第四部 愛の聖水
「あら、まあ……」
知世がビデオカメラをのぞきこんだまま、感嘆の声をあげた。
「あれって、キンシンソーカンちゅうやつやなあ」
ケルベロスもなすすべなく、空中にとどまっている。
「どうしましょ。さくらちゃんのあそこ、あんなに広がっちゃって。お父様のペニスを根元まで飲みこんじゃってますわ」
「Xクロウカードの力が働いとるから、痛みはそんなにないはずやが、いうても、小学四年のさくらに大人のチンポはきついで」
「じゃあ、このままではさくらちゃんは……」
奈穂子や、利佳たちのようになってしまうのか。
「いや。Xクロウカードには弱点がある。そのためには、さくらには悪いけど、もうちょっとがんばってもらわな」
ケルベロスは内心のあせりを押し隠すようにして言った。
「ああ、さくらさん、気持ちいいですよ。お父さんは、感激です」
いわゆる騎上位のスタイルで、さくらを下から突き上げながら藤隆は言った。
「お、おとーさん、い、いやあっ」
身体を揺すられながら、さくらは悲鳴にちかい声をあげる。父親に挿入されてしまった。それも、雪兎の目の前だ。接合部分を至近距離から見られている。
自分ではわからないが、真っ赤に充血したヴァギナに黒い藤隆の男根がささり、粘液質の音をたてながら、出たり入ったりしているはずだ。
それを、雪兎が見ている。
「いやっ、やあっ、あんっ、はあっ、あああっ」
身体のなかを男根でかきまわされながら、さくらは漏れでる声をどうしようもない。どういうわけか痛みはほとんどなくて、ものすごく気持ちがいいのだ。
雪兎に見られていると思うと、さらに快感が高まってしまう。
「ふえ、はああ、だめえ……おとーさん、気持ちいいよお」
「正直がいちばんですよ、さくらさん」
「さ、そろそろいいだろ、おれのもしゃぶれよ」
桃矢が強引にさくらの顔をねじまげ、ペニスを口のなかにぶちこむ。もう、さくらは抵抗しない。すなおに舌をはわせる。
「じゃ、ぼくも、専門のところを」
雪兎が言い、上下しているさくらのヒップを両手でとらえる。
「ふあっ」
さくらはおしりの山を左右に開かれる感覚に身震いした。そんなところを、雪兎さんが……
「さくらちゃんのおしりの穴、ピンク色でかわいいよ。かわいがってあげる」
ぴと。
舌の感触だ。
「んうううっ、んふっ!」
桃矢のペニスが口にうまっているから、声がだせない。鼻声だけが荒くなってしまう。
肛門の粘膜を露出させられ、そこをなめられている。それも、大好きな雪兎にだ。
さくらの意識は真っ白に灼熱する。
「ふふ、ちょっとウンチの匂いがするよ、さくらちゃん」
(いやあ……そんなこと言わないで、雪兎さあん)
「なかまで舐めてあげるよ。ここも気持ちいいでしょ?」
藤隆の男根とはまたちがう異物感が、さくらのおしりを襲う。
(う……あ……んんーっ)
さくらは桃矢の男根の先端を吸いながら、甘い痛みが下腹部をつらぬくのを感じた。
(だめっ、だめっ、でちゃうう)
括約筋を必死で閉じた。だが、それよりもはやく――
ぱぶっ。
オナラをしてしまった。いや、それどころか、ミがでてしまったかもしれない。
さくらは恥ずかしさのあまり、身をよじった。
(もうだめ、死んじゃいたい)
「気にしなくていいよ、さくらちゃん。ぼくはこういう匂いが大好きなんだ。最高だよ、さくらちゃんのおしりの穴。ふるふる震えて、なんてかわいいんだ」
感動したような口調で雪兎は言い、なおいっそう激しくさくらのアヌスをなめはじめた。ちゅぶちゅぶ、音がしている。
「ぼくもがまんできないよ。さくらちゃん、おしりに入れてあげるからね」
雪兎があわただしくズボンを脱ぎはじめる。ああ。雪兎はその部分さえ白いのだ。先端は白い包皮にかくされ、ピンクの先端はわずかに顔をのぞかせているだけ。
包茎なのだ。だが、不潔な感じはしない。
さくらは待っていた。待ちわびていた。
おなかのなかでは父親のペニスが動いている。口のなかには兄のペニスがある。だが、それだけでは足りない。やっぱり、好きなひとのオチンチンがほしい。
(はやく……うう……はやくぅ)
灼熱感をともなった欲望がさくらのなかをかけめぐり、おねだりするように小さなヒップを左右に振る。
痛いくらいにアヌスを指で広げられ、そこに雪兎のペニスの先端が押しつけられると、もうさくらはたまらなくなった。
「ひれてぇ……ひれてぇ、ひゅきとさあん」
桃矢のものをしゃぶりながら、切れ切れに叫んだ。
「こら、さくら、ちゃんと舌をつかえよ」
わずかに嫉妬の険をふくんだ声で桃矢がしかる。
「おれは、口にしかできないんだからな……」
自分の頭上で回転しているXクロウカードを睨みあげるような仕草を垣間見せる。
そんな桃矢を雪兎は好ましげに見つめ、それからおもむろに腰を進める。
「いくよ、さくらちゃん」
「――Xクロウカードの弱点?」
知世はビデオカメラを手に、撮影は継続しながら、ケルベロスに訊く。激しいシーンを目の当たりにして、さすがの知世も頬が紅潮し、瞳がきらきら輝いている。さっきから、もじもじと腰を動かしはじめているところからすると、彼女も興奮しているようだ。
「せや……今回の三枚のカードは、みたところ、<ロリ>のカードと<フェラ>、そして<アナル>や。いまは、ああやって三種類のカードが協力しあっとるように見えるけどな、もともとXクロウカードじたいが欲望のカタマリや。ぜったいにバランスが崩れるときがくる。そのときがチャンスや」
ケルベロスが真剣な面持ちで言う。
「そのときに、さくらが正気をたもっていれば……って、知世、なにしとんねや」
「んっ、うっ、だって、わたくしのさくらちゃんが……目の前であんなにエッチなこと、してるんですもの……」
知世は、左手でカメラを構えながら、長いスカートをたくしあげて、右手を下着のなかにすべりこませていた。
ちゅくちゅくと、音がする。下着からもあふれでた透明な液体が一筋、二筋、知世の白い太ももをしたたりおちていく。
「なんちゅうこっちゃ……」
ケルベロスは嘆息した。
最初は、なにがなんだかわからなかった。おしりでなにかが爆発し、その衝撃が背筋をはしりぬけ、眼のうしろあたりで真っ白な光になった。
「ひゃあああっ! ひうっ!」
桃矢のものを頬ばっていることも忘れて、さくらはのけぞった。
雪兎のものがおしりに入っていた。膣には藤隆の巨大なものが埋められている。
桃矢もふくめれば、三本の男根がさくらを犯していた。
「気持ちいいよ、さくらちゃんのおしりの穴は最高だ」
雪兎がゆっくりと動きながら言う。雪兎のものが出たり入ったりするたびに、さくらは叫びだしたい快感に襲われた。なんでこんなに――おしりが気持ちいいんだろう。
(雪兎さんのオチンチンだからだよ)
さくらは幸福感さえ感じて、全身をふるわせた。
「うっ、さくらさん、すごいですよ」
藤隆がさくらの身体の下でうめき声をあげる。
「おまんこが……締まる……おかあさん以上の名器ですね、さくらさんは」
(おとーさん、気持ちよさそう)
そう思うと、わずかに誇らしい気分になる。母が逝ってから、ずっと独身だった父親の快楽を引きだせたのだ。よかった、と思った。
「おれのもちゃんとよくしろよ、さくら」
いらいらした口調で桃矢が言う。
「おにーちゃん」
さくらは桃矢の顔を上目づかいにみた。
桃矢のペニスは力を失い、だらんとしていた。さくらが舌を休めたせいだ。
「おれは……口にしかできねえんだ」
さくらは桃矢のしなだれたペニスの先端に舌をのばした。
ちろちろとくびれのあたりを舐めあげる。ぴくり、とペニスが動く。
その反応が愛らしくて、さくらは尿道口にキスをした。そして、ゆっくりと口のなかにすいこむ。
(おにーちゃんのオチンチン……さくらのおくちで気持ちよくなって)
たんねんにたんねんに舌をうごかす。桃矢の欲望がさくらの口腔のなかにいっぱいにふくらんでいくのがわかる。
「う……いいぞ……さくら……」
さくらの髪のなかに手を入れ、桃矢が腰を動かしはじめる。
桃矢の快感がつたわってくる。それはさくらの脳髄で甘いしびれになる。
「さくらさん、最高です。奥に……当たってます」
藤隆の動きが激しくなる。膣をこすりあげ、小さな子宮の中まで届いている。
「さくらちゃんの中、熱いよ」
雪兎もピストン運動をはじめている。さくらの直腸をえぐり、そして、さらに奥にまで侵入しようとする。
(うっ、うあっ、気持ちいいよおっ……ああっ)
さくらの意識も白くぬりこめられていく。
「おうっ」
藤隆がまず弾けた。大人のペニスから打ち出された精液が、さくらの体内に炸裂する。
「あっ」
女の子のような声をあげて、雪兎が果てる。声とはうらはらに大量に射出された白濁液はさくらの中にはおさまりきれず、余韻のピストン運動とともに外へあふれだす。
そして――
桃矢も達した。さくらの口のなかになんともいえぬ、ぬるみがひろがる。
三枚のカードが黒く発光しながらくるくる回転する。藤隆、桃矢、雪兎の身体から暗いオーラが陽炎のようにたちのぼり、それがそれぞれのカードに吸いこまれていく。快楽を――被寄生者が発散する性的なエネルギーを吸収しているのだ。それこそが、Xクロウカードの食事なのだ。
「さくらあ! 今やあ!」
ケルベロスが喉も裂けよとばかりに大声をはなつ。
「はうう……」
さくらは腰が立たない。さくら自身も強烈な快感のなかで、茫然自失していた。
「Xクロウカードがエネルギーをくろうとる、今を逃したら、またこいつらは暴れだすど! これ以上おとうはんたちを強姦魔にする気かあ!?」
その言葉がさくらの意識の霧をはらった。
「……おとーさん」
さくらはすぐそばに倒れている藤隆を見た。眼鏡の奥の瞳はうつろにひらかれている。まるで自分の意志を奪われた人形のようだ。さくらの太ももに、父が放った精液がたれる。まだほのかに父の体温を残した粘液をさくらは指ですくいとる。
「……おにーちゃん」
口げんかを繰りかえしながらも、いつもさくらを守ってくれた桃矢が、やはりくず折れて、荒い息をしている。その兄の精液の残滓を唇からぬぐう。指についた父の精液と兄の精液がまざりあう。
「雪兎……さん」
そしてさくらは愛しい人をみた。仰向けに倒れた雪兎の白い胸の肌が、夜目にもまぶしい。その身体をむしばむように、Xクロウカードが禍々しく回転しつつ、生気を吸いあげていく。
ひりひりと痛むアヌスに指を当て、少しなかをえぐるようにすると、雪兎の白い体液とさくら自身の赤い血がまざりあって指先にこびりつく。
「――おとーさんやおにーちゃん、そして雪兎さん……みんなわたしの大切な人たち――」
さくらは指についた父と兄と雪兎の精液、そして自分自身の血液もあわせて、舌でなめとった。
精液の苦みと血の甘みがまざりあい、そしてさくらはそれを嚥下する。
「その人たちをこれ以上操ることなんか、ぜったい、ぜったい、許さないっ!」
さくらは首からさげていた鍵型のペンダントをつかみ、引きちぎる。
レリーズ
「封印解除!」
光が鍵をつつみこむ。エネルギーが場をつくり、らせんの力がわきおこる。クロウカードに封印をほどこすための鍵――が本来の杖の姿になって、さくらの手のなかにおさまる。
いつもにまして、ものすごい魔力が湧き出ているようだ。
「われ、さくらの名において命ず! なんじのあるべき姿へともどれ!」
杖を振りあげ、空中にうごめく三枚のカードたちにねらいをさだめる。
カードたちは満腹のためか、動きがにぶい。杖が発する光のつぶに照らし出され、あたかも痛みを感じているかのごとくに身をくねらせる。
「えっくす、くろー、かーどッ!」
全身の力をこめて杖を振りおろす。光球がひろがり、風がおこる。風はさくらの裸の身体をふきぬける。さくらの小さなヒップに力がこもる。ふんばっている。
三枚のカードは、しかし、さくらの第一撃に耐えている。とらえようとする力に対抗し、自由を得ようとしている。びりびりと、周囲の空気がふるえて、割れそうな音をたてる。
「ううっ……つよいよお」
「大人むけのXクロウカード、しかも三枚同時や、きついのはわかっとる!」
ケルベロスがさくらの背後まで飛んできている。
「でも、がんばるんや、さくら!」
「さくらちゃん!」
知世も叫ぶ。
「くぅっ! まける……もんかあっ!」
さくらは杖を握る手にさらに力をこめる。大好きな人たちを守るためだ。まだ、膣にも、アヌスにも、口のなかにも、余韻がある。受けた愛のなごりだ。これがあるかぎり、さくらはがんばれる。
だって、さくらも愛しているから。おとーさんも、おにーちゃんも、大好きだから。雪兎さんのことをだれより大事に思っているから。
だから――
「わたし、まけないっ!」
渾身の一撃を打ちこむ。抵抗がガラスのように砕け散った。三枚のカードは一瞬長くのび、それから元の姿へと戻っていく。
さくらはそれを手にとった。赤い色で「18禁」と表示されている。精細なタッチでその<行為>の図柄が描かれている。
「やったな、さくら」
「さくらちゃん、すごかったですわ!」
「はへえ……しんどかった」
さくらはため息をつく。それから、おもむろに自分の姿に気づく。むろん、全裸だ。
「ほええっ!」
あわてて身体を隠しながら、さくらはすっとんきょうな声をあげた。
「いやー、今回のさくらは大活躍やったなあ。いっぺんに三枚ものXクロウカードを回収しよったで」
帰途につきながら、ケルベロスが満足そうに言った。
藤隆たちに服を着せ、そのままにしておいた。カードを回収したことで、彼らの記憶も、被害者たちの記憶も消失する。目ざめた藤隆たちは、なぜ自分たちが草むらで寝ていたのか、理由を見いだせずに首をひねるはずだ。
「もうたくさんだよ、あんなこと……」
さくらは顔をあからめた。いくらカードの仕業とはいえ、父親や兄、それにあこがれの人と――最後のはちょっとうれしかったが――エッチをする羽目になったのだ。
「でも、さくらちゃん、かわいかったですわ」
ビデオカメラを抱きしめながら、知世が楽しげに言う。
「もうっ、そのテープはちょうだいよお、知世ちゃん!」
「だめですわ。さくらちゃんのハードコアシーンなんて、わたくしにとっては一生の宝物ですもの」
「ほええ……」
さくらはめげる。
「でもなあ、Xクロウカードはあれだけとちゃうで」
ケルベロスが、くだけた空気を引き締めるように口調をかえる。
「えっ、まだあるの?」
「あたりまえやろ、エロいジャンルはほかにもたくさんあるやろ。たとえば、SMのカードとか、レズのカード、フィストのカードとか、スカトロもあるんやで」
「ひえええ」
さくらは頭をかかえた。冗談ではない。そんなプレイをひとつひとつ体験していったのではとても身がもたない。
だが、知世はとっても楽しそうにケルベロスに質問する。
「じゃあ、パイズリカードなんかもございますの?」
「当然や」
ケルベロスはうなずく。
一瞬の間。
ケルベロスと知世は、無言のまま、さくらの胸元を見る。
「――パイズリカードの回収はぜったいムリやな」
「そのようですわね」
さくらはこぶしを握りしめ、ふるふるさせた。
「……ケロちゃんと知世ちゃんの……いじわるッ!」