MA−YU 学園編 第三話

堕ちゆくこころ

或いは まゆといけないおともだち

 

「先輩……いっぱい出たね」

 加織が口から垂らした精液を手で受けて、うっとりと目を細めた。

 どろどろの白濁液――

「いいから飲めよ」

「うん」

 加織が、ずるっと音をたてて精液をすする。

 すこし苦しそうに顔をしかめ、それでも――

 こくん。

「のんだ」

「後始末がまだだろ」

 まだ半勃起状態のペニスを加織の目の前にちかづける。

「うん……」

 ぺろぺろと舌を動かして、墨田の亀頭を、竿を清めてゆく。

 まゆは乾く唇を嘗めつつ、指を股間で動かしていた。

 加織の目が動いて、まゆを見た。

 鼻の頭にしわが刻まれる。

「まゆちゃんもなめてみる……?」

「えっ」

「だって、さっきから、加織たちのこと、すごくうらやましそうにみてたでしょ」

「そ、そんな……」

 言葉につまる。

「そういや、けっこう興奮してたみたいだったな……オナッてたし」

 墨田の視線がまゆの下半身にささる。

 まゆは自分の状態に気づいた。

 スカートがめくれて下着が見えている。その股間に自らの指を押し当てている。

「まゆちゃんって、やらしー。ね、加織の言ったとおり」

「だな。保健室のときも、隣でベッドきしきしさせてたしな」

 まゆの顔が熱くなる。図星だ。墨田と加織がセックスしている隣で、まゆはオナニーしていた。さらには、鏑木の指で絶頂にまで導かれたのだ。

「ねえ、まゆちゃんって、どんなふうにオナニーするの?」

「え……?」

 加織の問いに固まるまゆ。

「保健室のときも、今も、まゆちゃん、あたしたちのエッチ覗いてばっかでずるいよ。まゆちゃんも見せてくんなきゃ、不公平よ」

「でも……」

 べつに見たくて見たわけではない。

「まゆちゃんも、恥ずかしいとこ見せてよ。それであいこでしょ」

「そうだな。おれもチンポ見られてるし」

 そそり立たせながら墨田ものってくる。

「まゆのオナニー見せろよ」

「やだ、先輩、目がマジ」

 加織は笑いつつ墨田に一瞥をくれると、すぐにまゆに向き直る。

「そんなわけだから、見せてよ、まゆちゃん」

「え……いや……」

「あー、ひどーい、まゆちゃんって、ずるいなー」

 加織が唇をとがらせた。

「あたしたちの秘密しっといて、そんなこと言うんだ、へー」

「か、加織ちゃん、ごめん……ごめんね……でも……」

「まゆちゃんも秘密、つくりなよ」

 加織が真顔で迫ってくる。

「あたしたち、友達でしょ? 一方的に秘密を握ってるなんて、ヘンじゃん」

 まゆは恐怖にすくんだ。それと同時に、奇妙な衝動が突き上げてくる。

 いいなりになってしまいたい――そのほうが、いっそ――

 それに、加織の秘密を知ってしまったのは事実なのだ。

 友達の秘密を――

「まゆちゃん……するよね?」

 とどめをさすように加織が言う。

「う……うん……するよ……するから……」

 まゆは答えていた。そうするしかなかった。

 

 薄暗いカラオケボックスのベンチの上で、まゆはM字開脚の格好にさせられていた。

 下着が丸見えだ。

 隠すと加織に咎められた。

「あー、友達なのに隠すんだ、へー」

 その声が追い立てられるように、まゆは太腿を開いた。

 加織がのぞきこんでくる。

「まゆちゃんって、おこちゃまパンツなんだ。かわいー」

「へーどれどれ」

 墨田も同じようにかがみこむ。

 まゆは羞恥にさいなまれつつも、理不尽に扱われることに奇妙な痺れを感じていた。

 ただれるような、心地よさ。

 傷つくことで、満たされる。

 矛盾に満ちた、それが真実。

「ねえ、さわりなよ、まゆちゃん。さわりたいでしょ?」

 加織の言葉は自信に満ちている。そうかもしれない、と、まゆは思う。

 股間に触れてみる。

(――っ!)

 衝き上げるような快感。

 視線を感じる。好奇心に満ちた、蔑みをも含んだ視線――

 それが官能をたわめてゆく。

 自分の指なのにそんな感じがしない。他人に触れられているような違和感とともに、より深い快感を導くように、うごめく。

 ワレメの部分を上下に擦過する。指の動きと同期した布地が猥肉に巻き込まれ刺激を強める。

「あ……あっ」

 声が出る。思わず上体を屈する。足指が攣りそうなくらいに縮こまって、ベンチの上で身体がぐらりと揺れる。

 それでも指はとまらない。

「あ……だめ……」

 布地をはさみこんだ奥が熱い。間接的な刺激では埋められない。

 下着のなかに手を入れた。

 固くしこった萌芽を直接刺激する。

 信じられないほど潤った部分にも――

 むさぼるような激しい動き。

「はああ……あう……」

 歌い手のいないカラオケが大音量で流れている。視界がうるんで、天井のミラーボールが何重にも見える。

 むせかえるようなせまいボックスのなかで、まゆは自慰にのめりこんでゆく。

「すごい……まゆちゃんって、エッチなんだあ」

 加織の声もうわずっている。

「いいから、もう、それもとっちゃいなよ」

 言われるまでもなく、まゆの下着はすでに半ば以上脱げていた。両手を突っ込んで動かしていれば、当然そうなってしまう。

 まゆは身体をよじって、片脚からパンツを抜いた。

 動きを阻害するものがなくなり、存分に指を遣った。

 クリトリスをこすり、穴の周辺を刺激した。

「う……あっ……くっ……いぅ」

「まゆちゃんのって、きれいだね……ほんと子供みたい」

 加織がのぞき込んでいる。

「毛もほとんどないな」

 墨田もだ。食い入るように見ている。射精から程ないというのに、もう、股間がよみがえっている。

「ねえ、広げて見せてよ――まゆちゃんのおまんこ」

「そうだな、もっとはっきり見たいな、まゆのまんこ」

 まゆを左右からはさむように、加織と墨田が迫ってくる。そのプレッシャーにまゆは抵抗するすべはない。

 ひざを曲げて股を大きく広げさせられた。いや、自分から広げていた。

 左右の土手に指を当てて、思い切り――

「く……ぅ……」

 曝していた。

 鞘から飛び出したクリトリスも。

 尿道口も。

 そして、ぬらぬらとぬめって光る肉の隘路も。

 肛門までがすこし開いて、サーモンピンクの粘膜を見せていた。

「丸見えだよ、まゆちゃん――すっごい」

「ほんとだ。全部見えてるぜ。加織、おまえの友達はすげえな」

「記念に撮っとこ」

 加織は携帯電話をとりだす。むろん、カメラ付きで、ズームまで装備している高機能型だ。キティのストラップが愛らしい。

「え……」

 否やはなかった。軽やかな音とともにシャッターがおりる。

「やっだー、ばっちりぃ。気持ち良さそうな顔して写ってるよ、まゆちゃん」

 液晶画面には、まゆの大股開きの写真が表示されている。

 とろけそうな顔をした女の子が、自分で性器を広げて見せている。愛液で内股がべとべとになっていることさえ、はっきりわかる。

「これで、おたがいに秘密を守れるよね」

 加織が微笑む。

「加織と先輩のこと、だれにも言ったりしないよね? でないと――」

「い、いわないよ」

 まゆはかぶりを振った。

「写真なんかなくても、だれにも言わないのに……」

 自分だって秘密を抱えている。加織のそれより、ずっと昏くて深い闇だ。それを――

「だって、まゆちゃんって、いい子じゃない? 勉強できるし、かわいいし、先生にも気に入られてるじゃん」

 ちがう。

 ほんとうのまゆはそうじゃない。

 いやらしくて、ずるくて、自分だけ得をして――

 満たされているふりして、ほんとうは餓えていて――

「わたし――いい子じゃない」

 まゆは自分の罪の場所を痛みを感じるくらいに広げた。自分の指を挿入し、動かした。

「こんなこと……する……いい子なんか……」

 くちゅっ、くちゅっ、くぢゅ……

「あっ、あっ、い、いないよぉ……っ!」

「うっわ、ぐちょちょ」

 墨田の声がかすれた。

「子供みてーなマンコが真っ赤になって……すげ」

 股間は完全に屹立している。

 しごいた。先走りの滴が鈴口から盛り上がる。

 まゆはうるむ視界のなかで、それを見た。それが入ってきたらどうしよう。

 逃げられない。どうしようもない。

 それの感触はどんなだろう。良明のそれと同じだろうか、それとも――神村のそれと近いだろうか、あるいは――

 だめ。

 それはいけないことだ。

 こんなことはやめなければならない。

 せっかく手に入れた良明との生活が――

 粉々に

 砕けて

 もう

 元には、

 もどせな――

 けど。

 だけど。

 ここが痒くて

 奥が痒くて

 指では届かない場所が――

 疼いて

 クリトリスを押し潰す。

 締めつけた指を抜き差しする。

 奥をかき回して。

 丹精な花壇を掘り返すように。

 大事な貯金箱を叩きこわすように。

 かけがえのない手紙を破り捨てるように。

 自分をえぐる。

 息が止まりそうになる。のけぞって、あえぐ。

「はひ……っ! はうっ! あっ……あっあっああああっ……っく! いく……っ!」

 なにもわからなくなる。

 いま、欲しい。

 オチンチンが、欲しい!

 まゆは、腰を突き上げていた。揺すった。指の動きとともに、愛液がほとばしった。

「い、いれて、いれて、いれてええ!」

「おお」

 墨田が覆いかぶさってくる。ペニスをまゆにあてがい、一気に――

「だめえ!」

 加織が墨田を引っ張った。

「先輩は、加織にするのお!」

 尻を突き出し、ねだる。加織のそこも大洪水だ。まゆの自慰を見て、燃え上がったらしい。

「……ああ」

 少し残念そうに墨田はまゆの股間を一瞥すると、加織に向き直る。

 尻を抱えると挿入する。

「ああああっ! 気持ちいいん!」

 加織が壁に手を突いて髪を振り乱した。

「こんなの、初めて……っ! 最高ぉ!」

 激しいピストン運動。

 まゆはそれを見上げながら、余韻に浸っていた。

 墨田のモノが粘膜に触れたとき、達していた。

 ものすごい快感だった。良明以外の男のペニスを受け入れようとしていることに、心と身体がねじ切れるほどの性的興奮が沸きあがった。

「……っ……はぁ……あ……」

 涙とよだれを流しながら、まゆは、加織と墨田のセックスを見ていた。

 

つづく