うたかたの天使たち 外伝

美耶子のドキドキ ドラマ撮影!

 

3.撮影後――夜

 夜も更けた。ディレクターを含めたスタッフは徹夜で作業を続けるそうだが、役者たちはいったん解散となる。

 おれと美耶子は撮影所の宿泊施設に泊めてもらうことになっていた。明日も朝から撮影を始め、夜のオンエアに間に合わせなければならない。移動の時間も惜しい、というわけだった。

 宿泊施設といっても要は楽屋で、布団を敷きのべただけだった。

 美耶子はおれとの外泊が目当てでこの泊り込み撮影の話を受けたはずなのだが、いざ布団の上でえっちぃことをしようとしたとたん、「ごめん、疲れてるから」と倦怠期のオットのような断りを入れてきた。

 まあな。いくら宵っ張りの美耶子といえど、極度の緊張が強いられるドラマ撮影に一日没入していたのだから、その疲れは尋常じゃないだろう。

「わかった、眠っているあいだにイタズラしとくから」

「変態」

 それ以上突っ込む元気はなかったようで、美耶子は沈み込むように寝入ってしまった。

 寝顔だけはほんとうに無邪気で愛らしい。

 こいつが女優になってしまったら、この笑顔や声にだまされる男も出てくるんだろうな。ファンなんかもついちゃったりして。

 そんなことありえない、とずっと思っていたが、出演ドラマの放送開始が明日――いやもう今日か――に迫っているのだ。

 平凡な小学生・宇多方美耶子は芸能界デビューを果たすことになる。

 不思議なもんで、そうなると、なんだか悔しいような残念なような気がしてくる。

 おれや家族にだけ見せていた表情やふるまいが、電波を通じて、いろいろなやつらのもとに届く。

 独占したかったのに。

 おれだけのもののはずだったのに。

「そっか……裸とかも、もう撮られちゃったんだな」

 キスシーンや、もしかしたら裸のカラミだって、女優を続けるうちには出てくる話だ。今はもちろん早すぎるが、美耶子が生涯の仕事として女優を選んだのだとしたら、そういう日は必ずくる。

「おれしか知らない美耶子は……いなくなっちまうんだな」

 そう思うと無性に悲しくなってきた。

 女優やタレントとつきあったり結婚したりしている男は、みんなこんなもどかしさを感じているのだろうか。あるいは――自分も同じようなことをしたりして……いるのだろうか。

 おれは――どうなっていくんだろう。

 と。

 ドアがノックされた。なんだ? こんな時間に。

 

「よかった、まだ起きてたんですねー」

「静かになっちゃってたから、もうお休みなのかなぁとか」

 訪問者はなんと長篠ますみと上枝アヤだ。しかもパジャマとネグリジェをそれぞれ着ている。

「わたしたち相部屋なんですけど、寝付けなくってー」

「で、ちょっとお話しませんかっていうお誘いとか」

「ごめん、もう美耶子寝ちゃってるから」

 おれは部屋の中にちらっと目をやって、それから二人にわびた。だが。

「美耶子ちゃんは未成年だから飲みには誘いませんよー」

「そんなことしたらあたしたちもタイーホ、とか」

 アイドルたちはにこにこ笑っている。

 まさか、おれが目当て?

 そういや、昼飯のとき、かなり盛り上がった感はあった。たしかにそのとき、酒の話もしたなあ。

 長篠ますみも上枝アヤも20歳になっているので、法的には問題ないのだが、マスコミやファンの目が厳しいから外に飲みに行くことができない、という愚痴があって、「だったら、うちに飲みにくればどうです?」的な話をしていたのだ。

「逆に、おにいさんを飲みにお誘いしちゃおうと話がまとまりましてー」

「これ断ったら、かなりもったいない感じですよ、とか」

 確かにそうだな。ふだん寝る時間よりはまだずいぶん早いし、せっかくだ。

「じゃあ、行きます」

 長篠ますみと上枝アヤの部屋は、おれと美耶子の部屋とほとんど同じ広さと設備で、畳の上にふとんが敷きのべてあるところまで同じだった。

「あれ? マネージャーさんたちは?」

「いないですよ、タレントをほっておいて、ひどいですよねー」

「……たぶん銀座方面とか」

 ああ、なるほど。飲みに行ったわけか。それに二人のマネージャーは男性だったから、同じ部屋に泊まるというわけにもいかないのだろう。

「じゃー、乾杯ー」

「お近づきのしるし、とか」

「あ、どもども」

 彼女たちが買い込んだらしい缶ビールと酎ハイで、乾杯をした。

 みんな寝巻き姿でふとんの上でひざをくずしている。なんというか、懐かしい、学生時代の雰囲気だ。でも、こんな感動的にかわいい女の子たちのパジャマパーティに参加できるなんて、おれはきっとこの瞬間、世界でもモーストラッキィエストパースンだろう。略してMLPだ。

 ますみとアヤは、自分たちの出演作――ここ最近の話題作がズラリとそろっている――についてのよもやま話だとか、今回のスタッフやキャストについての噂話をいろいろ聞かせてくれた。

 たとえば、ディレクターは、つい最近までアシスタントディレクターをしていた無名の男で、窪塚によって大抜擢されたのだという。

「もともとは桃山園さんの下でやってた人らしいんですけど−、桃山園さんがディレクターおろされたから繰り上がったんですってー」

 桃山園……って、あのエロおやじか。

「あの人、セクハラすごくて、女の子にはかなり不評、とか」

「そうそう。演技指導にかこつけて、すぐ身体にさわってくるし」

「息ふきかけてくるとか」

「うわさあるよねー、元ムービングのかすみちゃんとか、小石川涼子ちゃんとかとつきあってるって――マジでーって感じだけど」

 ……まったくだ。

「でも、なんだかんだで現場にいるよねー」

「いろいろやってる……メイクとか、カメラとか」

 そうなのか? 気づかなかったが……あれ? ちょっとフラフラするな。もう酒が回ってきたのか?

「現場仕切ってるよねー、脚本にも関わってるって話だし」

「路線変更とか」

「まあ、思い切ったことしなくちゃ視聴率とれないもんねー」

「わたしたちも、イメチェンとか」

 なんの話だ? よくわからない。頭がボーッとしてきた。

「おにいさんは、美耶子ちゃんと仲いいですよねー」

 ますみがアルコールでちょっと頬を染めつつ水を向けてくる。

 そうかな、会話の八割はケンカだがな。

「ちょっと仲良すぎというか、あやしい感じ……」

 アヤも三本目のビールをあけながら、にじりよってくる。

「もしかして禁断の関係……とか?」

 いや、もともときょうだいじゃないし。

 別に隠すべきことでもなく、ごまかす必要もない。

「じゃ、じゃあ、やっぱりつきあってるんだ?」

「犯罪者とかー、とかー」

 とかーってなんだよ。それだと会話が広がらないだろうが。いいかげん限界悟れよ、その語尾。

 だいたい、下宿先のうちの女の子に付き添うのってそんなにへんか?

「いやーだって、美耶子ちゃんが」

「おにいちゃん好き好き光線だしまくりとか」

 撮影の合間に会話をする際の美耶子の話題がおれのことばかりなんだそうだ。ほめてないらしいが。というか、口を極めてののしってるそうだが。

「エッチでおばかでニブチンでところかまわずおならをしちゃう……」

「でも、美耶子のことをいつも見てくれていて、すべてをさらけだせるヒトなの……とか」

 そんな恥ずかしいことをあいつめぬけぬけと。

「やーまさか小学生の女子と恋バナで盛り上がりゅとは」

 ますみ、ろれつろれつ。

「あたしたちが独り身なのを知っての狼藉くわーとか」

 アヤ、目つきがやばいぞ。

「だから、ちょっと美耶子ちゃんの愛しのおにいちゃんをわけてもらおうかと思って」

「たまにはおとなもいいですよぉ、とか」

 ますみとアヤの肢体があやしくうねり、白い肌の露出面積が増えていく。

 え、ちょっと待って、待って。長篠ますみと上枝アヤだよな、このヒトたち。

 濡れ場はおろか、キスシーンひとつで話題になる清純派だったよね。プリンターとかお菓子のCM出てるひとたちだよね。

 なんでオッパイだしてるノー?

 ああくそ、なにがなんだかわかんないけど、出されたオッパイはモミモミしなければ、バチがあたる。

 長篠ますみのオッパイと上枝アヤのオッパイ、どっちがどっちだとか、もうよくわからないまま、おれはもみたおした。

 いつのまにか、おれはふとんの上に寝っ転がり、ますみとアヤのご奉仕を受けていた。

 禁断のダブルフェラ。おあああ、これはすごい。すごいぞ。

 テレビでおなじみのますみちゃんとアヤちゃんがおれのチンポをペロペロしているのだ。

 全員すっぱだか。うわ、ふたりとも肌きれい。部屋の電気はつけっぱなしだから、すみずみまでよく見える。

 ますみちゃんがおれの顔をまたぐ。おしりの穴まで鑑賞可能。アソコはきれいに手入れされてる。ひろげると、もう本気汁がとろとろと……

 もちろん味わわせてもらう。これがトップアイドルの味か。

 と思っているうちに、アヤちゃんがおれのチンポをアソコに――入れちゃったよ、いいのか?

 たしか、CM好感度トップとかだよな? よくわかんないけど。でも、アソコの感度もすばらしいようで。

「ああっ……! きもちいいっ……!」

 アヤがおれの上で腰をくねらせる。すごいうまいよ。きゅっきゅって、絞ってくるし。

「次はますみにもしてね?」

 おれの顔にまんこをこすりつけながら、長篠ますみさんがおねだりする。もちろん、入れさせていただきますが……アヤさんっ、激しすぎですよっ、出ちゃいますよ……っ!

「中に……っ! いいから、出してっ!」

 そんな……まさに予想外すぎで……上枝アヤに中出しなんかしたら、おとうさんにしかられるんじゃ……っ! ううっ!

「はぅっ……! 出てる……おにいさんの精子……とか」

「つぎ、わたしわたし」

 ますみがアヤを突き飛ばして、おれのペニスをほおばる。

「はやく大きくしてくださいよー」

 ねっちり、じゅっぽり、ますみのフェラテクはすごくて、おれはたちまちリバイバルする。

「ナマ入れは初めてかもー」

 言いつつ、ぬにゅっ、と入れてしまう。くはっ! こりゃまたいい具合だこと!

「な……なんで……こんな……」

 いまさらだとは思いつつ、おれは声をあげる。

「なんでっ……おにいさんって……上げチンなんでしょ? あっあっ……」

 腰を前後に振りたくりながらますみちゃんが言う。

「そうそう、美耶子ちゃんが一気にチャンスをつかんだのも……おにいさんのコレのおかげとか……ちゅば」

 はうっ、アヤちゃん、タマ袋すわないで!

 そんなことしなくったって、あなたたちはスターでしょうが〜!?

「芸能界は変化が激しいの。昨日までの人気なんて、なんの保証にもならないの」

「わたしたち全員、賭けているの、このドラマに……とか」

 それと、おれとセックスすることに何の関係が……!?

「んっ、奥に当たって……い、いきそう……」

 ますみちゃんがおれにおおいかぶさって、おしりを上下させる。結合部が楽屋の鏡に映って、丸見え。

 おれも、出ちまいそう……あぅっ!

「いくっ! いくぅ! あああーっ!」

 ますみちゃんがおっぱいぷるんぷるんさせながら達し、おれは彼女の中で二発目の射精をしてしまったのだった。

 それからは、もうくんずほぐれつで……眠りに落ちたのがいつだったのかもよくわからない。

 疲れ果てて折り重なるように寝入ったような気がする。

 気がつくとすでに朝で――ふとんはもう片づけられていた。むろん、ますみもアヤもおらず、荷物もない。がらんどうの楽屋に一人残されていた。

 それにしても、記憶が途中から曖昧模糊としている。なぜあんなにも急に「その気」になってしまったのか。

 美耶子に操をたてるほど殊勝なおれではないが、美耶子の初仕事の現場でほかの女とちちくりあうつもりなんかなかった。

 あやしい雰囲気になったとしても、ギャグでごまかして、逃げることもできたのだ。

 時計を見るともう昼に近い。まいった。これは美耶子のやつ大激怒してるぞ。

つづく