うたかたの天使たち 外伝
美耶子のお仕事シリーズ Part7
「男優のおしごと」
PART 1
いきなり!? 美耶子とホンバン!(後編)
5
「はーい、じゃ、美耶子さん、シャワーはいりまーす」
ADが休憩入りを告げて、メイク係の女性がバスローブを美耶子に着せる。マネージャーらしい男も側に行ってなにかしら声をかけている。あっ、頭
をナデナデした。美耶子がネコみたいな笑顔になった。あれが素の宇多方美耶子なのだろうな。
その時、偶然だろうか、美耶子とおれの目が合った。不思議そうに少し首をかしげる。そうだろう。濡れ場の撮影は部外者立ち入り禁止だ。スタッフ
も気心の知れた者に限られる。桃山園組は特にそうだと聞く。おれを現場に入れてくれたADは忙しく立ち働いているようで、あいにく近くにはいな
い。
美耶子は興味深そうにおれを眺めて、マネージャーとおぼしき男性――かなり若い男だ――に何かささやいた。なんだろう。怒ってはいないようだ
が。
もちろん、通行人Aであるおれのような下っ端役者と主演女優の宇多方美耶子に面識や接点があるわけもない。
美耶子はそれ以上おれには注意を向けず、マネージャー風の男と手をつないでスタジオを出て行った。その後ろ姿だけだと、引率の先生に手を引かれ
ている小学生にしか見えなかった。
と、肩を叩かれた。
振り返ると知り合いのADだった。
「どうだった、いっちゃん」
「ああ、どうも……すごい迫力だったな。リハであれかよ」
正直な感想だった。これまで、このADとは酒の席などで子役の演技論を戦わせたことがあって、その際に『いや、宇多方美耶子は別格だから、すご
いから』とこのADは主張していたのだ。それに対しておれはといえば、子役なんて、とせせら笑っていたのだが――
「だろ? いっちゃんならわかってくれると思った。いやー、人によってはさ、子供にAVまがいのことをさせてるだけだろって批判するだけだから
な。そのくせ、子役の演技にチンポをギンギンにさせてるんだ。教育関係者とか評論家とかな」
まあ、AVとやってることが変わらないという意見にはうなずかざるを得ないが、だが、セックスだって重要な芸術のテーマであって、それを扱った
小説や映画、演劇には数え切れないほど名作がある。少なくとも、おれは濡れ場を低いものとは見ない。自分も役者として、そういった仕事があれば必
死にやってきた。もっとも、子供相手というのは、どうしても親目線になってしまい難しいのだが。
「でも、なんでおれを現場に入れてくれたんだ? 子供相手の濡れ場はできないってことは言ってあるだろ?」
ADは肩をすくめた。
「さあ? おれだってわからんさ。お姫さまの指名だったからな」
「お姫さま? 指名? いったいなんのことだ?」
言いつつ、おれは、さっき美耶子と目が合ったことを思いだした。いやいやいや。美耶子が何らかの理由でおれのことを知っていて、現場を見学する
ように仕向けた――なんてことがあるわけがない。
「なあ、それって――」
「あ、わりい。この後、濡れ場の撮影でな。いそがしーんよ。いっちゃん、今日は時間あるだろ? よかったら、最後まで見ていってよ。終わったらメ
シいこうぜ、おごるから」
軽いノリでいなされた。正直、食事の誘いは魅力的だ。「通行人A」のギャラなんてお子供の小遣いレベルだ。食うや食わずの生活をしている身とし
てはタダ飯ほどありがたいものはない。
まあ、美耶子の演技にはかなり感銘を受けたし、あの男優にしても、間の悪さはあったとしても、少女の肉体への執着といったものはよく出ていた、
と思う。脚本レベルでベストかと言われると首をかしげるところはあるが――ヒロインが処女を捧げる相手として単なるロリコン援交おやじでは格が足
りなくはないだろうか――と思わなくもない。まあ、だが、それも含めて作品だからな。
本番の撮影のためにてきぱきとセットが整えられていく。ベッドのシーツは取り替えられ、小道具が設置される。おそらくは美耶子が脱ぎ散らかし
た、という設定なのだろう、子供ものの服や靴下が配置される。適当にまくのではなく、もちろん、美耶子の行動に照らし合わせて不自然ではないよう
に置かれていくのだ。
そして、時間が訪れた。
「美耶子さん入りまーす!」
再び登場だ。シャワーを浴び、おそらくは膣内も洗浄して、全身さっぱりとしたにちがいない。
今度は本番設定のため、バスローブではなく下着姿だ。子供っぽさを強調するためか、キャラクター入りのショーツにおへそが見える長さのタンク
トップ。小学四年生、十歳の少女であることがそれだけで伝わってきて、このシチュエーションが――ラブホテルの一室であることが――ひどく淫靡に
感じらっれる。
また目が合った。美耶子は今度ははっきりと微笑んで――ネコのような素の笑顔ではなく、女優としての抑制のきいた笑顔で――小さく手を振ってく
れた。「あ、さっきの人だ、やっほー」みたいな感じか。
もちろんおれは手を振り返すことなく、ほほえみもせず、部外者ですがスミマセン、の意志をこめて目礼した。美耶子は特に気にしたふうもなく、メ
イク係に髪や化粧の状態を確認してもらっていた。
しかし、そこで問題が発生した。
「なんですって!? もうできないぃ?」
桃山園の声。スタジオ全体に響くような怒声だ。
「いや……できます……できますけど……たぶんもう精液出ないです……」
消え入りそうな声で答えたのはさっきの男優だ。シャワーを浴びてバスローブ姿だが、リハ前とは打って変わってしょぼしょぼになっている。
スタジオの隅で、男優を取り囲むように、桃山園、知り合いのAD、そして美耶子のマネージャー風の男が、強めの声で言い合いをしているようだ。
こういった雰囲気には慣れっこなのか、他のスタッフの動きは変わらない。粛々と撮影準備を続けている。美耶子も椅子に腰かけて、メイクの女性に
髪をくしけずってもらっている。平気なものだ。
「あんたねえ、若いんだから、出ないってこたないでしょ?」
桃山園が男優を責め立てる。
「さっき、ものすごい量でちゃって、キンタマ軽くなった感じして――美耶子ちゃん相手だったら絶対立ちますけど、精液は――」
男優の声はいかにも自信なさそうだ。
「AD! あんた出演者の射精管理くらいできないの? オナ禁させてたんでしょ」
桃山園の怒声は今度はADに降りかかった。
「いや、マジで、そう言いましたよ――言ったよね、ねえ」
しどろもどろなADの声。
「すみません……美耶子ちゃんとの撮影かと思ったら、もうガマンできなくて、昨夜――でも、ほんとなら大丈夫なんです、美耶子ちゃんネタに一日五
回くらいオナニーしてもドバドバ出るんで」
男優の声はさらにしどろもどろだ。
「だったら、やりなさいよ! 第一話の大事なシーンなのよ! 処女喪失なのよ? ちゃんと特効で赤いのが中出し精液に混ざるようにしてるのよ?
それがうっすいうっすい水みたいな精液で映えると思ってんの?」
桃山園の怒りはとどまるところを知らない。
「あーっもういいわ! 代役! 代役! 大学生! あんたやんなさいよ!」
桃山園に指名されたのは、マネージャー風の男だった。学生だったのか、まだ。
大学生の声は聞こえなかったが、どうやら、今日は別のスタンドの仕事が入ってて、駄目なようだ。契約社会だからな。スタンドの仕事が入っていた
ら、勝手な射精はできない。精液の量や質も演出プランのうちだ。いま桃山園がキレているのもそれが理由だ。
「あー、じゃっ、AD! あんたは? あんたも美耶子とは何回もヤッてるでしょ?」
へえ、そうなのか……意外だな。あのADは美耶子を役者として崇拝している感じだったが――むしろ、濡れ場で絡んだ経験があったからこそあそこ
まで心服しているのかもしれない。
「いやぁ、こんなことになるとは思わなかったんで……昨日ギャルナンパしてホテルに行っちゃってまして……」
「あんたアホ!? 現場に雑菌持ち込む気!? マジ殺すわよ!」
桃山園の怒りがヒートアップする。ボカボカ音がするのは持っていたメガホンでADの頭をどついているからだ。
そういえば聞いたことがある。子役と絡む演技をする役者は厳重な性病チェックや健康診断を義務づけられると。プライベートな性行為にもさまざま
な制約が課せられるという話もある。
子供とセックスすることを仕事にしている連中のほうが、下半身の衛生度や倫理度が高いというのは皮肉なものだ。おれのように女房に逃げられ、女
を買うカネもないような底辺の人間より、上等かもしれない――
「もうしかたない! あたしがヤルわ!」
結論が出たようだ。桃山園総監督自ら出馬か。なにしろ業界で「最もたくさん少女とセックスした男」と呼ばれる男だ。ギネスブックに載るかもしれ
ないという話さえある。
「ももちー、それムリだと思うよー」
ひまなのかスマホをいじりながら美耶子が声をあげた。
「今日、台本あわせ一緒にしたときに美耶子とシタでしょー。三発目のときはもう、水多めのカルピスみたいだったじゃん」
「そ、そうだったわーっ! 脚本チェックしてたらムラムラして、つい……」
鈍い音がした、どうやらマネージャー風の大学生とやらが桃山園をグーで殴ったらしい。
協定違反だとか、撮影をともなわない行為は違法だとか、おれだって我慢してるのに、とかいろいろ聞こえてきたような気がする。
「……と、ともかく、たっぷり出せて、今回の役に見合う男優を手配しなきゃ。今日このシーンを撮らないと放映に間に合わなくなっちゃう!」
「い、今からですか!? さすがにそれは――」
ADが困り果てた声を出し、それからこっちを見た。たしかにグギギギと首が回ってこっちを見た。
「――なんとかなりそうです!」
6
「だから、それはできないと言ったろ」
おれは、手を合わせてくるADから目を背けた。
「そこをなんとか! いっちゃん! いっちゃんさま! なんでも言うこときくから!」
ADも必死になるのはわかる。役者の管理はADの仕事でもある。テンパリやすい役者の性格を見抜けず、リハーサルでの本番行為を見過ごしたのも
彼のミスだ。
それでも、やはりできないものはできない。宇多方美耶子はおれの娘よりひとつ上だが、たぶん学年は同じだ。娘の同級生と濡れ場を演じることはで
きない。
「もう帰るよ。誘ってくれたのに、悪いな」
このADとのつきあいもこれで終わるかもしれない。通行人Aレベルとはいえ、仕事を回してくれる大切な友人だったが。おれの役者人生もいよいよ
終わりかもしれない。
おれはセットに背を向けて、歩きかけた。
その行く手に、小さな人影がいた。
腕組みをして、難しい顔をしている――女優――宇多方美耶子だ。
まるで通せんぼしているようじゃないか。
「おじさま――永瀬のおじさま、お逃げになりますの?」
挑戦的な物言いだ。
「逃げる? おれが――?」
反射的にムッとした感情が、つい漏れてしまう。
「そうですわ。おじさまは役者でしょ? オファーがあったら、その役をモノするのが役者ではなくて?」
ツンとして、それでいて艶やかに、美耶子はおれに言葉を投げつけてきた。
これはどんなキャラだ? 女王さまキャラ? これも演技なのだろうが――
「悪いが、おれにはロリコンの役なんてできないな。おれにはあんたくらいの娘がいてね――あんたと濡れ場なんてムリだ」
「えっ!? 本当にお父さんですの?」
美耶子は目を丸くして(ほんとうに驚いているかどうかわかったものじゃないが)おれの顔を見直した。しげしげと、舐めまわすように――
それから、ふふ、と微笑む。おいおい、ほんとうにお姫さまっぽい、偉そうな笑い方だぞ。これが演技ならたいしたものだ。
「ももちー! ちょっと良いかしら!?」
少し離れた場所にいる桃山園に美耶子はお姫様モードで声をかける。
「はっ、はいぃ? な、なんでございましょうか、美耶子さま?」
このモードには桃山園も不慣れなのか、素っ頓狂な声をあげる。ついでに敬語にもなっている。
「台本の読み合わせをしたとき、おじさんのキャラクター、ふたつ案があったでしょう?」
美耶子はおれから視線を外さず、挑みかかるように言葉を続ける。
「A案がリハでやったやつ――ロリコンおじさんのパターン。正直イマイチだと思ってた……」
だが、少女大好き男優を起用するなら正解だ。リハで失敗したものの、あの美耶子の肉体への執着は凄味さえあった。
「B案は――美耶子と同い年の女の子がいて――その子と離ればなれになっちゃったお父さん――だったわね?」
な、んだと?
おれの視覚がクラっとした。
「そうよぉ、もともとそっちの案で行くつもりでキャスティングしてたけど、間に合わなかったから、第一話の援交おじさんは一話っきりの役にしたの
よね。B案だったら、主要キャラでお話にからむから、レギュラーにしてたと思うけど」
脳天気な桃山園の声。
「B案の援交おじさんはね、離婚しちゃって、可愛がってた娘さんに会えなくなって、やけになったのもあって、美耶子の誘いにのっちゃうんだけど、
葛藤があるのよねー、父として、男として。それをぶっちぎって美耶子を抱いて、そこからのめりこんでいくの。難しい役どころよねー。いないわ、正
直、そんなのができる役者」
だから、精液タンクって評判のあんたを起用してやったのにキイイイイイ、とかいう甲高い声と、ぐええええという首を絞められていそうな声が聞こ
えてきたが、正直そのあたりはもうどうでもよくなっていた。
どういうことなのだ、これは?
「この役はどう? 演じてみませんか? 永瀬のおじさま?」
美耶子がおれを見据える。挑んできている――煽ってきている――誘ってきている――子供のくせに。
おれのポケットで携帯が震える。
「LINEじゃありませんこと?」
美耶子が言う。電話なら出るつもりはなかったが、LINEだと? 仕事関係は電話かメールにしている。LINEなんてものはおれには似合わな
い。そう思っていたが、ただ一人だけ、IDを交換した相手がいる。
「香利奈!?」
離れて暮らす娘――連絡さえできない娘――LINEだけは、「ママにはないしょ」として知らせてくれた――
スマホを取り出し、画面を確認すると、送信者は――
『美耶子だよー。小学四年生、十歳、処女です(はあと) 優しいパパみたいなおじさま、どうか美耶子と遊んでね(はあと×3)』
スマホの画面をつきつけるようにして、宇多方美耶子が笑っている。
おれは、このドラマの脚本に――美耶子が改変したバージョンの脚本に――どうやら巻き込まれてしまったようだ。
これが、トップ子役、宇多方美耶子か。
作品の危機を救うために、現場の空気を支配し、さらには脚本のレベルを上げながら、嵌まらない最後のピース(役者)を口説き落とす。
控えめに言ってバケモンだ。それがたった十歳というんだから、なおさらだ。
役者魂を揺さぶられずにはいられない。やってやろうじゃないか。
「脚本をくれ。B案ってのを――」
おれは答えていた。
「あっ、永瀬のおじさま、やってくれる? やたー! 」
美耶子が表情を崩し、バンザイする。
「うれしー! これで撮影できるー!」
さっきまでのお姫さまキャラはどこ行った? まったく油断ならないガキだ。
くるんと回って、美耶子はうやうやしくお辞儀をする。お姫さまキャラが一瞬にして舞い戻る。
「おじさま、それでは素敵な撮影を――演じあいをいたしましょう――まあ、するのはエッチなんですけどね、あはっ」
7
「時間が無いから、もう一気に流れで撮っちゃうからね。リハなしのぶっつけよ」
もとの脚本だと、ホテルに入った美耶子と援交おじさんは、まずシャワーを浴びながらフェラで顔射、ベッドに移動して本番中出し、という形になっ
ていたが、ホテルに入り次第すぐにカラミが始まるというように変更された。先に撮った男優には申し訳ないが、シャワーシーンのOKテイクもボツに
なったわけだ。まあ、設定も役者も変わってしまったのだから仕方ない。
緊張感がものすごい。
スタッフもピリピリしている。濡れ場は一度撮り出すと止められない。一気呵成に撮りきらないと活きた絵にならない。それは殺陣に似ていると思
う。斬られ役としてならかなり場数を踏んでいるおれだ。うまくいった殺陣には必ず流れがあった。斬る者と斬られる者の間の呼吸が通う、流れが。
さらにいえば、いきなり男優が変わり、脚本にも手が入った。その男優にしても名もない大部屋俳優だ。上手くいく要素が何ひとつとしてない。
おれをさかんに口説いていたADにしてから、ずっと顔を青くしている。
「いっちゃん、頼むよ、まじで……おれのクビかかってるんで……」
「そんなこといわれてもなー、おれなんかハメられたくさいし。最初っからこのために呼ばれたっぽいし」
別にこのADに含むところはないが、まあなんとなく気にくわなかったのでちょっと虐めてみる。
「いやっいやいや、まじで、いっちゃんのこと、見学に連れてくれば? って言われただけだし、こんな展開になるなんて――」
「やっぱり宇多方美耶子か」
「いや! いやいやいや!」
この慌て振りは図星だろうな。もともとこのAD氏は悪人ではないし、むしろ、おれにとってはちょこちょこ仕事を紹介してくれる恩人であるとさえ
思っている。
「もういいよ、気にしなくていいよ。てゆうか、おれのこと売り込んでてくれたんだろ、ありがとな」
「はあ……マジよろしく、いっちゃん」
胸をなで下ろしながらAD氏は去っていく。安心したようだ。
ただ、わからない。なんでおれなんだ? それに、香利奈しか知らないはずのLINEのIDを美耶子が知っていた訳は?
いずれにせよ、この仕事をやり遂げてから、訊くしかないようだ。
切迫した空気の中で撮影が始まった。脚本B案っていうのはいちおう目を通したが、正直そのままではなんとも、という出来だった。そりゃあ、途中
で放棄されたもので、読み合わせもされていないレベルだ。ストーリーラインは頭に入れた上で、出たとこ勝負だ。もともとちょい役専門で、覚えな
きゃいけない長さのセリフなんて滅多にもらったことがない。
「はい、スタート! よろしくねえ、お二人さん」
桃山園がスタートさせる。
おれと美耶子は親子のように手をつないで部屋に入った。美耶子は学校の制服(名門小学校という設定だ)、おれは背広姿だ。おれのサイズに合う衣
装があるかちょっと心配だったが、問題なかった。その気になれば魚屋にもなれたが、設定にしたがって会社役員らしいダークスーツにした。
大きなベッドを見て、美耶子が固まる。おれの放つ緊張感がそうさせたのだ。
きっと美耶子のプランでは、明るく誘うパターンもあったはずだ。あっけらかんとLINEで男を誘い、軽い気持ちで処女を散らす、そんなパターン
も。
だが、おれは美耶子の手を強く握って、まるで拘束するように離さなかった。そのムードが美耶子に「罪悪感をともないながらここに来た」心情に醸
し出させたのだ。
「悪い子だ」
おれは言った。吐き捨てるように。
「こんなところまで、悪い大人と来るなんて――きみは悪い子だ」
「ご、ごめんさい――で、でも」
美耶子はおれの目を見て、悟ったようだ。聡いな。脚本ではここから、行為に入るまでのセリフのやりとりがある。さきほでのリハでもあった。他愛
ない会話だ。だが、そこの会話がここの芝居では一番大事なのだと、美耶子にも伝わったようだ。
「座りなさい、そこに」
美耶子を突き放すように、ベッドの方に押し出した。よろけながら、美耶子はベッドに身体を預けた。腰から下の力が抜けてしまったかのような――
「なぜ、あんなことをしたんだ? きみは自分がしたことをわかっているのか?」
美耶子の前に立ち、おれはおびえた少女を見下ろした。
「それは――」
「自分を大事にしろ、だとか、そういうことはおれは言わない」
「え?」
言わないの?とでも言いたげだな。言わねーよ。
「どうせ、おれが相手を名乗り出ずとも、他のだれかで間に合わせたんだろう。おまえの処女などその程度のものだ。どうせ誰かのものになる。それを
なしがしかのカネにかえたいならば、それはおまえの自由だ」
美耶子は思考が追いつかないのか、口をぱくぱくさせた。大人に謎論理でやりこめられるJSを演じているのもかもしれないが――どっちだろう?
「おまえの価値はなんだ、美耶子? 子供であることか? 幼くて、可愛らしくて、無害で、無益で、無能であることか? 大人の愛玩物であること
か? LINEで男を漁る行為じたい、そのすべてを肯定しているんだろう? 違うか?」
おれは札入れから万札をつかみ出してばらまいた。もちろん小道具で、本来ならコトが終わった後、美耶子の寝顔の横にカネを置くという演出だった
が、いかにも手続きっぽいと感じたので順番を変えてやった。
「ほうら、おまえの純潔とやらの対価はもう支払ってやったぞ。もうお前は目的を果たした。そうだろう? カネを拾って、とっととおうちに帰るんだ
な」
一気にやりこめてやった。美耶子の行動原理を否定してやった。次は美耶子のターンだ。
いっておくが、これらのセリフは100%アドリブというわけじゃない。脚本B案のラインにおおまかには沿っている。本当はもっと思いやりのあり
そうな、父親のような包容力を感じさせるセリフを吐き、そのままセックスするという流れだったが、それを裏返したのだ。この男は子供を憎悪し、同
時に恐れている。自分の子供をうまく愛せなかったトラウマがあるからだ。そんなやつに大人な包容力を使いこなせるはずがない。優しい言葉を吐きな
がら性欲を満たすなんて器用な真似はできない。
美耶子はおれをじっと見上げていた。その瞳には理解の色が浮かんでいた。
彼女は言った。
「美耶子はね、お父さんが欲しかったの――それだけなの。お父さんになってくれそうなひとなら、たぶん誰でもよかったんだと思う……だから、
ね?」
美耶子は制服の前ボタンを外し、スカートを脱いだ。
下着姿になる。
「美耶子をおじさんの娘に……してほしいの」
「ちょっと、待て、違う……おれは、きみにそういうことをさせたかったんじゃない」
おれはうろたえた。いきなり王手を打ち込まれたような気分だ。だが、このうろたえている感じは演技としても間違いじゃない。だが――
娘の顔が目の前に浮かんで――香利奈の顔が――
言いたくない。言えない。だがこれは仕事で――作り事で――でも、自分にしかできないことで――ああ――
「娘に……? いいだろう、じゃあ、まずはしゃぶってもらおうか」
8
脚本B案で美耶子を買った男――永瀬(どういうわけかおれと同じ名前をつけてやがった)は、娘と近親相姦をしていた挙句、妻から三行半をつきつ
けられ、娘とも会えなくなった。それ以来、LINEで知り合った小学生女児の「神」になっては、金品を与えていた。女児と肉体関係は持ったことは
なかった。それまでは。
そういう設定がありながら、ホテルに入ってスムーズにセックスを始めたら変だろう?
お互い凶器のような言葉を投げつけあい、その断絶を埋めるために行為に及ぶ、というほうが自然だ。事前の打ち合わせの時間はなかったが、美耶子
はうまくやってくれた。だが、少々うまくやりすぎたようだ。
リアルにおれのトラウマが励起してしまったのだ。いっておくが、おれは香利奈と近親相姦などしていない。いっしょにお風呂にはいることはあった
が、小さい時だけだ。
だが、娘と同年代の少女を相手にすることを改めて自覚してしまった。
つまり――
「勃たないわねえ」
桃山園があきれたように呟くのを感じた。
スタッフの失望感もだ。AD氏の顔はたぶん蒼白を超えているだろう。
はぷっ、ちゃぷ……れろ、れろ……
美耶子がおれのをくわえて舌を使っている。処女という設定から、最初はわざと拙くしていたようだが、おれのが大きくならないもので、テクニック
を使い始めていた。
亀頭のくびれを唇で締めつけ、鈴口を舌でたんねんにねぶったり、竿の裏筋を舐め上げたり、睾丸をくちにふくんで舌でマッサージしたり――風俗嬢
も真っ青のテクニックを駆使してくれた。
だが、半立ち以上にはどうしてもなってくれない。おれはロリコンではないが、刺激にはきちんと反応する。中折れしたことはかつて一度もない。そ
れが――
ちゅぽん、と美耶子がペニスから口を離す。いよいよ諦めたか――また、大口叩いておいてこれはない。
「ごめんね……美耶子、へたくそで……おじさんのこと気持ち良くさせてあげられない」
美耶子は芝居を続けている。
おれも最後まで応えないと――
「いや、いいんだ。おれこそすまない。きみにあんなことを言っておきながら――」
「おじさん、教えて……娘さんがどんなふうにやってたか――わたしに教えて?」
「なっ――」
落ち着け、美耶子は設定に沿って芝居を広げているだけだ。ドラマの中の永瀬は娘と近親相姦をしていた。おれじゃない。役名としての永瀬がだ。だ
から、永瀬を気持ち良くしたい美耶子が娘のことを訊くのは不自然じゃない。だが――
「ね、娘さんの名前は? わたしと同い年くらいなんでしょ?」
まずい。何か答えないと。演技勝負を挑んだのはこちらだ。アドリブを放り込んで美耶子の実力を試す真似もした。このまま押し切られるわけにはい
かない。おれは――
「香利奈……きみと同じ学年で、四年生だよ」
ああ、言ってしまった。香利奈の名前を。虚構の中に娘を放り込んでしまった。
「かりなちゃんだね? すっごく可愛い名前。きっと可愛い子だよね? たぶんわたしよりもずっと――」
「ああ、そうだ。香利奈は君よりずっと可愛い。君より小さくて肩も細くて――唇も――あっ」
美耶子がおれのペニスをふたたび口に含み、舌をからめてくる。
「はぷっ、かりなちゃんが、しゃぷっ、したみたいに、れろ……やってみるね……」
唾液を口腔いっぱいにためて、これまで以上に奥まで吸い込む。ばかな。
「ちがう……香利奈はそんなこと……」
本当の香利奈はおれのチンポをしゃぶったりはしていない。いっしょにお風呂に入ったとき、おれの股間にぶらさがっているものを羨ましがったこと
はある。「ねーねー、パパ、どうして香利奈にはおちんちんがないの?」と訊いてきて困らされたことはある。男と女の違いを教えるため、お風呂に一
緒に入ったとき、香利奈のワレメを開いたことが一度だけ。それはほんとうに一度だけだ。クリトリスが一人前に勃起していて、膣口が少し開いて処女
膜のようなものが見えて、慌ててやめたことがある。「ママには内緒な」「うん、ナイショナイショ」と指切りげんまんをして――だが、離婚の際のお
れの所業のひとつに「娘への性的虐待」が挙げられていて――。
「香利奈はもっとへたくそだったよ。すぐ、歯をあててしまって――」
「ほう? ほんはふうひ?」
美耶子が八重歯を当てて来る。痛い。だが、その痛みが記憶を呼び起こす。香利奈の笑顔。永久歯が生えてきて、前歯が抜けた後のファニーな笑顔。
その奥に赤い舌が蠢いて――ばかな。
香利奈の口腔――そこにおれはペニスを――たった一度も想像しなかったと言えるだろうか?
お風呂にいっしょに入るたび、香利奈のワレメやアヌスを見て、何も妄想しなかったと言えるだろうか?
一度だけだ――本当に一度だけだったはずだ、現実には。だが、想像の世界では――?
なんて、ことだ。
「おじさん……すごくなったよ。かりなちゃんのこと、思い出したんだね」
おれは屹立していた。赤黒い肉棒が少女の肉体を求めて、そそり立っていた。
9
現場の声なきざわめきを感じる。幾度か感じたことがある。
良い画が撮れているときの、奇妙な高揚感。
カメラマンも、音響も、照明も――今は仕事がないはずの様々なスタッフたちさえ――凝視する。息をひそめる。
それでいて、ざわざわする雰囲気。
いま、それがある。
おれは美耶子にしゃぶらせていた。
腰を動かして、喉奥を突く。
美耶子はそれを諾々と受け入れている。
ハリウッドの超一流俳優とも絡んだ日本のトップ子役だ。その宇多方美耶子が、名も無い大部屋俳優のチンポをしゃぶっている。
おれを上目遣いに見つめながら、おれの亀頭に舌をからめてくる。
精液がせり上がってくる。
まさか――おれが――
香利奈じゃない。美耶子は香利奈とは似ていない。でも、その舌や口腔の感触は、想像のなかの香利奈のそれと恐ろしいほど一致していた。
香利奈は九歳――美耶子は十歳だが小柄――ちょうど、口腔のサイズが同じだとでもいうのか……
いずれにせよ、小学生女児にフェラチオされる体験は――普通の人生を送っていれば味わうことはない。
おれは、もう普通じゃない――そうだろう、こんな体験、許されるはずがない。
娘ほどの年頃の少女にペニスを吸いたてられ――娘を思い出して勃起して――射精に至ろうとしている。
「おじさん……出して……いっぱい……」
ペニスから口をはなし――小さな手でしごき始める。
亀頭の敏感な箇所に指をからめ、巧みにこすりたてる。
「っ……うっ!」
思ったよりも早く導かれた。射精の瞬間が訪れる。
「おじさんっ!」
美耶子が舌を伸ばし、亀頭を覆う。
びゅっ! びゅびゅびゅ――びゅばっ!
弾丸さながらに精液が飛び出し、美耶子の顔を汚す。美耶子はそれに構わず、亀頭をほおばり、喉奥に後半の射精を受け止めた。
我ながら、たくさん出したと思う。
射精がおさまったとき、美耶子の口腔内はおれが放ったもので満たされていた。
「はむ……んっ、んっ……んん」
美耶子はそれを何とか飲み干したようだった。
「おじさんの精液……おいしかった……よ?」
顔中をぶりっぶりのゼリー状の精液で汚し――唇の端から精液のよだれたらしながら微笑む美耶子――その顔が香利奈と重なって――おれは理性を
失った。
「あっ!? やっ……むう……ん」
美耶子を押し倒し、唇を奪った。おれの味がする美耶子の口腔を、舌で、存分に嬲った。
「はっ……あ……れろ……れろ」
小さな舌を動かして答えてくる美耶子。その舌をまること吸い上げる。
ぢゅるるるるるぅっ!
娘と戯れにキスをした時に、いま舌を入れたらどんなだろう、と思わない父親がいるのか。
娘とお風呂に入ったとき、まったいらな胸がいつか膨らむ時を想像しない父親がいるのか。
娘のきよらな陰裂を見た時に、やはり女の形をしているのだな、と思わない父親がいるのか。
もちろん、みんな誰だって、娘に対してそんなことは思わない。娘はただただ愛おしいだけで、一ミリ秒だって欲情が涌くはずがない。
だから、小学生の娘と同じ年頃の少女に欲望を感じるはずがない――
――嘘だ。
高校生の娘を持つ父親は、女子高生の脱ぎたて下着に興奮しないのか?
中学生の娘を持つ父親は、女子中学生の膨らみかけの乳房に興奮しないのか?
それは、嘘なのだ。
おれは美耶子の肌を唇で味わった。すべすべで触るだけで心地良い、子供の肌だ。日々成長しているからこそ、細胞レベルで若い。生命力に満ちてい
る。
乳首が小さすぎて不安になるが、舌先でつつくときちんと反応する。
「あんっ! ひゃあっ! お、おっぱい……気持ちいい――」
掌を滑らせワレメを弄くる。無毛の小さなクレヴァス。そこはぴったり閉じているが、十分に濡れているので、指がつるんと飲み込まれる。
「はっ――あっ!」
さすがに処女の演技をする余裕もないのか。それとも、処女でも、ここまで濡れれば痛みは感じないのか――
はて――どこまでが演技なのだろう?
もう、わからない。
それでもギリギリ、カメラの位置はわきまえていた。クリトリスの包皮を剥き、深紅の真珠粒をあらわにすると、指で擦り、さらに舌で舐めあげる。
しっかり撮れたはずだ。地上波でも、子役のクリトリスはしっかり映す。挿入はさすがに見せないようにごまかすが、それは大人のペニスが映り込むか
らだ。クリ責めなら、大人――おれが映り込んでいても問題ない。
「あひぃっ!? そこっ! そこ、すごいよぅ、おじさんっ! じ、自分でいじるのと、全然ちがうよぉっ!?」
美耶子が、腰をひくっ、ひくっ、と振るわせる。膣口から愛液がこぼれ、クリも勃起して付け根を見せている。これがぜんぶテレビで流れるのだ。日
本だけで何千万人もの視聴者が「性的ではない子供の肉体のありふれた一部」を見ながら、平静を装うのだ。
さらに見せ場は続く。おれは美耶子の膣を広げる。十歳の少女の性器を開帳する。
処女膜をカメラに、視聴者に、見せつける――もちろん実際にはもう美耶子に処女膜など残っているはずもないが――そこはCGなどで加工すること
になる。
――はずだったが。
「美耶子……おまえ……処女膜……あるじゃないか……」
そこには濃いピンクの膜が――全体を覆うまでではないが――中央に穴を穿たれながらも――存在していた。
「ゆ、ゆび、自分での入れたことあるけど……それ以上はこわかったから……」
美耶子が小動物のように身体を震わせながら言う。
これはSFXの一種なのだろうが――リアルすぎる。
「おじさん……するの?」
「ああ……ここまで来たら、ちゃんと約束は守る」
LINEで処女の捨て先を探していたのが美耶子だ。それを援交少女の「神」であるおれが買った。
本来の芝居の流れにようやく――脱線はいろいろあったが――戻った。
おれは再び勃起したペニスをゆっくり美耶子の性器に近づけていく。
10
ここは見せ場だから、さまざまな角度からカメラが追ってくる。地上波では大人のペニスを映せないから、美耶子の表情やおれの背中越しのカットに
なる。ネット配信やビデオソフトの特典映像用には挿入シーンをしっかり映す。亀頭を美耶子の膣口に当て、じらすように擦りつける。
クリトリスと鈴口をキスさせる。カウパーと愛液がからんで、透明な糸を引く。
「お、おじさぁん……」
切なくなったのか、美耶子がおれの腕に縋ってくる。
「も……もう……がまんできないよ……してぇ……」
脚本上でも美耶子は処女ながら性的に開発済みで、自分から男のペニスを求めてもおかしくはない。だが、これは、宇多方美耶子自身が演技をこえて
セックスしたがっている、というのが本当のところだろう。
だが、美耶子のその部分は子供サイズで、亀頭を潜らせようとしても半分くらいのところで肉の隘路に阻まれる。
愛液でぬるんでいるのにもかかわらずだ。
「あっ……はぁっ」
痛みを感じているような美耶子の吐息。
どう見ても、処女膜を破られそうになっている少女にしか見えない。
「いいの……おじさん、いいの……美耶子の処女、奪ってぇ……」
毎日のように、撮影でいろいろな男優とセックスしているはずの宇多方美耶子が――つい先ほど、リハーサルでも男優一人を廃人になるまで吸い尽く
した宇多方美耶子が、処女を散らそうとしている。
おれは実際に処女を破るときのように、躊躇なく、陰茎を奥に進めた。
ビッという感触とともに、おれの生ペニスが美耶子の胎内に潜り込む。
あっけなく膣奥まで届いた。本当に十歳の子供サイズの膣なのだ。あらためて実感する。おれは娘と同学年――小学四年生の少女とセックスしている
のだ。
「ああああぅううううっ!」
美耶子がおれにしがみついてくる。喪失の痛みと快楽がないまぜになった激情に押し流されて――涙を流している。
結合部をカメラが接写する。
おれは陰茎を抜き差しする。美耶子の愛液――白濁した本気汁に、破瓜の血が混ざっている。これもSFXで血糊の袋をしこんであったのだろうが、
リアルだ。美耶子が子役として数限りなく本番をこなしてきていることを知っていてなお、少女の純潔が奪われた証に見えてしまう。
視聴者もそう信じるだろう。たとえ、過去に宇多方美耶子の濡れ場シーンを見たことがあったとしても――役柄ごとに世界を作り出せるのが宇多方美
耶子なのだ。
それにしても――美耶子の生膣は最高だった。腰の動きを止められない。あり得ない狭さ、強烈な締め付け――かと思えば柔らかなヒダが亀頭を舐め
しゃぶり、子宮口が吸いついてくる――錯覚かもしれないが――
小学生でもこんなに濡れるのか、そして精子を求めるかのように粘膜が蠢いてくるのか――
おれは容赦なく美耶子の子宮を突き上げた。
そのたびに美耶子は嗚咽混じりの苦鳴をあげる。
「うっ……ひぃっ……くぅっ」
だが、その声に徐々に甘い響きが混ざり始める。
「っあ……あっあっあっ……はぅぅ」
感じ始めているという演技だが、実際に美耶子が演技抜きにセックスを楽しんでいることがおれにはわかる。腰の動きが自ら刺激を求めるようにリズ
ムを刻みはじめていた。
そろそろか……
おれは美耶子と繋がったまま、その小さな身体を抱き上げる。
対面座位のかたちで、深く奥まで交わる。
「ああああっ! おじさん――奥に……っ」
もちろん、届いている。
おれのペニスの先端が子宮の入口をこじあけていく。
「あ……あぅ……あ……」
美耶子がかすれ声をあげる。ふつうの十歳なら経験するはずのないボルチオファック。
だが、美耶子ならばできるはずだ。
「うううっあっ! あっああああっ! おじさんのが、み、みやこの赤ちゃん部屋に……っ!」
「美耶子! いくぞ!」
おれは美耶子の子宮を強引に突き上げていた。
亀頭が子宮口に吸い付いて、ちゅっちゅ、ちゅっちゅとキスを続けている。
「あああっ! おくっ! ほんとのおくっ! そこだめぇ! おじさんっ、だめえぇ!」
対面座位の形から、美耶子の細い身体を持ち上げ、尻を掲げさせる。結合部がよく映るように。
肛門も大きく広げてやる。
お茶の間のテレビにこれが大写しになるのだ。子供の肛門がいやらしいはずがないからな。それは性器ですらないのだから。
結合部はさすがに地上波では画像処理されるが、ネットTVやビデオソフトではそれも解禁される。ただし、おとなのペニスは黒塗りになるが。それ
が有料ネットTVではすべてがオープンになるそうだ。
十歳の少女のボルチオアクメを数千万人が見ることになるのだ。
「うううっ! あああああああっ!」
美耶子の子宮口がおれを受け入れ、亀頭が巾着袋のような子宮内壁をこすりたてる。
「なっ! なあああああああっ!」
白目をむく美耶子。
悲鳴のような――悲鳴か。おれはすかさず美耶子の唇をふさぎ、舌をからめる。
「んんんっ! んのおおおおおおっ!」
首を小刻みに振ってのがれようとする美耶子をおれは逃がさず、あえてモノのように扱う。実物大の少女オナホールだ。
美耶子の尻肉をつかんで、上下に激しく揺する。おれのペニスが子宮内で暴れるように。
「んひーっ、むひぃぃいいい! もほおお、むひっむひぃいいい!」
美耶子の身体が痙攣する。断続的に子宮で絶頂を迎えているのだ。
じょぴっ、じょぴっ、と小便も漏らしている。
そろそろか、これ以上はいくら宇多方美耶子でも厳しかろう――
おれはフィニッシュへの動きに転換しようとした。すると、耳元で――
(だめ――最後はバックで)
美耶子がささやいた。おれにしか聞こえないように。白目をむいたアクメ顔をさらしながら――
これもまだ、演技のうちなのか――
おれは空恐ろしさを感じながら、美耶子をよつんばいにした。
バックから子供を犯す。
おれの十八センチのペニスが美耶子の膣と子宮を貫いて、奥まで串刺しにする。
両の掌で小さな桃尻を左右に割って、肛門もめいっぱい広げてやる。
カメラは結合部を接写し、飛び散る本気汁の水滴を画面に受けている。別のカメラは美耶子の顔をアップで撮り、引きのカメラは冷徹にベッド上で
セックスする中年男と少女を映しつづけている。
「あああああっ! あひっ! ひぅっ! お、おじさんっ……! 美耶子、もうだめ、だめっ! は、初めてのセックスでおまんこっ! おまんこいっ
ちゃうよぉおおおっ!」
美耶子のあえぎ声が切迫し、淫語がだだもれになる。
「おじさんのちんぽっ! きもちぃっ! きもちいいいいっ! おまんこ全部、とろけりゅよぉおおおおっ!」
おれも限界だ。ピストン運動を小刻みに速く、強く、子宮の中にペニスをたたきつける。
「出すぞ! 孕めっ! 美耶子っ! おれの子供を――妊娠しろっ!」
「はひっ! はひっ! にんしんすりゅっ! みやこ、十歳でママになりゅよぉおおおっ!」
少女の受精宣言におれのたがが外れ、生殖本能のスイッチが入る。
おれの睾丸が作り出した億単位の精子の固まりが尿道を駆けのぼり、爆発的な噴出を美耶子の子宮内壁にぶちあてる。
「おおおおっ!」
どびゅっ! どぅぱっ! びゅるびゅるびゅるっ!
小さな小さな子袋だ。生まれてから十年しか経過していない――まだ繁殖期が訪れていない生殖器官に、おれは激しく動き回る精虫をなみなみと注ぎ
込む。子宮が杯だとしたら、もう酒は満ちあふれて、こぼれおちている。
「あっ! あああっ! すごいっ! あつっ……いのが……お腹のなかで――弾けてるよぉっ!」
子宮に直に射精している。子宮壁に亀頭を押しつけて、粘膜に精液を直掛けしているのだ。おれの射精は小便並みに長い。たっぷり一分くらいかけて
出し切った。
美耶子は白目を剥いている。半失神状態だ。さしものトップ子役もイキすぎてしまったろうか。
ペニスを抜くと、膣口から大量の精液がこぼれだした。ひくん、美耶子の尻が動く。後から後から精液はあふれ続けた――
「カーットッ!」
桃山園がカメラを止める。
「よかったんじゃあーい? これでいきましょ」
その声に美耶子が反応し、むくっと上体を起こした。女性のADがすかさずタオルをかけてやる。
「はひー、死ぬかと思った……おじさん、はげしすぎだよぉ……でも、いいシーンになったみたいだよ」
にこっと笑いかけてくる。八重歯がのぞく。なんだ、この子。いきまくっていたのはやはり演技だったのか?
「ううん、すっごくよかったよ、何度か気絶しちゃった」
てへぺろ。
「美耶子ぉ、シャワーにいってねぇ――三十分後、学校の先生に犯されるシーンだから、準備よろ!」
桃山園が次のシーンのための指示出しをする。おいおい、この後も濡れ場だって……? しかも男優を替えて――ハードすぎるぞ。
しかし美耶子は屈託なく笑顔のままで立ち上がる。
「はーい! シャワーだ、シャワー!」
と。美耶子は、唖然としているおれを振り返る。
「じゃあね、香利奈ちゃんのお父さん。また撮影しようね! たぶんおじさん、レギュラーになるから、毎週会えるね!」
「お、おい――娘の名前をなんで……」
思わず問いかけたおれに美耶子は、にひっと子供っぽい笑みを浮かべて答えた。
「あれ? 知らなかった? 香里奈ちゃんとあたし、同じ小学校なんだよ? 帰りの会とかもいっしょだよ?」
エピローグ
そんなわけで、おれは「LINEで始まる恋だから」のレギュラーになってしまった。
第一回の放送の直後、かつてないくらいにおれのスマホは鳴りつづけ、メール着信が途切れることはなかった。その大半は祝福とやっかみの連絡で、
残りは仕事のオファーだった。
人気子役・宇多方美耶子の相手役というのは、それだけでバリューがあるらしい。さまざまな子役相手の仕事の依頼が殺到した。
おれの生活は一変した。
週に二日はレギュラードラマの撮影だ。二日とも、あるいは一日だけの時もあるが、美耶子との絡みの撮影をする。どうもおれの役が美耶子を性的に
開発する立場らしく、毎回、異なる趣向の撮影に挑むことになった。
アナルセックスはむしろおれの方が初体験だったが、美耶子のアナルは性器と同等かそれ以上の名器であること思い知らされた。
ソフトSMも、野外姦も(代々木公園でエキストラの面前でガチセックスさせられた)、ロリテレビでさえもオンエアできないマニアックなことも、
おかげさまで経験させてもらった。
美耶子との撮影に影響が出ない範囲で、ほかの子役とも絡んだ。
男優をしていなければセックスの相手をするはずのない、JS一年生からJC一年生まで、一通りこなすことになった。
子役の世界も厳しいものだ、と思い知ったのは、相手をつとめたJCの子役がピルを飲んでいることを知ったときだ。
子役の濡れ場は生中だしが基本だ。子供とセックスしてもそれは生殖行為ではない、というのが建前だから、当然男優は出し放題だ。むしろ避妊具を
使うと、子供との「性行為」を認めたことになってしまう。それは違法行為だ。
だが、子役といっても発育状況はいろいろだから、生理が始まってしまう子もいる。そうなると通常は引退だが、なんとか子役業界に残りたい子はピ
ルを飲み始めるのだ。
芸能界に近い医者は、子役へのピルを処方をためらわない。
あと、業界の闇を感じたのは、子役のママさんからの猛烈アタックだ。
トップ子役の美耶子と仕事で絡んでいるおれは、どうやら彼女たちにとっては無視できない存在らしい。娘のために、「なんとかして口利きを」と自
分の身体を投げ出すのもいとわないのだ。
彼女たちは二十代後半から三十代、さすがは子役のママだけあって、ふつうに女優レベルの美女が多い。むしろおれにとってはストライクゾーンだ。
とはいえ、仕事で週三は美耶子とセックス、ほかの日もたいてい子役とセックスしなければならない。プライベートでセックスする余裕はなくなっ
た。精液の量や濃さが仕事の評価に直結するのだ。
――どうしてこうなった?
PART1 おしまい!
PART2 に つづく!