10.リアン、ただいま失神中

 

 リアンが失神してしまうと、ひとびとの情欲はミシェルに移された。

 天使のような、という形容がぴったりくる、金髪の可憐な少女である。金髪は、たいていはその肌の汚らしさを強調し、不美人を際立たせるものであるが、ミシェルに限ってはそうではなく、むしろその可愛らしさ、未成熟な身体の線が持つ何とも言い難いせつないまでの美しさを引立てていた。

 ミシェルは、怯えていた。そういう怯えはサディスティックな攻撃性を呼ぶ。

 ミシェルへの責めが始まった。

 選ばれた二人の男がミシェルを抱いた。

 ミシェルを横たえ、その全身を舐め始めた。

 恥ずかしがるミシェルの脚を無理に開かせ、その間に顔を突っ込んで、三十過ぎの男が舌を使うのである。あそこを指で開いて、音を立てて舐め、吸う。

 もうひとりは、膨らみかけたばかりのミシェルの白い乳房にしがみついている。両の乳首を激しくしゃぶった。歯で挟んだり、舌で転がしている。

 ミシェルにも、幼いながら性感はある。

 頬が上気しているのは羞恥のためばかりではなかった。

 男たちは、それこそミシェルの全身を舐めた。唇も丹念に奪ったし、首筋も、腕も、脇の下も。太腿も、足指の先までも舐め、吸い、咬んだ。そして仕上げには、ミシェルをうつ伏せにして、うなじから背中までを舐めあげた。

 それは、神聖なる儀式の準備であった。

 「穴開けの儀式」である。

 処女の前後ろふたつの穴を同時に開け放つのだ。

 ミシェルは四つんばいにさせられた。その下に一人が潜り、尻にもう一人が跨がった。 始める前にミシェルは言わねばならない。

 「皆様、よろしくお願いいたします」、と。

 かぼそい声でミシェルは言った。まだ十二歳になるかならぬかである。怖い。

 「では、始めよ。時間をかけて、丹念にやるのだ。このあと、皆が愉しめるよう、充分熟れさせるのだぞ」

 ザッヘルが言った。リアンのなかに放出した満足感からか、血色がよい。

 男たちが、それぞれの入口をこじ開けていった。まだ全然幼い陰唇に下からこじ入れていく、直立した男のくろぐろとしたもの。そして、薄桜色の肛門は、やや先細りの赤い亀頭によって犯されようとしている。

 「ひぃぃぃぃっ」

 ミシェルの甲高い悲鳴が響く。

 貫かれている。白い、小さな尻が堪え難い痛みに震えている。それをがっしと鷲づかみにしている男の掌の巨大さ!それは、か弱い少女を犯す、という刺激的なシーンに相応しい対照だった。

 後ろから男は動き始めた。ゆっくりとした動きだった。その腰の動きに合わせ、ミシェルの身体も動いた。動かずにはおれない、そのくらいにミシェルは小さいのだった。まだ、男の動きを受容出来るほどには発育していないのだ。

 下から男が突き上げていた。硬い、動きだった。狭いのだ。処女膜を突き破ったばかりだ。大人の男根を受け入れるどころではない。しかも、この男のものは特に大きかった。そういう持ち物の男をわざと選んであったのだ。

 「痛い、痛い、お許しください、お許しくださあい」

 ミシェルは泣き叫んでいた。時折、高い声を立てた。悲鳴である。

 ミシェルには、信じられない。さっきのリアンの狂態が、だ。あれはどうみても悦んでいた。やめないで、とよがっていた。あれを見ていて、ミシェルは少し安心していたのだ。そんなに気持ちのいいものならしてみたい、とも思ったほどだ。ミシェルにしても、男たちにあそこをいじられたり、舐められたときには、少しだが快感を得た。セックスも、そういうことの延長かとミシェルは思っていた。が、全然違うのだ。

 痛みに、気が遠くなる。死ぬのではないか、と思えるくらいだ。

 びくん、びくん、とミシェルの下半身が脈打っている。それには、みっつのビートがあった。ひとつは、自分のだった。あとのふたつは、ミシェルのなかに埋まっている男たちの性器から伝わってきているのだった。

 ミシェルの性器からも、肛門からも出血していた。男たちが動くたびに、ずひり、ずひっ、と激痛が走る。

 「助けて……ママ」

 母の顔も知らぬミシェルである。しかし、ほかに誰も自分を助けてくれる者などないことを知り尽くしてもいるミシェルだった。

 地獄の時間が過ぎて、ようやく男たちは果てた。が、ミシェルには彼らが射精したのかどうかもわからなかった。

 「ミシェルの穴開けは、無事終わった。今宵はリアンとミシェルを存分に愉しもうぞ。面白い趣向も用意してある。それまで、彼女らにはしばしの休息が必要じゃ。諸君らも、いったんうちに帰って休まれたい。今宵は、暁まで宴が続くだろうからのう」

 ザッヘルの口上に、ミシェルはぞうっとした。

 今夜、たぶん自分は殺される。ミシェルは、自分の朋友がもう何人も彼らの情欲の犠牲になって殺されているのを知っていた。特にザッヘルは狂暴な変態で、なまなかのことでは興奮しない。ましてや射精などは。ゆえに彼は自分が満足を得るために、女を殺しながら犯すのだ。一度などは、十歳足らずの少女を後ろから犯しながら、少女の首を大斧でぶった斬らせたという。瞬間の筋肉収縮で、ザッヘルは気をやったという。恐るべき変態だった。もしかしたら、今夜首を叩っ斬られるのは、自分かもしれない。

 

 

11.リアン、乱交す

 

 リアンとミシェルは別々の部屋に収容され、風呂に入らされ、食事を取らされた。今度はよくしつけられた女の召し使いが世話をしてくれた。ただし、一言も喋らない。

 リアンはなんとかして脱出する方法を模索していた。が、どうにも鎖を外さねばならない。その壁に突き当たって一歩も進めない。そうこうするうち、ラルフスが迎えにきた。宴が始まる、というのだ。

 「服は着る必要ありません。どっちにしろ、脱がされるのだから」

 ラルフスはにやつきながらリアンに言った。リアンは、ずっと素裸のままである。リアンも、見られるのに馴れた。というか、そうせねばやっていられない。

 「に、してもいい身体だ。また、お相手願いますよ」

 ラルフスが唇を舐め舐め言った。リアンは一言もない。自分を抱いた男だと思うと、もの凄い弱みを握られたようで、言い返せない。

 乱交は、会場に入るともう始まっていた。広い部屋の中央は囲われていて、そこは空けられている。その周囲に裸の男女が重なり合っていた。その数、およそ、二、三百はあったろう。

 ミシェルは鎖につながれて、既に幾人もの男たちに挑まれていた。やっぱり、泣いている。あんな子供とやって、何が面白いのだろう、とリアンは思った。あと三年待てば食べごろなのに、などとも思っている。

 リアンも、繋がれた。片足を捉えている鎖は、床に打ち込まれた杭にがっちりと固定され、回転は出来ても絶対に外れない。ようするに、姿勢の自由は効くが、逃げることは出来ない、というわけだ。

 リアンに早速挑みかかったのは、予告どおりラルフスだった。

 「また、入れてやるぜ、リアン」

 ラルフスはリアンのあそこを触りながら囁いた。

 「前のは憶えてないんだってな。あんなによがり狂ってたくせによ。俺がせっかく一生懸命やってやったのに、そりゃないぜ」

 ラルフスはリアンの唇を吸った。指はリアンのクリトリスをいじっている。

 「いや……やめて」

 リアンは首をよじった。

 「ほんとにすけべだな、お前は……もうぐっしょりだ」

 ラルフスはリアンの分泌した液で濡れそぼった指をリアンに見せた。

 「やぁっ!」

 リアンは顔をそむけた。

 「ふっ、かわいこぶりやがって」

 ラルフスは嘲りつつ、挿入した。

 「あっ……!」

 「思い出したかい? 俺の味を」

 ラルフスは動き始めた。

 次には、リアンが最初に宿屋の有無を尋ねたあの通行人Aがリアンを抱いた。

 「あんたは……」

 「そう。通行人Aだよーん」

 通行人Aはリアンを後向きにさせて、リアンのアヌスに差し入れてきた。

 「あ、つつつつ」

 リアンは顔をしかめた。香油をたっぷり塗り付けられていたので、するっと入った。とはいえ、やはり異物感は強い。

 「いい尻だ……たまらんな」

 通行人Aは腰を使っていた。

 「あんた……最初っからこのつもりでこの館のことをあたしに教えたのね」

 リアンは悔しくて半泣きになりながら言った。

 「そう。最初から、わしは尻を貰うつもりだった。おう、そんなに締め付けたらすぐ終わッちまうよ」

 「ばか、あほ、しね」

 リアンは泣いた。

 通行人Aはリアンの肛門と膣を順番に犯した。あそこを突かれるとリアンは弱いのだ。 「あっ、はあ! いやぁ……だめぇ」

 よがって、尻を振った。通行人Aはううっ、と声を漏らして射精した。

 次は、リアンを取り次いだ門番だった。彼は、赤黒い、もの凄い巨根の持ち主だった。 「俺ははなからお前が女だって承知していたぜ。こんな大きな胸をした男がいるかよ。最初っからお前さんをやっちまうつもりだったのさ。さっ、そうとわかったら、俺のものをしゃぶりな」

 リアンは跪いて、門番の巨大なものを口に含んだ。大きすぎて、リアンの口には余る。それに、異臭が強い。吐きそうになった。

 「もっとうまく舌を使え、うすのろっ!」

 門番はリアンの髪を掴んで揺さ振った。畜生、咬み切ったろか、とリアンは思ったが囚われの身は選択の余地を残さず、リアンに屈従を強いた。

 リアンは一生懸命門番のものを舐めた。下側をしゃぶしゃぶと舐め上げ、亀頭を舌先で刺激したり、リアンなりに努力した。

 「よし、横になれ」

 門番は命じた。リアンは当然挿入してくるものと思って脚を広げた。

 「違う。乳をつかうんだ」

 いうなり、リアンの乳房を引っ掴み、その谷間におのがいちもつを挟んでしごき始めた。リアンは痛いばっかりだ。

 「お前は全身が名器だな」

 門番は擦りながら悦んでいる。あっそ、とリアンは思った。

 

 

12.リアン、ヒトザルとまぐわう

 

 リアンは腰を揺すっていた。騎上位で、見知らぬ中年男のものを締めあげていた。たまらない。気持ちよくて、死にそうだった。

 「いいっ! ああ、いや、いや」

 リアンは首を振った。中年男がううう、と唸っている。いきそうだ。

 「まだ終わっちゃやあだ」

 男根が、リアンのなかに埋まっている。リアンの尻が激しく上下に動くたび、肉襞に食い入る黒いペニス。淫猥を通り越して、グロテスクでさえある。

 「うはっ」

 男が声をたて、果てた。

 男のものがリアンのなかから出た途端、別の男がリアンの尻を抱く。別の男はリアンの口を犯す。

 「うう……ぐふぅ」

 リアンは首を振りたてた。太いものが、リアンの口腔を埋めている。後ろからは、腹の突き出た中年男のいちもつを突き入れられている。男は激しく腰をつかっていた。 

 さっき果てた男は、リアンの乳を掴んでは吸っている。リアンの大きくて弾力性に富んだバストを揉みしだきながら、乳首を口に含んだりしている。

 「はがっ」

 喚き、男がリアンの口のなかに精液を飛び散らかせ、リアンに飲み下すことを命じる。もう、何人の男の精液をそうして飲み下したか。

 後ろの男は、リアンの腰を掴んで、より深く挿入した。思わず、声を放った。

 限りが、ない。

 恐るべき性の宴であった。

 が、ついにはそれも終わりに近付いた。

 リアンもミシェルも、男たちから解放された。

 二人とも、がくう、と脱力した。リアンは、何度気をやったことだろう。ミシェルは、泣き疲れていた。

 二人の周りから人が引いた。ぽつねん、と取り残された。

 「さて、皆の衆。宴もいよいよクライマックスじゃ。われら町の長老達がこの時のために準備した特別な趣向を、さてもごろうじろ」

 ザッヘルが言い、さっと手を上げた 。

 リアンとミシェルが繋がれている場所が、四角く仕切られた。紐を渡して区切っている。ささっと、銃を持った兵士達が四隅に立った。

 「よし、あやつを引き出せ」

 ザッヘルは命じた。

 おおう、と声があがった。

 巨大な姿が現われた。鎖で繋がれていた。その鎖は、一人の老人が持っている。

 それはヒトザルであった。類人猿の一種で性狂暴。人肉を特に好み、ずる賢さは人間並みという。ただし、このヒトザルは馴らされている。この老人は猿まわしだ。猿使い、という職能者である。

 「お姉さま、あれは……?」

 ミシェルが怯えてきいてきた。

 「まさか、あたしらを餌にしようってんじゃ」

 リアンも気が気でない。あまりに悲惨ではないか。やられ放題のあとは食べられちゃウなんて。リアン、泣いちゃう。

 「お姉さま、怖い」

 ミシェルが、リアンの側まで鎖を引っ張って来て、寄り添った。

 リアンは年下の美少女を抱いてやった。震えている。細い肩だ。

 「まだ、子供なのに……」

 男どもに凌辱されていたミシェルの姿が思い描かれた。

 「ぶふるるるしししぃ」

 ヒトザルが唸った。

 「リアンや、安心せよ。このヒトザルは実によく訓練されておる。人を食いはせんて」 ザッヘルが教えた。

 「ほんと?」

 リアンは希望を取り戻しかけた。

 「むろんじゃ。それどころか、このヒトザルは自分が人間だと思っているようでな。年頃になって発情期に入っても、仲間の雌には見向きもせんのじゃと。それで、リアンとミシェルとで、こやつを慰めてやってほしいのじゃよ」

 ザッヘルは楽しそうに言った。

 「じ……冗談でしょ」

 

 

13. リアン、逆転!

 

 ヒトザルは凄まじい興奮ぶりだった。リアンに掴みかかった。

 「いやぁっ!」

 リアンは恐怖に絶叫した。相手は人喰い猿だ。どう考えても助かりっこない。

 ヒトザルはリアンを抱き締めた。リアンは生きた心地がしない。毛むくじゃらの大猿に抱きすくまれて、失神寸前であった。

 ヒトザルは唇をつんと突き出して、リアンの唇に重ねた。あら、驚いた。猿にくちづけの習慣があったとは。いや、単なる味見かもしれない。

 「奴は人間のまぐわう様を嫌というほど見て育ったからのう。くちづけはおろか、様々の体位ですることを知っておるわい」

 ザッヘルが嗤って言った。

 ヒトザルはリアンのくちを愛しげに吸い、舌を差し入れた。リアンはううっとなった。くしゃい。まさか猿とディープキスをするはめになるとは。

 ヒトザルはリアンにのしかかっていった。

 雄猿はさも面白そうにリアンの乳房を弄んだ。柔らかい、どんな形にも変化する玩具と思っているようだった。

 「痛いでしょ! もう少し丁寧にしてよ!」

 リアンは文句をいった。ヒトザルはむっとして、リアンの頬を張りとばした。

 「痛いじゃない! ばかっ!」

 リアンは泣きながらヒトザルの胸板をどついた。

 ヒトザルは複雑な面持ちをした。扱いかねる、といった感じだった。今まで彼が相手をしてきた女は、みな恐怖の余り気が触れたようになっていて、決まって彼を苛立たせた。それで、首のひとつも喰い千切ってやったものだったが、今度ばかりは勝手が違う。

 ヒトザルは、リアンの股の間に指を差し入れた。濡れていた。

 「あ……」

 リアンはヒトザルの指が器用に動くのを感じていた。うまいじゃない……そんなあほなことを考える余裕さえあった。我ながら、なんちゅう好き者じゃろかい、と思わざるを得ない。

 ヒトザルはリアンの股にくちをつけた。激しく舐め始めた。ハッハッという荒々しい息遺いとともに、リアンの性器から肛門にいたるまでをしゃぶりまくった。

 こんな凄いクンニはリアンも始めてだった。感じてしまう。

 「あ、あ……す、すごい……」

 ヒトザルも夢中になっていた。ついぞないことだった。普段なら、セックスより、その女の肉の方が気になる。饗宴の後、自分にくだしおかれる人間の肉の味ばかり想像している。いわば彼にとっては、人間とのセックスは餌にありつくための芸の一種であった。だが、今度ばかりは彼も、人間の女の身体が与える快楽というものに心を奪われていた。リアンの太腿を抱え込むようにして必死で舐めた。リアンの肉体がヒトザルの舌に反応して愛液を分泌しだすと、そのすべてを舐め尽くさんばかりにしゃかりきになった。

 リアンは腰をふるっていた。たまらなかった。猿の生暖かい舌が陰唇をこじ開け、内部を探ってくる。嫌悪と快感がないまぜになって、異常なまでの興奮が身内を震わせたのだった。いわば、甘い戦慄。

 「やめて、やめて、なかに舌いれちゃ、や」

 悶えた。ヒトザルはその口元におのが怒張したものをあてがった。リアンは夢中でその大きく、熱いものをくちに含んだ。もっとも、余りに巨大すぎて、その先端部がほんの少し隠れたくらいだったが。

 リアンは舌をヒトザルのものの亀頭にからませた。

 ヒトザルがリアンのおめこを舐め、リアンがヒトザルのチンポを舐める。はっきりいって、むちゃくちゃいやらしい光景だった。美女と野獣という取り合わせは古典的だが、ペッティングはやたらとヘビィだった。

 やがて、ヒトザルは我慢出来なくなったのか、身体を入れ替えて、リアンの腰をぐっと上げさせて、正常位の形になった。巨大な陽物を、リアンの鮮やかなピンクの陰唇にあてがった。そこはヒトザルの唾液とリアン自身の愛液でこれ以上ないほど濡れそぼり、泣きむせんでいた。はやくちょうだい、そう叫んでいるようだった。

 ヒトザルはぐいい、と進み入った。

 「ああっ! あひぃぃっ!」

 リアンは絶叫した。閃光を見ていた。こんなに太い、強いペニスは始めてだった。

 ヒトザルは動き始めた。自信に満ちた動きだった。

 腰の動きを早くしたり、逆に遅くしたり、変幻自在。そして、リアンの脚を組ませたり、揃えさせてぐいっと上に捻ったり、そうするたびにリアンの膣壁に当たるヒトザルのものの圧迫の度合いが変化し、恐ろしいまでの快感がリアンの脳を灼くのだった。

 「んっ! んっ! んぅっ! やン!」

 ヒトザルは体位を変え、今度は松葉崩しでリアンを責め立てた。腰を深々と差し入れ、リアンの子宮を巨根で突き刺した。全身の内臓がでんぐりがえるかと思うほどの圧迫があった。もはや恐怖を超えた快楽の波涛。

 「許して、許して、あふっ、あふっ、死んじゃう、リアン死んじゃう!」

 譫言のように繰り返した。

 しかしヒトザルは容赦しない。執拗なまでにリアンを責め立てた。ピストン運動を行いながら、指の腹でリアンのクリトリスを刺激し続け、彼女を狂わせた。

 「ダメっ! もうダメよぉっ! 止めを刺して、お願いぃ」

 リアンは泣き叫んだ。快感の余り、大粒の涙がボロボロ流れだして頬を濡らしていた。 ヒトザルはリアンをうつ伏せにして、バックから責めだした。激しく腰をつかっていた。いく気でいるようだった。リアンの背が折れそうなまでにしなっていた。この世のものとも思えぬほどの凄絶な光景だった。世にも希な美少女が、巨大なヒトザルのペニスを背後から挿入されている。少女は全身を桜色に上気させ、忘我の境地で、猿の性器に美しい尻を与えているのだった。

 「ああ! あっ! はぅぅ、うぐ」

 リアンは息が停まっていた。ヒトザルの腰が激しく叩きつけられている。結合部から湯気さえ立つ激しさであった。ぐちょしゅ、びゅちゅす、男根が膣を出入りする淫猥な音があたりに響いていた。ヒトザルの息遺い。

 「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……ウウゥ」

 ヒトザルは一際大きく、ゆっくりと腰を振った。ドビュッ、ドブュと大量の精液がリアンのなかに放たれた。それは膣壁を叩き、子宮を震わせた。

 「あ。……あああああ……っっっ!」

 リアンはビクビクビクッと痙攣すると、ぐたっと崩折れた。

 股間から、おびただしい量の精液と、リアンの契水が流れだした。

 しばし、ヒトザルはそれを見ていた。

 「わはははは、見事、見事!」

 ザッヘルが手を叩いて興じいった。

 広間に詰めかけて固唾を呑んでいた皆も、わっと騒いだ。

 「ヒトザルよ、その女の肉をやる。存分に食らうがよい。その柔らかい腹を引き裂いて内臓を貪り、その美しい顔を噛み砕いて脳味噌を味わうがよいぞ!」

 ザッヘルが高らかに喚いた。

 ミシェルは、やっぱりなー、と思った。おねーさま、かわいそ。でも、自分が食べられなくてよかった、と思った。

 リアンは絶え絶えの呼吸のなかで、ヒトザルを見上げた。

 ヒトザルはリアンの姿をしげしげと見つめていた。検分してるんだ、とリアンは感じた。どっから食べようか、考えているんだわ。

 エクスタシーの余韻が残っているうちに、どうせなら食べてほしい、とリアンは思った。夢から醒めたら絶望しかない。酔っているうちに、いっそ、殺してほしい。

 ぐったりとして、リアンは抗わない。

 「いよいよだ! どこから食べるか、賭けよう!」

 ラルフスが言った。

 「頭!」

 と、通行人Aが叫んだ。

 「乳ちゃうけ」

 と、門番が言った。

 「いや、腹を喰い破るだろう」

 と、ミシェルの処女を奪った男が言った。

 「おめこ」

 とは美少年カラベル。

 「しぃっ! やるぞ」

 ザッヘルが注意した。彼の表情は欲望で歪んでいる。

 ミシェルのところへ行き、その身体を思うがままに凌辱しはじめた。

 「早く、喰え! 早くだ! わしはリアンが喰い殺されるのを見ながら、射精したいのじゃ!」

 ミシェルの肛門に漲ったものを突き入れて、激しく動きながら彼は喚いた。

 「い……いたい! いとうございますぅ、旦那さまぁ」

 ミシェルは悲鳴を上げた。ザッヘルがむちゃくちゃに動くので、身体がひしゃげそうだった。ザッヘルは構わず動き続ける。ミシェルの白い尻が、鮮血で汚れた。

 「お、おねえさまぁ……」

 ミシェルはリアンを呼んだ。

 「ミシェル!」

 リアンは叫び、ヒトザルを見た。

 「お猿さん、お願い! あの子を助けてあげて! あとで何でもしたげるからっ」

 ヒトザルは訝しそうにリアンを見た。戸惑いの色が眼にある。

 「何をしとるか! はよう、リアンを喰い殺せ! わしが射精するには激しい刺激が要るのだ!」

 ザッヘルがミシェルを犯しながら喚き散らした。

 ヒトザルはリアンをそっと下に降ろした。まるで貴重品を扱う手つきだった。

 「何をやっとる! この馬鹿猿!」

 ザッヘルは怒鳴った。が、ヒトザルがその巨大な身体をザッヘルの方へ向かわせると、その表情が恐怖に歪んだ。

 「なんじゃ! なんじゃ貴様は! わしに逆らうというのかっ?」

 誰かが止める、という暇はなかった。兵士たちも一瞬のことで、度胆をぬかれた。

 ヒトザルがザッヘルに突進し、ミシェルから老人の身体を引き剥がしたかと思うと、次の瞬間、頭からばっくし、齧ってしまったのである。 

 

 

14.さらば!愚者の町

 

 ヒトザルの暴れようは、凄まじかった。広間に詰め掛けていた人々を追い回し、その身体を引き裂いた。悲鳴がつんざき、強い血の匂いがたちこめた。

 ヒトザルを幼獣の頃から飼い馴らしている猿使いたちも、制止に入ろうとしてヒトザルの牙にかかった。もはや、混乱を収められる者はいはしなかった。ひとびとは我勝ちに逃げだした。ヒトザルは、猛り狂っていた。

 リアンはこの混乱を利して、兵士が慌てていて取り落とした剣を手に入れ、みずからのいましめを断ち切った。

 「ミシェル!」

 少女の名を呼びながら、走った。

 「おねーさま!」

 細い首を巡らせて、ミシェルはリアンの姿を認めた。

 リアンは、ミシェルを繋いでいた鎖を断った。リアンの助けを借りて立ち上がりながら、ミシェルは泣いた。

 「あーん、恐かったよぉ」

 「よーし、よし」

 リアンは少女の頭をなでなでした。

 「さ、お猿さんが暴れてくれているうちに、逃げよ」

 「リアンおねえさま、凄いのね」

 ミシェルがふっと悪戯っぽい表情になって言った。

 「ヒトザルさんまで虜にしちゃった。ヒトザルさん、きっとおねえさまに自分の子を生んでほしいと思ったに違いないわ。だから、飼い主のザッヘルを殺してまでおねえさまを助けようとしたんだと思うわ」

 「ま、まさか」

 リアンは胸が悪くなった。

 二人は混乱をついて階段を駆け上がった。誰もがヒトザルから逃れるのに必死で、リアンたちに構っているどころではなかった。

 二人は素早く廊下を駆けぬけ、広間を通ってついに屋外に出ようとした……とき。  

 行く手を男達が塞いだ。五人ほどの武装した男たちだ。

 「やぁ、ここは出口ではありませんぞ、お嬢さん方」

 「ラ、ラルフス」

 リアンの身体から力が抜けた。

 先頭にいたのはラルフスであった。そして、門番、通行人A、カラベル。あとの一人はベッチャムという名で、ミシェルの初物を摘んだ片割れだった。

 「ヒトザルをてなずけて脱出を計ったのは上出来だ。だがな、そんなに簡単にこの町を出られるとは考えんことだな。サルなぞ、銃を使えば一発だ」

 「お猿さん、殺したの?」

 リアンは声が擦れるのを感じた。

 「情が移ったのか? さても多情な。しかし、それがお前のいいところだな、俺たちにも手を出せまい。いくら、お前が勝れた剣士でも、一度身体を許したものには剣は向けられぬ、そういう性質であることは既にお見通しだ」

 ラルフスは嗤い、男たちに命じた。

 「囲んでしまえ。取り押さえて、誰が主人か、奴隷はどっちかを身体に教え込んでやるのだ」

 リアンの身体は動かなかった。戦意が凋んでいた。裸では動けない、恥ずかしい。

 「おねえさまっ! どうしたのっ? やっつけてよっ、あいつらっ!」

 ミシェルがリアンを揺さ振った。泣きそうな表情を、リアンはした。

 男たちはリアンとミシェルを並べて押さえつけると、思うさま凌辱を始めた。

 リアンはよつんばいにさせられ、後ろからラルフスに責め立てられていた。ラルフスのものは、リアンのアヌスを引き裂くようにして出没している。下からは、門番が膣を突き上げていた。くちには、ビッチャムのものが喰い入っている。

 ミシェルの方も、通行人Aの腹のうえに乗せられ、その男根を受け入れさせられていた。カラベルは、そのミシェルにくちで奉仕させている。

 リアンは恥ずかしさと気持ち良さとで死んでしまいたかった。

 ラルフスは腰をゆったりとつかいながら言った。

 「リアンの尻は最高だ。何物にも替えがたい、まさに天女の尻だ」

 尻の隆起を掌で掴みあげながら、自分のモノが出入りしているさまをうっとりと眺めていた。

 「まったくだ、この娘っこの下の口の具合といったら、こんなに締まりがよぅて、天井の感じがいやらしいのは始めてだ。ああ、何発でも出したいわい」

 門番が巨根をリアンの膣に捻じ込みながら、呻いた。

 「奥に、熱い蛇が万匹も棲んでいるようじゃわ」

 「その通りだ、おれもさっき填めてみて驚いた。あっちゅう間にいかされてしまったぞ。が、お口の方もよいぞ。くちがちっちゃいのを無理遣りくわえさせて、この可愛らしい顔にスペルマをぶっかけてやるのだ。たまらん」

 言われ放題のリアンは、ただ、押し寄せる絶頂感に気も狂わんばかりになっていた。

 いい、いい気持ち、ああ、太い、熱いわ、やっぱりラルフスのが最高、後ろ好きになっちゃう……

 きゆっ、きゅっと締め上げた。

 「くうぅ……出る」

 門番が先に参った。白目を剥いて腰を上下に揺すった。

 発射した。

 「俺もだ……ウ……こいつ、舌の使い方がうまくなった」

 ビッチャムがリアンの顔面に白いスペルマを浴びせかけた。

 ミシェルの方はといえば、通行人Aは既に果て、今はカラベルが挿入していた。ミシェルは、泣いている。が、痛みのため、というのではなく、絶頂感を極めた泣き方だった。 「ほう? この娘っこも填められてよがっとるぞ。初物を摘んだわしとしては、嬉しいのう。まるで自分の娘が一人前になったようだわ」

 「に、しても、ラルフスはよく保つな。どういうんだ? あのリアン相手に」

 リアンは、ラルフスのものを感じ続けていた。強かった。大きくて、逞しくて、リアンの弱いところを知りぬいた動きだった。

 ラルフスは、リアンを仰向けにした。肛門から男根を抜き、改めて膣に捻り込んだ。

 「ああっ! いいっ!」

 ラルフスは、激しく動いた。

 カラベルもミシェルのなかに放出して、晴れ晴れとした表情で見物していた。

 ミシェルは、疲れ切っていた。なんというか、セックスの気持ちよさがおぼろに解った気がしていた。ものうげな眼でリアンとラルフスを見ていた。

 ばーか。

 セックスばか。

 たいしたことってないんじゃない?

 などと思って見ていた。

 リアンの声が高くなっていた。絶頂にのぼりつめつつある。

 うらやましい気もした。

 (あたしなんか、まだちょっとだけだもん……いまにあたしもあんなふうにひーひー

いうようになんのかしら)

 いままではまったくの謎だったが、現在なら、なんとなくそうなるように思えた。

 「あああああっっっっ!!!!」

 リアンの声が叫んでいた。

 その時だ。

 リアンの髪飾りが虹色の光を発した。

 まばゆいばかりの光の塊が膨張した。

 なに、これ。

 ミシェルが考える間もなく、光は爆発した。

 光が館を飲み込んだ。音もなく館が消滅したのがミシェルには判った。

 館を呑んでも光は成長をやめず、それは町そのものを呑み乾した。想像を絶するエネルギーがその光の正体であるとミシェルは悟っていた。それは、なにもかも無に帰させしめ

る……はずのものであった。

 ミシェルは、自分の身体が光のなかに浮かび上がっていくのを感じていた。すぐ近くには、光の根源たるリアンと、その上にかぶさっているラルフスとがいた。が、それ以外のものは一切が光に飲み込まれていた。

 たかがセックスで、ばかみたい……

 ミシェルは腹立たしい思いで呟いた。

 何もかもが……自分の意識をも含めて……失せていくのを感じながら、ミシェルはまだ見ぬオルガスムスの幻影を追い求めていた。

 

 

15. 旅のはじまり

 

 それから、どれくらいが経ったか。

 ミシェルは眼を覚ました。そこは、荒野だった。町は跡形もなかった。

 ミシェルはあわてて辺りを見回した。リアンがいた。その上に、ラルフスがぐったりとのびていた。

 「お、おねえさま」

 ミシェルはおずおずと呼び掛けた。

 「ん……」

 リアンは伸びをした。満ち足りた表情だ。ミシェルを見ると、ぽけっとした。

 「あら、ミシェル。おはよー」

 「おねえさまったら……自分がなにしたか、憶えてないの?」

 「なにしたかって……あらやだ!なによ、このひと」

 リアンは自分の上で眠りこけているラルフスに気付いた。

 「やだ! やだ! ヘンタイ! ばかっ!」

 リアンはラルフスを払い除けて起き直った。

 「なによ、こいつってば。やらしい」

 ミシェルは呆れて、眼を真っ白にした。

 「おねーさまってば、自分だって歓んでたでしょ、ラルフスさんに責められてて」

 「なによ、それ。ラルフスって、誰?」

 リアンはぼやっとして言った。だんだん、記憶が戻ってくると、顔色が赤くなっていった。自分がなんで裸でいるのかも、ようやく悟った。

 「あ……っ!」

 慌てて、股間を見た。はしたない、とは思ったが、どーせ同性のミシェルしか見ていない。

 「……なんともなってないじゃない」

 「え?」

 ミシェルはリアンの股間に顔を近付けた。

 「わっ! エッチ! あんたってば、レズ?」

 リアンは慌てて脚を閉じた。

 「不思議ですわ。あんなにいっぱい殿方のせーえきをお受けになったのに」

 「あんた、可愛い顔して、物凄いこと平気で言うのね」

 「あたしも、変なんですよね。まるで処女に戻ったよーな心持ちがするんです」

 ミシェルが恥丘を押さえるようにして言った。

 「あの不思議な光のせいでしょうか」

 「不思議な光?」

 リアンははっと思い当たった。

 「ええ、おねーさまがアクメにお達しになったとき、ぴかーっとおねーさまの髪飾りが光ったんです。そうしたら、あたしたち以外、町も人もみんな消えてしまったんです」

 レイヴァーンだ、とリアンは悟った。まったく、厄介な、不思議な力だ。働いて欲しいときにはまったく働かず、忘れてしまった頃にいきなりやってきては後片付けしていってしまう。

 「でも、よかったじゃない、もとの綺麗な身体に戻れて」

 と、リアンはそこはかとない羨望をまじえて言った。

 「じょーだんじゃありません!」

 ミシェルは憤然とした。

 「せっかく、すぅえーかく、痛くなくなって、ちょびっとだけど気持ちいいかなって感じがしてきたところだったのに、また、一からやりなおし。痛い思いしなくちゃいけないんですよぉ」

 「あ、そう」

 リアンは脱力した。

 そのとき、ラルフスがようやく意識を取り戻した。

 「うが……?」

 ほうけた眼で二人の美少女を見上げた。

 そのあとが大変だった。町が消え失せてしまったことを知って、彼は逆上し、次に絶望し、泣きむせんで地面をごろごろと転がった。リアンとミシェルはそれをなだめるのに手を焼いた。

 「どうしたらいいんでしょう、僕」

 威勢が消え失せて、ラルフスは上目使いにリアンを見るようになった。

 「そんなことくらい、自分で決めなさいよ。男でしょ?」

 リアンは突き放した。もう、身体の関係はレイヴァーンの粛正できれいさっぱり失せている。もう、尊大に振る舞われるいわれはない。

 「だって、僕、手に職もないし、力も弱いし……」

 すっかり気が弱くなっている。ご自慢の男根もすっかりしなびて生彩がない。

 「しゃあないわねっ! 連れてってあげるわよ」

 リアンは持て余してそう言った。

 「本当に一緒に行っていいんですか?」

 縋るような眼でラルフスは訊いた。

 「いいでしょ? ミシェル」

 リアンはミシェルに同意を求めた。

 「もちろん。だって、リーダーはおねえさまだもん。あたし、一生おねえさまから離れないもん」

 ミシェルは、ちっちゃな拳をくちもとに押し当てて、ぶりっこポーズをとった。

 「あ、僕も、僕も」

 ラルフスはミシェルの真似をした。二十過ぎた男がするポーズではないが、どういうわけかよく似合った。

 「リアンちゃんのためなら、僕、死ねるよ!」

 「だったらいま死んで」

 リアンは嘆息しながら呟いた。あほな弟妹を持った姉の気分だった。

 これからどういう旅になるのか、予想するだけで気が滅入ったことであった。

 

おしまい