ほのか様は着痩せするタイプらしい。
胸は量感たっぷりの釣り鐘型。ウェストは細く、ヒップは張り出している。しかも、筋肉もきっちりついている。まさに完璧なボディ。
世の女性のあこがれであるとともに、男どもの妄念の対象でもあるのだ。
そ、そのほのか様の、は、はだかが!
なぎさサンが剥かれた時の数倍のフラッシュが焚かれた。男どもからの人気は、どうやらホワイトの圧勝らしい。
むろん、女性ファンの悲鳴もすごい。
その悲鳴の発生源のひとつが気恵だった。だが、その表情は、ほかのファンたちとはちがっていた。ファンたちは、この悲劇的なシーンに衝撃を受けながらも、受け身だ。怒りながらも、嫌がりながらも、どこか、それを楽しんでいる。そりゃあそうだ。観客は楽しむためにきているのだから。
だが、気恵くんはちがう。怒っている。他人事じゃなく憤慨している。それはたぶん、知っているからだ。なぎさサンとほのか様が、いかにこの試合に賭けていたかを。青春をささげたプロレスにさよならを告げるための、特別な試合なのだ。どれほどの努力、どれほどの痛みを経て、この場所に来たのかを、気恵くんは知っている。
だからこそ、怒っているのだ。
しかし。
タンカーとデスピオンも超一流のレスラーだ。観客のブーイングを糧にして生きる者たちだ。
どってこたあねえと不敵に笑うと、ほのか様の純白のコスチュームを剥ぎ取りにかかる。
だが、それは実は簡単な仕事ではなかった。
ワンピースのドレス風のコスチュームだが、背中をヒモで編んでいるので、かんたんには脱がせられないのだ。
必死でデスピオンがヒモを解こうとしているが、デブなので指も太くてうまくできない。ああ、もう、不器用者め。
業を煮やしたのか、レフェリーがどこからかハサミを取り出しデスピオンに渡した。受け取ったデスピオンは一瞬けげんな顔をしたが、すぐに手のなかの道具の使い道をさとったのだろう。
じょぎん。
ああ! ほのか様の胸元を守る白いコスチュームが真っ二つに!
ぽろりん、と、乳房が転げ出る。おおーっ! 場内全体がどよめく。女性ファンたちまで、ほのか様の生オッパイの目撃者たらんとして、身を乗り出していく。
「うわあ、なんだよこれ!」
タンカーがほのか様をフルネルソンで決めたまま、揺さぶり始める。
ぶるん、ぶるん、揺れる。真っ白いオパーイ。
「すっげー! 乳が弾んでるぜ。これ、シリコンじゃねーの?」
ばかもの。その乳の動きのなめらかさ、重力との絶妙のバランス、肌の美しさ、どれを取っても特上の天然ものだ!
乳首も真っピンク。乳輪はやや大きめ。意外に外人っぽい乳首だ。
「さあ、邪魔がはいんねーうちに、下もいっとこうぜ」
タンカーが言う。
写真のフラッシュがすごい。なんと、女性ファンの一部さえ、携帯とかで写真とってるし。
「よっしゃ、いくぜ」
ハサミを振りかざしたデスピオンが、一気にほのか様のコスをボトムまで切り裂いてゆく。
「ほのか!」
ふらふらのなぎさサンが救援に向かおうとする。羽織っていたガウンはロープをくぐるときに落ちてしまって、またもやすっぽんぽんになってしまっているが、もうそんなことを気にしている場合じゃない。なんとかパートナーを救おうと必死だ。
だが、時すでにおそし。
ほのか様も一糸まとわぬ姿にされてしまっていた。ああ、なんという可憐な裸身だろう。まさにホワイト一色だ。
タンカーはその身体を抱え上げると、ボディスラムでマットに叩きつける。
デスピオンもなぎさサンを捕らえ、バックドロップで投げ捨てた。
シャイニングプリンセスの二人が、裸に剥かれてリンチをうけている。だれにも想像できなかった展開だ。
観客席は沸騰していた。悲鳴・絶叫・怒号・手拍子・足拍子・マジ泣きしている女の子も多い。
「まだまだこんなもんじゃねーぞ。今日は助っ人を呼んであるからな」
デスピオンが叫んだ。二の腕と胸の肉がぶるるんと揺れる。
「カモーン! チョコポッキー!」
その声にあわせて、軽快なテーマソングが場内に流れ、色黒の筋肉男が走り込んできた。
おいおい、こいつ、男子レスラーじゃねーか。
チョコポッキー鷹野。AV男優とレスラーの二足のわらじをはいている、業界の名物男だ。AVの出演作は1,000本を超え、勃起時25センチという日本人ばなれしたナニを誇る。たまにレスラーと男優の仕事がごっちゃになるらしく、リングの上で駅弁ファックを披露したりしてしまうとんでもない男だ。
ポッキーはリングにあがると、マッスルポーズを決めて見せる。
ブーイングの嵐だが、まったく動じた風もない。ふてぶてしい笑み。さすが悪役だ。
「ポッキー、どっちでも好きな方からやっちまいな! おまえもこいつらには恨みがあるんだろ!?」
タンカーだかデスピオンだかがわめく。
鷹野がニヤッと笑う。おもむろに黒のショートタイツをずりさげる。まじかよ!?
「ええ、やらせてもらいますよ。ちょっとリング上で若手レスラーに駅弁決めただけで、この二人にはボコボコにさられましたからね」
事前に準備していたのだろう。もうそれはギンギンになっていた。たしかにプロの持ち物はすげーな。反り返っていやがる。
「じゃあ、まずはおれの股間を蹴り上げやがった女から――」
舌なめずりする視線の先にはなぎさサンがいる。
デスピオンに羽交い締めにされたまま、脚を広げさせられている。
大事な場所をあらわにされても、抵抗ひとつできない。
観客席から、一人の男が立ち上がる。顔面蒼白のその男は、なぎさサンのフィアンセだ。
ぶるぶる震えているのがわかる。怒りか、それとも恐怖か。
「ひひひ、婚約者の目の前で犯されちまいな」
デスピオンの喜悦に歪んだ笑み。
チョコポッキー鷹野はなぎさサンの股間に陣取ると、その巨根をなぎさサンの大事な場所にこすりつけた。
「う……?」
半失神状態のなぎさサンの表情が動く。
先っぽが入る。
それだけで、なぎさサンの小陰唇が裂けそうなほどひろがる。
「……あ?」
なぎさサンのまぶたがゆっくりとあがり、自分の下半身のおかれている状態をみた。
「い、いやあっ!」
「なぎさ!」
タンカーに捕まってやはり身動きできないほのか様が叫ぶ。
「なぎさちゃん!」
フィアンセも声をはなっていた。
「センパイ、だめ、見ないで! 見ないでぇ!」
なぎさサンが絶叫する。フィアンセの男は怒りに顔を歪め、リングに向かって駆け――ださない。その場で突っ立っているだけだ。
デスピオンがけたたましく笑う。
「どうしたい!? 助けにこないのかい!? おまえの婚約者なんだろう? それともレスラーとリングでやりあう度胸はないのかい!?」
これ見よがしにポッキーは大胸筋を動かして見せた。
婚約者はうなだれた。色男、金と力はなかりけり、か。
「ふん、意気地無しが。とっくり見ておくんだね、自分の婚約者がリング上で犯されるところを! 負けた者には最大限の屈辱を――これが、リアル・プロレスさ!」
違うと思うぞ。
だが、リングの上ではどんな無法も非常識もまかり通ってしまうものらしい。
なぎさサンの中に、ポッキーの勃起したモノが侵入していく。音さえ聞こえそうな迫力。
「あ……あ……入っちゃう……ぅ」
「なぎさ……」
ほのか様がうなだれる。
「へへへ、次はあんたなんだから、ちゃんと濡らして待ってるんだよ」
タンカーが、ほのか様の両足を抱えて大きく開かせる。真っ白な太ももの奥に隠されていた花びらが口を広げた。
「やぁ、やめてっ!」
ほのか様がいやがるのにもかまわず、タンカーはほのか様の股間をカメラの砲列の前にさらした。世界が真っ白になるほどのフラッシュ量だ。
犯されつつあるなぎさサンと、その次のいけにえとして晒されているほのか様。
不条理な光景だ。
ポッキーがピストン運動を始める。
「ああああっ!」
激しい突き上げに絶叫するなぎさサン。苦悶に顔がゆがむ。
「ひゃはは! ズップリくわえ込んでるよ、この女。そうとう飢えてたんじゃないのかい?」
デスピオンはなぎさサンの胸を背後からわしづかみに握り締めながら、痛快そうに笑う。
「どうだい、ポッキー、こいつの具合はさ」
「気持ちいいぜえ……きゅうきゅう締めつけてきやがる」
腰を回転させるようにくねらせつつ、ポッキーは言う。
「い、言わないで」
なぎさサンの顔は真っ赤だ。感じてしまっているらしい。むう、さすがはプロ。AV男優おそるべし。
入れながら、なぎさサンのクリトリスをいじくって、刺激を与え続けている。パンパンに充血したクリをこねられて、なぎさサンは大きく声をはなった。
「ひぃっ! そこっ! すごいよぉっ!」
「ここがいいのか? いきそうなのか? ああ?」
クリを親指の腹で押さえて上下にこする。同時にピストン運動を強める。なぎさサンの声が裏返った。
「ああ〜っ! いくぅ、いっちゃう!」
「いいのかい、ファンの目の前でそんなによがっても? 婚約者だって見てるってのに」
デスピオンが笑う。なぎさサンの婚約者はしゃがみこみ、身動きもしないが、目だけはリングに向けている。
「やだ、やだ、見せないで、見せないで……なぎさのイクとこ、見せないで」
「だめだ。いかせる。それと、この前の仕返しに、たっぷり中で出してやる」
「ああ、だめ、だめ、中はだめぇ」
「出す!」
ポッキーが断言する。
にゅぷにゅぷペニスを出し入れしながら、フィニッシュの動きにつなげていく。こいつ、プロレスラーとしてはイマイチらしいが、こっちはさすがだな。
なぎさサンが高まる。リングのマットに爪をたて、胸を揺らして肌を朱に染める。
「ああっ! いくっ! いくぅっ!」
「出すぞっ!」
ポッキーも極まる。そこに。
「いいかげんに、しろぉ!」
何者かがリングに駆け上がり、ポッキーの側頭部に膝をたたき込んだ。
「うげっ!」
悲鳴をあげつつ、ポッキーが横倒しになる。その拍子にペニスが抜けて、派手に射精する。すげー、マジでザーメン噴水だ。
「な、なんだ、てめえ!?」
「邪魔すんじゃねえ!」
タンカーとデスピオンがわめく。
リングにすっくと立っているのは気恵くんだ。まなじりはさけんばかり。怒りモードに入っている。
「素人が、しゃしゃり出るんじゃないよ!」
「痛い目にあいたくなきゃ、とっとと引っ込みな!」
巨漢女子レスラーたちに恫喝されても気恵くんはひるまない。
ジーンズに手をかけ、自らずばっと脱ぎはじめる。なんと、ストリップか?
「な、なんのつもりだ」
悪役レスラーたちも一瞬気を飲まれる。かまわず気恵くんは脱衣を続ける。Tシャツも脱ぎ捨てた。
おおおっ!
会場が沸いた。
気恵くんはリング用のコスチュームに身を固めていた。
濃いブルーを基調にしたシンプルなデザイン。郷愁をさそって止まぬそのフォルム。
つーか、ソレ、スク水ちゃうんかと。
だが、手足の長いスレンダーな気恵くんの肢体には見事にマッチしている。リングの上だと、それっぽく見えるから不思議だ。
「このリングを、これ以上おまえたちの勝手にはさせない!」
気恵くんが叫んだ。か、かっこいい。
「ほう……あんたかい、期待の新人ってのは」
「デビュー前に、あんたも剥いてやろうか?」
ペイントの奥からタンカーとデスピオンが凶悪に笑う。
すっくと立ち上がった巨躯がふたつ、気恵くんににじりよっていく。
「気恵! さがって! あなたがかなう相手じゃないわ!」
ほのか様が叫ぶが、まだダメージから回復できていない。ついさっきまで犯されていたなぎさサンに至っては失神状態だ。
つまり、1対2。頭を押さえてうめいているポッキーも入れれば三人のレスラーを相手にしなければならない。
デビューさえ果たしていない気恵くんにはあまりに苛酷な条件だ。
しかし、怒りに我を忘れた気恵くんに、そんな戦力差など無関係。
突進する。
「このひよっこが!」
両手を広げて気恵くんを捕まえようとするタンカー。その目前で気恵くんの身体が一瞬消える。
膝を折って上体を沈めたのだ。
たわめたバネを解放する。十四歳のしなやかな、高性能の関節と靭帯と筋肉が相互に作用し、打撃力に変化する。
伸ばした右足のかかとが、タンカーのあごに炸裂していた。
トラースキックが完璧なカウンターでヒット!
まさに、タンカーにカウンター、って、微妙に回文になってるよーな、なってないよーな。
タンカーは轟沈だ。脳が揺れたと見える。
「ざけんなっ!」
横手からデスピオンがつかみ掛かる。
気恵くんはすかざず回し蹴り。
「甘いよ!」
ぐわし、と蹴り足をつかまれる。やばい!
だが、気恵くんの動きに遅滞はなかった。蹴り足を掴まれた瞬間、掴まれた足を軸にして蹴りを放つ。
それがデスピオンの後頭部に入る。
延髄斬りってやつだ。
たまらずデスピオンは気恵くんの足を放す。膝をつく。素早く体勢を整えた気恵くんはデスピオンの膝を踏み台にして、ニーアタック!
おれ、あれ、やられたことあるぞ。シャイニングウィザードって技だ。でも、意味わかんないよな。どこがシャイニングで、どこがウィザードなんだか、説明してもらいたいものだ。
ともかくも、気恵くんの攻撃はクリーンヒットして、デスピオンはダウン。
いっときは静まっていた観客も、突然出現した新人選手の群を抜いた動きに喝采を送りはじめている。む。あの、目立ちまくりの外人のオッサンも立ち上がって拍手しているな。
「よ、よくも……」
浅黒い身体に憤怒をみなぎらせて、ポッキーが立ち上がる。下半身は晒したままだ。萎えているのにでかいな、やっぱ。しかし、精液のなごりが亀頭からたれているのが滑稽というか、異常だ。
「裸に剥いて、駅弁を決めてやるぞ」
側頭部をなでさすりながら、ポッキーは顔を歪めた。
駅弁固めというのがこの男のフィニッシュムーブなのだ。駅弁スタイルで相手を抱えてベアハッグの形で締め上げるという技だ。だが、この場合はAVでいうところの駅弁ファックのことかもしれない。
しかし、いくら気恵くんがすごくても相手が男の、しかもレスラーだってのは、かなりやばいのでは。
ポッキーは太い腕を見せつけるようにすると、奇声とともにダッシュしてきた。クローズライン、いわゆるラリアートねらいのようだ。
あやうし、気恵くん!
だが、気恵くんは落ち着いていた。ポッキーの突進をひらりとかわすと、たたらを踏んでとまろうとするポッキーの背中にドロップキックを打ち込む。打点が高い。バスケで鍛えた跳躍力だ。それだけで観客がどよめく。
ぐえ、とかいってバランスを崩したところを背後から駆け寄り、髪を掴んでそのまま顔面をマットにたたきつける。
あっと言う間に三人を倒した。あまりにも鮮やかな連続技に観客の大興奮だ。会場が文字どおり揺れている。気恵くんは場内の様子に初めて気づいたらしく、すこし戸惑ったように周囲を見渡した。3000人の観客が文字どおり一体となり、うねり、狂奔している。
気恵くんの頬が紅潮した。目が輝く。彼女も受け取っているのだ。観客からエネルギーを。
「そ、そこまでだよ!」
タンカーはふらつきながらも立ち上がっていた。デスピオンもだ。さすがはレスラー。すごいタフさだ。だが、言い換えれば、気恵くんの攻撃は派手ではあっても、軽い、のかもしれない。
「デビュー前の素人が調子に乗りやがって」
デスピオンはリング下の若手から竹刀を受け取った。
「シャイニング・プリンセスの二人がどうなってもいいってんだね?」
そうなのだ。
なぎさサンとほのか様は、依然として裸のまま、鬼畜軍団側のコーナーでダウンしているのだ。
タンカーがなぎさサンの両足首を掴み、股裂きをかける。
「う、あ……あああ」
秘部を徹底的に晒されて、うめくことしかできないなぎさサン。婚約者はへたりこんだままだ。
デスピオンは竹刀を振るって、真っ白いほのか様の背中に赤い筋をつけていく。
「ああっ! いやっ!」
身をよじるほのか様。
「卑怯よ!」
激昂する気恵くん。やばいな。さっきまでとは相手の心構えが違う。いま飛びかかったら、返り討ち間違いなしだ。ポッキーのやつまで、ダメージから回復してきたようだし。
気恵くんがそれでも敵に突進しようとした、そのときだ。
レフェリーが動いた。
気恵くんを背後から羽交い締めにする。
「あっ!?」
怒りと驚きに、気恵くんが声をあげる。
「なにすんだ、レフェリー、放せ!」
だが、レフェリーは気恵くんをがっちり捕まえている。こうなると、男の力にはかなわない。
「うまいぞ、レフェリー!」
「しらねえ顔だが、うちらの軍団に入れてやってもいいぞ!」
タンカーとデスピオンがレフェリーに声をかける。
「そのまま押さえてろ。素っ裸にしてやるぜ」
ポッキーが迫る。
「ち、近づくな、バカ!」
気恵くんがポッキーの股間から視線をそらしつつわめく。ぶらぶらしてるなあ。
「いちいちうるせえんだよ、このガキ」
凶暴に歯を剥きだして笑う。浅黒い肌に不自然に白い歯。だが、目は決して笑っていない。
「さあ、おっぱいを見せてもらおうか」
ポッキーは、気恵くんのスク水の肩紐を両側から掴んだ。
おい、だれか、助けてくれよ! このままだと、気恵くんの裸が満員の観客の目の前に晒されちまう!
ふつうなら、ここで、「ちょっと待った!」とか言って、助けが入るものなんだが――おれもちょっと今は手が放せない。
ポッキーは、気恵くんが身動きできないのをいいことに、スクール水着を一気に引き下ろした!