどんな感じがするのか。

 きっと、ビデオのなかで、挿入された女は喜悦に震えていたのだろう。快楽にまみれて、息もたえだえだったのだろう。自分もそうなってしまうのか、どうなのか、それを確かめたいのだろう。

 彼女がしたいのはセックスではない。実験だ。あるいは冒険か。

 ふつう、冒険には手痛い代償がつきものだ。だが、それは現実世界でのこと。おれが撮るのは、客が見たいと思うファンタジーであって、リアルではない。

 おれはペニスをさくらのワレメに触れさせた。

「あ……っ」

 ペニスがワレメを押し広げ、その内側の赤い粘膜に接触する。

「ふぁ……あ……」

 さくらは目を閉じた。

 粘膜からいろいろな情報を受け取っているのだろう。

 腰を進めた。

 亀頭が小陰唇をかき分け、左右に分かつ。その中にある――さくらの封印。

 扉をノックした。

「はうっ!」

 小学生の狭隘な膣が鍵の侵入を阻む。

 まだ解除はできないようだ。

 周辺を男根でこする。とくにクリトリスをたんねんに。亀頭から分泌されるカウパー液でさくらの小粒な突起をぬめらせ、裏筋をブレードのようにあてて、前後に。

「は……あ? あ……あっ」

 ゆっくりと。

 くりかえし。

 すべらせる。

 さくらの呼吸が激しくなり、お腹が波打つ。

「なんだか……な……あっ、あはっ、はああ……」

 声が高まってゆく。刺激が蓄積して、性感に変化してゆく。

 少女の表情に、女のそれがひらめく。

 そして、それが訪れた。

「ああああっ! いいっ! それ、いいよお!」

 シーツをつかんで身もだえる。

「きっ、気持ちいいよぉ……っ! ふぁあっ!」

 おれは入口を亀頭でノックした。だが、あせらない。また、クリトリスを責める。さくらを悶えさせるとまたノック。その一連の動きを繰り返す。

 じょじょにほぐれてくるのがわかる。亀頭が半分以上入るようになってきた。

 潤いも増している。さくらの身体が受け入れのための支度をしているのだ。小学校では教えてくれない。本能だから、としかいえない。

「はあ、はあ、はあ、はあ……」

 さくらの胸が上下し、あばらの影が浮き出しては消える。ピンクに上気した肌が汗をふくんで芳香をはなっている。

 少女の亀裂が愛液にぬるみ、大陰唇はぷくっと膨らんでシュークリームのようにふわふわだ。ほんとうに、そこはお菓子のように柔らかくて、甘いクリームがたっぷり詰まっているみたいだ。

 食べ頃だ。もう、挿入してもそうは痛がらないだろう。それどころか、イかせる自信もある。

 だが――

 知世がおれとさくらの接合部分を凝視していた。

 思い詰めたような――つらそうな――

 なぜだ。これはすべて知世自身がしくんだことのはずだ。おれは、知世の演出プランに沿っていたはずだ。

 それとも――ちがったのか。

「知世ちゃん……」

 さくらが手を差し伸べる。

「知世のちゃんも……一緒に……」

「え」

 黒髪の少女が初めて意表をつかれた。眉があがり、目を見開く。

 その知世にさくらはやさしく微笑んだ。

「初めては……知世ちゃんと……したいよ」

「さくらちゃん……」

 黒い大きな瞳に涙がもりあがった。

 たしかに――主役はこの二人だ。おれじゃない。

 

 

「それでは、失礼しますわ」

 照れたようにおれに断ると、知世はさくらにおおいかぶさった。

 キスが始まる。いままでよりずっと濃厚な、恋人どうしのキス。

 さくらが積極的に下から知世を愛撫している。

 指で股間を――自分がされていたみたいに――広げて、いじくる。

「ああっ、いけませんわ――監督さんが撮ってらっしゃるのに」

 うろたえ声をだす知世。

「そんなのずるいよ、知世ちゃん。わたしのコトはいっぱいいっぱい撮ったのに」

 からかうように言い、知世の秘部を全開にする。

 カメラのフレームいっぱいに知世のヒップをとらえる。

 色が白いだけに粘膜の美しさがきわだつ。

 性器の色も肛門のヒダも、あますところなく映し出す。

 開口部がひくつき、愛液の分泌がわかる。知世の濡れ方は素晴らしい。

「さくらちゃん……恥ずかしいですわ……ああ……」

 恥じらう知世、責めるさくら。まったく逆の展開だ。

「あっ、あっ――さくらちゃん」

「知世ちゃん……大好きだよ」

「うれしいですわ……さくらちゃん」

 抱き合い、舌をからめ、ワレメどうしをこすりつける。おさない貝肉がふたつ、濡れそぼってからみあう。

「と、知世ちゃん、いっしょに……初めて、しよ」

「ええ、ええ、さくらちゃんと一緒に――」

 二人が同時におれを振り返った。いや。カメラと、ペニスをみた。おれの存在はそのふたつだけだ。

 それでいい。それこそがおれの仕事だ。

 おれはふたつのワレメのあいだにペニスを挿し込んでいった。

 

 

 さくらと知世の性器にサンドイッチされる。

 ふわふわプリプリの肉の感触。

 角度を少しでも変えれば、どちらかの膣にぬるっと入ってしまいそうだ。

 たまらない。だが、なんとか理性をたもって、ピストン運動を始める。

 にゅくっ!

 にゅちっ!

 粘っこい音とともに肉棒がしごかれる。

「ああっ」

「うくっ」

 さくらと知世が同時に反応する。

 ふたつのクリトリスとペニスが密着し、たがいに刺激しあう。

「気持ちいい、ね? 知世ちゃん」

「ええ……すてきですわ、さくらちゃん」

 二人の睦み声を聞きながら、おれは腰を動かし続ける。

「はうっ!」

「ひいっ!」

 少女の声が大きく、切迫してゆく。

「か、かたいよぉ」

「あ、あついですわ」

 ふたりのヴァージンに挟まれたおれのペニスは、鈴口からカウパーを漏らしつつ、快楽のプレッシャーを楽しんでいた。

 下からはさんでくるさくらのワレメ。上から押さえつけてくる知世のワレメ。知世の場合はアナルも丸見えで、その部分が開いたり閉じたりして、まるで息をしているようだ。

「はあっ、はあっ、知世ちゃん、知世ちゃん……わたし、わたしぃ――」

「さくらちゃん――わたしも――ああああっ!」

 さくらが知世の――

 知世がさくらの――

 それぞれ入口を広げてさけんだ。

「い、いれて、知世ちゃん!」

「く、ください、さくらちゃん!」

 どっちが先とか、そんなことは考えなかった。

 侵入した。

 少女に包まれた。熱い肉が巻きつく。

 抜いて、もうひとつの穴にもぐりこむ。

 ひだがからみついてくる。すごい。

 そして、また穴をかえる。

 入れるたびに深さが増してゆく。

 三往復で、亀頭が隠れるまで。

 五往復で、半ばまで。

 そして、十往復め――

「ああっ!」

 さくらの膣はおれを完全に受け入れた。裂けた膜からの出血がシーツに赤い点をおとす。

 その、さくらの血がついたペニスで、知世を――

「ひぃっ!」

 強引に貫通した。

「あ……く……ぅ」

 知世の背中が苦痛に耐えるかのようにゆがむ。

「知世ちゃん……痛かった? ごめんね」

 なぜだかさくらが謝罪する。

「かまいませんわ。さくらちゃんとひとつになれた痛みですもの……幸せですわ」

 知世が泣いている。満たされて、嗚咽している。

 ふたりは指をからめ、舌をからめた。

 おれはふたりの膣にかわるがわるペニスを挿しこんだ。ふたりの破瓜の血がまざりあい、愛液に溶けて、ひとつになるように。

「入ってるよ、知世ちゃんのが――」

「感じますわ、さくらちゃんを――」

 ふたりは抱き合いながら声を重ねた。

「知世ちゃんがわたしの――」

「さくらちゃんがわたくしの――」

 はじめての、ひと。

 そうだ。ふたりはおたがいを奪いあい、与えあった。

 おれはその媒介役にすぎない。

 知世の子宮とさくらの子宮を交互につつきながら、おれはカメラそのものになっていた。

「あああ、当たってる、おなかに当たって、こつ、こつ、こつって――知世ちゃん、すごいよお!」

「さくらちゃんこそ、奥まで奥まで、いっぱい、いっぱいですわ!」

 ふたりは興奮の絶頂だ。おれのことを完全に忘れている。

「知世ちゃんのオチンチンで、気持ち良くなっちゃうよう――!」

「さくらちゃんのオチンチンのほうがすてきですわ――!」

 たがいにたがいを犯し、犯されている錯覚に陥ってるのだろう。それが、おれがふたりに見せるファンタジーだ。

 さくらの小さくて熱い性器――湿潤で奥が深く、吸い込まれそうな気がする。

 知世のやわらかで豊かな性器――天井近くのざらつきと締めつけがたまらない。

 二人ともすばらしい。そのすばらしさを、それぞれに伝えたい。

 さくらの膣の熱さと奥の深さを知世に。

 知世のやわらかさと締めつけをさくらに。

 そう願いつつ、おれはふたりにメッセージを送り続けた。

「知世ちゃん、わたし、わたし……もお……っ!」

「さくらちゃん、わたしも……わたしも……っ!」

 ふたりは高まっていた。

「と、知世のちゃんっ! い、いっしょに!」

「はいっ! さくらちゃん、ご一緒します……っ」

 さくらが悲鳴じみた声をあげ、知世があえぐ。

 おれも、もう限界だ。

 どちらの中に出すか。

「ともよちゃん、すきいいいっ!」

「さくらちゃん、わたくしも――っ」

 おれは二人のぬるぬるの秘肉の間にペニスを突き入れた。

 さくらと知世も同時に腰を揺すっていた。前後に。クリとクリをこすりつけあうように。

 そこにおれのペニスがはさまり、圧しつぶされる。

 ぬるっ。

 出る。

 ――寸前でさくらの膣の中にもぐりこむ。

「ああっ!」

 さくらの奥のせまい部分に亀頭を押しつけて――

「と、知世ちゃんっ――!」

 びぴゅっ!

 精液が飛び出す。さくらの子宮に粘液をぶつける。

 ――そのまま。出しながら。

 知世に飛び込む。

 奥まで。一番奥まで突き入れて、残りの精液をすべて絞り出す。

「さ……さくらちゃん……っ!」

 どくどくっ! どく……っ

 たっぷりと――

「いっ……い……くぅ!」

「……きますわ……っ!」

 ふたり、極まって意識をはじけさせる。

 イキつづけている。

 抱きあい、たがいのクリトリスをこすりつけあいながら――

 おれはカメラの液晶ファインダーを見ていた。

 ――撮れてる。

 最高の絵だ。

 少女たちのピンクの肉壺がひくつき、そのはざまから白い粘液がとろりとろぉりと、糸を引きながら流れおちていった――

  

 撮影が終わり、シャワーを浴びると、さくらは帰宅した。

「ばいばい、またあした、学校でね」

 屈託のない微笑みを知世に向け、おれにむかってぴょこんとお辞儀ひとつすると、駆け出していった。

 あんな行為の後だなんて想像さえできない。

 知世も着替えを済ませていて、微塵も隙のない少女にもどっていた。

「ごくろうさま。お礼はご指定の口座に振り込ませていただきましたわ」

 過去形でいった。たぶん、シャワーの合間に電話一本で手配したのだろう。

「手回しがいいな。作品は編集してから、マスターテープごと渡すよ」

 おれはいった。あの素材をこれからいじれると思うとそれだけで興奮した。徹夜だって厭わない。ずっとスタジオにこもってもいいくらいだ。

 だが。

 知世はにこやかに笑っていった。

「けっこうですわ。編集は自分でしますから」

 小さな掌を出した。おれはうろたえた。おれはビデオ屋だ。作品づくりは全うしたい。

 だが、おれの小さなクライアントは決然としていた。微笑みを浮かべたまま、1ミリもゆずらない。

 泣く泣く撮影テープをすべて渡した。

「それと、お胸のポケットの――MPEGカメラでしょうか――そちらもお願いしますね」

 まいった。

 おれは仕事柄、一応、証拠用の動画を撮ることにしていた。べつに脅迫のネタに使うつもりはないが、タチの悪い客に引っ掛かったときのための保険だ。

 超小型の動画カメラで、いままで見抜かれたことはなかったのだが――相手が悪かったようだ。

 観念したおれからカメラを受け取った知世は、心からの微笑みを向けてくれた。

「もしかしたら、またお願いするかもしれませんわね。そのときはまたメールでご連絡しますわ」

 

***

 これでおれの話は終わりだ。

 礼金は約束どおり、きっちりと振り込まれていた。

 最初のうちは、知世の素性を探ってやろうかとも思ったが、やめた。

 あれは夢だったのかもしれない、そう思うようにした。

 妖精たちが気まぐれに地上に降り立ち、たわむれてあったところに、偶然立ち会っただけなのだ。

 それでも――心のどこかでおれは待っている。

 あの少女からのメールを。

 秘密のお茶会へのお誘いメールを。

おしまい