第三部 さくら、出陣


「でも……だいじょうぶかなあ……?」

 情けない声をさくらはだした。

「だいじょうぶですわ。さくらちゃん、こんなにかわいいんですもの。きっと、Xクロウカードたちは姿をあらわしますわ」

 知世が太鼓判をおす。

「て、ゆうか、知世ちゃん、この衣装……」

「とっても似合ってますわ!」

「そうゆう問題じゃなくてえ……」

 さくらは自分の姿をもう一度確認する。

 薄い生地のフレアミニは白地に青の水玉。セーラー服っぽい襟をもつブラウスはたぶん最高級のシルクで、やはり白。ソックスははかずに赤いパンプスで足元をかため、帽子はストローハットでピンクのリボンがついている。

「夏の少女をイメージしてみましたの」

「これ、透けてるよお」

「夏ですもの」

「スカートが短すぎて、パンツがすぐに見えちゃう」

「殿方が喜びますわ」

「パンツがちっちゃくて、食い込むのは?」

「そーゆーご趣味の方向けの演出です」

「どうしてパンツに霧吹きとかするのぉ」

「撮影上のテクニックですわ。ほら、パンティの生地も極薄で、霧吹きのおかげで肌の色も透けていますのよ。それが、ワレメに食い込んで、とってもキュート」

 知世はビデオをまわしている。レンズがスカートの中を覗きこんでいる。

「やあん、知世ちゃん、のぞきこまないでぇ」

「動くとよけい食い込みますわよ」

「ほええっ」

 カメラから逃げようとする動きだけでスカートがめくれ、ヒップがあらわになってしまう。パンティはほとんどヒモ状になっていて、おしりの山は完全に露出している。

「ところで、さくらちゃんはこんな時間に出歩いても大丈夫ですの?」

「うん、今日はお父さんは学会があるって話だし、お兄ちゃんもバイトで遅くなるから」

「よかったですわ。心置きなくXクロウカード退治ができますわね――あらっ」

 知世がビデオカメラの液晶表示部分をチェックする。

「いけませんわ。テープ切れ。ちょっとコンビニで買ってきますから」

「ええっ、わたしも行くよ」

 一人にされたら不安でしょうがない。

 知世はそんなさくらを振りかえって、くすっと笑う。

「かまいませんけれど、その格好で?」

「ほえっ」

 さくらはあわててスカートを手でおさえる。これでは人前には出られない。

「早く、もどってきてよお、知世ちゃん」

「当然ですわ」

 知世がてこてこ小走りで去っていく。

「もお……」

「気ィぬいたらあかんで、さくら。敵はいつ出てくるかしらへんからな」

 ケルベロスが空中でしたり顔で言う。

「そうだね」

 と言いかけた時だ。さくらは突然背後から声をかけられた。

「さくらさんじゃないですか」

「おまえ、なにやってんだ」

「おとーさん! おにいちゃんも!?」

 振りかえりながら、ケルベロスを背後に隠す。

(ケロちゃん、この中へ入って)

 腰のうしろでハンドバックのくちをひらき、むりやりそこにケルベロスを押しこむ。

(さ、さくら、乱暴や、乱暴やっちゅうに)

 モゴモゴと抗議をおこなうケルベロスをなんとかバッグのなかに収納し、ふたをしめる。

「ど、どうしたの? 今日は遅いんじゃなかったっけ」

「そうですよ。でも、さくらさんはどうしてこんなところに?」

 藤隆が訊く。さくらは返事につまる。

「おまえ、バカか? パンツみせびらかして、なにが楽しんだ?」

 桃矢が吐きすてるように言う。その視線はさくらの短いスカートにそそがれている。

 さくらはあわててすそを押さえた。

「こ、これはね、その、知世ちゃんが……」

「それって、かわいいよ。すごく似合ってる」

 新たな声がした。さくらは目をこらす。なんてこと。

「ゆ、雪兎さんっ……」

 いちばん見られたくない相手がでてきてしまった。さくらは穴があったら入りたい気分だった。

「でもねえ、父としては複雑な心境です。娘が成長するのはうれしいのですが、あまり扇情的なかっこうをされますと……」

 藤隆がため息をつく。

「兄貴の立場にしたってそうだぜ。妹とはいえ、下着をそうバンバン見せられるとな」

 桃矢が唇の端をゆがめる。

「そんなっ、今日はこんな格好してるけど、ふだんは……」

「へえ、ふだんからそんなにエッチな服を着てるんだ。いやらしいんだね、さくらちゃんって」

 雪兎がニッコリ笑った。

(そんなあ、誤解されちゃってるよお)

 さくらは動揺した。

「父としては嘆かわしいですよ、さくらさん」

「兄貴としても、むかつくな」

「その友人として、同情しますよ」

 藤隆と桃矢と雪兎がじりじりと近づいてくる。

(ヘンだ……)

 ようやくさくらは気づいた。いつものおとーさんじゃないし、おにいちゃんもちがう。それに、なにより雪兎さんはこんな嫌な表情はしないはずだ。

「おしおきが必要ですね」

「そうだ、キツイやつをな」

「じゃあ、友達のよしみで、ぼくも手伝います」

 男たちの額の前に、黒いカードが一枚ずつ浮かびあがる。

(あれが――)

 Xクロウカードなのか。では、奈穂子ちゃんたちを襲ったのは――

(そんな、ことって……)

 さくらは信じられず、ただかぶりを振った。

 藤隆が、桃矢が、雪兎が、さくらの身体に手をかけて、草むらに引きずり倒す。

 さくらは、悲鳴さえあげられない。その手から、ハンドバッグが飛んだ。

 ハンドバッグのふたがひらき、黄色い塊が地面を転がった。ケルベロスだ。

「あいたた、乱暴やな、さくら。いったいなにが……」

 腰をさすりながら、背中の羽根をはばたかせはじめたケルベロスは、途中で動きをとめた。

「な、なんやあ、いったい」

 さくらが、三人の男に組み伏せられている。

 地面に押さえつけられて、服をはぎとられている。

 もともと薄い生地だ。おもしろいように裂ける。

 ブラなんかしていないから、薄い裸の胸がすぐに露出する。

 下もだ。スカートはめくりあげられ、白い食い込みパンツがまるだしだ。

「あかん、助けな」

 ケルベロスが飛び込もうとした時だ。背後から白いたおやかな指がケルベロスをつまんだ。知世だ。

「と、知世やないか。さくらが、さくらが」

「わかっていますわ。さくらちゃんを襲っている人たちをよく見てください」

「な……んやと」

 ケルベロスはくぐもった声をだした。

「とーちゃんと、にいちゃん……それに……」

 知らない男だ。

「あれが雪兎さんですのよ」

 知世が教える。ケルベロスは、その少年に見覚えがあるような気がした。それも、ごくごく身近な存在――まさか、と空をみあげる。月はない。今夜は新月だ。なぜ、ケルベロスは自分が月をさがしたのかわからない。だが、その無意識の行動をいちいち検討しているひまはなかった。そのモノの存在を知世が冷静な声で指摘したからだ。

「お三方の頭のうえに浮かんでいるのがきっとXクロウカードですわ。あのカードに操られているのですね」

「せや。しかし、よりにもよって……」

「助けを呼ぶにしても――」

「ああ、さくらのとーちゃんやにいちゃんが強姦魔やと世間に知れたら、さくら自身が傷ついてまう……どないしたらええんや」

「困りましたわね……あら、いよいよパンティが脱がされますわ。ズームしなくては」

 ビデオだけはしっかり回している知世であった。

「いやあ……おとーさん、やめてえ……」

「だめです、父として、さくらさんのここがどうなっているのか、調べる義務があります」

 藤隆は、いやがるさくらの動きを封じながら、パンティをゆっくりとずりおろしていく。

「ほええっ、おとーさん、だめえっ!」

 まるで赤ちゃんのおしめを替える時のように大股びらきをさせられている。抵抗するものの、桃矢や雪兎がさくらを地面に押さえつけているので、どうにもできない。

「お、おとーさんっ」

 さくらは、自分の股間に藤隆の顔が寄せられている光景に呆然とした。間近で見られている。息が、あたる。

「ああ、さくらさん、いつのまにこんな育ってんですね……おとうさんは嬉しいですよ」

 藤隆の指がさくらの部分に当てられる。肌色が少し赤らんだだけの土手を左右にかきわけると、ピンク色の粘膜が顔をのぞかせた。

「あっ」

「ほうら、おとうさんが指で気持ちよくしてあげるよ」

 人差し指と薬指でさくらの秘部を左右に開き、中指で敏感な粘膜をさわりはじめる。

「ふええ!」

 情けない声をさくらはもらした。おしりをめちゃくちゃに振った。父親にそんなところをいじられるなんて、それを、雪兎さんに見られるなんて。

「そんなに暴れると、指が中に入っちゃいますよ。ほうら」

 ぐに。

「うっ」

 さくらは腰を高く掲げた状態で動きをとめた。

 自分のなかに異物が入ってきた感覚がある。それが、動く。

「ひうっ!」

「さくらさんのおまんこはちっちゃいですね。おとーさんの中指一本でキチキチですよ」

「あああ……」

 指が抜き差しされている。こすれる感じがすごい。

 いつのまにか、ちゅくちゅくと湿った音がしている。

「へえ、さくらちゃん、もう濡れるんだ」

 雪兎がおもしろそうに言う。さくらは羞恥のあまり、ぎゅっと目を閉じた。

「おい、さくら。ねてんじゃねえ」

 桃矢が乱暴な声をだす。

「これをなめろ」

 さくらが目をあけると、そこには、見たことのない奇妙な形の棒があった。なんと、桃矢の股間から生えている。それでは、これは――

(おにいちゃんの――オチンチン?)

 ボッキ、というのだろうか、すごく大きくなっている。それに、同年代の男の子たちのオチンチンとはまるで形がちがう――どうしてさくらがそんなことを知っているかについては秘密だ――

「フェラしろってんだよ。ほら」

 桃矢はむりやりさくらの口許にペニスの先端を押しつける。

(やだ……)

 唇をあけないように、さくらはがんばった。だが、ワレメをいじる藤隆の指は手加減なしだ。どうしても、声がでてしまう。

「はっ、あっ、んんーっ、んぐうっ」

 さくらの唇に、いきり立った桃矢の男根がねじこまれる。

(おにいちゃん、やめてよお……)

 さくらは涙目で訴えたが、桃矢は容赦しない。一気に喉まで突きたてる。

「むえっ」

「舌をつかえ、さくら」

 桃矢の眼は据わっている。さくらは恐怖を感じた。ぶっきらぼうだがやさしい、いつもの兄はどこにもいない。

 さくらはわからないなりに、舌を動かした。フランクフルトを口いっぱいにほおばったらこんな感じなのだろう。だが、噛み切るわけにはいかない。カードにあやつられているとはいえ、相手は兄なのだから。

「もっと激しくやれ。吸ったり、首を小刻みに振ったり、いろいろ工夫してみろ」

「んふう、んう」

 さくらは懸命に桃矢のペニスをしゃぶった。そうするしかなかった。

「さくらさんも観念したみたいですね。じゃあ、そろそろ」

 藤隆がベルトをカチャカチャと外しはじめる。

 さくらはそれを目で追った。まさか。

 おとーさんのオチンチンだ。ものすごく大きい。桃矢のそれに比べても、ひとまわり以上大きい。それに色もちがう。黒い。

「いつ見てもおじさんのってすごいなあ」

 雪兎がくすくす笑う。

「きみたちも、いまにこんなふうになりますよ」

 藤隆が柔らかく答える。

「そろそろ雪兎くんも専門の場所を責めたいんじゃないですか? 体位を入れかえましょう。桃矢くんも、いいですね?」

「はい」

「おう」

 さくらは、うつぶせにさせられた。身体の下に、藤隆がいる。藤隆のおなかのうえにまたがるような格好だ。

 口には、桃矢のペニスが埋まったままだ。そして、おしりのほうに、雪兎がまわりこむ。

(いやあ……どうなっちゃうのぉ!?)

「さあ、いよいよですよ。さくらさん」

 藤隆が言い、下からさくらの秘部を確認するようにさわる。

 黒い、大きなものが下からさくらのワレメに当たる。

「桃矢くん、念のために口からは抜いておいたほうがいいですよ。さくらさんが歯をくいしばるといけませんからね」

「わかったよ、とうさん」

 桃矢が不承不承、男根をぬく。

 さくらは大きく息をすった。

「いきますよ、さくらさん」

「ちょっ、ちょっと、おとーさん、待って、待って、ああっ!」

 さくらはのけぞった。強くて熱いものが、さくらの身体に侵入しようとしている!

つづく