超世紀莫迦1,000,000アクセス達成記念作品
MA−YU 外伝
待ちなが 或いは まゆのドキドキ面接パニック!

***

 手が震える。こんな面接ってあるんだろうか。でも、ここは試験会場だし、目の前にいるのは試験官だ。

 やるしかない。

 まゆはスカートの裾をそろそろと持ちあげた。

 もともと短いスカートだから、すぐに下着が見えてしまう。

 白コットンのお子様パンツだ。実はこれしか持っていない。いちばん安いからだ。

 もちろん、今朝替えてきたばかりだから、真っ白のはずだ。

「ふうむ……白か。わざとらしいな」

 試験官があごをひねくった。

「このようなテストがあるという情報が事前にもれていたのかもしれないな。いまどきの小学六年生の女子が、そこまでシンプルな下着をつけているというのは、かえってあやしい」

「そ……そんな……」

 まゆはスカートの裾から手を離して抗議しようとした。とたんに鋭い叱責がとぶ。

「だれがスカートを戻していいと言いましたか!」

 あわててまゆは裾を持ちあげる。広い教室の空気は冷え冷えとしていて、むきだしの太股には冷たい。

「後ろを向きたまえ。おしりの側に、下品な装飾があるかもしれない」

「そんな。ありません」

 まゆは反論しようとしたが、たちまち「口答えしない!」という声がとぶ。

「……はい」

 まゆは試験官に背を向けて、手を後ろにまわして、スカートをめくりあげた。さっきまで椅子に座って緊張していたから、布地は少し汗で湿っていて、おしりの山にも食い込んでいる。

「ふうむ」

 試験官がテーブルを離れて、まゆの側まで移動した。しゃがみこんで、しげしげとまゆのヒップを眺める。無言だ。

 まゆはスカートをめくりあげるポーズをいつまで続けていいのかわからない。

「あの……」

「しっ」

 と言われては言葉を続けられない。まゆはそのままの姿勢を続けた。

 すると。

 試験官は、まゆのパンツに手を伸ばし、手で触れたかと思うと、ぺろんとずりさげた。おしりが半分以上露出してしまう。

「なっ、なにを」

 まゆはびっくりして振りかえる。だが、試験官はまじめくさった表情を崩さない。

「裏地の素材を調べただけです。なかには、子供にはふさわしくないシルクを使用したものなどもありますのでね」

 コットンショーツの裏地にシルクを使っているものなどあるはずがない。まゆはそう指摘したかったが、口答えするなと言われるのが予測できたので黙っていた。

「ふうむ……。一見、生地には問題ないが、いちおうラボで分析しよう。七瀬さん、下着は提出してもらいますよ」

「て、提出!?」

「そう。いますぐ脱いで」

「そんな……」

 まゆは混乱する。ここでパンツを脱いでしまったら――ミニスカートなのにノーパンになってしまう。

「嫌ならば断ってもいいですよ。いずれにせよ、わが校の生徒になれば指定の制服やソックスを身につけなければならないわけですから、こんなことでつまずくような人は順応できないでしょうしね」

 そう言われてしまっては、まゆとしては脱ぐしかない。ここで面接を打ち切られて不合格になるわけにはいかないのだ。

「ぬ……脱ぎます」

 まゆはかろうじて答えて、それからスカートの中でパンツに手をかける。不安はつのるが、しょうがない。思いきって引き下げて、足をぬいた。靴がじゃまだったが、なんとか脱げた。

「はい。じゃあ、こちらにください」

 試験官にじかに渡すのは恥ずかしすぎる。だが、試験官は事務的な態度で手を突き出している。まゆは赤面しながら下着を渡した。

 白衣のポケットからビニール袋を取り出して、その中にまゆの下着を入れた。ラベルシールに何か書きこんで、ビニール袋に貼りつける。そうすると、脱ぎたてのパンツも標本のようになるから不思議だ。

「じゃあ、面接の続きをしましょうか。座っていいですよ」

 ほっとしてまゆは椅子に腰かける。だが、真正面に座る試験官の視線が気になってしまう。スカートが短いから、ちょっとでも油断すると、見えてしまいそうになるのだ。

「さて。あなたは自分のことを処女だと自己申告したわけですが、自慰行為はどうですか? していますか?」

「は……」

 またも度胆を抜かれる質問だ。

「性行動の乱れは、まず自慰行為――オナニーをきっかけにすることが多いのです。ですので、入学前に生徒の自慰行為の実態を把握していなければならないのです」

「それは……」

 なんと答えたらいいのだろう。こんな質問は(その前の質問もそうだが)、面接の想定問題集には載っていなかった。そりゃあそうだ。

 まゆはすばやく考えた。ここもウソをついて「していない」と言うべきだろうか。だが、試験官は「実態を把握していなければならない」と言った。それは、「オナニーしている」ことを前提とした言いかただ。それに、小学六年生でオナニーをまったくしたことがないと言うのは、かえって不自然かもしれない。

 これもひとつの賭けだし、試験の妙味だ。まゆは決断した。

「……してます」

 ほう、というように試験官の表情が動く。

「週に何回しますか?」

「ご、五回……ぐらいです」

 どう答えればいいのかがわからなくて、まゆは、つい、本当のことを言った。受験勉強中は、特に回数が増えてしまった。良明が抱いてくれない、というのも理由としてはある。

「なるほど、ほぼ毎日しているわけですね」

 試験官はファイルにペンでなにごとか書きこんだ。「七瀬まゆ、週五回」などと書かれているとしたらものすごくいやだなあ、とまゆは思う。と、顔をあげた試験官がとんでもないことを言った。

「じゃ、どのようにやっているか、ここで見せてもらえますか?」

「えええっ!?」

 さすがに大きな声が出た。

 真向かいに座わる白衣の男は眉をちょっとしかめた。

「実際、どのように自慰をしているのかがわからなければ、あなたの生活態度がどのようなものか、判断することができませんよ」

「そ……そんな……」

 まゆは椅子の上で凝固する。

「生徒が正しい性知識を持っているかどうか、それも合否の材料になることをお忘れなく」

 試験官は冷たく言った。

 まゆは惑乱している。試験官の言うとおりなのかもしれない。でも、いくらなんでも、こんなところでは……

 どうする。

 受験を棒に振るか。

 それとも、恥をしのんで、やってみせるか。

 まゆは、決断した。