MA−YU 学園編 「第一話 ふたつの始まり」
まゆの心臓がはねあがり、呼吸がつまった。指を局部に当てたまま静止する。
『先輩、ほんとうにだいじょうぶ……?』
『ああ。この時間ならだれもいないって。今日は入学式だけだし、それも終わったからな』
心配そうな少女の声に、変声期のさなかのガラガラ声がかぶさった。
まゆは息をひそめた。こんなことをしているところが見つかりでもしたら……。
このベッドは、保健室の一番奥まったところにあって、カーテンと衝立で隠されている。ぱっと見にはわかりにくい場所だ。しかし、衝立を覗きこめば、まゆがいることくらいかんたんにわかってしまう。
会話は続いている。キィと音が鳴ったのは、回転椅子にどちらかが腰をおろしたのだろう。
『せっかく中等部デビューしたんだ。そのまま帰る手はないだろ?』
『それはそうだけど……。こんなとこで?』
『しょうがないだろ。ホテルには制服姿じゃ入れないし、家じゃ親の目があるしな。学校でベッドがあるっていったら、ここくらいだ』
『う……ん』
女の子の声がくぐもった。
『先輩、奥とか、だれかいるんじゃないですか?』
まゆはベッドの上で凍りつく。
『心配性だな。おれは何回もここを使ってるんだぜ。ここの校医はほとんど研究室に閉じこもってるし、今日は入学式しかないから、だいじょうぶだよ』
『でも……』
『わかったよ、見てくるよ』
まゆはベッドの上でパニックに陥る。ショーツを腿のところまで下ろした格好だ。ふとんをかぶって寝たふりをしようにも、蹴飛ばしたふとんはベッドの下に落ちてしまっている。
スカートをなんとか直して息をとめる。
シャッとカーテンが開く音がして、窓からさしこむ光が衝立のすりガラスを通ってまゆにとどく。少年のシルエットが動くのが見える。
『ほら、だれもいやしないじゃないか』
隣のベッドを確認したのだろう。すこしホッとしたような少年の声が言う。
『こいよ、かおり、ほら』
ベッドを叩いて誘っているらしい。女の子が困ったような声で答える。
『いいですけどぉ……。先輩、ゴム使ってくださいよぉ……』
『わかってるって。早く、早く』
言いつつ少年はベルトを外しはじめているらしい。カチャカチャと金属が当たる音が聞こえてくる。
まゆはベッドの上で身体を固くした。心臓のドキドキがさらに高まる。
こんなところでエッチなことをしようとするなんて――もっとも、まゆも他人のことはいえないが――
隣のベッドがギシッと鳴った。ふたり分の体重が乗ったせいだ。
ぴちゃぴちゃと音が聞こえてくる。唇を重ねているのだ。
衣ずれの音。ぺたんと床が音をたてたのは上履きが落ちたのか――
ぷち、ぷちとホックを外すような音がして、男子生徒が息を吸いこむ気配がする。
『おっぱい、またでかくなったんじゃねえか? ああ?』
肌がぺちぺちと鳴る。掌で軽く叩いているのか。
『これが昨日まで小学生だったとはな……。元・巨乳小学生ってとこか……』
『先輩が胸ばっかり触るからでしょお……』
『だってかおりの胸、気持ちいーんだもん』
ちゅぱっ。
『んっ、あっ、先っちょ、吸わないでぇ……痛いの』
『とかいって、ピンピンじゃねえか――』
じゅぷっ。しゅびぷっ!
唾をいっぱいにためた口ですするような音が響き、少女が、ひくっ、と喉を鳴らす。
『かおりの乳首、真っ赤だぞ、すげえ……』
『先輩っ、だめっ、噛まないでぇ!』
『乳首全体が腫れてるぜ……でけえ乳首だなあ』
『いやあ……』
まゆはたまらず、手を制服にもぐらせていた。自分の指で乳首をさわる。その部分は固い。だが、たぶん、ふくらみの大きさでは隣のベッドの女の子に負けているのだろう。それでも、自分の胸が愛撫されているような錯覚にまゆは陥った。
『ほぉら、指でつまんで、クリクリしてやる……うら、うらぁ』
『やあん、先輩、引っ張ったら痛いよぉ……』
『中一のくせにこんなでっかいおっぱいしてるかおりが悪いんだよ、ええ?』
『ああん……もぉ……』
まゆは両の乳首をつまんで引っ張った。声が出そうになる。それをこらえることで、快感が倍加した。
『へへ……かおり、自分でおっぱい吸ってみろよ。できんだろ?』
『む、むりですよぉ……』
『できるよ。首を前にまげろよ』
『もおお……』
それでも少女は男子生徒の要求に応じているようだ。
『ほら、あと少し……』
『んうう……おっぱいのびちゃいますよぉ……ん……とど、いた……』
『すげえ……なんて、でっけえおっぱいだよ。マジかよ』
『やれっていったの先輩じゃないですかぁ……もお、いいでしょお?』
『だめだ、吸えよ、乳首。もう片っぽはおれが吸ってやる』
『はああん……もお……』
ぴちょ、ぴちょ、と仔猫がミルクを舐めるような音がふたつ重なって聞こえてくる。
隣のベッドで、まゆと同い年の少女が、豊満な胸をさらして、ひとつは男にあたえ、もうひとつは自分自身で舐めすすっているのだ。
どんな感覚がするのか、まゆには想像もつかない。指で乳首をこすりながら、羨ましささえ感じている。
『かおりぃ、おまえ、自分でおっぱい舐めて、感じてるんだろ? 目ぇ細めて、うっとりとした顔しやがって』
『そんなことないですよ……』
『じゃあ、ここはどんなんになってる!?』
『きゃあ!』
ベッドが激しく軋んだ。体勢を入れ替えでもしたのか。保健室の空気がかき乱されて、衝立ごしにも風がまゆのところに届いた。
『ほら、パンツのなかぐっしょぐしょだぜ、かおりぃ』
『やだぁ……』
『指がズブズブ入っちまうぞ、おらぁ』
『んうっ! 先輩、そんなにしたら、痛い』
『痛い? こんなにぬるぬるにしといてか?』
『ああん、指動かさないでくださいよぉ』
はあ、はあ、まゆは息をはずませながら、指を股間に移していた。先程までのいたずらの名残がまだ濃厚なその部分は、先程からの聴覚が受ける刺激で、さらに粘度を増していた。
『かおりのおまんこの中、ぐちょぐちょだな?』
『ああ、恥ずかしいよぉ……でも、気持ちいい……』
まゆも自分の性器を指で嬲っていた。中に入れることまではしないが、潤った周辺部をなでるだけでも身体の芯がとろけそうだ。おしりが勝手にぴくぴく震えだす。
『かおり、おまえ、けっこう濃くなってきたよな』
『な、なにがです』
『マン毛だよ。マン毛。最初のころは産毛みたいのしかなかったのによ』
『だって、五年生だったんですよ、最初って』
まゆは漠然と考えている――自分の初めては四年生のときだっけ――そしていまでも陰毛はほとんど生えていない――
『もう二年以上たつのかよ……。どうりでケツのところまで濃いのが生えてくるはずだ』
『うそっ、うそでしょ、先輩』
『うそじゃねーよ、ケツの穴のところまでびっしりだ』
ギシギシ、バタバタ、ベッドが鳴る。女の子が暴れているらしい。
『やだやだ、先輩! そんなの見ないでくださいよぉ! 剃ってきますぅ!』
『るせえ、おれはかおりのケツ毛だって舐められるんだぜ』
『やあんっ! 絶対だめっ! 舐めないで、先輩ぃ!』
『じっとしてろ、かおり……』
『もぉ……ばかぁ……』
ちゅぴちゅぴ、また湿った音がしはじめる。
まゆは興奮してその音に聞き入った。どんなふうに男の舌が動いているのかを想像して、指を動かした。
『あ……先輩が、おしり……舐めてるぅ……』
指を肛門のあたりにまで移動させる。鋭い感覚がまゆの脳を灼く。
『おしり……汚いのに……なのに……気持ちいいよぉ……』
まゆも気持ちがいい。自分の指でそこをいじるのは初めてではないが、こんなに感じたことはなかった。隣のベッドにいる、顔も知らない少女が受け取っている快感と、まゆは同調しているのだ。
『ああっ、あんっ、先輩、そこっ、そこ、ヘンだよぉ……』
『かおり、ケツの穴で感じるんだ――へへ――おまんこ、大洪水だぞ、あふれてやがら』
『ああっ、広げちゃやだぁ……っ』
たまらず、まゆも性器を指で広げた。ベッドの上で、脚を大きく広げている。たぶん、隣のベッドで女生徒がしているのと同じ格好だ。
『よぉく見えるぜ、かおり、赤い肉がばっくり割れて、奥の穴までまる見えだぜ』
『いやああん!』
『こんどはこっちを舐めてやる……』
『あんっ、先輩っ!』
ねちっこく湿っぽい、粘膜同士が触れあう音が、少女の息づかいとともに聞こえてくる。時折、水分をすするような音が混じる。
『んふっ、ああっ、きもち……いいっ……せんぱいっ……かおり、きもちいいよぉ……』
じゅぶぶぶっ!
激しくすすりあげる音があがって、少女の声のトーンがさらにあがる。
『ひあっ! アソコ、すっ、吸われてるぅ……!』
まゆはたまらず自分の膣を指でえぐった。男の口がその部分に密着して、勢いよく愛液を吸い上げているさまを想像する。お腹の奥で、なにかがぐぅっとうねるような気がする。ぞくぞくする感覚が身体を駆けのぼり、また腰にまでおりてきて、幾度となく往復する。
『かおりのアソコ、いやらしくなっちゃう! ぐちゃぐちゃになっちゃう! あ、ああっ! せんぱい、もっと、もっとチュウチュウしてぇっ!』
じゅちゅっ、じゅるるるう!
まゆも腰を突きあげる。たまらない。自分もその部分を吸ってほしい。かおりに負けず劣らず、まゆの部分もぐちゃぐちゃになっているのだ。
『かおり、かおり、もうがまんできねえ……入れるぜ? チンポ入れちまうぜ?』
切迫しきった男子生徒の声が聞こえる。まるでまゆの耳元で囁かれたようだ。まゆは思わず頷いている。入れてほしい。隣のベッドに飛び込んで、おねだりしたい気分だ。
『う、うん……先輩……入れて』
少女の声も切迫している。
『かおりぃ……いくぞぉ……』
隣のベッドの揺れがまゆのところまで伝わってくる。体勢を整えているのがすりガラスに映る影の形でなんとなくわかる。
まゆは自分の右の中指をペニスに見立てて、膣口にあてがった。
『入れるぞ……』
沈めていく。
『ふあっ! あっ……ああ……』
少女の声に合わせるように、まゆも声が出てしまう。まずい、という感覚はわずかにあったが、こらえられない。
「あっ、あ――」
のけぞりながら昇りつめかけた、その刹那。
まゆの鼻と口が強い力で押さえつけられた――!