うたかたの天使たち 第七話

まふゆのファンタジスタ
真冬の幻奏者

珠子編

 珠子が当たりを引いたとき――彼女の頭上に人の形をした塊が浮かんでいたのをおれは目撃した。

 和服を着た女性のシルエット――

 その時はおれは、きっと珠姫あたりが引っ込み思案な珠子のために力を貸して「当たり」を引かせたんだろうと思った。

 まあ、それならそれでもいいか、と思った。自分から何かを主張することなんてついぞない珠子だからな。たまには楽しい思いのひとつもしたって罰は当たらないだろう。

 だが――それがまさかあんな事件につながってしまうなんて――おれにはまったく予想だにできなかったのだ。

 

 なんてな。意味深な振りをすると、あとで困るからやめておこう。

 

 しかし、珠子と旅行に出たのはいいが、なんつーかな、会話がない。

 なにしろトークが苦手な珠子だ。自分の口で意志を表明するところをほとんど見たことがない。コックリさんで言葉をつむいだほうが早いんじゃないか?ってくらい。もっとも、二人っきりでの旅行で、相方がずっとコックリさんやっているのはゾッとしないが。

 会話がないならボディランゲージってわけにもいかない、珠子の場合。なにしろ、触っても揉んでもウンともスンともいわない。このへんは双子でも美耶子とはぜんぜん違うな。

 ネコにたとえるとわかりやすいかもしれん。美耶子は四六時中、飼い主にまとわりつくタイプ。珠子はちょっと距離をおいて、ごくまれにふれあいを求めてくるタイプ。

 ホテルに着いても、珠子の無口は変化なし。

 楽しんでるのか、どーもわからん。

 温泉にしたって、大浴場は人見知りするからダメらしい。

 旅行にきた意味ねー。

 だが、である。ここのホテルの楽しみは温泉だけじゃない。

 おっきなアミューズメントセンターがあるのだ。それも、ラスベガスを模したような本格的なやつだ。それを目当てにけっこう全国から客が集まっているらしい。

 いきますか? せっかくだからな。